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1. 一夜にして島には港ができていた。待合室も船も、まるでずっと昔からあったよう。島には伊丹丹が一人で暮らしていた。潮の引き際を狙って釣りをしたり、森で果実を拾ったり。そうやって暮らしてきた。あるとき、彼は思い立って島内を探検したことがあった。だが、他の誰とも出会うことはできなかった。 しかし他人をみたことがない訳ではなかった。たった一人、彼の暮らす島には訪問者がいたからだ。その男は自らを〝マジシャン〟と名乗った。マジシャンはいつも唐突に島の洞窟から現れる。伊丹