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バナナはおやつに入りますか?

世界がいわゆる「コロナ禍」と対峙して一年余りが過ぎた。

既存のもの比べると今のところ圧倒的に効果が高いというエビデンスが積み上げられ始めているワクチンが一筋の光明になりつつはある。ただし、生産やロジを含めた接種体制の構築や接種を受ける側への啓蒙にはまだまだ時間がかかりそうでワクチンが世界を救う(かもしれない)のはもうちょっと先の話になりそう。

SARS-CoV-2の感染経路としては飛沫感染、メインではないようだが接触感染、特殊な状況下ではエアロゾル感染があげられている。必然的に予防はこれらが起こらないように行動することになる。昨年からの厚生労働省のクラスター対策班らの尽力により、リスクの高い状況としてより具体的な場面が提示され比較的早期から広報された。

主たる感染経路である飛沫感染を防ぐには感染者の飛沫を吸い込むような場面を避ける必要があり、大人数で長時間飲酒や飲食する、いわゆる「宴会」のようなものはこれに該当する1つのシチュエーションである。政府をはじめ公的機関や医療関係者からも繰り返しこのメッセージは伝えられている。わかりやすいイラストを使用したり、複数のSNS媒体を用いたり広報にもそれなりの工夫がこらされている。

ところが第三波の真っただ中、政府の西村担当大臣が記者会見でこんなことを語った。

”西村担当相、外食ランチも自粛呼び掛け 「しばらく家庭で食事を」
西村康稔経済再生担当相は12日の記者会見で、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に関し、ランチを含めて極力外食を控えるよう呼び掛けた。宣言の対象地域では飲食店に対し、午後8時までの営業時間短縮を要請しているが、「昼間も外出自粛をお願いしたい。昼に皆とご飯を食べていいということではない」と語った。(後略)”
(時事ドットコムニュース 2021年01月12日)

昼に皆とご飯を食べていいということではない

飛沫を浴びないようにという観点に基づくなら「何故今更こんなことをあえて言う必要が」的なメッセージであるが、あえて言わないといけないくらいには昼間の会食による感染が問題になっていたのであろう。

人々は本当に昼なら皆でランチしてもリスクは高くないと思っていたのだろうか。「わかってなかった」のだろうか。

多分そうではないんだろう。

おそらく「昼ランチしちゃダメって言われてなかったから」そうしてたんだろうと思う。

識者もtwitter内で指摘していたが、根本的にこのコロナ禍を通じて「感染者を皆で減らそう。そのための行動をとろう」ということについて明確にコンセンサスが得られているとは言い難い。疾患自体のリスクも個人によって大きく異なるし、行動を抑制することにより社会・経済的なものをはじめ別の大きなリスクにさらされる人も多くいることを考えると、これについてはいたしかたないと言える。

感染者を皆で減らそうという行動を積極的にとろうと思えない人たちにとって、会食しないというのは「ルールだから」(厳密によると法で規定されてるわけではないのでルールではないが)ということでしかない。

そうであれば、「如何にしてルールの網の目をかいくぐってしたいことをするか」という思考に至るのは至極当然である。であれば「夜の街で飲食しないでね」というメッセージは「昼ならいいやろ」という網の目を提供することになる。

政府のメッセージに不備がなかったわけではないだろう。もっとうまい言い方があったのかもしれない。でもおそらく、どんな言い方をしても「ルールを守らされている」と感じている人は「網の目」を必ず見つけるだろう。


バナナはおやつに入りますか?

ネタとして語り継がれてきたこのセリフももう今の現役小・中学生には伝わらないのだろうと思うと隔世の感がある。

いわずもがな(でもないのかも知れないが)、遠足の前に当日持ってきていいおやつが300円分と言われた時にガキ大将みたいなやつが先生にする質問である。

筆者らの世代的には「300円は消費税込みでですか?」だった。

帰りのバスで気持ち悪くならないくらいで食べきれる量のおやつを持っていこうという気持ちが自分にあったら、バナナを持っていきたければそれ以外のお菓子はちょっと控えようと思うかもしれない。

けれど「おやつは300円までというルールを守らされているから」だと、なんとかしてちょっとでも余分におやつを持っていってやろうと画策してしまう。


前述のように、皆が「感染を広げないための行動をとろう」と考えるのは難しいだろうから、コロナ禍が収まるまでは

バナナはおやつに入りますか?

みたいなやりとりが繰り返されるんだろう。









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