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残されたラスト・ソング

残されたLastSong

-出会い-

「残念ながら・・・」

その言葉の先は俺に取って重く圧し掛かった。10月初め、検査入院での結果の答えだ。自分を見失い荒れたが、残り時間が見えてくると人は前に進める。身の回りも片付けて行き11月末で仕事を辞めた。

そして12月の寂しさはイルミネーションと一緒にやって来た。

街中は人が溢れ、国道は渋滞の列を作る。渋滞の最後尾そんな中から逃げ出したい気持ちになった。

クリスマスとサンタが街中を飛び回り、仲間を集い酒場へと繰り出す。

手と手を握る幸せカップルは雪のように空から降り夜の街を覆いつくす。

12月の恋や愛は特別なんだろうと1人の男は考え、一瞬の寂しさを金で紛らわせた。

大型のショッピングモールの大きな駐車場の端が待ち合わせ場所と聞き、車を照らす虚しい街灯の下で男は待った。

車内はクリスマスソングが流れるカーFM。クリスマスソングには二通りあることに気づく。

ひとつは愛し合う者達へのラブミュージック。もうひとつは一人ぼっちのクリスマスソング。

一人ぼっちの男は自分の事を唄っている歌を耳にした時、ある女の姿を目にする。

駐車場を照らす眩しすぎるライトがハッキリと彼女を映し出していた。

紫のタイツをショートパンツのデニムから出し、紫のタイツの膝下はロングなエンジニアブーツで決めている。肩までかかる髪はフライトジャケットの襟に当たっているのも分かるほど眩しく見えた。

その眩しい存在は目的を果たすかの様にブレなくこちらに歩いてくる。

合図を送るのがいいのかどうか分からない男はFMのボリュームを小さくして窓を少し開けた。

そして今、フロントガラスの向こうには2本指を示す合図が見えた。

-源氏名ルミ-

男の前に現れた二本指の合図を出す女も12月と言う季節が大が付くほど嫌いだ。この時期の客はいつも以上に寂しがりやでしつこく、サンタなプレーも要求する煙草と酒の臭い匂いが漂う奴ばかりなのでウンザリするばかりでも笑顔を絶やさない。

二本の指を丸め、車のナンバーを確認して助手席の窓を叩く。

サンタクロースがいれば自分の誤った過去を消せる消しゴムがほしい・・・と祈っても、そんな物信じる事は出来ない。流行(クスリ)に手を出し、馬鹿な男に填められ、大きな重荷(借金)を背負う羽目になったのも全部自分自身でしたこと。

助手席の窓は開けられると嫌な過去を心にある透明な箱に入れる儀式をする為、客に満面な笑顔を魅せる。その笑顔で透明の箱の鍵を閉める。

開けられた窓の隙間から声をかける。

「ルミです。はじめまして・・・かなぁ?」

自分の想像以上に可愛い人が来たので、男は慌ててあいさつする。

「ど・・・どうも・・・です」

男は助手席のドアを開ける。ルミと名乗る女の香りは冷たい空気と一緒に飛び込んでくる。ルミは男に抱きつき運転席のシートを倒し、紫色のタイツとロングなエンジニアブーツを履く足を上げ男に絡みつくとキスをした。

心の箱を透明にしているのは情に流されずただ稼ぐ事を忘れない為。

キスした男の唇を優しく触れる。

「ここで直ぐに済ます?それとも一晩?」

男はキスされた瞬間、自分が始めてのキスした感触を思い出した。

「一晩で・・・」

「うれしい~」演技かかった嬉しさは儚い星空を見つめるような気持ち。

ルミはまた男を強く抱きしめ、先ほどと違う濃厚なキスをプレゼントする。

男はルミの示す指と同じ札を渡した。

12月の夜、ふたりを引き合わせたのは偶然か、それともただの欲望だけなのか、一足早いクリスマスプレゼントなのか・・・。

-海の風はふたりを冷たく包む-

ルミの言葉は優しく聞こえた。嘘臭いクリスマスソングより、ずっと心に響いた。

「私、クリスマスとか嫌いなの。お兄さんは?」

フライトジャケットを脱ぎ捨てると白黒したボーダーラインの横じまから大きな二つの膨らみを体に当て俺に尋ねてくる。

「俺もあんまり・・・好きじゃないよ」

俺の伸ばした前髪をかき上げるルミの手付きは慣れたものだった。

「じゃ、もう行く。そんでたくさんする」

多分、この娘じゃなかったらそうしたかもしれない。ただ、欲望を果たす位ならそれでいい。

でも何故か、この娘はどこか違う。それは何か今は分からないが・・・

俺はルミを抱き起こし、助手席に座らせた。

助手席のルミは不思議そうな顔でこちらを見ている。

「ちょっとドライブとかしてもいいのかなぁ?」

不思議そうな顔はちょっとの笑顔になのが分かった。

「今夜はあなたの物だから、どこでもいいわよ。でも・・・」

今度は俺が不思議な顔になった。

「でも・・・て?」

ルミの指はカーラジオのボリュームのスイッチを大きく上げてまた小さく下げ、飽きもこないクリスマスソングを聴こえないようにした。

「うんん(小さく首を振りながら)、あなたなら大丈夫。キスした時に何か感じたから」

ルミはそう言った瞬間、心にある透明な箱を見ようとしたけど自分でも分からない戸惑いの波を胸の奥で感じる。

その気持ちを押し殺す様に、またボリュームを上げ、大きな胸を男の左腕に絡ませた。

「最近毎晩、気に入った夜景を見ているんだけど、そこ行ってもいいかな?」

ルミは無言で頷くと、男の股を擦り始めた。

大型のショッピングモールの駐車場の出口は日曜日の夜だと言うのに混雑している。その列に並ぶ俺達ふたりを恨めしそうに買い物帰りの子連れの父親や、数人の若い男達が見ている。

「大きくなってきたよ。舐めてあげようか?」

俺は左手を股間にあてながら、

「いいよ、このままで・・・」ずっと横に居てくれたら。後の言葉は心で呟くようにした。

長い列を越えると、自由な道が何も邪魔せず走らせてくれる。本当はそうしたかった。停まる事無く進みたい。でも、自分ではどうも出来ず、命のブレーキがゆっくりとかかり全てを終わらせようとしている。

