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夜のシーツお化けの巨視的ルーティーン(河野咲子のマイクロダイアリー8月12日)

朝の時間が東から訪れるのと同様に夜の時間もまた東から訪れるのだというごく当然のことをわたしは大抵覚えていない。

確かめるためにはごく単純な手順をふめばよく、まずはスマートフォンを手に取って顔の前にしばらく掲げ、ロック解除されたらホーム画面を右にスワイプ。整然とならんでいる角丸の正方形のアプリアイコンのうえから4段目のいちばん右、思いのほか親指でタップしやすい箇所の、明るめの藍色に触れて画面をひらく。はじめに気づくのはそこに緑褐色のオーストラリア大陸が描かれていること、そうだとすればその周囲を取り巻いているのがきっとオセアニアの海であろうこと。その北方あたりにあるはずの日本列島の位置がわかりづらいのは、無数の飛行機のアイコンが羽虫のようにびっしりと群がりその島々を覆い隠しているから。

ほとんどの飛行機アイコンは黄色で描画され、画面のなかの海に薄い影を落としている。聞くところによればあらゆる航空機は位置情報や高度を含んだ信号を発信することにより空中衝突を回避している。きっと多くはアマチュアであろう世界中の観測家がアンテナをかまえてその信号を地上からとらえてサーバーに送るのだといい、斯くしてわたしの手のひらのスマートフォンにはうすっぺらい飛行機マークがぎっしりと現れる。青いアイコンは地上からの観測ではとらえきれない、おもには海上を飛んでいる飛行機の位置をあらわし、これは人工衛星のとらえたデータをもとにしているため反映が数分ほど遅延している。

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