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他業種とのかけ算で切り開く物流業界の未来 #03【合同会社TAKEz 武田 優人】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回は合同会社TAKEzで代表を務める武田 優人さんにインタビューしました。#03では、「物流業界の未来や若者へのアドバイス」についてお話いただいています。

<プロフィール>

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▼ 合同会社TAKEz 代表取締役社長  武田 優人氏
早稲田大学を卒業後「京王電鉄株式会社」に入社。7年間、不動産管理やリノベーション企画を担当する。その後、世界的に先進的物流施設の開発・運営を行うGLPの日本法人「日本GLP株式会社」へ入社。プロパティマネジメント部で物件の施設や運営管理の業務を経て、2017年に物流の様々な課題を包括的に解決へと導くサービスの提供に特化した子会社「モノフル」を立ち上げ。2023年からはフリーランスとして、物流領域のスタートアップを中心に、Bizdevや営業戦略支援に携わる。


目標を叶える「100週プロジェクト」

― 物流業界のビジネスコーディネーターとして、これから目指す未来を教えてください。

あまりかっこ良いことが言えないのですが、ずっと好奇心で思うがままに生きてきましたので正直「これだっ!」というものがありません。かつて障がい者雇用を促進するグループ会社に出向したことがあり、同僚から「大変だね」と言われたことがあるのですが、知的障害を持った方々への仕事の依頼やトレーニング、採用活動は私にとっては知らない世界であり、とても面白く感じました。

世の中ではいま10人に1人、1500万人ほどの就労困難者がいると言われています。その方たちが、初めて自分の力で稼いだお給料をもらって帰っていく姿を見て「こんなにも価値を届けられる仕事があるんだ」と心から嬉しくなったのを今でも覚えています。どのような場所・環境でも前向きに楽しめる性格だからこそ、「こういうキャリアを歩みたい」というよりは、アンテナをはりながら、巡り合えたそのチャンスを楽しんでいきたいと思っています。 

― 新たな仕事のチャンスはどのように掴みとってこられるのでしょうか。

新規事業「モノフル」立ち上げの際も、私を知る周囲からは「自分で手を挙げたんだろう」とよく言われましたが、実際のところは社長からきっかけをもらっています。むしろ、当時は物流不動産のプロパティマネジメントを極めようと思っていたほど。しかし、実際に事業立ち上げに取り組んでみたらとても楽しく、「ここにも自分の楽しむポイントがあったんだ」とたくさんの発見がありました。その後、独立するという選択をしましたが、「特定のジャンルや取引先の仕事しかしない」という決め方はしていません。自身でキャリアの幅を絞るのはまだ先でいいと思っていまして、私を理解し、お声がけいただくお仕事は基本お受けさせていただく姿勢でいます。

― 5年後や10年後の構想はありますか。

「この領域といえば武田優人でしょ」と言われるような、領域を確立したいと思っています。具体的にいうと2025年の12月末までになにかひとつのプロジェクトをやり遂げたいです。そう思いついた時点から25ヵ月の期間があり、週に換算すると約100週です。これを個人的に「100週プロジェクト」と名付けていて、どこかの領域の1位に毎週1%ずつ近づいているか振り返っています。この領域がどこになるかというところまでは明確には定まっていません。ただ、今まで携わってきた「ヒト」や「モノ」の移動はとても面白いと思っていますし、ここの領域を中心に掘り下げていきたいとは考えています。2026年になったときに、「ヒトとモノの移動に関する新規事業」を検討する際は、まず武田が浮かぶような動き方をしていきたいですね。

インタビューの様子

新規事業×物流

― 物流業界を交えて構想されていることはありますか。

メーカーや小売りなど、「モノ」が動く業界においては、全て物流領域とのかけ算ができます。現在携わっている農業のスタートアップももちろん、介護や福祉の領域においても、物流や人流の考えを適用することができます。
これまでは独立当初は「新規事業×〇〇」で生きていこうと思っていましたが、過去の経験を活かせる「新規事業×物流」は他のプレイヤーがあまり存在しないこともありニーズも多く、ここをまずは掘り下げていこうと考えています。

― 「新規事業×物流」を実現するためには、どのような手順をとられるのでしょうか。

まずは大きな枠でビジネスをとらえることから始めます。そのうえでどんな価値が必要か分解し、一人では対応できない場合は、協業を検討したり、適切な仲間をアサインすることもあります。私自身に物流現場の経験はありませんが、「この課題なら〇〇さんを連れてきたら解決できそうだ」という肌感は持っています。私ひとりで何かをするというよりは、周りのパートナーさんたちと協力しながら、現場課題の解決に取り組むイメージですね。