しばらく車は進むと、

「こんな綺麗な夜景あったの!」

ルミは窓を開け、叫んだ。向かう岸には工業地帯が広がり、たくさんの灯りが見える。

窓を開けた時、急に冷えた風が入ったので胸が苦しくなったが、大きく息をしたら楽になってほっとした。

「いいとこ、知ってるんだ」

運転の邪魔にならないようにまた、キスをしてくれる。

そこから少し走り、誰もいない俺だけの場所をルミに教えた。

車を停めると、俺はドアを開け、ゆっくりと外に出る。ルミはフライトジャケットも着ぬまま車から飛び出した。

「キレイ!ほんとキレイ!」

工場の灯りに子供の様に叫ぶルミは可愛く見えた。その後ろ姿を見ているだけで、気分が落ち着くのは何故なんだろう。そう考えていると、ルミは俺の方へ振り返り、

「でも、寒い!」

抱きついてくるルミの唇にキスをした時、12月の容赦ない冷たい風がふたりを包んだ。

-歌声は明日へと導く-

時間は壊れた古時計の様に止まった気がした。

「あなた見たいな、客は始めてよ・・・」

耳元で囁く、ルミの声は愛おしく思え、またその温もりも壊れた俺の体に浸みこんで行く。

抱きしめあった2人は腕を解き、手をつなぎ、工場地帯の灯りを眺めた。

「ありがとう・・・こんな綺麗な所に連れて来てくれて」

手を強く握り返しルミはその言葉を言った。

「じゃ、行こう。寒いから」

車に乗り込み、夜景にさよならしながら車を走らせる。

車のヒーターは全開で2人を温めようと頑張っていた。ガラスは曇り、カーFMからはまた懲りずにクリスマスソングが流れている。

助手席のルミは俺に寄りそう形で流れるリズムに合わせ唄を歌っている。

「あれ、歌・・・上手いんだね」

俺は素直な気持ちをルミに言った。

ルミは俺から離れ、恥ずかしい顔を分からぬ様にカーFMと二人三脚しながら歌う。

曇ったガラスも吹き飛ぶルミの歌声は騙し騙しのアイドルより素敵だった。

「これでも昔、のど自慢大会で優勝したことあるのよ」

エアーマイクなマイクを握る小指は立てられいた。俺はその小指を掴み、

「何処行けばいいのかな?」

月曜を迎える週末の夜は後、数時間で終わろうとする。俺は指定された場所を聞きながら運転した。その間もルミは唄い、俺の左手に絡みついてくれた。

2人、部屋に入ったのは午後11時前だった。その部屋はベッドと小さなラブソファ、白い冷蔵庫におつまみがある程度のシンプルな部屋だった。

ベッドに座ったルミはエンジニアブーツを脱ぎながら言った。

「楽しかった!いつからそんな思いしてなかったかなぁ・・・ほんと楽しかった!でも、本当のお愉しみはこれからよ・・・」

意味深な言葉は夜の女へと変化させる。

俺は服を脱がされ、体中にルミの唇を当てられる。そして、ルミも一枚一枚服を脱ぎだす。

「シャワー浴びようよ・・・」

俺の手を握り、風呂場へと導く。

「先、行っててくれるかな。ト・トイレ・・・。」

「熱いお湯、い・れ・と・く・ね・・・」

その後ろ姿を見た後、トイレが別の場所で安心した。そして俺は急いで駆け込んだ。

来た・・・

腹の底から大きな息が喉元まで来ると、便器にしがみ付き口の中に溜まる嫌な物を全て吐いた。白い便器は真っ赤に染まる。ボーっとした頭は気を失いかけようとしている。自分の頬を叩き意識を戻す。急いで水を流し、汚れをふき取ると、立ち上がりルミの待つ所へ向かう。

-怒りの矛先-

湯気も滲むルミの歌声はバスルームの外まで聞こえた。

「やっと来た・・・」

少し大きめの浴槽に浸かる湯船には大きな胸が飛び出している。

「早く来て」

両手を差し伸べ俺を迎えるルミの姿は少女の様に見える時もあれば、夜の女に見える時がある。少女と女が交差する瞬間が男を狂わすのか、それとも俺の時間が残り少なく、何か分からない未練が人を愛す事を忘れない様にしているのか・・・

ルミのいる浴槽にそっと入る。

「えぃ・・・」

無邪気な声と共に、ルミの両手は合わせられ俺の顔にお湯をぶつける。

「やったな!」

湯気がこもるバスルームは恋人達が愉しむ時間と空間になっている。でも俺とルミはそうではない気がした。そう考えると俺はルミを抱きしめた。

抱きしめられたルミは俺の耳元で囁く。

「あんまり食べてないんでしょう?」

痩せた体・・・嘘はつけないしそれが現実。

湯船で顔を見回すふたりはキスをしながら会話する。

「こんな事、客には聞かないんだけど、お仕事何しているの?」

「俺・・・先月で仕事辞めた」

「じゃ、明日は?」

「別に・・・」

「良かった!」

「どうして?」

ルミの顔は赤くなっている。それは温もり過ぎたのか、それとも・・・

「明日、うちに来ない?小さいアパートなんだけど」

「え・・・」

「あんなキレイな夜景プレゼントしてくれたから朝ごはん作ってあげる。こう見えても料理得意なんだよ」

泣きそうになった。そんな想いを感じる事が出来て。そして俺の時間が少しでも長く続く様に祈ってしまった。

小さな約束小指と小指を絡めさせ、朝ごはんの約束をした。

それから、ルミの魔法が俺の痛みを和らげた。ベッドの白いシーツは激しい波になり、また優しい波にもなる。ルミの白く膨らみある体には何ヵ所か傷があった。俺はその傷ひとつひとつに唇をあてる。

「こんな女、嫌でしょう・・・」

ルミの顔を見た。頬を伝う涙の線が下に落ちる。次の涙が零れぬようにルミの目元に優しく手を当て、俺は無言で首を振った。

ルミは痩せた俺の胸元に顔を押し当て、今まで我慢していた気持ちを涙と一緒に搾り出した。

ルミは過去を話してくれた。

胸の奥で火花が走り、怒りが込み上げてきた。俺の残された時間の使い道が今決まった。

「もう、いいよ。もういい、君はステキな人さ。今も前も俺には関係ないよ、これからだよ」

お互いがお互いの心の傷を癒し合う為に強く抱きしめ合う。この夜は少し早いがサンタのプレゼントだと二人は考えた。

-名前-

「ねぇ、起きて、ねぇ」

俺はルミに起された。日差しはまだ登らず12月の寒い朝がやって来ている。

起された俺の目に映るのは紫のタイツをショートパンツのデニムから出し、ボーダーのロングTシャツを着ている昨日のままのルミだ。

「うち来る約束でしょう。早くここから出よう」

久しぶりに女と朝を迎える。もう何年もそんなことしていない。ルミは昨夜の重みを感じさせる事無く鼻歌交じりで俺に訊く。

「何が食べたい?」

俺は白いTシャツを被り袖を通し、ジーンズのフロントホックを留めながら考えた。

「白いご飯と卵焼きかなぁ・・・でも甘い卵焼きは苦手なんだけど」

二人の出会いは金銭さえなければ、ごく自然な恋人同士の感じがした。

「わかった!任せてよ。大きな卵焼き焼いて食べさせてあげる」

ルミのフライトジャケットと俺のダウンジャンパーを手に取ると後腐れ無くその部屋を後にした。

俺はルミに泊まり代を払おうとしたが拒否された。受付の老婆とやり取りしているのを横目で見た。ルミは自分の取り分の一部で代金を払ってくれた。

「さぁ、行こう!」

弾んだ声は俺の腕を掴み慌てて車に二人飛び込んだ。

午前7時前の月曜朝の道は通勤の車で渋滞しそうになっている。

「大変だね。毎日毎日、こんな中でお仕事行くなんて」

ルミは呟く様に言い、俺も同じ事を考えるようにした。

街の流れはいつもそうだ。毎日同じ様に続き、また同じ様に休み、また同じ様に行列を作る。そんな単純な日々を暮らす方が一番の幸せなんだろう。今の俺にはそんな風に思えた。

