Koki GOTO(後藤 航己)

Koki GOTO(後藤 航己)

マガジン

  • 配達日記

    新聞配達をしながら「通過儀礼」の渦中にいたころの「自己の臨床」の記録です。 分裂気味な人間の「臨床材料」や「精神の発現過程」としても読めると思います。 変わり者の日常を覗くのが好きな方、ぜひ楽しんでください。

  • ふじうみのおと

    伊豆高原で「リゾートバイト」をはじめたころの記録です。 何かが始まるまえには「予感」がするもので、その「予感」を描きました。 物語がはじまる「予感」を、ぜひ楽しんでくださいませ。

最近の記事

iPhoneのひび

2023.01.02       神乃珈琲で「月煎」という名前のコーヒーを飲んでいた。 iPhoneを机の上に置いた。 画面がバキバキだ。 割れている。 この前、朝刊の配達中に落としたのだ。   iPhoneの画面の右端の方を触ると、微細な破片が指先に刺さる。 ザラザラとしたものが親指にまとわりついてくる。 粉々になった画面を眺めていると、なんだか「貧相」な感じもするけれど、これはこれで綺麗だなぁと思った。 画面が割れたのは今回が2回目で、半年前ぐら

    • 励まし

      2022.12.31       12月31日。 ことし最後の日も一人でカフェにいた。 カフェの中には、「正月」という言葉と縁がうすそうな、「祝い事」と距離が隔てられている、どこかさびしそうな人たちがいた。 みんなひとりだった。 それぞれ、席に座って「何か」をしていた。 なんだか励まされた。   学大のドトール珈琲農園でダージリン紅茶を飲みながら、松岡正剛さんの『フラジャイル』を読んでいた。 344頁からの「遊侠の季節」を熟読。 「遊び」について考え

      • マグロのレアカツ

        2022.12.31       大井町から東京テレポートに向かうりんかい線の中で”うたた寝”していた。 三島由紀夫の『暁の寺』を読んでいた。 「夕焼だけが芸術ですね」というセリフ。 真っ暗な地下の車両。 観念の粒が沸いては消える。 お台場に向かう電車に揺られながら、起きているのか眠っているのかわからない状態だった。 中途半端に夢を見ていた。   東京テレポートに着いた。 人混みに混ざって歩いた。 「ダイバーシティ」という文字が見えた。 多様性。

        • return here

          2022.12.29 奥沢のスタバでソイラテを飲んだ。   ソイラテを飲み終えて、空になったマグカップをレジの隣の返却口のところに戻そうとした。 だけど、間違えてしまった。 注文したドリンクを「渡すところ」に返してしまった。 返却ミス。 スタッフのお姉さんは優しく微笑んで、「大丈夫ですよ」と言ってくれた。 気持ちを込めて実直に「ありがとうございました」と言った。 けれど、マグカップは”ズレた場所”に返してしまった。 返却口の「return here」と書か

        マガジン

        • 配達日記
          69本
        • ふじうみのおと
          17本

        記事

          大本

          2022.12.23       12月になると森博嗣のクリームシリーズを読む。 毎年恒例だ。 今年は『積み木シンドローム』。 森さんのエッセイを読むと、頭が回る。 ふだんあんまり頭を使ってない証拠だ。   このシリーズを読むと、一年に「区切り」をつけるような心持ちが湧いてくる。 正月で区切るよりも、少し早めに区切る方が気持ちいい。 基本的には「多数派」の反対側にいる方が、気持ちよく過ごせる。   この気持ちよさは、多数派のおかげだ。 少数派は、

          視力検査

          2022.12.21       「答えの出ない問い」を見つけると、なんで突っつきたくなるんだろう。   午前中に健康診断に行った。 健康診断にいって把握できる健康の範囲って、そうとう限られていると思っていた。 そもそも「健康の範囲」ってなんだろうと考えた。 考えたけれど、これは「答えの出ない問い」だ。 答えは出ないけれど、これからもずっと考えてしまうんだろうなぁと思った。   検査で特に目立った変化はないだろうなぁと思っていたけれど、視力が変化してい

          アイスパッションティー

          2022.12.19     田中泯さんの良寛の舞台を観るために、東京藝術劇場のある池袋に行った。 日曜日の池袋は初めてだった。 渋谷とか新宿とか池袋とか、「デカい場所」に日曜日に行くと、人が多くてクラクラしてしまう。   12時過ぎに池袋駅について、ジュンク堂に向かおうとして駅の地下街?っぽいところをふらふら歩いた。 Googleマップをつかえばすんなり辿り着けると思ったけど、マップは使わずに感覚を頼りに歩くことにした。 「肌寒いなぁ」と思いながらマスクを

