ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】
「スイカ食べたい」病床の祖父がそう言ったのは、窓の向こうに白い雪が舞う一月の半ばだった。病状からみるに、今夏、スイカが市場に出まわる頃に祖父はもう——。
地元の八百屋をしらみ潰しに回ったが、ない。県内中心部まで車を走らせることに。
デパートの中を歩いていると、幼少期の記憶が蘇った。ここに祖父と来たことがある。あれは今と同じくらいの季節。たっぷりとお年玉をくれたのに、祖父はおもちゃまで買ってくれた。
生鮮売場にいくと果物は豊富に売っていたが、スイカはなかった。諦めかけた僕