助手席から俺の左腕に絡みつくルミのナビを聴きながら彼女のアパートまで車を走らせる。

東の空から眼を覚ました赤い太陽が眩しくフロントガラスを照らした時、ルミは大きな声をあげ、俺に尋ねた。

「そうだ!名前、名前聞いてなかった。迷惑かな?名前聴くなんて・・・」

彼女の体、彼女の過去を知っているのに俺の名前は知らないままだった。別に言う事も無いが、彼女には知って欲しかった。

「ユウイチ・・・」

ルミは恥ずかしそうな笑顔を見せ、

「じゃ、ユウさんだね」

ユウさん・・・ユウさんか。照れ臭いが彼女が言ってくれるんだったら悪い気はしない。

ルミの言われるまま細い路地に車を入れる。その路地を通る通行人は不思議そうな顔でこちらを見ている。

ルミは指差し、

「あそこ、あそこの工事現場、今工事中断しているから車停めていいみたい」

白い塀に囲まれた工事現場は古いアパートの解体途中だった。そこに車を停める。俺は冷えた空気に慣れようとゆっくり車から出るが、ルミは元気良く車を飛び出して運転席まで周り、

「ユウさん、こっちよ」

俺の手を引き、急がせる。ルミの温もりが手から俺の気持ちに伝うと元気が出てきた。

高く伸びた白い塀を駆け足で抜け、手を引かれ後を追うが路地を曲がった所で足が止まり、ルミは俺の手を急に離した。

二階建てのアパートにある鉄の階段の下で紺色の作業着を着た丸坊主頭の若い男がこちらを見て唾を吐いた。

「明美!金、金貸してくれよ」

ドスを効かした下品な声はルミを一瞬にして曇らせた。

-標的-

首を傾げ、丸坊主頭の若い男はこちらに向け歩いてくる。紺色の作業ズボンをずらし穿きしたポケットに手を突っ込み、そいつは言った。

「なぁ、明美よぉ、金、金貸してくれよ」

ルミの本当の名前は明美らしいが、俺にはルミだろうと明美だろうと関係ない。でもルミは俺の前に立ち、男に俺を見せぬようにしてくれていた。けど、俺はわざとルミの横に立つ。

男は自分の細い眉の様に目を鋭くして俺を睨んだ。

「なんだ、客連れて帰って来たのか!」

「あんたに関係ないでしょう!」

ルミはそう言うとまた、男から庇う様に俺の前に立つ。

鋭い睨む目は俺に近づき歳に似合わないヤニの臭いをさせ威嚇してきた。

「兄さん、こいつとやったの?そんな死人みたいな青白い顔で」

坊主頭は笑いながらしゃべり続けた。

「俺なんか、強引にやったけどな!」

ルミは悔しそうに地面を見ている。

怒りを抑え俺はポケットに入れてある1万円札を男の足元に投げた。

「失せろ・・・」

男は俺の胸元を掴み吠えた。

「なんだ、テメェ!」

ルミは男の足元に落ちる札を拾い上げると俺と男の間に入って二人を振りほどき、男に札を渡すと大声で言う。

「もういいでしょう!帰って!」

その声を聞き、アパートの住民がチラホラ出てきた。

男は急に笑い出し札をポケットに入れると、ご機嫌な声を出した。

「まぁ、今日はいいや。けど、今度会ったら殺すからな」

俺は何も言わずその言葉を飲み込み、標的の顔を脳裏に刻み込んだ。

ルミは俺達から坊主頭の姿が消えるまで後姿を見ていた。

「ごめん、ごめんねぇ。嫌な思いさせて。お金・・・返すから・・・」

俺は首を振り答えた。

「いいよ。そんな事いいよ。お腹減ったよ、俺!」

明るく振舞うのが一番だと考え笑顔を嘘無くルミに見せた。

ルミは俺の肩におでこを付けて言った。

「ありがとう・・・」

ルミが俺の手を取り部屋に導いてくれようとしている。

「怖くなかった?」

鉄の階段を昇る途中、気分が悪くなった。

来た・・・

昨夜と同じ、腹の底から大きな息が喉元まで来る。

『ヤバイ・・・ルミに見せられぬ姿・・・』

心でそう思うとルミの手を離し階段の途中でしゃがみ込み離した手で口を押さえた。

「どうしたの?大丈夫、ねぇ、大丈夫!」

ルミはしゃがみ込んだ俺を抱きしめてくれている。

口に溜まる物を一気に飲み込み手に付いた血をルミに分からぬ様にジーンズに擦り付けた。

「今頃になって怖くなったよ。ハァハァハァ!!!ほら、足までこんなに」

両足をガタガタ震わせる演技をすると、錆びついた鉄の階段は揺れに揺れた。

「バカ!さぁ、行こう」

開かれた扉の玄関にはルミが脱いだエンジニアブーツと俺の赤いスニーカーが並ぶ。

ルミの部屋は綺麗に片付けられ必要な物意外は無かった。

「座って」

小さなテーブルに二つの椅子。赤い椅子に黒い椅子。俺は黒い椅子に座った。

「じゃ、作るねぇ」

テーブルを挟んだ向こう側にキッチンとは決して言えない流し台がルミの料理場。その後ろ姿が愛おしくて仕方が無い。

俺は立ち上がりその後姿を抱きしめた。

「ごめん、つい・・・」

蛇口から水は流れ、濡れた手は止まった。

「あいつは?」

ルミは振り返り、キスをしてくれた。

「私を填めた男の若いチンピラ社員・・・」

『やっぱり・・・』俺の勘が当たった。

ルミの目に涙が浮かぶ。これ以上聞くと悲しい想いをさせそうなので、ルミの胸に両手をあて、

「朝ご飯の後に、こっちの卵焼きもお願いします!」

「バカ!」

旨い飯は嫌な気分を吹き飛ばし、そして正真正銘の愛をふたりで掴み取った気がした。

-準備-

指を噛む姿が一層俺を激しくさせた。声を出すのを我慢している。

「もっと、もっとお願い・・・」

小声で言うルミの唇に唇をずっとあてる。

俺はルミを求め続けた。

人には分からない傷を抱えた彼女にはまだ優しさが湧き出ようとしている。その優しさが唯一の救いで、どんな治療、どんな薬にも効かない俺の体にはルミの優しさだけが沁みこんでくる。