          アイスパッションティー

          ふたご座流星群

          2022.12.17       昨日の夜、布団の中に入っても寝付けなくて手慰みにiPhoneをいじっていた。 「ふたご座流星群」が観えるというニュースを見つけた。 「ちょうどいい!」と思って、暖かい布団から抜け出した。   近所をぶらぶら歩きながら空を見上げていた。 思ったより街灯がたくさんあって、「これじゃ星が見えなくなるんじゃないか」と、すこし心配になった。   神学校の脇を通り抜けた。 古びた校舎だった。 星を見上げていると、なぜか「キリスト

          掌返し

          2022.12.14        夢で、亡くなった父に「ハワイ留学に行け、金はなんとかする」と言われた。 起きてからこの夢の意味を考えた。 たぶん「南国に行け」ということなんだろうなぁと思った。   きのうの夜、寝るまえにポリネシアについて調べていた。 だから夢にハワイが出てきたのだろう。 寝るまえに想ったことが夢に出てくることは結構あって、「こっち側」から「あっち側」に働きかけて出来上がる夢もあるんだと解釈している。 「科学的」ではないけれど、そうい

          その人の風

          2022.12.13        気持ちよくしゃべるように書きたくて、書くことも「気持ちいいこと」にしようとしている。 気持ちよくないと続かないし、楽しくないことにはなるべく時間を使いたくない。   だけど余計なことをしゃべると「イヤな気持ち」になるし、余計なことを書くと「イヤな気持ち」になる。 余計なことをせずに、でも黙らずに何かをしゃべって、黙らずに何かを書きたい。   さっきYouTubeで唾奇のインタビューを観ていた。 インタビューのなかで、「

          ちょうどいい感じ

          2022.12.12       ここ何日間かで順路帳(配達のルートや新聞の銘柄を記したもの)をつくっていた。 事務作業が苦手で、時間が掛かるうえにミスを連発してしまう。   事務作業に向いてないのはとっくの昔に気づいていて、だからそういうものからなるべく遠い場所で生きていけるように工夫しているのだけど、それを全くやらずに生きていけるような場所にはまだまだ辿り着けそうにない。   このまえ家族旅行で金沢に行った。 旅先の金沢で弟に唾奇の曲を教えてもらってか

          冬花火

          2022.12.05       自分の弱さを受け入れられるときは、いい意味で受け身になっている。   今日は久しぶりにしっかり寝れた。 店に着いていつものように配達の準備をしたあと、きのう買ったスーザン・ソンタグの『ラディカルな意志のスタイルズ』をカバンから取り出して、パラパラめくった。   配達をしてから新聞を積んだトラックが店に来るまでの、そのあいだの時間に何をするか。 今日は本を読んだ。 今日は本を読んだけど、この時間にする作業を決めているわけで

          引っ掛かり

          2022.12.02             今日は「ハイパージェンダー」について考えた。 両性具有に関わるアレコレについて。   12時前、学大のいきなりステーキで「ワイルドステーキ」を単品で頼んだ。 ライスは無し。 米が恋しいような気もしたけれど、この”恋しさ”は「何か」に変えられると思った。 「主食」への欲望を別の何かに変えること。 「主食」と思い込んでいるものへの欲望を別の何かに変えること。 「主食」という思い込みから解放されること。

          連れ連れなるママに

          2022.11.23        学大の定食屋の「天狗」で昼ごはんを食べた。 「サイコロステーキとからあげの定食」を食べながら、弟とLINEをしていた。 「いいテンポ」だなと思いながらiPhoneをポチポチやっていると、このやり取りは兄弟とか家族とかより、「ともだち」っぽいなと思った。   実家のママの近況をLINEで報告してくれる弟。 やっぱりこいつは「弟」だな、と思った。 「でもなんか違うんよなぁ」とも思った。   あぁ、そうだ。 ツレだ。

          連れ連れなるママに

          ⑤岡山紀行

          2022.11.06         ハッピータウンを出て、児島駅に戻ることにした。 児島駅に向かっている途中、駅のまえの開けた土地に公園があって、そこのベンチで「ひと休み」することにした。   ついさっき買った、『ぼくの死体をよろしくたのむ』をバッグから取り出した。 時刻は15時ごろ。5歳ぐらいのちいさな男の子が、自転車に乗る練習をしていた。 お父さんがそばで何かを言いながら励ましていた。 遠くの方からも、小さな子どもと大人の声が聞こえていた。 陽に

          ④岡山紀行

          2022.11.05       美味くも不味くもない寿司を食べたあと、「ジーンズストリート」に向かうことにした。 Googleマップをみると350メートルぐらいの距離らしい。 カメラをぶら下げて、のんびり歩いた。   きれいに舗装されたアスファルトの上を歩いていると、右手に大きな病院と小さな公園があった。 何組かの親子が公園で遊んでいた。 日曜日の午後のなごやかな空気のなかで、公園で遊んでいる人たち。 公園の向かいにある病院が、なんだか「肝っ玉のデカい