灰 と 灰

 「僕を何か、規則で結びつけておかないと、そうでないと、僕は飛び出していってしまうんだ。巨大化していくこの惑星から。あるいは、飲み込まれている過程なのかもしれない。本当は僕は宇宙に立っていて地球に向かって、絶え間ない下降を繰り返しているのかもしれない。過去の自分が理解できない。一体何を考えていたのか予想もつかない。過去の記録が一切ないのにどうして未来の軌道を計算できるだろう? それらは断片的ですらない。補間もできない。昔の自分を、たとえば昨日ベッドに入る前の自分を、肯定どころか理解すらできない時が一番悲しいんだ。あたりは真っ暗で、光はチリ一つない。宇宙の果てって考えたことあるかい? いやあくまで論理上のお遊びに過ぎないんだけどね、光速以上で広がり続けている宇宙の外まで出てしまった時、そこには何もない。何もないんだ。今どんな情景が浮かび上がった? 真っ暗な光景というのに僕はどうしても違和感を感じてしまうんだ。もちろん光はないとして、そこにはダークマターも黒の壁紙のようなものもない。テクスチャ上に何もないのに加えて表面すらないんだ。じゃあ透明だろうか。どこまでも透明な世界。どこまでも。どこまでも。僕は手元にある石を投げてみる。カラカラと転がっていく音がする。それすらも僕の錯覚かもしれない、だって先があるとしても先の先があるなんて誰が確約したんだ? 今度は後ろに投げてみる。宇宙だろうと頭の中だろうと、前や後ろなんてものはないのだけれど、僕らは数直線上を生きる一次元的存在なんだ。僕は僕が生きている方向と真逆に石を投げてみる。投げた瞬間、既に音が返ってくることなんて諦めている。だけれど、返ってくるのは悲しげなギターリフだった。プログレのイントロ。もはや命題ですらない。前も後ろも仮定の直線世界で僕は悲しみに浸るんだ。」と彼は言った。言った。言った。言った。言った。言った。言った。言った。言った。言った。言った。

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