「次の日曜日、また会ってくれるかな?客として」

戸惑いの顔を見せるルミ。

「え・・・やっぱり、こんな私じゃ、あなたの彼女なんて無理よね」

ルミは心にある透明の箱の扉を開けたのを後悔しようとしている。

俺は背を向けようとするルミをこちらに抱き寄せた。

「そうじゃない。はっきり言っていいかな?」

「何・・・」

俺の言葉に期待するルミの目は輝いていた。

「ごめん・・・俺、ルミちゃんの事好きになった・・・ごめん」

下唇を優しく舐められルミは言った。

「知ってた・・・私も・・・ごめん、好きになっちゃったよぉ・・・」

このままこのままの時間がリプレイしてほしいと俺は神に願った。

「でも、いつでも会えるじゃん。ふたりの時間が合えば」

ルミの髪の香りはいい匂いだ。

「日曜日までにやらないと行けない事があってね。だから日曜日の夜またあの駐車場で待っているから」

やらないと行けない事、俺にはひとつだけある。

「きっと、きっとよ。指切り・・・」

ルミをベッドに残し、俺は着替えた。

「これ、次の夜の前金」

食事をした小さなテーブルに数枚の札を置く。

素っ裸のルミはベッドから立ち上がり、

「そんなの要らないよ」

「いや、お願い取ってて欲しい。ダメかな?」

思い切りのキスが効果あったのか素直な返事が返ってきた。

「うん、わかった・・・」

ルミは俺を抱きしめ甘い声を出す。

「ちゃんと来てよ。絶対に来てよ、嘘はもう嫌だから」

「うん」

見上げるルミは俺に訊く。

「連絡先教えて?」

身の回りを処分した俺には携帯など必要なかった。

ルミの電話番号を受け取るとルミは急いで着替え、アパートの下まで見送ってくれた。

「じゃ、また日曜日の夜ねぇ」

手を振るルミに俺は小さく手を振り、

「朝ご飯ありがとう!」と、口で言い、心の中では大きな声でありがとう!を10回叫んだ。

視線を感じるが振り向く事無く白い塀の中に停めてある車まで歩く。その帰り、作業着を売ってそうなワークショップに立ち寄り、あの坊主頭と同じ様な紺色の作業ズボンとフードが付いた安物のヤッケジャンパーと爪先に鉄が入った編み上げの安全靴を買った。それを抱え、何も無い部屋に戻る。この部屋も今週末で引き払う事になっている。たった一枚ある布団に横になって夕暮れを待った。

12月の夕暮れはあっと言う間に過ぎ、冷たい北風と一緒に辺りは暗くなる。繁華街の北にある雑居ビルが立ち並ぶ通りに足を運び、よく仕事仲間と出入りしたワンショットバーのドアを開けた。そこで常連の外国人達が銃の話をしているのを思いだしたからだ。

-拳銃-

タバコの煙と数人の話す雑音が懐かしく思えた。ドアを開けると丸いテーブルの席が数台あり、そこにはもう客がグラスを持ち楽しげにしている。丸いテーブルを抜けると左手側に丸くなったカウンターがありその中にバーテンが酒瓶と共にいる。バーテンダーは俺の顔を覚えてくれていた。

「あぁ、いらっしゃいませ。久しぶりじゃないですか。お仕事辞めたんですね、聞きましたよ。」

俺は愛想良く答えた。

「うん、そうなんだ。彼、日本語話せるのかな?」

店の奥、壁際の席に座る外国人を指差す。

「スコットですか?日本語話せますよ」

俺は指を2本立て、

「彼と同じ物ふたつ。それとさ、俺がここに来た事内緒にしてくれるかな」

バーテンダーは頷き、グラスをふたつ用意した。俺は千円二枚と引き換えにグラスを受け取る。

俺はスコットの右横に立ち、

「隣いいですか?」

金髪の髪の毛をセンターで分け両サイドは刈上げ、高い鼻に青い目。かなり男前のスコットは驚いた感じだった。

「OK!」

スコットの前に琥珀色のショットグラスを置くと俺は戸惑い無く言た。

「銃、欲しいんだけど?」

「Why!!!」

今度は大きな声で驚き、小さな声で尋ねてきた。スコットは右手で持っていた端末機を置き、その手で鉄砲の形にする。

「何に使いますか?その・・・GUNを?」

俺は少し考え、笑顔で答えた。

「革命・・・なんちゃって・・・」

「Revolution?・・・OH!ナイスジョーク!!!」

スコットは俺の背中を叩き喜んだ。

「少し遠いですが、海兵隊の基地知ってますか?」

スコットの表情が変わった。

俺は青い目を真剣で見つめる。

「基地の近くにフリーダムと言う、UsedShopがあります。そこにジミーがいますので後は彼に聞いて下さい」

俺はショットグラスを口まで持ち上げ、スコットに礼を言った。

「ありがとう」

一気に呑むとスコットに1万円札を渡しその場を離れた。バーテンダーにあいさつして店を出る際、スコットから声がかかる。

「Hey!Goodluck!」

店の奥に手を振る俺を丸いテーブルの客達は不思議そうに見ていた。

次の日、早く目を覚ましスコットが教えてくれたフリーダムと言う店に向かった。カーFMからは容赦なくクリスマスソングが流れる。その唄ひとつひとつ口笛で答えた。4時間走らせると海が見え大きな空母の姿も見えてきた。休憩をしようとフェンスが続く道路に車を停めた。フェンスを握りその先を見ていた。陸があり、海がキラキラと光っている。ジープや装甲車が格好良く走っているのが見えた。通りすがりのトラックに道を尋ね俺はまた車を走らせる。外国の様な街並みには体格のいい奴が一杯いた。青色のテント地に白い文字を見つけ、その近くに車を停める。

その店のシャッターを開けようとする男がいたので声をかけた。

「ジミーさんですか?」

その男はこちらを振り返る。肌は浅黒く長い髪をひとつに束ねている瞳は茶色い。その瞳で俺を見つめると、

「レボリューションボーイ?スコットから電話貰いましたよ」

ComeOn!の呼び声でシャッターの半開きに招かれ、店に入るとジミーは半開きのシャッターをまた閉めて鍵をした。

真っ暗な店内はしばらくすると白い蛍光灯が点く。軍服やジーンズや色んな服がぶら下がり、その中でルミに似合いそうなカーキ色が輝くロングTシャツを見つけた。

「銃は撃った事ありますか?」

かなり上手い日本語でジミーは尋ねてきた。

「撃った事ありません」

「そうですか。OK!」

服を掻き分け、ジミーの後を付いて行くと階段が上下にあり、下の方に降りて行く。地下室の鉄の扉を開けると火薬と鉄の臭いが充満している。ジミーは一丁の銃を手に取る。

「これで充分です。11発撃てますよ」

その銃を渡されると‘COLT・・・‘何とか書かれているが、刻印を削った後がある。

「今からレッスンします。OKですか?」

俺は笑いながら返事をした。

1時間ほどのレッスンで俺とジミーは打ち解けた。

「これ、撃つ時使う。ブレなく撃てますよ、必ず・・・」

俺の手にピッタリあった黒皮の薄手袋。ジミーは銃を分解して磨きふたりの指紋を消した。また銃を組み立て英語の新聞紙に包むと1階の店に呼ばれる。冷えたコーラ瓶を受け取る。

