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官と民で創る「新しい行政」 外部人材活用のポイントとは?

こんにちは。ヤフーのオープンコラボレーションハブ「LODGE」です。LODGEは地方自治体のDX支援の一環で、オンラインイベントの開催などを行っております。

「官民DXの現場から学ぶ手法と効果(全4回)」
このイベントシリーズでは、具体的な事例をテーマに、自治体DX、民間DXの事例共有と応用展開の手法をご紹介します。

シリーズは全4回。
豊富な先行事例をお持ちの神戸市様とともに各回多様なゲストとのクロストークをおこないます。
自治体DX推進の新しい気づきやエッセンスを、みなさまとともに学べる機会となることを目指しています。

シリーズ最終回は12月1日に【庁内DX推進にむけた人事戦略】を開催しました。

<登壇者>
ゲスト
紀尾井町戦略研究所株式会社 高田 正行 様
神戸市役所 企画調整局 デジタル戦略部長 森 浩三 様
神戸市役所 CDO補佐官 宮崎 光世 様

モデレーター
ヤフー株式会社 オープンコラボレーションハブLODGE 徳應 和典

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(1)自治体における外部人材ニーズ、傾向

高田さんはヤフーの編集責任者として東日本大震災の情報発信や、復興庁への出向のご経験から、外部人材の重要性をお話しいただきました。

東日本大震災対応時に直面した「行政機関、公的機関の アナログの壁」

東日本大震災の情報発信の際に、デジタル時代のインフラが官にないということを痛感したといいます。

■高田さんがヤフーで行った東日本大震災の情報発信対応
「誰がどこの避難所にいるか」
検索サービスを提供したくても名簿は紙のみ。自治体との連絡手段もFAXがメイン。全て手打ちでデータベース化

「いつ節電すればいいのか」
電力会社からはPDFで12時間後の情報しか得られない。自力でデータベース化し、電気予報エンジンを構築しAPIを公開

「放射線の正しい情報を知りたい」
省庁からの情報提供がなく、学術機関と民間で100カ所以上の定点観測体制を作り、リアルタイムで情報提供

官のデジタル化を一気に進めるためには、民間のノウハウを大胆に取り入れる必要があり、それこそが自治体における外部人材ニーズであるといいます。

官と民のハーモニーを最大化するには?

では、官と民のハーモニーを最大化するにはどのようにすればよいのでしょうか。
高田さんは、官と民のギャップをできるだけ早く乗り越え、フラットに同じ目標を持つことが重要だといいます。

・官と民のギャップを解消する

高田さんは、ヤフーから復興庁に3年間出向し、 復興事業にオープンイノベーションの手法を導入、顕彰制度の立ち上げ、 3年間で100回以上のアイデアソン、 ハッカソンを全国で開催されました。
ただ、最初の1年はスムーズではなかったそうです。

その理由として、共創、コクリエーション、オープンイノベーションという前に、組織文化、仕事への評価軸、社会との関わり方に大きな相克があり、乗り越えるべきステップがあるといいます。
そのギャップをどれくらい早くお互いに解消できるかということが大事であるとおっしゃいます。

・「官と民が出会って公になる」というマインドセットが重要

官が民を受け入れる際には、リソースとしてではなく、フラットに同じ目標を持つことが重要だといいます。

高田さんのお話をお伺いして、「官と民が出会って公になる」という言葉は大変印象的でした。

(2)神戸市での人材育成、人材採用

次に神戸市の人材育成、人材採用について神戸市役所の森さんと、外部人材として登用されておられます、CDO補佐官の宮崎さんにお話をお伺いしました。

神戸市では、職員が自ら、コロナ対策や業務改善でアプリ開発などができるよう推進されていらっしゃいます。
人事戦略としては、階層ごとのアプローチに取り組まれており、特に、庁内でのITCリテラシーの高い職員の確保、育成の層を厚くしていくためには、全体を引き上げるデジタル専門人材の確保が重要であるといいます。

神戸市では2013年より、デジタル分野のジョブ型雇用を積極的に推進しており、非常勤特別職、一般任期付職員、フェローなど多様な任用形態で登用されています。

実際に、神戸市にCDO補佐官として登用されておられます、宮崎さんは民間人材活用において、多様性、共創性、継続性が重要だとおっしゃいます。

宮崎さんは2015年にコーポレートフェローとして登用されましたが、シリコンバレーをモデルとしてスタートアップ育成に取り組むということを市長が指示をしたタイミングでした。
それが神戸市にとっては波紋やカンフル剤だったといいます。
施策の実現に向けて、職員の成長や文化の脱皮をするために、宮崎さんはネットワークや触媒、コーチといった役割としてサポートをされました。

