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EC物流奮闘記~物流エンジニアのお話 : Episode 5

物流の事を何も知らない人がEC企業に入社し、様々な経験をし、物流エンジニアとして、奮闘するお話です。


#1-5 創業者に会う? 見る?

極秘でVIPが市川FCに来るらしい。という話を聞きました。誰にも言うなという箝口令付きで。当時の自分は、偉い人が来るんだ程度の認識。
FC内は、5Sの徹底がさらに強く求められていました。

VIPは、誰?

オペレーションは、右往左往。5S! 2S! 怒号に近い掛け声があちこちで展開されていました。私は、肝心のVIPが誰なのか全く知る由もありませんでした。そして、ついにその日がやってきたのです。

市川FCが緊張に包まれている中、現れたのは、ジェフ・ベゾスだったのです。CEOが来るなんて。長い社員歴の中で、ジェフ・ベゾスと遭遇(?)したのは、この時と後日、来日した時の2回だけです。

CEOと遭遇した日本の社員は、ものすごく少ないのでは? 
その両方で直接、話を聞けたのは、とても良かったと思います。

VIPが誰なのかわかったら、自分は、正常運行に戻って、業務を行います。
その間、マネージメント陣は、FCツアー (FCの中を案内し、その場所でどんなことが行われているかを説明しながら、廻ること)を行っていました。

FCツアーが終わると、緊急のマネジャーミーティングが招集されました。

タウンホールミーティング

何事かと思って、ミーティング開催場所へ向かうと、そこには、ジェフ・ベゾスがいるでは、ないですか。そう、タウンホールミーティングと呼ばれる経営陣と従業員が集まり、日頃、従業員が聞けない質問に経営陣が答えるセッションです。

色々な人が色々な切り口で、たくさんの質問を投げかけていました。
これからのアマゾンの事、アジアの戦略、仕事をする上で心掛けていること等、その中で強烈に印象に残った言葉がありました。

強烈に印象に残った言葉

最初に書いておきます。強烈に印象に残った言葉を2つ

"Still day one."

"Customer's rules."

今では、アマゾンのHiringサイトでよくDay Oneを目にしますが、
この時は、ベゾスが業務を行う上で大事な事は?という質問に答えた内容だったと思います。

何かを始める1日目というのは、希望があり、目標があり、それに向かって努力しようという気持ちがある。
それが成長していく上で大事なことなんだよと。
2日目や3日目の気持ちでは、ダメなんだよ。
なぜならば、慣れが出てくるからだ。慣れが最も成長を停滞させるのだと。

だから、毎日、新たな1日目という気持ちで取り組むことが大事だと。

次のCustomer's rulesは、どんなサービスを提供したら、良いのかという質問に、この言葉を発していました。お客様が決めることと。

お客様が決めることとは、お客様が求めているサービスだということを指していると思います。そのサービスが提供できれば、お客様は、私たちを選択してくれると。

これが「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」に結びつくのだと思います。

すごくシンプルな言葉ですが、意味を聞くとなるほどと思うことがたくさんありました。そして、こんな機会、2度とないだろうなと感じたのでした。
(数年後にその機会は、やってくるが、この時は、知る術もなし)

そして、大事なことを少しづつ実践してみようと思うのでした。

そして、出荷設備増強工事へ

VIP来訪も無事に終え、今年のHolidayに向けて、出荷設備増強工事が始まります。そして、工事担当として、プロジェクトに関わることになります。

このプロジェクトは、フェーズを分けて進行することになり、最初のフェーズでは、トラックに出荷品を積み込む仕分け作業場にソーターという仕分け装置を導入することになります。

当時は、日通ペリカン便と佐川急便に配送を委託していました。
そして、この作業は、全て人手で仕分けをしており、新たなサービスを控え、より複雑になる仕分け作業の自動化を進めることになったのです。

新たなサービスとは、そうご存じの方は、ご存じのあのサービスです。
それは、「当日お急ぎ便」です。他にはない、独走的なすごいサービスだと社員でありながら、興奮したのを覚えています。

当時は、社員のアマゾン利用率が高かった。ヘビーユーザー = アマゾニアン(アマゾン社員の事)は、社内では、よく言われていました。 

間接的にでも、そんなプロジェクトに関われるなんて思ってもいなかったので、やる気が出ました。

これまで、ダメだった事を思い出しつつ、繰り返さないためにも、工事の段取り、スケジュール調整、安全対策等、今できる全てを取り込んで、ちょっとでも不安のある作業は、現場に張り付いて、対応にあたりました。

完璧には、ほど遠く、今のベストを尽くしたのです。

そんなある日、安全担当のマネージャーがやってきて、こんな話をしてくれました。「USから安全担当マネージャーがここの工事現場を見て、『素晴らしい。きちんと安全が保たれている工事現場だ。NA (北米) でもここまでしっかり管理されている現場は、見たことない』と言って、物凄く褒めていたよ」と。

知らない間に現場を見ていたとは。
でも、ベストを尽くして良かったと秘かに誇らしく思ったのであった。

学びと収穫

工事も終盤に差し掛かり、実装部分に入ります。この時、システム側も2段階で導入することになっていました。この2段階での導入は、後々、非常に助けになる学びが多かったのです。

システム側、WMSとの接続は、2段階目であり、最初は、ローカル制御で仕分け装置を動かすものでした。要は、仕分け装置の制御を使って、仕分けを行うものでした。この部分は、社内のシステムエンジニアは、ノータッチということもあり、情報をもらって、自分がローカル制御を担当することなりました。

ローカル制御は、どの部分のバーコードを読んで、機械側に判断させ、次に特定のバーコードを読んで、最終仕分け先を判断させるのかというおおざっぱなロジックは、できていました。

このロジックをわかりやすく詳細一覧にすることが最初のゴールです。

後日、2段階目も設備側担当として関わることになるのですが、この時、WMSの仕組や実際、システム上でどんなことが行われているのかを知ることができ、自身の学びと成長にとても役立ったと感じます。

機械、装置だけわかっていても、どんなシステムで、どういったロジックでその装置が動作するのかを理解しているか、理解していないかで、設備全体への理解の解像度が全く違います。

こういった事が経験ができるなんて、まだ、ベンチャーっぽい雰囲気が残っていたこの頃だったからかもしれません。
自分にとっては、本当に学びと収穫が多いプロジェクトだったと思います。

今までは、センター内だけの人との関わりが、本社だったり、取引先だったりと色々な人と関わりを持ち始めるようになってきたのもこの頃です。

最後の最後に

ソーターも稼動し、いよいよHolidayに突入直前に工事を担当してくれた会社の方たちが全て完了し、引き上げることになりました。

引き上げから6時間後、仕分け装置がダウンしてしまいました。
現場は、ストップです。最終端の装置が動かないのですから。

頭真っ白のまま、緊急で担当してくれた人を呼び戻したのは、言うまでもありません。本当に申し訳ない。最後の最後に。

後日、原因もわかるのですが、この頃、ダウン対策が全く行われていなかったので、ダウン対策をきちんと設計、オペレーション運営に盛り込もうという機運が出て、設備全体の見直しが行われることになるのです。

バックアップという考えは、平時には、全く気にしないことですが、備えあれば、憂いなしとあるように、どんなトラブルが想定されるかということを計画段階から盛り込むことが必要だと痛感しました。
もちろん、対策は、ビジネスインパクトが比較対象になります。

そんなこんなで多くの方に迷惑をかけつつ、Holidayをなんとか乗り切ることができました。後日、オールハンズが開催されるのですが、Awardを受賞させていただくことになり、申し訳ない気持ちいっぱいでした。

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