「ジミーさん、この銃とあの服で幾らかな?」

ジミーは5本指を出した。

「50万ですか?」

両手を大きく振り、

「NO!NO!5万でいいです。あなた気に入りました。あの服はサービスしますよぉ」

コーラ瓶の先を鳴らすのは取引終了の合図のようだった。

俺はジミーのコーラ瓶に自分の瓶をあて深く頭を下げた。

「Takecare!・・・気をつけろ!」

ジミーは俺の肩を軽く2度叩いてくれた。

-演技、そして逆転-

殺意の勘に頼る事無く木曜日の朝、ルミに付き纏う坊主頭を見つけた。

その朝、ルミに教えてもらった工事を中断している工事現場に車を停め、ジミーさんにサービスしてもらった服をルミのアパートの扉前まで届けた。

ドイツ軍の古い軍服とジミーさんに教えてもらったその服を届けた俺はルミの部屋のチャイムを押しそうになったが今はやることがあり手を止めた。

紺色の作業ズボンをずらし穿きしてポケットに手を突っ込み咥えタバコの坊主頭が路地の角にいた。俺も同じ様に紺色の作業ズボンに黒色に近い紺色の安物のヤッケジャンパーを羽織っている。そして手にはフィットした黒い革手袋をしている。

坊主頭は俺に気づくとタバコを地面に叩きつけ俺の方向に歩いてくる。

「おはようございます」

拍子抜けのあいさつは坊主頭の気を悪くさせたみたいだ。

「テメェ、この間の奴じゃねぇか。また、明美の所から朝帰りか?それと、なんだ!その格好!俺と同じような服着やがって!」

お前が言うように俺はお前と同じ格好している。でもひとつお前と違うのは腹のベルト部分に銃を納めている事だ。

「彼女に付き纏うのは止めてもらいませんか」

弱弱しい声を演じる。

上下と視線を巧みに動かす坊主頭は笑いながら言った。

「お前、あんな女に惚れたのか。金の為なら誰ともやる女に」

「はい・・・好きになりました」

下を向き坊主頭の顔を見ない振りをして言う。

小さくなった俺の肩を抱き、坊主頭は大笑いで、

「ハァハァハァ。兄さんも好きもんだな。金!金、くれたら止めてやるよ」

坊主頭の左手の指は金を意味する輪を作っている。

「分かりました。車に幾らか置いていますので今から取りに行きましょう」

「話が分かる兄さんには助かるよ。この間もポンと1万円出したしな。さぁ、行こう行こう」

臨時収入を貰える喜びは糠喜びになるであろうと考えると俺は腹で笑った。

路地を数回曲がり、白い塀の工事現場まで案内する。

紺色の作業服を着たふたりの男は周りから見ても工事関係の人間に見えた。

俺は車の後部座席にある小さめのボストンバックを指差し、

「二百万でいいですか?」

坊主頭は俺の背中をバンバン叩き大喜びする。

「いま、鍵あけます。」

俺の後ろに立つ坊主頭。12月の寒さと言うのに俺の体には嫌な汗が流れ、喉が渇いた。革の手袋を付けた右手は腹に差した銃を握ると後ろを振り向き、坊主頭の喉仏に銃口を押し付けた。

顔色が変わるのが目に見える様に分かった。青い顔は俺の顔色より悪く見える。

「偽もんだろう?」

「かもな・・・」

俺は右肘に渾身の力を入れ、坊主頭の顎に叩きつける。倒れこむ坊主頭の体を容赦なく先端に金具が入った編み上げの安全靴で蹴り込んだ。

坊主の頭を抱え込む坊主の腕を振り払い、セフティレバーをセットしたままの銃口を坊主の顔に狙い付ける。

「どうして、彼女に付き纏う」

先ほどとは違う低い声がより一層不気味に感じたのか坊主は両手を握り締め震えだす。

「俺は、俺は・・・」

ガタガタ震える口は上手く言葉を出せないようだ。

「落ち着け、弾勿体ないから撃ちはしないから。俺は・・・なんだ?」

「俺は、俺は、ただ社長に言われただけなんだよ!!!」

ゴールを狙うサッカー選手の様に坊主の腹に右足をシュート食らわせた。

「・・・なんだよ、じゃ、ないだろう。なんです・・・だろうが!」

くの字に蹲る体からは呻き声が流れる。

「その社長は何処にいる?」

腹を抱え込む坊主の顔は俺を見上げて、

「事務所です」

学習能力はあったみたいだ。

「案内してくれるかな?」

銃口を向けたまま、坊主を立たせ体に着いた汚れを叩いてやった。

「運転できるな?」

助手席のドアを開け、坊主頭を運転席に突っ込んで俺は助手席に座った。

「変なマネしたら、ズドンでっせぇ・・・」

任侠映画の一場面を想い出す位まだ余裕がある俺の炎は今一番燃えている。

-削除-

脇腹に突き刺さる銃の効果なのか、たった一つの質問をしたのに坊主頭からは無数の言葉が返ってきた。

「わかった・・・黙って運転しろ」

道は混んでいた。その事務所は南北大通りの東に入った3階建てテナントビルの2階。都合よく1階と3階は空きテナントになっているらしい。厄介な連中が2階にいるので借り手が付かないのだろう。表向きは建設現場に重機や作業員を手配する仕事。その一方裏ではドラックマネーで稼ぎ、怖い組織などとの付き合いがあるようだが俺には知ったこっちゃ無い。ただ、顎の下に傷がある男がそこの社長らしい。

沈黙の車内に飽きたのか、坊主頭は口を開く。

「見逃してくれるんでしょう?」

右手に持つ銃を更に脇腹へと押し付ける。

「あぁ、その代わり最後まで見届けてくれるかな?」

「はい・・・」

俺は前を見つめ、ジミーさんに習った事を頭の中で繰り返し繰り返し練習をする。

『躊躇い無く・・・撃って!』ジミーが言った言葉が俺を勇気づけ恐怖も無くす。

戦場を潜り抜けた男の言葉は重く自分を守るには自分を信じ躊躇いを無くす事で救われる時があるが、その代償に散って行く命もある。しかし俺は自然と散って行く運命。その前にルミを悲しませた奴等だけは削除してやる。

午前9時35分、車内のデジタルが時を刻んだ。南北大通りに差し掛かると車を路肩に停めさせた。ハザードランプの音が鼓動の音のように聞こえてくるのは緊張の表しか、それとも怖気付いたのか。

「後、どれくらいで着く?」

坊主頭は唾を飲み込みハンドル持つ手が震えだした。

「10分くらいで着きます」

俺は車をスタートさせるように言った。

12月の平日にも関わらず南北大通りの3車線は混雑気味だ。銀杏並木の葉が路肩や歩道を埋め尽くし、それを片付ける為に左車線を通行止めにしている為、渋滞し車の列が北側に伸びている。

「あの角、左側に曲がって3本目の道をまた北に上がり右手に鼠色のビルが見えたらそれです」

坊主頭はいいナビシステムだが、俺にはさっぱり道の事はわらない。

ナビの言葉通り角を曲がり3本目の道手前でまた、車を停めさせる。

「あの外車が停まっている所の2階がお前らの事務所なのか?」

鼠色の雑居ビル。1階はウインドが微かに見えた。その前に2台の高級外車が停めてある。

俺は念を押しもう1度訊く。

「4人いるんだな?中に」

坊主頭の頭の中の不安な地図はこれから始まる出来事もお得意のナビシステムでもキャッチ出来ぬようだ。

「案内したら、見逃してくれるんでしょう?」

安物のヤッケジャンパーの胸ポケットから白いマスクを取り出し、ニッコリ笑った顔に付けると俺は革手袋を付けた左手の小指を差し出し坊主頭に言ってやった。

「指切りするか?」

-発射-

車を北側一方通行に入れ2台並ぶ高級外車の前側に車を停めさせた。

「エンジン止めてゆっくり鍵を渡せ」

言われた通りゆっくり差し出すカギを左手で受け取ると作業ズボンのポケットに突っ込む。

俺は助手席のドアを開け後方から車を来ない事を確認すると、車から降り坊主頭も助手席から引きずり出した。

数台運送会社のトラックが走って行くが、こちらを見向きもしてなかったのはラッキーだった。

ヤッケジャンパーの腹元で隠す銃が坊主頭の背に当てられ2台の高級外車を通り抜けると階上に上がる階段が見えた。両サイド壁に囲まれタバコの吸いガラやガムの後などが残る狭い階段を上がっていく。

