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eスポーツ:新たな業界団体が誕生、しかしこれこそが求められているものではないか

珍しくeスポーツ絡みの話題に触れる。プロレスや音楽など様々な面で国内外のトレンドを追うのが好きだが、eスポーツ、ビデオゲームというのはある意味、日本が世界と戦えるコンテンツの1つであるということは何となく国民も理解しているものと思う。

実際のところ、ゲーム機はほぼ日本製だとか、ゲームの制作会社の多くは日本であるということは理解し、誇りに思っているが、スポーツだと言われるとよく分からないというところで止まっているというのが現状だろう。

そこへ海外では既に優勝賞金がとんでもない金額になってますよ、実は日本の選手がそこで優勝出来るぐらい強いのに、日本ではそういう選手が活躍出来る場所、見てもらう場所が様々な制約で出来ないので整備するのでJeSUを作りますよ、なんて話が大量に降ってきたのが去年だ。

しかし、JeSUの立ち上げ、それ以降も宙ぶらりんになっていた問題がある。既に存在しているユーザーコミュニティとどう連携していくのか、という問題である。

 

【JeSUだけでは解決が出来ない】

JeSUが海千山千と言われるのも確かなのだが、少なくとも法律の部分や政治的ルートというのを抱え、そこにメーカーが加わっているという事実がある。ただ、免許制度やそれの認定も含めて、ユーザーコミュニティとの対話がされてこなかったことに多くの反発がこれまでもあった。

プロプレーヤーというものを規定する時に、やはりユーザーコミュニティからの信頼を受けた上で進んで行くというのが従来の在り方、これまでのこの国におけるゲームに関わる人間のアティテュードであったにも関わらず、それが無視された。実際に認定を受けた、これまで活躍していたプレーヤーからもJeSUに対して、この部分をどうクリアしていくのかという疑問は投げかけられてきた。

しかし、実際にユーザーコミュニティの側からJeSUに望まれているeスポーツの様々な要望に対して、応えることが難しい状況が発生していたのだ。

【GCNはユーザーコミュニティ側の団体】

今回出来た新団体はむしろユーザーコミュニティ側の団体と言える。顔ぶれは、TOPANGAの豊田風佑、ユニバーサルグラビティーの松田泰明、GODSGARDENの稲葉央明、EVO Japan 2018運営委員長の金子紀幸というそうそうたるメンバーである。

馴染みの無い人のために解説をすると、TOPANGAは国内でもトップクラスのリーグ運営を始め、ときど選手、マゴ選手など世界レベルの選手も抱える有数の会社であり、eスポーツの在り方を牽引する立場にある。

ユニバーサルグラビティーの松田さんは、ゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナーであり、伝説の格闘ゲームイベント『闘劇』の主催者。まさしくユーザーコミュニティに寄り添い、盛り上げてきた立役者である。

GODSGARDENは稲場さんが主催の格闘ゲームイベントであり、この盛り上がりが後のTOPANGA設立に影響を及ぼすなど、国内のユーザーコミュニティ、プロ化との歴史的な接続点に存在している。

金子さんは、EVO Japan 2018運営委員長という立場以上に、ハメコ。という名前で多くのゲームに関する記事を書くフリーライターであり、プレーヤーであり、イベンターとして、様々な方向からゲームに関わってきた第一人者だ。

つまり、この4人は国家側、メーカー側からではなく、まさしくユーザーコミュニティ側から、ユーザーコミュニティのために出てきた最強の柱なのだ。

【何故、出てきたのか】

詳細については、4Gamerに掲載されたこちらのインタビュー記事が詳しいが、簡単にまとめるとこういう理由で団体が発足したようだ。

・eスポーツ、ゲームに関する雇用の創成

・全国レベルのコミュニティの土台の確立

・日本発の世界レベルの大会

そして、1つのキーワードとして『コミュニティのハブ』であるという事が掲げられている。


まず、今、国内のeスポーツにおける構造として、プロプレーヤーというのが話題の先端として存在しており、本来必要なその周囲の仕事にスポットが当たっていない現状、ビジネス構造として歪な状況であると指摘されている。

