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情報の非対称性を解消する #01【Willbox株式会社 神 一誠】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回はWillbox株式会社で代表を務める神 一誠さんにインタビューしました。#01では、「国際物流とWillboxのいま」についてお話いただきました。

<プロフィール>

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▼ Willbox株式会社 代表取締役社長  神 一誠氏
1989年、神奈川県出身。大学卒業後、求人情報サイト「バイトル」などを運営するディップ株式会社で法人営業に従事。その後、株式会社マイナビの新卒採用サイト「マイナビ」でも法人営業に従事し、当時、最短最年少で支部長に就任する。退職後は家業の総合物流会社に入社。物流の現場作業、営業、経営企画、台湾駐在を経て、2019年にWillbox株式会社を創業。



Willboxの提供するサービス

― 現在の仕事内容を教えてください。

Willbox株式会社は「国際物流をより最適に、よりスマートに。」をミッションとして掲げている会社で、国際物流の業界内で荷主と物流事業者をマッチングするプラットフォーム「Giho Seaを提供しています。「Giho Sea」は製造業のお客様を中心にご利用いただいているサービスで、主に「大型貨物(工業製品)」を扱う荷主と、データベース化された物流事業者を直接繋ぎ合わせるものになっています。

 ― 国際物流というと船や飛行機など輸送形態はさまざまですが、どのような分野に携わっているのでしょうか。

大きく、3つの領域で事業を展開しています。一つ目は、海上輸送による複合一貫輸送。荷主側がコンテナを1個単位で借り切る輸送形態「FCL」で大型の製品を担当しています。二つ目は「Container EC」という、船会社から直接コンテナをブッキングできるサービスです。そして三つ目はこれからリリース予定の航空貨物のマーケットプレイスです。

 ― どのような経緯で国際物流のプラットフォーム化を思いついたのでしょうか。

家業が総合物流会社だったため、かつて私は台湾の事業所で梱包の木箱を作る仕事をしていました。作業をしながら「家業の会社が100年続くためにはどうしたらいいか」と考えたのが「Giho Sea」という物流プラットフォームビジネスです。「Giho Sea」という名は、私の物流・梱包の師である「ギホー」さんからいただいています。彼は製品を見ただけで必要な材料、設計、在庫、業者の手配などを瞬時に頭で計算し、寸分狂いがない見積もりを叩き出す素晴らしい職人さんでした。彼の脳みそを再現したら物流がより効率的になるだろう、と発案したのが「Giho Sea」なのです。

 ― 御社のミッションである「国際物流をより最適に、よりスマートに。」は、どのように考えられましたか。

「より」という文言を入れている通り、ロジスティクスの最適化が進んだと言われる現在でも、モノを届けることに関して、本質的な最適解はまだ見つかっていないと思います。だからこそ、私は現状にもう少し改善を加え、理想の状態に近づけていきたいという思いがあるんです。「少しでも良くしていく」という意味合いも含め、ミッションではこうした言い方をさせていただきました。今よりも一歩ずつ良い方向へと向かっていく、そんなイメージです。

インタビューの様子

国際物流の面白さと課題

― 国際物流の面白さについて教えてください。

日本は島国なので、輸出入を問わず物流という過程は必ず発生しています。「物流が良くなると人々の暮らしが良くなる」と言われることがありますが、それほど物流は私たちの暮らしに直結するものだと言っても過言ではないでしょう。特に私たちが輸送に携わっている日本製の製造機器などは、海外の工場で活躍しています。それらの機器を使って製造された輸入製品を見ると、「手元にテクノロジーが戻ってくる」ような感覚になるんです。こうした体験はやりがいや面白さにつながっていると思います。

― 国際物流が抱える課題についてはいかがでしょうか。

実際の現場では「デジタル化が進んでいない」と言われることが多いのですが、実は紙やFAXの利用自体が悪いとはあまり思っていません。これらはあくまでもツールなので、どのタイミングで使うかの問題だと考えています。では課題は何かというと、キーワードとなるのが「時間」「お金」「安全」です。