「言われた、通りにしないとズドンでっせぇ・・・」

‘ズドン‘と言った時に強く銃口を押し当てると俺はヤッケジャンパーのフード帽を被り、腹に隠したコルト銃のセフティレバーを解除した。

2階に待つのは黒いドアに金色に書かれたこの事務所の屋号。

俺は合図を送りルミとジミーさんの顔を思い出した。

「俺です!荷物持っているのでドア!ドア開けてくれませんか?」

その声の主が誰だか分かり、事務所にいる連中から黒いドアを通し籠った罵声が聞こえてきた。

黒いドアの向こう側は北に細長く広がり、ドアを開けると真っ直ぐに通路があって両サイドにはスチール机が並べてある。1番奥に座る顎に傷がある男がドア近くの男に命令し声を上げる。

「開けてやれ!」

耳を澄まして足音を聴こうとしたが坊主頭の荒い息遣いや、通りを走る車やトラックの排気音で聞く事が出来なったのでステンレスのドアノブに目をやる。一瞬の出来事なのにスローモーションの様にドアノブがゆっくり回転し、ドアがこちら側に開く。

「忙しいのに!ドアくらい自分で開けろや!」

俺は坊主頭の襟元掴み左側に押しやった。男と目が合う。真面目そうにスーツを着こなしているが髪型と眼つきはその逆だった。

パーン・・・

乾いた鉄の音が雑居ビルに響くと火薬の匂いが鼻に飛び込む。

喉を撃たれた男は後ろに吹っ飛ぶと坊主頭を盾にして事務所に入る。左側に人影が見えた。盾にしていた坊主頭の背中を蹴り上げると、喉を撃たれ床に倒れこむ男に躓きそのまま坊主頭は倒れこんだ。

パーン・・・

左側に見えた男の胸に命中させると男は回転しながら倒れる。

その時、右側からガラスの灰皿が飛んでくると俺の右目下に当たった。銃を男に向け二度引金を引く。

パーン・・・パーン・・・

腹に2発入ると体を反らせスチール机の上に倒れこんだ。左手で右目下を押さえながら残る顎に傷のある男を探した。その男は怒鳴り声や椅子やその周りの物を俺に投げつけている。その動きを止めさせる為に銃を構え腹に一発引金を絞る。

パーン・・・

銃声の音と共にその場に倒れこむと机の影に隠れ男の姿が見えなくなった。坊主頭は頭を抱え床に倒れこんだまま泣きじゃくる。

俺は銃を構え、顎に傷がある男に近づく。ハァ、ハァ・・・と大きく息をしている顔は撃たれた腹を見て両手で押さえ込んでいる。その押さえてる右手には金の時計と同じ色のブレスが光っていたが血でドンドン霞んでいく。オールバックに口ひげを生やし顎の傷を隠そうとしているのかどうか分からないが今、はっきりと傷が見えた。

「金か!金なら、机の引き出しに入っているから命だけは助けてくれやぁ!」

血に染まった手で机を指差す。俺は痛みある顔を押さえ男の目を睨んだ。冷たく細い目には感情すら感じなかった。初めてルミと会った夜、彼女の憎しみを金で買った。こんな死に逝く男に全てを打ち明け、ほんの僅かだがふたりは愛し合った。そんな事を考えると俺は男の頭に狙いを定め躊躇う事無く引金を引く。

終わった・・・静かな時間が欲しい。しかし坊主頭の泣きじゃくる声が邪魔になった。俺は振り返り言う。

「立て!」

喉を撃たれた男の返り血を浴びたのか坊主頭は真っ赤な頭になっていた。

恐る恐る立ち上がる姿を眺め次の狙いを定めた。

「明美と無理やりやったんだろう?」

パーン・・・

股間を撃ちぬかれ両足から砕ける様に奴は倒れこんだ。

「見逃してくれると言っただろう!」

歯を噛みながらの怒りの声は耳に残りそうだった。

「指切り?指切りしてなかったよなぁ?」

パーン・・・

先も言ったように静かな時間が欲しいんだよ・・・俺は。

ビジネスバック風な鞄の中身をぶちまけて指差した机の引き出しから四つの札束を取り出しその鞄に掘り込むと鞄の中にあるポケットに銃を仕舞い込んだ。自分の体に嫌な物が付いてないかと調べ、床に流れ込む血を器用に飛び越え破裂した坊主頭の頭を軽くまた飛び越え黒いドアを押し開けた。

何事も無いようにヤッケジャンパーのフード帽を取りマスクした顔の右目下は革手袋した左手で隠し右手には鞄を抱え、足早に階段を下り車に乗り込むとまず鞄をシートしたに隠した。革手袋をダッシュボードに要れ、顔をルームミラーで見る。青白い顔に赤く腫れた膨らみが映る。ズボンのポケットからキーを取り出すとエンジンをスタートさせ安全に車を発射させた。

窓を開け、寒い風を感じ独り言を呟く。

「海、海行こう・・・」

雲ひとつ無い寒い青空は成功したのかを安心したかのように更に更に青く輝く。北側の一歩通行を抜けると俺はまた南北大通りに車を走らせ南を目指した。

しばらくすると、俺の顔の腫れの様な赤いサイレンが猛スピードで走り去って行くのが見えた。

-ラブソングはラストナイトを迎える-

カーFMを付けようと思ったが、クリスマスソングや事件や事故のニュースなど聞きたくなかったので運転を楽しんだ。

右目下の痛みは窓から入る冷たい風が当たりましになったが、時間が経つにつれて腫れてきた。南を抜けると俺はハンドルを西に切りルミに見せた夜景の綺麗な海岸を目指し車を走らせる。こんな明るい時間には行った事が無いので余計に見に行きたくなった。

大型トラックが増えると知らぬ間に国道を走行するようになった。運転に集中しているはずなのに別の何かを考える自分がいた。消える命の炎。自分が犯した罪。奴等への罪悪感。弾いた時の感触。苦しむ声。血で染まる床。そんな思いは簡単に消せる。でもルミへの想いは消すことは出来ない。そして俺は彼女の安心を考え出した。ルミが所属するデートクラブと奴等とは全く関係無いと聞かされていた。俺は運転席側の窓を全開にしてスピードを上げる。一番怖いのは俺の体が日曜日の夜まで持つのかどうか。ロウソクの炎が最後に来た時、一層激しく燃える・・・と聞いた事がある。国道を外れ大型トラックを追い抜くと大きな橋を渡る向こう側は工場地帯が広がり、色んな煙突からはモクモクと煙が西から東の空へと流れ飛んで行く。

