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病気の意味

拙著「前世物語」から・・・

   病気の意味
 昔々、エジプトに、ベンという黒人の男がいました。
 ベンは脅迫されていました。グリーンの目をした王様の命令です。
「お前の美しい妻を差し出せ」
 ベンは自分を追い詰めていました。誰とも話をしなくなりました。娘を殴っては後悔する日々でした。
「かわいくない娘だ」 その娘は「今の子供」でした。
 ある日、ナイルの瞳をした妻と娘は宮殿にいました。娘はうれしそうです。
 ベンは窓もない牢獄に繋がれていました。左手、左肘、左足。冷たい石壁がのしかかります。とても静かです。彼は呟きます。
「早く死にたい・・・」
 やがてベンの魂は頭から抜けました。彼の魂はまだ憎しみを持っています。
「あいつがオレの幸せを奪ったんだ」
 ベンの魂はそれから三千年もの間、暗い牢獄の中にいました。壁を抜けられないのです。静寂が石壁を滴ります。憎しみが闇に溶け出します。
 先生は尋ねました。
「今のあなたはベンさんの魂に何と言ってあげますか?」
「良かったね・・・死ぬことが出来て・・・。ベンさんは頷いています。恨んじゃいけないよ。恨んだり、憎しみを持っては・・・憎んではいけない。すべてを許さなくてはいけないよ・・・。彼は頷いています。あっ・・・壁を抜けました・・・」
 先生はベンの魂共々、高みへと導きました。
「ベンさんと一緒に上にあがりますよ。高く高く、どんどんあがります。その高いところからベンさんの人生を見おろします。そして何か感じること、気がつくことはありますか?」
「憎しみを持ったまま人と接してはいけません。すべてを受け入れなさい」
 先生はさらに高みへと導きました。
「もっともっと高く高くあがります。下の方にベンさんの人生と、今のあなたの人生が平行に並んでいます。その高い高いところからふたつの人生を見おろします。そして何か感じること、気がつくことはありますか?」
「いつも怒っていて不本意なことが許せません。納得のいかないことは我慢ならないのです。今の人生の中での様々な問題は結局、ベンさんと一緒なのです」
 先生は遠い上へと導きます。
「その上はどうなっていますか?」
「宇宙です」
「その宇宙を突き抜けると何が見えますか?」
「明るいモヤ・・・誰か・・・」
「どんな人ですか?」
「仙人みたい・・・」
「その仙人に尋ねましょう。今の子供との関係から私は何を学ぶのですか?」
「すべてを許しなさい」
「今回の私の人生の目的は何ですか?」
「笑ってます。そのままでいいよ、って」
「今回の私の人生でのいろいろな病気の意味は何ですか?」
「憎しみを持ってはいけません。許しなさい」
「持ち越してきた憎しみを私はどうしたらいいのですか?」
「すべてを許しなさい」
「なぜ私は何度も生まれ変わっているのですか?」
「許すことを学ぶためです」
「私は今までに何回生まれ変わりましたか?」
「いっぱい・・・」
「それらの人生の中で、今の子供とは何回、人生を共にしましたか?」
「何回も・・・。憎たらしい・・・」
「私はいつもあの子を憎むような人生なのですか?」
「はい」
「あの子も私を憎んでいますか?」
「本当は愛してもらいたいのです。いつも私があの子を拒んできたのかもしれません」
「私があの子に愛された人生はありますか?」
「はい」
「私が一番あの子に愛された人生を見せてください」
「あの子が主人で、私は奴隷です。私は畑仕事をしています。あの子が私を見ています。私はあの子が嫌いで、いつも怒っています。私はどこかに閉じ込められました。出て来れません。また憎しみながら死んでいきました」
「あなたたちは、いつもそんなに憎しみを溜め込む人生ばかりなのですか?」
「そうです」
「では私はどうすればいいのですか?」
「愛してあげなさい」
「どうやったら愛せるのですか?」
「私も傷つけています。みんな傷つけています。でも、みんな愛を欲しがっています。理解してあげなさいねって言われました」
「私が一番あの子を傷つけた人生を見せてください」
「私は侍です。あの子は町娘です。障子の木戸の中に連れ込んで無理矢理抱いています。あの子は舌を噛んで死にました」
「死んだ町娘はどんな気持ちでしたか?」
「私を憎んでます。そんなに嫌いじゃなかったのに・・・」
「あの子も私に憎しみを溜め込む人生をたくさんしてきたのですか?」
「・・・・・・」
「人間は何のために生きてるのですか?」
「愛のためです」
「私はどうやって愛したらいいのでしょうか?」
「もっと自分を愛しなさい」
「ここまでの私の人生は順調ですか?」
「よく頑張っていますよ」
「私に愛する力がありますか?」
「あります。自分を信じなさい」


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