「時間」というキーワードで言えば、荷主・物流事業者、双方に同じ課題があります。例えば荷主(メーカー)は物流事業者から輸送の見積書を取得する際、1日から2日、長くて一週間以上待つ必要があります。一方、物流事業者は1日の6割以上の時間を見積書作成に費やすにもかかわらず、そのうちの8割が失注する構造となっており、現場慣習は未だに非効率だといえます。これは解決すべき大きな問題だといえるでしょう。

 ― 「お金」「安全」の課題は何でしょうか。

「お金」は、輸送費がほぼ言い値であることが課題です。物流業界は標準化されていないため、500万円と言われれば500万円になってしまいます。一方、物流事業者では多重下請け構造が成り立っているため、末端になればなるほど薄利多売のビジネスになってしまっています。

「安全」についてですが、物流事業者にJIS規格や安全基準が設けられていても、荷主側がその内容をすべて知っているわけではありません。そして、物流業界では手順や情報が周囲に共有されず、各段階が属人化してしまっています。このことが大きな問題なのではないかと思っています。

インタビューの様子

 ― こうした課題の解決に向け、どのようなことに取り組んでいますか。

物流事業者のデータベースを作成しています。例えば旅行業界だとホテルの空室のデータベースが、不動産業界であれば取り扱い物件のデータベースがあります。しかし、物流業界にはそのようなデータベースはほとんど存在しません。それぞれの物流事業者がどんなクオリティで、いくらで、どのくらいの量を、いつまでに対応してくれるということを誰も知らない状態でどんどん貨物が流れているので、安全性の担保が非常に難しくなってしまっています。

そこで、私たちは太平洋沿岸の主要港を中心とした160社以上の物流事業者に対し、1社あたり200〜500項目ほどのヒアリングをしてデータベースを作成することにしました。どんな設備があるか、職人のスキルはどんなものか、さらにはフォークリフトの爪の長さまでヒアリングし、フォーマットにまとめています。これらの情報は安全性を確保できるかどうか判断するベースとなるため、非常に重要なのです。

「情報の非対称性」を解消できるモデル

― 新しいサービスを始める時に苦労もあったと思いますが、いかがでしょうか。

よく聞くのは、物流業界のスタートアップに対して、業者さんが協力的でないケースです。しかし、私たちの場合はその逆で、物流事業者の登録率は98%にも上りました。むしろどんどん協力してくれるという状況だったんです。「Giho Sea」はこれまで物流業界になかったサービスですし、彼らにとっての悲願を叶えるものだったため、協力体制の構築はバッチリでした。

ただ、荷主(メーカー)側の発注形態を変えるということには苦労しました。これまでのやり方から考えると、サービスの導入でガラッと変わってしまうため、製造サイクルに合わせて流動的に依頼ができるという新体験を理解してもらうまでに時間がかかりました。
 

― そうした状況で、どのように営業をしていたのでしょうか。

営業でも先ほどの「時間」「お金」「安全」をキーワードにお話しさせていただいています。例えばお見積りでお困りのお客様がいらっしゃれば、「24時間以内にどんなお見積りも算出される」というメリットや、「間接コストが削られていることで実現できる低単価」が訴求ポイントになるかと思います。

一方、生産量が増えている中で出荷ができずキャパシティがひっ迫しているようなお客様には、フレキシブルに対応が可能な柔軟性を推しています。私たちが長年お付き合いさせていただいている会社があるのですが、ある時その会社の商品生産量が4倍に増えたことがありました。その際も、我々のデータベースを使って、空いている梱包会社に依頼をどんどん回し、出荷をスムーズに行うことができました。これは、今まで物流の状況に出荷ペースを合わせていた荷主(メーカー)が、出荷に合わせて物流サイドを合わせられるようになった最たる例です。

しかも、私たちのサービスでは必然的にその仕組みが成立しているため、多くのお客様には「やらない手はない!」とおっしゃっていただいています。業界には、荷主と物流事業者間に生じる情報格差を利用したビジネスモデルが多いですが、私たちが提案するのは「情報の非対称性を解消する」ビジネスモデルなのです。

― 1社の利益のみならず物流業界全体の最適化を目標に、情報の非対称性解消を目指す神さん。次回は、こうした考えに至るまでの経緯や起業のきっかけについてお伺いします。


<取材・編集:ロジ人編集部>


次回の“現場を知ったからこそできる「現場のため」のビジネスモデル構築″は 2/16(金)公開予定です!お楽しみに!!

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