橋を渡りきると俺は車を路肩に停め急いで飛び出し植え込みの一部に顔を突っ込んだ。地面の土は吐く血が混じりドス黒くなって行く。腹の底から胸まで上がると波を打つ様に口の中に広がり、それを吐く。ヤッケジャンパーの袖や紺色の作業ズボンの太腿あたりで口の辺りを拭う。吐くのが落ち着くと体が震えだした。震える中、植え込みにある重みがありそうな石を数個拾った。助手席の足元に石を置くと石と交換に赤いスニーカーを取る。植え込みに履いていた編上げの安全靴を捨てるとスニーカーを履き車に乗り込んだ。車を走らせると自販機が見えたので車を停め、小銭を入れペットボトルの水を買うと口の中を洗う。血の粘り気が無くなると爽快な気分になったので爽やかな炭酸水を買う為にまた小銭を入れた。冷えた缶を取り出すと右目下に当てる。その恰好で車に乗り込むと放置されている車の列が見えた。ゆっくり走って行くと1台駐車出来そうなスペースを見つけ車をそこに停める。炭酸水を置き、ダッシュボードを開けると革手袋を付け助手席のシート下に隠した鞄を取り出し中身を出す。四つの札束を後部座席にあるボストンバックに入れる。そのボストンバックの中には俺の着替えを入れて置いた。まず、ヤッケジャンパーを脱ぎ丸めて鞄に入れると作業ズボンを狭い車内で脱ぐ。踵がハンドルに当たり一発クラクションが響く。俺は笑いながら急いでジーンズのホックボタンを閉めた。そのジーンズと同じ色したシャツを脱ぐと作業ズボンと一緒に鞄に押し込んだ。白いTシャツの上にダウンジャンパーを羽織ると元の自分に戻る気がする。助手席の足元に転がる石を鞄に入れる時、このまま銃も海に捨てるかどうか迷ったが、ボストンバックの一番奥に隠す。要らぬ鞄を助手席に置くと求める場所へと車を走らせた。

フェンスが切れた隙間を通り岸壁があるそこからは夜になると綺麗な工場地帯が見えた場所。南側に広がる海には貨物船が遥か向こうに見えた。その貨物船はこちらに船頭を向けているのも確認出来るほど視界良好。俺は岸壁の端に立ち海を見下ろした。青い海では無く、黒く透明な海。左手に持った鞄をそこに投げ込んだ。小さく小さくなって海の底に沈んで行く。遠くの景色を見て背伸びすると罪悪感から解放され自分に誓った。日曜夜ルミと逢い、彼女を抱きしめて朝焼けに包まれこの景色を見よう・・・。そう誓うと俺は車に乗り込み家路へとエンジンをスタートさせた。

銃撃事件は大きく報道されていた。その事件を知ったジミーはTV画面に口笛を吹き、ルミは玄関先に置かれていた紙袋を抱きしめていた。

何も無い部屋に着いたのは夕暮れ前だった。部屋の近くにある一度も行った事がないコンビニで氷と簡単な食事を買った。袋に入った氷を右目下の腫れに当てる。テレビも無ければステレオも無い。あるのは布団と数枚の服とダウンジャンパーのポケットにある四角い形の腕時計とボストンバック二つ。一つは今、持ち帰ったバッグ。もうひとつのバッグの中には二百万入っている。持ち帰ったボストンバックの中身を留守番してくれたバックに入れ替える。顎に傷ある男から頂いた四百万と二百万でルミの借金の足しになれば・・・そう考えていると、布団に蹲り眠りがやって来る。

トントン、トントン・・・咄嗟に飛び置き、銃を握り締め玄関まで行く。

「はい・・・」扉を開けず返事をすると、唾を飲み込み大きく息を吐いた。

扉の向こうから声が聞こえた。

「大家だけど、ドア開けなくてもいいから。要らない物があったら部屋に残しておいて。出て行くときは郵便受けに鍵入れといて下さい。では・・・」

その言葉を聴き安心するとその場に座りこんだ。銃を札束の下に隠し札束の上にはお気に入りのトレーナーを置いてボストンバックのジッパーを閉めた。布団の上に残る氷袋を握り、小さな浴槽に入れ熱い風呂を沸かした。この部屋はこの日曜日で出て行く契約にしてもらっていた。この部屋は俺の死に場所ではない。望みがあるのなら入院してもいいと思い、この部屋を去って病院に直行するつもりだった。でも、ルミと出会いその考えは変わった。

そして俺は急に彼女の声が聴きたくなって、彼女が教えてくれた番号の書いたメモを手に取った。風呂が沸くメロディがその考えを引き裂く。でもそのメロディに感謝した俺には長い夜が待つ。

長い夜は良い夢悪い夢を観させてくれたが、幸い良い夢の方が俺にはお似合いだったのでまた眠りに着いた。長い眠りは死を意味したかのように目を覚ました。

この部屋とお別れする日まで俺は眠っていた。体の具合も良さそうだった。最後の風呂を沸かすと何故か涙が出る。俺は寝ころび白いクロスが貼られた天井を見つめた。涙が頬を伝いクタビレタ布団に虚しく落ちる。新しい下着と真っ白なTシャツを用意してゆっくり風呂に浸かった。痩せた体を洗い、世話になった風呂を洗い、この部屋の思い出と一緒に浴槽の栓を抜く。

髭を剃った顔を脱衣場の曇った鏡に映す。右目下の腫れは若干だが引いていた。全て新しい下着に身を包みジーンズを穿くと、また世話になった布団を畳み要らぬ服をゴミ袋に入れ、擦り減った畳に腰を下ろすとボンヤリした時間を過ごした。ダウンジャンパーのポケットにある腕時計を左手に付けると午後1時を過ぎていた。ジミーさんに貰った手にフィットした黒い革手袋嵌め、ひとつに纏めたボストンバッグを抱え部屋を出た。

行く宛てなど無いので、渋滞する道を走りルミとの待ち合わせの大型ショッピングモールの駐車場の端を目指した。

渋滞の最後尾、1週間前の俺は何かから逃げ出したい気持ちだったのに今日は違った。日曜日のショッピングモールの駐車場は今日も混んでいる。俺が停めようとする駐車場の端はポッツンと穴が開くように開いていた。

まだ日は高く、不安定の曇り空は雨か雪を降らせようとする気配。誰も寄りつかない駐車場に車を停車させた俺はしばらくフロントガラスから見える景色を眺めていると駐車している車の形が霞んで見えて来た。

俺はエンジンを止め、ハンドルを抱き頭を伏せて目を瞑る。少しの時間なのか、それとも永遠の時間が経ったのかは解らない。助手席の窓を叩く音が聞こえる。

ルミ・・・なのか?