プロプレーヤーはまさしく一握りの人間しかなれないが、それによって一般プレーヤーとの乖離や目指したもののなれなかった人にゲームに携わってもらう手段として、雇用の創成の必要性が訴えられた。

プロの賞金、スポンサードだけでは食べて行くのは難しいというのも事実で、これまでにも様々な事務所や大会主催会社がプレーヤーの生活の担保の方法を考案してきたが、今回はさらに一歩踏み込んで、周囲のスタッフ、実況、解説なども含んだ業界全体に波及する話となる。

この視点も、ユーザーコミュニティはこれまでも善意のボランティアで、様々な大会運営を行ってきたという経緯がある。じゃぁ、これを善意ではなく、ビジネスとして底上げしていくというフェーズに入ったように見える。

 

さらに、コミュニティの土台、ということについても触れている。かつてはゲームセンターを中心としたコミュニティが存在していたが、その数は急減の一途である。しかし、eスポーツの盛り上がりを受けるなど、地方でのユーザーコミュニティ、ゲームイベントの発足はあるが、大会ノウハウや機材などの難しい面がある。

ここに彼等が持つ様々なルートや知識などを利用してもらうことで、全国レベルでユーザーコミュニティを活性化しようという狙いがあるのだ。

実際、大会をやりたいが使用許諾が必要なのかなどJeSUに問い合わせても、窓口がよく分からないという事案があり、ここが整備されるだけでも様々な状況が変化する可能性がある。

 

また、今開催されている大型のゲームイベントのほとんどが海外発祥のものであり、ハード、タイトル含め日本発祥でありながら、大会はその位置まで行けていない。闘劇もGODSGARDENも当時、全国一を決める大会といって過言ではない熱があっただけに、このメンバーが組んで、EVOにも負けないような大会をクリエイトしていくというのは、日本だけではなく、世界中のファンにとって刺激的な話になるだろう。

 

【eスポーツだけじゃない、ゲームのコミュニティである】

もう1つこだわっていたのは、これはeスポーツのためだけのものではない、ということだ。そもそも、国内のユーザーコミュニティにとってeスポーツという言葉も外からやってきたものであって、自分達がスポーツやってますと言った覚えも無いという声もある。

TOPANGAはまさしくこの乖離の狭間に存在し、プロプレーヤーの存在を支えてきた。プロとしての活動の方法、場を整備することを続けてきて、今度はもっと裾野の広いゲーム自体をどう盛り上げて行くかという段階なのだ。

ビデオゲームだけではなく、スマートフォンなどのゲームにもどうやって関われるかと試行錯誤しているようだ。

 

K-POPがこの数年、ビルボードチャートを揺るがすようになってきたのには、20年に及ぶ国策が影響している。そして、実はeスポーツにおいても、韓国は国家事業としてeスポーツビジネスのサポートを行っている。音楽ビジネスでは国内マーケットのパイが大きくないため、海外マーケットからお金をどう動かしてくるかという点が、国策として動き始めた要因と言われており、既に海外で大きなマーケットとなっていたeスポーツでも同じように外貨獲得の手段となっているのだ。

日本にいると、全てのビジネスが日本国内で完了しており、海外に頼る必要性がどれだけあるのかという声も聞かれるが、むしろeスポーツにおいては日本の利益になる可能性が非常に高い分野だということを念頭に置くべきだ。

その上で、プロプレーヤーの周囲だけが盛り上がるのではなく、一般プレーヤー、ユーザーコミュニティといったボトムが盛り上がり、それまでゲームに興味のなかった人に波及すれば、他のジャンルでも経済効果が考えられる。

だから、これはようやく始まった日本国内におけるeスポーツが広がるための重要な二歩目なのである。

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