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考察では、結果から結論を導く

考察は、「なぜ、この結果でこの結論を導き出せるか」を論証するパートである。自然科学の論文で見られる Ablation Study も結果から結論を論証する方法と言える。しかし、考察と結論の区別が付いていない論文を目にすることもある。

考察は、結果から結論を論証するパートである。結果だけからでは唯一の結論が導けないことがあるのだ。つまり、結果だけから考えると、複数の結論の可能性が残る。そこで、考察によって、1つの結論を導くのである。たとえば、相関関係があるという結果から、なぜ、そこに主張するような因果関係があるかを説明する。考察で、結果から結論を導くのだ。

例として、新手法が既存手法より優れていると訴える論文で説明しよう。2つの手法を3つの観点で比較した結果、既存手法が2つの点で優れていたとする。しかし、この2勝1敗という結果から、2勝した側の勝ちという唯一の結論は導けない。なぜなら、1敗した項目の重要性が際立って高いかもしれないからだ。あるいは、同じ1勝でも大差の勝ちと僅差の勝ちでは価値が違うからだ。だから、内容によっては1勝した側の勝ちという結論もあり得る。そこで、2勝1敗という結果から、どちらの勝ちかを論証するのが考察なのだ。

別の例として、AとBに相関関係を見いだした論文で説明しよう。AとBに相関関係があることは結果(データおよびその加工)である。「Aする人は、Cなので、Bする傾向が高い」が結論、つまり結果が何を意味するかである。しかし、「Cなので」とは別の理由「Dなので」も考えられるなら、「Cなので」とは言い切れない。相関関係から因果関係を導くには、第3の因子(「Dなので」)の排除や因果逆転の可能性の排除も必要だ(ここでは説明省略)。相関関係から、思いつきのように因果を導いてはいけない。

ちなみに、技術論文などでは、結果がストレートに結論なので、考察が事実上不要な場合もある。たとえば、青色発光ダイオードが実現できていなかったとき、材料や手法の工夫で青色に発光するダイオードができたとする。青色に発光するという結果が、そのままこの材料や手法が有効であるという結論である。論証するまでもなく、青色に発光させることが、結果=結論なのだ。このように結果がストレートに結論なら、考察は不要だ。

技術論文では、考察として Ablation Study を載せることがある。 Ablation Study とは、提案した手法や材料から一部を抜いて、その結果と論文の結果を比較することである。論文の結果が有意であることから、提案した手法や材料がベストであることを論証する。この Ablation Study も、結果から結論を論証する1つの方法である。

しかし、考察での論証がない論文を見ることがある。結果が何を意味するか(=結論)を一方的に断じて終わってしまう。なぜ、そういえるかの論証がない。なので結論に対する納得感が弱い。論証がないので、考察の内容が薄いばかりか、結論と同じになってしまっているケースも多い。こうなると、結論で考察の内容を繰り返すのはおかしいから、結論がない論文もある。おそらく、論文の書き手は、考察で何を論じるかを知らないのであろう。考察が考察になっていない論文を見ることがある。

考察は、結果から結論を導くパートである。 Ablation Study は、考察の1つの手法だ。しかし、考察が考察になっていない論文もよく見る。

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