助手席側に黒いスーツを着た男が4人立っている。そしてまた、運転席の窓を叩く音が。そこに制服を着た警察官が2人立っていた。俺は首を左右に振り、窓の外を確かめた。男達は銃を構え、遠慮無く俺に発砲し続けた・・・。

「うわぁ!」

雨が降っていた。それも大粒の雨が。

「夢か・・・」

エンジンをスタートさせ、車内のデジタルを見てワイパーを作動さす。駐車場を照らす眩しすぎるライトが雨を映している。しっかり雨の粒が地面に辿り着くまで。

ワイパーの動く隙間から傘をさす女の姿が見えた。助手席のボストンバックを後部座席に置くと俺はまたワイパーの動く隙間を見た。その女は傘を投げ出し、大粒の雨の中こちらに走ってくる。

助手席のドアが開くと雨の雫とルミが飛び込んできた。ルミは俺の上に乗っかると無言で俺を見つめシートを倒した。

濡れた左手が腫れある右目下の傷に触れた時、ルミは話始めた。

「昨日3人相手したわ。今日はユウさんだけ・・・」

キスした口は疑問を持つ。

「あなた・・・が、殺したの・・・?」

その唇は右目下を優しく愛撫する。唇を外すと。ルミの涙が俺の顔に当たる。

「どうして・・・どうして、そんな無理な事して!もし、ユウさんが死んでいたらどうするのよ」

ルミは泣きながら俺に抱きついてくれた。

「ルミ・・・俺さぁ、もう時間無いんだ。」

残る力でルミを抱き上げた。

「なんの、時間?今夜は駄目なの・・・」

俺は目を閉じ、首を振った。

「12月が最後なんだよ。三か月前医者に言われた俺の命の時間」

ルミは俺の胸に顔を埋める。

「だから、だからなの。だから・・・あいつ等を殺したの?」

「うん・・・ゴメン・・・迷惑な事をして」

雨音は車の天井で華やかに踊る。その音に負けぬほどしっかりとルミを抱きしめた。

「ルミの体買ったんじゃない。ルミの悲しみを買った。だからクズを削除した。それと死ぬ事なんか、全然怖くないよ、俺は。でも・・・君とは離れたくないよ。ずっとずっと一緒にいたいよ」

俺は泣いた。死ぬ事の意味が解り、別れの意味も分かり始めたから。

ルミは俺の涙を拭い、たくさんのキスをしてくれた。

「いっぱい、いっぱいセックスしよう。死んだらユウさんと一緒に行くから・・・」

「一緒に行くって、コンビニに行くのと違うんだよ?」

二人泣いていたはずが、笑いに変わり二人は先の無い前に進み始めた。

雨のドライブ、これが最後だろう。ルミを抱き寄せ俺は先週と同じホテルへと車を走らせた。

二人を待つ部屋に入る。

白いシーツの上にボストンバックを置いた。車内で暗かったのでルミがフライトジャケットの下にプレゼントした服を着ていた。

ルミはその服を気に入ってくれた。

「サンドイッチ作ったのよ。凄く美味しいんだから。プレゼントのお返し」

自分の着ている服を指差しルミは言ってくれた。

俺の口にサンドイッチを運んでくれるルミ。本当にサンタクロースがいるのなら俺の体を治し、ルミと自由になりたい・・・そんな願いを心で嘆き呟いてみた。

「足りるかどうか判らないけど、これ使ってくれるかな?」

二人座る白いシーツの上にあるボストンバックのジッパーを開けた。

「六百万ある。これで今の仕事から足洗えるのかな?」

「どうしたの。このお金?」

「俺が貯めていたお金だよ。君に使ってほしい」

「バカ!」

右目下の頬にルミの手が。

「そんなつもりじゃないよ。俺は君に使ってほしいだけなんだよ。それにもう俺には必要ないし」

俺の言葉が火を点けさせたのかルミは俺の部分を激しく口に包むと服を脱ぎだした。着火した二人の炎は最後の灯。

幾度も幾度も濡れたルミに俺は溺れる。ルミも無重力の快感を覚え求め続けた。

愛と言う白いシーツの海はやがて穏やかになりルミに願い事した。

「あの時に唄った歌聞かせてよ。でさぁ、朝になったら海行こうよ」

「うん・・・」

小さな歌声は遥か彼方に去って行く命を呼び戻した。

ルミの歌が終わると俺は小さく拍手した。

「あと、これ持っときなよ」

ボストンバックの奥から銃を取り出した。俺はジミーさんに教わった事を全部ルミに教えた。遣り終えたのか寿命が来たのか、それからは悪夢の様な時間が俺を襲い濁った血を吐きまくった。ルミは泣きながら俺の背をさする。

「お願い・・・お願い・・・一人にしないで、お願い!」

まだ、まだ死にたくない。あの朝焼けの景色をルミと一緒に観るまでは。

「今、何時かな」

掠れた声はルミの耳を近づけた。

「もうすぐ夜明けよ」

「ルミちゃん行こう、海行こう」

「明美・・・。ルミはお金の為に生きる汚い女なのよ」

最後に恰好良い台詞を言うチャンスが来た事に俺は天使とサンタクロースに感謝の気持ちを送った。

「俺が出会ったのは素敵なルミさ。君とキスした時、俺が初めてキスした時の感触と同じだった。その感じがやっぱり当たっていた。俺は自分のした事何も後悔してない。でもルミと逢った事は後悔している。最後にこんなイイ女に会えるなんて、神様も悪戯好きだよな!」

裸のふたりは泣き、そして寂しそうな笑顔で抱きしめあった。

そのまま時間が経ち、薄くなった俺はルミに抱えながら服を着て部屋を出た。ルミの肩を借りボストンバックを抱えた俺は車に乗り込んでいた。ルミは俺を助手席に乗せ叫びながらエンジンをスタートさせた。

「死んじゃ!駄目よ!海行くんだからねぇ!」

ルミは道を思いだしながら車を全力で走らせた。辺りは薄暗く紫の空からは太陽が出ようとしている。

「もうすぐよ!もうすぐ・・・」

ルミの言葉は聴こえるが頷く事しかできない。溜まる血は口元から流れるが出来るだけ血を飲み込む努力をした。

フェンスを突き破りルミは車を停めた。俺の顔を叩きルミは叫んでいる。

「着いたよ。起きてよ!お願い起きてよ!」

瞬きが連続してルミの顔がはっきり見えない。

「大丈夫・・・」と言いたいが声が出ない。抱きついて泣くルミの頭を撫で無事を教えた。死の一歩手前の瞳が開くと工場地帯がオレンジに染まるのが何とか分かり俺は嬉しくなった。

ルミは俺を抱え引きずり、景色がはっきり見える方へと歩いて行く。

その景色を眺めた俺は最後の力を振り絞った。

「ル・・ミ・・・幸せに・・・なりなよ・・・」

ブッチ・・・

体の中で嫌な音がした。綱が切れる音。いつか読んだ小説に人には命の綱があってそれが切れた時、人は死ぬ。オレンジに染まる景色が歪んで見えると俺はルミの横で崩れ落ちる。

「嫌!」

もう何も感じず痛みも無い。ただ一言、言いたい。

「あ・り・が・と・・・」

崩れ落ちた男を抱きかかえ女は叫ぶ。

「ありがとう・・・て、何よ!幸せなんて、幸せなんてなれるわけないよ」

オレンジに染まる景色は1発の銃声を静かに見守った・・・

(この話はフィクションで御座います。登場人物・登場場所は実在しませんのでよろしくお願いします。誤字・脱字がありますお許しを。)


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