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モンゴル食紀行/食思考 第8回  太田充胤

モンゴルにおける「美味しい」は、「美味しい」未満の絶妙な原初の形をとっているが、しかし、確実に存在する。

ムギさんは、モンゴルには「美味しい」の概念がないと言っていた。しかし、ムギさんの奥様が馬乳酒をぐいっと飲み干すあの表情を、「美味しい」以外の概念で解釈できるとは思えなかった。


さて、僕はこうして第8回まで書き進めてきて、今更ながらとても重大なことに気がついた。そもそも、モンゴル語に「美味しい」という単語はないのだろうか?

これまで外国を訪れるときには、必ず現地語の「こんにちは」「ありがとう」そして「美味しい」を覚えて使うようにしていた。しかし、今回は流暢な日本語を話すムギさんと一緒だという油断があったせいか、モンゴル語に関する事前のリサーチを一切怠っていたのだった。

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