その他にも、外部人材として、kintoneを導入した業務効率化や、スタートアップ育成、広報、webディレクションなど情報化専門官が、神戸市では活躍されています。
それぞれ企業で実績を積まれた方々が、ときには壁に打ち当たりながらも、よい摩擦を通じて、対等な関係で活発に進められているといいます。
受け入れ側の神戸市も変化を恐れず、要所要所に積極的採用されているそうです。

(3)パネルトーク

ここからはみなさまに3つの質問についてパネルトークをしていただきました。

■外部人材を登用する際の庁内調整で必要なことはなんですか?

森さん
3つあると思います。
・外部人材が孤立しないこと
・違う価値観で動くことの心理的な安全性の確保
・職員が外部人材に過度な期待を持たせないこと

宮崎さん
トップの決断と、共創という形で入るということ

外部人材、職員がともに取り組みを推進していくという共通認識を持ち、受け入れ側としてはその環境を整えることも重要なんですね。

■外部人材登用の評価はどのような視点が大事になりますか?

森さん
庁内の意識や風土を変えていくために、職員にどんな働きかけをしたのか、
それによって職員が今までとちがう視点で考えられるようになったのかということで評価をするべきと考えています。
評価の「ものさし」は、実は、外部人材をみて評価するのではなく、職員や庁内の雰囲気、風土、ものの考え方がどうかわったかという部分になります。

高田さん
森さんがおっしゃったように、民間人材の登用による効果と評価、また経験によるその方の次のステップが見える化されると、この自治体で働いてみたいというサイクルが生まれると思います。そういった情報のオープン化も人材のエコシステムにつながっていくとなっていくのではないかと思います。

■将来の外部人材の活用について

長期的な戦略として、今後の理想像などをお伺いしました。

森さん
変化に応じて自分たちも変化をしていけるように、受け身にならずに、さまざまなプレーヤーと共創しながら解決していく行政運営ができるようになれば、内部外部という垣根はなくなってくると考えています。

宮崎さん
デジタルがDIY化し、官も民も同じツールを使うようになってきたので、今後さらに、フラットに一緒になってすすめていくということが実現していくと考えています。

高田さん
官も民も出向し、それぞれの業務を逆の立場からみることがキャリアの中で当たり前になれば、さらにDXや効率化が進むのでないかと思っております。
私自身出向して、学びが多かったので実感しています。

まとめ

全4回のシリーズを通して、森さんに総括していただきました。

森さん
DXをテーマにしてきましたが、DXの本質はデジタルではなく、「X」にあると考えています。今までやっきたことを自ら変えることは不安や痛み、負荷もともないますが、DXというのはそれを乗り越えていくあゆみだと思います。民間の方、地域の方と一緒に、楽しみながら取り組み、快適な状況がその先にあると前のめりに向かっていける職員を増やしたいと考えています。
神戸市もまだまだ変わっていかないといけないと改めて感じました。

神戸市での取り組みを「官民DXの現場から学ぶ手法と効果」として4回にわたってお伺いしてきました。
行政DXの取り組みは、まず職員自ら課題意識を持ち、変えていくというマインドを持つことからはじまり、さらに外部人材の受け入れによって、多様性を認め合いながら官と民が共創することで、新しい行政が実現していくということを具体的な事例を通して学ぶことができました。

いかがでしたでしょうか。
過去のアーカイブもありますので、ぜひご視聴いただき、みなさまの参考になればと思います。
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▼過去のアーカイブ
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#1「神戸市のDX事例紹介」と次回以降のオーバービュー 9/1 
#2 「押印撤廃、ペーパーレスにおける行政手続きのスマート化」10/6
#3 「業務ツール「kintone」活用と効果」11/2
#4 「庁内DX推進にむけた人事戦略」12/1

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▼開催の背景
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ヤフー株式会社が運営するオープンコラボレーションハブ「LODGE」は、「情報技術で日本をもっと便利に」を共通テーマとし、
様々な仕掛けでオープンコラボレーションの創出を目指しています。
コロナ禍に事業内容を転換し、自治体DX支援事業を開始いたしました。
その一つとして、自治体職員や自治体DXに興味関心のある方を対象に、オンラインイベント配信をおこなっております。