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推奨図書(まとめ)

推奨した図書は、ある部分について卓越しているに過ぎない。結局、ある1冊さえ読めばよいという本は、他者の著作では見つけられない。全部を読んだ上で、良い部分を身につけるしかない。紹介した本から、学ぶべき良い部分だけをまとめておこう。

1「最新版 論文の教室: レポートから卒論まで」
本書は、パラグラフライティングを学ぶのに適している。パラグラフに対する理解は、若干怪しいが、類書に較べればずっと良い。なかでも、パラグラフ間の接続がしっかり書かれていることはすばらしい。パラグラフでは、Topic sentence どおしがつながらなければならない。本書では、この接続をしっかり説明している。実は、日本人の書いた本で、この Topic sentence の接続を説明しているのは、自著以外にはこの本くらいしかない。

2「理科系のための英文作法」
本書は、「既知から未知」を学ぶのに適している。「既知から未知」についてこれほど丁寧な説明は、自著以外で見たことはない。「既知から未知」のルール説明だけではなく、実際の応用についても書かれている。たとえば、「引き継ぎの省略」である。本書では、文頭に「結果を」で始まる文を例に、「その結果を」の省略だ、つまり既知な情報だと説明している。同様に、「同じ語句のくり返しが最もよい」は、本マガジンでも、「キーワードは言い換えてはならない」と言う趣旨で紹介している。「新しい情報は一つずつ」は、一文一義を守れとも言える。「既知から未知」のルールだけではなく、応用に踏み込んでいる。

3「読ませる技術聞かせる技術」
本書は、認知心理の基本を学ぶのに適している。基本である二重貯蔵モデルやメンタルモデルが詳しく説明してある。本書では、それぞれを、1章ずつ割いて説明している。この2つのモデルは、「分かりやすさ」を理解する上では、とても大事な概念だ。この2つのモデルを、素人でも分かるように書かれている本を、私は見たことがない。本書では、認知心理学をベースにすることで、類書と差別化を図っている。

4「論理的な小論文を書く方法」
本書は、文章における論理性を学ぶのに適している。本書をの筆者が伝えたいのは、「主張をはっきり述べ、根拠で論証せよ」ということだ。当たり前のように思うかもしれないが、日本人はこの当たり前ができない。文章における論理性(主張と根拠)を学ぶのには良書である。例文も演習も豊富に掲載されている。ロジカルシンキングの勉強にも適している。

この一冊さえ読めばと言うバイブルはない。各書のいいところを学ぶ姿勢が必要だ。

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