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塗膜調査あるある5.2 鋼構造物塗膜調査マニュアルにツッコミをいれてみる

マニュアル第7章7.3.2  ポリ塩化ビフェニル(PCB)の分析

前回の続き。

前回は、マニュアル中の塗膜採取量について記述が曖昧で読み手を混乱させてしまうよ、というお話をしました。

今回は、残りの「有害物質調査」で扱うPCBについてお話しします。

まず申し上げたいことは、本マニュアルに記述されている3つの測定方法のうち、既に古い規格があることです。本マニュアルではPCB含有量試験結果が特別管理産業廃棄物判定に適用できる、とされていますが、厚告第192号による測定方法で得られた分析値のみが当てはまりますので、新規格で測定した分析値には適用できないことを覚えておいて下さい。

現在では、分析費が安価の新規格での分析を実施することが多いため、含有量試験結果で特別管理産業廃棄物判定できません(この辺を発注者側が勘違いしている実例が多々あります)。

素直に溶出試験結果で判定することをお勧めします。

PCBに関することは、毎年のように改訂されることが多いので最新の情報をチェックすることが必要です。

PCB分析用の塗膜採取量は?

マニュアルでは、「低濃度PCB含有廃棄物の測定方法(第3版)」に示されている試験フローが明示されています。現在は第5版が公開されていますが、フローに変化はなく、採取量等の記述についても変更はありません。

ここで、試料量に関する記述を整理します。

①サンプリング JIS K 0060 試料100g程度

②試料秤量 2~5g程度

となっています。

ここで、お客様によく質問されるのがJIS K 0060とは何ぞや?ということです。

このJIS規格はサンプリング方法について述べているのですが、基本的に無視して下さいとお答えしています。

なぜか。

それは、大量の塗膜くずが発生した場合の「試料の代表性」を確保するための方法だからです。

実際の塗替え工事時には、ブラストや剥離剤により旧塗膜を剝がしますが、その際にはゴミやホコリ、錆び、剥離剤も併せて回収することになります。工事の規模によっては塗膜くずがドラム缶何本になるか分かりません。

そのような場合において、塗膜以外の物質が偏って混入したものを分析試料としないためのサンプリング方法なのです。

従って、必要最小限の面積で必要な量を採取することを前提としている調査のサンプリング方法として実状に合っていないといえます。

ですから、仕様書等で指定されていた場合は、発注者に進言して調査目的にあったサンプリング方法を提案し、採用していただくことがほとんどです。

2~5gはどう解釈するか?

これは、分析する際に必要な最低試料量を意味します。

分析試料量が多いほど測定値の精度が上がりますから、ここは5gと考えましょう。

実際の採取量はどう考えるの?

含有量試験は鉛やクロムも対象となっていますから、3項目全体で採取量を考えましょう。本マニュアルでは鉛・クロム対象の場合は20g以上としていますので、同様の考えをPCBに当てはめると分析2回分の10g以上が目安となります。従って、含有量試験3項目で30g以上となります。

よって、本マニュアルの考え方に沿えば、

溶出試験100g以上+含有量試験30g以上となり、合計130g以上の採取が求められます。

しかし、これまでのあるある話でお話ししたように、分析会社によってはより多くの試料量を求められるかもしれません。

従って、どこの分析会社にも受け入れてもらえるように、分析3回分の

溶出試験150g以上、含有量試験45g以上とする

200g以上を採取目標としましょう!


もし、現場状況により200g採取が厳しい場合は、分析会社の担当者にお聞ききしてみることを推奨します!


もし、仕様書等の適用図書に本マニュアルが記載されていた場合は、これまでお話ししてきたことを頭に入れたうえで発注者と協議しましょう!