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尖っていた若手時代とロジスティクスとの出会い #02【合同会社TAKEz 武田 優人】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回は合同会社TAKEzで代表を務める武田 優人さんにインタビューしました。#02では、「自分の居場所を見つけるまでの道のり」についてお話いただいています。

<プロフィール>

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▼ 合同会社TAKEz 代表取締役社長  武田 優人氏
早稲田大学を卒業後「京王電鉄株式会社」に入社。7年間、不動産管理やリノベーション企画を担当する。その後、世界的に先進的物流施設の開発・運営を行うGLPの日本法人「日本GLP株式会社」へ入社。プロパティマネジメント部で物件の施設や運営管理の業務を経て、2017年に物流の様々な課題を包括的に解決へと導くサービスの提供に特化した子会社「モノフル」を立ち上げ。2023年からはフリーランスとして、物流領域のスタートアップを中心に、Bizdevや営業戦略支援に携わる。


多様な価値観を知る

― 学生時代は、どのようにお過ごしでしたか。

もともと好奇心旺盛な方で、新しいことを知ったり体験したりすることが好きな人生を歩んできました。一方で、学生だった頃は「自分がやることは正しい」「自分がやることは正義だ」というように考え方が凝り固まっていた時代でもあります。常に「こうあるべきだ」「これが正しい」と考え、それ以外のものを受け入れられずにいたため、反対の意見が出てくると戦って倒そうとしてしまうところがありました。また口が達者なところがあり、周りの空気を考えることなく、頭ごなしに言い負かせてしまう部分もありました。いま考えるとほんと嫌な奴だったなと(笑)。

― 新入社員時代はいかがでしたか。

新入社員として京王電鉄に入社した時も同様で、かなり周りに噛みつき、色々な価値観を受け入れられず周りの人たちを傷つけてしまったことがあります。鉄道会社のようなレガシーな企業においては、社内においても役職は重視され、他部署の部長や上司と直接話すことは基本的に良しとされない文化でした。ところがわたしは「正しい」という一心で正規のルートを飛ばし、他部署の部長の席に行って、業務の進め方について反論していました。

私にとっては「お客様のため」を考えており、結果としてお客様にとって良かったこともあるとは思いますが、会社のやり方や進め方を無視したことで、輪を乱し、周りにストレスをかけてしまっていたのです。このような振る舞いをしていると、次第に私に対する見方だけでなく、私が所属していた部門全体への見方も悪くなってしまったため、当時迷惑をかけたと思っています。 

― 他部署に向けた指摘の元となる気持ちはどのようなものだったのでしょうか。

お客様に対して最善を尽くしたい、という思いでした。なぜ周囲は私と同じモチベーションで仕事に取り組まないのか、なぜこのスピード感なのか、なぜ残って仕事をやらないのか。そうしたすべてのことを理解できず、とにかく尖って常にイライラしていました。

― そんな中、7年勤めた京王電鉄を去るきっかけとなったのは何ですか。

「ほぼ全員が受かる」と言われていた主任試験で不合格になったことでした。これは「一度ここで釘を刺しておかなくてはいけないだろう」という会社からの明確なメッセージといまは受け取っています。試験が「不合格だった」という事実を伝えられた際、大きなショックを受けたとともに、「あ、そっか」と大きな気づきを得ました会社にもそれぞれ価値観や正義はあって、それが自分と違う場合、こちら側の正義を突き通すだけではいけない。自分の正義と合致する会社に行かないとお互い不幸だ、と。そこで「今まで迷惑かけてすみませんでした。一年以内に辞めます」とお伝えし、その日から転職活動を始めました。

インタビューの様子

自分に合う環境探しへ

― 京王電鉄を退職後、先進的物流施設の開発・運営を行うGLPの日本法人「日本GLP株式会社」に入られます。日本GLPへの転職の決め手は何だったのでしょうか。

転職するとき、多くの企業担当者の方と面接をさせていただきました。とにかく「自分の価値観と合う会社に行きたい」と決めていたので、業種や業態、給料などはあまり気にしていませんでした。そうした中、日本GLPの部門責任者と面談した際、バチっと価値観が合ったのです。「この会社なら自分の価値観と合うし、全力で前に進める。お客様のために100%突き進める」と自信が湧いたので、入社することに決めました。 

― 日本GLPといいますと2017年に社名変更されており、かつては「グローバル・ロジスティック・プロパティーズ」でした。このタイミングでロジスティクスに出会うのでしょうか。

