図表の参照方法
図表番号を参照するとき、文末側で参照すべきと考える。しかし、図表の参照箇所についてはライティングの本での言及が見当たらない。そこで、学会論文とテクニカル・ライティングの教科書で調査で裏付けてみた。
実は、図表を文中のどこで引用すべきかについて言及している本を、著者は見たことがない。テクニカル・ライティングの世界では、重要ではないとして無視されているのかもしれない。あるいは、どこで述べるかは、習慣上の常識で説明する必要がないのかもしれない。たとえば、「APA論文作成マニュアル」でも、図の引用については以下のような記載だけである。
ーーー引用ーーー
3.83 図の特定と引用
すべての図に, 本文中で最初に言及した順序でアラビア数字の連番を振る
(すなわち図1, 図2 というように).
この番号を, 図版のできるだけ右上の外側に近い位置に鉛筆またはペン
(ボールペンは使わない) で軽く記す. 図に余白がない場合には, 図の裏側に番号を書く. また, 図の裏側には, 論文の短いタイトルと図の上下を示すために, 上端にTOP という語を記す.
本文中では, 図番号で図を指し示す.
as shown in Figure 2, the relationships are data are related (see Figure 5)
「上図J ( または下図) あるいはf12 ページの図」などの表現は決してしないこと. その理由は, 図の位置やページ数は印刷所のオペレーターがページをレイアウトするまで決まらないからである.
ーーー引用ーーー
著者は、2つの理由で、図表は文末で参照すべきと考えている。1つ目の理由は、主張から根拠の流れが、テクニカル・ライティングでは常識だからだ。つまり、図表で主張したいことを先に述べ、それから根拠である図表を示すべきと考える。2つ目の理由としては、「既知から未知の流れ」を作るためだ。未知の情報である図表(たとえば「図1は」)を文頭に置くべきではない。2つの理由で、図表は文末で参照すべきだ。
自説を論証するために、図表の参照箇所を調べたことがある。本には記載が見つからないので、実際はどう書かれているかを調べたのだ。調査は、以下の2種類。
1.学会論文(英語圏)はどちらで書かれているか
2.テクニカル・ライティングの教科書ではどちらで書かれているか
学会論文の実績を調べたところ、約10倍の頻度で文末派だった。著者は、科学雑誌のネイチャーの論文を数百件をテキストデータとして持っている。そこで、このデータをプログラム処理して調査した。論文の著者はライティングの素人だから、あまりあてにはできない。しかし、約10倍という大きな開きから、文末で参照するのが習慣のようだ。この論文調査では、圧倒的に文末派だった。
テクニカル・ライティングの教科書を目視でチェックした結果、文末での表示しかなかった。調査対象は、英語で書かれたテクニカル・ライティングの教科書である。手持ちの数冊の調査だから統計的な信頼はない。しかし、ライティングの専門家が、文末にしか図表を持ち出さないなら、かなりの信頼性はあるはずだ。この調査でも、図表は文末側で参照されている。
以上、学会論文とテクニカル・ライティングの教科書で調査した結果、図表番号は文末で参照すべきである。
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