そうして力を合わせ、他の業界に眠っている“実は物流に関連する課題” ”物流で解決できる課題”を見つけ、事業推進に寄与していきたいと思っています。現在携わっているプロジェクトにおいても、既に物流の経験やネットワークが活きていることが多々あります。私の強みは、新規事業に関することだけでなく、物流や不動産、介護や福祉など他業界へ横ぐしをさして考えを広げられることなので、今後もこうした「かけ算」も私の価値としていきたいと考えています。

― 物流業界から一歩引いてご覧になった時、今後の物流業界にはどのようなことを期待されますか。

物流業界で働く方たちが「自分たちは物流業界にいる」と狭い世界でくくってしまっていることは、大変もったいないなと感じています。介護や福祉から「物流」を想起する人はほとんどおらず、全く別の世界のものと認識するのが当然です。しかしながら私のようなビジネスコーディネーターの場合だと、「これは集荷の拠点に使えるんじゃないか」「一緒に輸送できるかもしれない」と物流に絡めてご提案を膨らませることができます。そういった面でも私が取り組む役割は面白いと思っていますし、物流業界で活躍する方々にもそういった意識が醸成されることを期待しています。

ちなみに私自身、営業職には3〜4年ほど就いていましたが、営業は経験しておいた方が良いと思っています。「営業」はお客さんの課題を理解し、その解決策を提案する職種です。そして、私が今取り組んでいる事業開発は、社会課題に対しての解決策を提供するもの。私の中で営業と事業開発はほぼ同じものなので、こうした見方をしていくとさらに広がりが出てくるのではないかと思います。

インタビューの様子

常にオープンに

― 将来、ビジネスコーディネーターのように、人と人とを繋ぐ仕事がしたいと考えている若手や学生の方に、大切にすべきアドバイスをお願いします。

会う人を絞らないでください。会う人を絞ってしまうと新しいものが見つからなかったり、視野が狭まってしまいます。ビジネスコーディネーターとして働くのであれば、常にいろいろな人に会って、特定のところにとどまらないようにすることが大切です。歩き回って、たくさん話をするようにしましょう。

― どのような場所に出向くのがいいのでしょうか。

どこでもいいんです。例えば私は2022年、少し仕事を休んで地元に帰っていたのですが、その際は昔の友人とたくさん会って話してきました。中学を卒業してそのまま働き始めた同級生や、親の仕事を継いだ人、専業主婦やニートもいます(笑)。多くの立場や環境で過ごす人のことを知ることで、多くの価値観に触れることもできますし、新たな課題に気が付くこともあります。昨年参加した小学校のPTAも、とても刺激的になっています。幸いなことにビジネスにおいては業界の人とお話しするチャンスはたくさんありますが、仕事外での人とのつながりは、年々意識しないと薄くなっていくので、ここは継続して意識したいと思っています。

業界の人や内情を知っている人の話だけではなく、どんどん外に行って、意見を吸収することこそが、ビジネスコーディネーターとして大切なのではないかと思います。さらにもうひとつ言うならば、会って自分が学びを得るだけでなく、相手にひとつでも価値を提供したいといつも思っています。やはりウィンウィンの関係が成立してこそ、健全かつ対等に話し合いができます。相手が子どもでも友人でも経営者でも国会議員でも、時間を使っていただいている以上は「聞く」だけでなく、こちら側からも何か新しい価値をだすことで、縁がつながっていくと思います。

― 相手にお出しする価値とは、例えばどのようなものでしょうか。

会う前に相手に関することを調べておき、何かひとつでも質問を考えていくだけでも良いと思います。相手の小さな疑問や課題を解消してくることも考えられます。会って話す時、ただ「はいはい」と相づちを打っているだけの人との関係は、長続きしない印象です。初めてお会いしてコミュニケーションをとった時、相手や相手のビジネスに対する質問を交えながら、「それって実はこうではありませんか?」という自分の考察を出していくことで、相手からの見え方も大きく変わってくるのではないかと思います。

― 人と会い、話を聞くときは相手を敬いながら謙虚に、そして少しでも自分の培ってきた価値を提供する。これはビジネスシーン以外でも活かされる大切な姿勢だと思います。貴重なお話、ありがとうございました。


<取材・編集:ロジ人編集部>



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