そうです。GLPでは2年ほど不動産のプロパティマネジメントという、テナント様とコミュニケーションをとる部門にいました。私自身、ロジスティクス・物流は初めての分野だったため、とにかくお客様を知るべく現場に足しげく通いました。どのような仕事をしているのか、どのような人がいるのか、何にお困りなのか。細かいですが、お昼には何を食べているのか、どんなパソコンを使っているのか、ホワイトボードには何が書いてるかなども観察し、お客様を感じ、少しずつ理解していく日々を過ごしました。 

― 武田さんは「すべての人に最適な物流を」をスローガンに掲げる「モノフル」の立ち上げメンバーでもあります。そこからモノフルの事業に携わる経緯はどのようなものだったのでしょうか。

プロパティマネジメント業務も非常に楽しく、その道を極めたいと思っていた矢先、社長から「そろそろ飽きてきたでしょ」と言われたのがきっかけです。正直なところ「何を言っているんだ?これからだよ!」と思っていたのですが、「新しい部門をつくる」と言われ、新規事業部への異動を伝えられました。日本にいる私とシンガポールにいる上司の二人で始める新規事業部、それが後の「モノフル」になる会社の立ち上げでした。

― 開始時点では、どのようなミッションがあったのでしょうか。

実は明確なテーマはあまりなく、話していたのは「ITを絡ませたいよね」「大きな売り上げを狙おうぜ」ということくらいでした。自分でイチから事業を立ち上げるほか、M&A(企業の合併・買収)など、手段は問われない状況でした。これまでの業務は主に「管理」領域にいたため、まずは多くのスタートアップの方にお会いしたり、イベントに参加したりすることで、少しずつ「企画」の方に頭のスイッチを切り替えていきました。過去に「企画」の人に対し、「管理」視点で文句ばかりいっていた自分を今では叱ってやりたいですね(笑)

インタビューの様子

ロジスティクスとの出会い

― 新しい分野への挑戦ということで苦労や葛藤もあったことと思います。いかがでしたでしょうか。

物流やロジスティクスの世界はやはり複雑ですし、領域も多岐に渡ります。アナログからデジタルへの転換期でもあったので、自分たちがどこに入るべきか、誰と組むべきか、何を狙うべきなのか。多くの時間悩んでいました。私自身、最初はスタートアップ投資から始まりましたし、自分たちで物流SaaS(ユーザーがインターネットなどのネットワークを経由して利用できるサービス形態)を作ってお客様に提供していましたが、自身が事業をやることで業界への解像度は上がっていったと思います。

― そこから、物流の世界をどのように開拓されたのですか。

物流領域の情報を知るため、不動産のプロパティマネジメントに取り組んでいた時代よりも、突っ込んで現場にお邪魔するということを半年ほどかけて続けました。朝4時から大型トラックに乗せてもらい300個のバラ卸しを手伝ったり、物流センターでピッキングをしてみたり。ここでようやく不動産という立場ではなく、物流やロジスティクスの全体構造や、どのようなプレイヤーがどのような役割を担っているのか、それぞれの課題感はなんなのか、現場解像度をあげることが重要でした。

日本GLPに入社したことや、モノフルの新規事業部の立ち上げに携わったことで、ロジスティクスの世界に入ったわけですが、まだ物流のプロフェッショナルにはなれていないと思っています。やはり、現場を外からしか見たことがなく、実務経験がないという事実は拭えません。そのため、この時だけでなく今も現場に足を運び、人に話を聞くということを続けています。 

― 尖っていた若手時代からこれまでのことを振り返って、改めてどのようなことを思われますか。

基本的にはお客様の方を向いて仕事をしていたこともあり、関係を築けていたため、何かあった時にはお客様に助けられたという思いはあります。京王電鉄時代、不動産事業で非常に重要なテナント様がいたのですが、私の上司が年始の訪問に行った際に「武田くんのまま担当を変えないでくれ」とおっしゃっていただいたことがありました。当時、テナント様とは何度もぶつかって、腹を割って本音での話し合いを繰り返していましたが、お互いにとって良い着地点を見つけられるような関係値を築けたことは非常に良かったと思っています。幸い直属の上司も私がすることを見守って下さる人だったので、お客様と良い関係を築くことができたのだと思います。

― 既存の枠にとらわれない武田さんの生き方は、今の時代にこそ必要とされるものではないでしょうか。次回は武田さんが目指すビジョンや、キャリア形成において若者に伝えたいメッセージを中心にお話しいただきます。


<取材・編集:ロジ人編集部>


次回の“他業種との掛け算で切り開く物流業界の未来 #03" 3/15(金)公開予定です!お楽しみに!!

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