見出し画像

ロカストリレー連載⑤太田充胤「始まりの終わり、終わりの始まり」

新年度を期にスタートした、ロカストプラスのリレー連載。編集部員が交代で、月に一度エッセイを執筆します。第5回の担当は太田充胤です。

前回の記事はこちら

1.

『LOCUST』と「LOCUST+」読者のみなさま、こんばんは。編集部の太田です。

早いもので、おかげさまで『LOCUST』も創刊から満4年が経とうとしています。この秋には福島を特集したVol.6が刊行予定となっています。またどうぞよろしくお願いいたします。


さて、4年のあいだに色々なことが変わりました。ライフステージの移行、転職・就職、各人の執筆活動…。ここで詳らかには書けませんが、実はこの半年間、編集部内ではとりわけ大きな変化が続きました。

前回は北出さんが、自身の執筆活動を展開するにつれて、LOCUSTの性質と自身の特性・キャラクターとの齟齬が目立つようになったという話をしていました。あえて端的に言えば「音楽性の違い」みたいな話で、今後はLOCUSTでの活動にこれまで通りのリソースを割くことができないだろうという趣旨の表明です。
しかしまあ、この手の話はべつに北出さんに限ったことでもなければ、そもそもLOCUSTの特性に由来する話でもないはずで、要するに我々はいま至って普通の、ごく定型的な組織が経年変化していくさまを目の当たりにしているのだと思われます。これは全然難しい話ではなく、「群れ」も「ざわめき」もおそらく関係がありません。

この話は公にしていたかどうか、もう忘れてしまいましたが、もともと『LOCUST』は「Vol.7までやろう、そのあとのことはその時考えよう」という話で始まりました。今では年1回の刊行となっていますが、当初は半年ごとに1号刊行するつもりだったので、Vol.7までというのはつまり3年間ということです。

「どんな企画でも最初と同じペースで走り続けられるのはせいぜい3年くらいのもので、3年も経つ頃には最初とはだいぶ状況が変わっているものだ」と、編集部会議でそんなことを言っていたのはたしか渋革まろんで、この「3年」を目安にロードマップを作ったのでしたが、実際、当の渋革自身は満3年を待つことなく『LOCUST』の原稿を書かない人になってしまいました。
気がつけばその3年を過ぎて4年目に入り、たしかに状況は渋革の予想通りになっていることを認めざるを得ません。編集部員も一人抜け、二人抜け、残った人の中でも温度差が出始め…と、こういう状況の中で、なんとか目先の目標(つまり次号)を追いかけて続けている、というのが現状だと思います。

このリレーエッセイにしても、どうしてこういう企画を始めてみたかといえば、みんな『LOCUST』がよくわからなくなってきたからではないでしょうか。

創刊当初はどういう雑誌にしようか、いま紙の雑誌をつくることの意義はなんなのか、どういう人に手に取ってもらい何を感じてもらうことを目指すのか、等々、ああでもないこうでもないと議論を重ね、それなりにちゃんとしたビジョンとコンセプトをもってはじめたはずなのですが、今となってはこのあたりがぼんやりと霞んでいます。別に初心を忘れてしまったのではなく(忘れてしまった編集部員もいると思いますが)、実際には号を重ねるごとに各人が得た手ごたえ、いただいた反応、やりたいことの変化、等々の新しい要素が積み重なり、当初のビジョンを全員が同じまま抱き続けることが難しくなっているということでしょう。

なんだか、そんな内輪の話は会議でやれよ、という感じの話が続いていますが、何を隠そうリレーエッセイ企画の目的の一つは「議論のプロセスをコンテンツ化しよう」という点にこそありました。仮にも物書きである我々には、会議の場でなんとなく思いついた意見を口にするよりも、思考を文章のかたちにして共有したほうが思考が深まる、意見も伝わるというところがあり、時間をかけてゆっくりと議論するにはこういう形式がよかろう、という話から始まった企画だと記憶しています。もっとも、その企画意図さえ全員で共有されているかどうか定かではないし、私の思い違いだったのかもしれないのですが。

ここから先は

2,619字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?