誰しも
2024/09/06
目が覚めて携帯を確認すると7:30だった。障子を開けて共有スペースに出て、宿主さんにおはようございますと言う。朝ごはんに炊き立てのご飯と、即席の味噌汁を食べた。猫が少し距離をとったところで寝ているのを眺めながら、朝だなと思った。
猫は寝ているようで起きていて、衣擦れの音にもピクっと反応するからすごい。なんとなく静かに動くように、足音も立てないようにしてしまう。
部屋に戻って二度寝へ導かれ、そのまま従ってうとうとした。晴れ晴れした天気でずっと部屋にいるのもなと思い、少し眠気が晴れたところで外に出る。自転車を借りて、翡翠がとれるという海に行ってみた。
稲の刈り込みをしている田んぼの横を通り、道に沿って続く水路の水音を聞きながら自転車を走らせた。人影はなく、自転車に乗っているのも自分だけ。ずっと進んだ先でパッと水平線が開けて、海だと思った。
消波ブロックの側まで降りて、なんとなく座って黄昏てみた。風が気持ちいい。波際にはフナムシが沢山いた。少し足を動かすと瞬間に岩陰に行ってしまう。猫然り、田畑に沢山いるカラスやスズメ然り、生き物って俊敏だなと思う。俺なんて後ろから近寄られても分からないことが多いから、人類が野生化したら真っ先に死ぬのかもしれない。
自転車をまた走らせて、和菓子屋さんに立ち寄った。翡翠を模した羊羹があるらしいと知り行くのを決めたところ。優しそうなおばあさんが会計を少しまけてくれた。
陽射しを浴び続けるのに疲れたので、そのまま宿に帰った。羊羹を食べようとしたら猫がこれまでで1番近い距離に寄ってきた。猫の気持ちを察する経験がないので、何をしたかったのかは分からない。食べたかったのかな。
1人には広すぎるがらんとした空間に猫と俺。宿主さんが牛肉麺を作っていて、すごくいい匂いが残っていた。
部屋で持ってきた本を読む。旅行中に読む本、と決めて小川洋子の『シュガータイム』を買ってあった。新幹線では目が滑ってあまり読めなかったけれど、ここまで静かだと読書も捗る。
一つの章にガラス美術館、と題が付いていてなんだかこの旅行と紐付いてるなと感じる。すごく好きな本だった。
この後町のお寿司屋さんに行ってくる。
明日には東京に戻るんだな。少し安心している自分もいる。結局はあのゴタゴタした街が好きかもしれない。
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