ラジオ「LL教室の試験に出ないJ-POP講座」(5/30土25:00~O.A)

▼今週の1曲
M-1 あいみょん「裸の心」4:56

矢野:松山千春みたいですよね。
森野:ハナミズキ感もあるなあ。あいみょんの「マリーゴールド」はいい曲だよね。
矢野:「マリーゴールド」はカラオケで歌うといい曲なんですよ。そこにチューニングを合わせている。
ハシノ:つまりもう「民芸J-POP」の域に達してるってことですね。
森野:生まれたそばからその領域にいるって感じもするな。
ハシノ:ちゃんと着地するコード進行がいまどき珍しいフォークソング感なんだけど、これおじさんが作ったらもっとおじさんになるかなとも思ってて。なのでこの絶妙なバランスがこの人の個性なのかも。
森野:声の押し出しがすごい、この感じなんだろうね。まだ3年ぐらいだよね? まだ判断できないけど、なんなんだろ…?
矢野:あいみょんとかは楽曲の新しさから語ろうとしても魅力が見えてこないですよね。
森野;矢井田瞳とか? あのときは椎名林檎がいたからアレだったけど、実際はプロダクト感あるけどわりと自作自演の人じゃない?。あ、でもむしろ椎名林檎のほうなのかな? あいみょんも若い頃から音楽に囲まれた環境でって感じなんだよね。
ハシノ:林檎っぽいってのはわかります。本人の個性を周りの大人が褒めて伸ばしてる感じが見える。
森野:それでも、まだどこにいくのかが見えないね。意外と難しいな〜、この新曲の評価は。
ハシノ:評価が定まってない難しさですよね。
矢野:たまに音楽ジャーナリズムみたいなものに疲れるんですよ。みんな「新しさ」を言い募っている。「新しさ」への強迫観念がすごい。
森野:芸人の一発屋のサイクルが早くなるのと同じだよね。
矢野:これは深い問題ですよ。音楽に限らず、レコードレビューとかは「新しさ」を言わないと商売にならないじゃないですか。新しい音楽にいちはやく触れて、それを言葉にすることに需要がある。でも、「それは資本主義の要請でしかなくて良い音楽と関係ねえじゃねーか」と思うときがあります。
森野:ラジオでもね、確実に言われる現場があるんだよね。「これを取り上げる意味は?」あれっぽいから、これっぽいから、今流行ってるからとかでは通用しなくて。なぜ流行ってるのか、そこに意味を見い出せる分析を求められる。
矢野:そういうのは疲れる。そういうときにあいみょんとかが素晴らしいなと思います。
森野:「これ良いから、感じてくれ!」は難しくなっていってるよね。ロッキンオンの一時期は、いいから聴け、マストだって言えてたけど。
ハシノ:勢いがあった頃のタワレコもそうだった。とにかくポップに「聴け!」「マスト!」って書いてあって煽られて買わなきゃって気にさせられた。
森野:実態がまったくつかめてないまま買わされたよね(笑)
矢野:「新しさ」とそこにアクセスしている「私」を喧伝するような音楽ジャーナリズムに、あいみょんをもって抗いたいと思いました。
森野:わかりやすいように、何かに当てはめて解説しないといけないからなあ。う〜ん、あえて言うなら微妙にババ臭い気がするんだよ(笑)
ハシノ:最近の女性ヴォーカルにしては声のキーが低くないすか。太いというか重心が低い。
森野:昨今の先入観だけど、女性の弾き語りっていうとYUIとか大原櫻子とかそういう、子供っぽさみたいな方向のイメージがどうしてもあったからね。
矢野:関取花とかはどうですか?
森野:あれはずるいよねえ。名前も容姿も絶妙、それでいて喋りも立つから。
ハシノ:自分はたむらぱんと同じ箱にいれて認識してました。
森野:なるほど。でもメディアにも対応できる感じがね、もうちょっと芸能寄りな気がするね。

▼今週のテーマ「電車」
M-2 ゴダイゴ「銀河鉄道999」

ハシノ:試験に出るやつ!
森野:ラジオで聴きたいんだよね。
ハシノ:やっぱいいなー。
森野:サービスエリアで買ったもんね。これはもうあんまり話すことはなくて聴きたいってだけなんだけど。
ハシノ:この曲に関してはもう非の打ち所がないっす。
森野:1980年前後の歌謡曲のリズム隊はいいよね。はしゃいでる感じがあって。
ハシノ:この曲もアウトロでベースとドラムがはしゃぎはじめますよね。ライドシンバルがカンカンいいはじめる。
森野:ファンクとかフュージョンやりたい!ってウズウズしてるんだよ。
矢野:時代的にもフュージョンのノリは感じますねー。
ハシノ:スペクトラムとかもそう。
森野:タイトだけど粘っこいというのも好みだなあ。
矢野:高音域がクリアですよね。でもこのクリアな感じがちょっと苦手でした。
ハシノ:時代的に、レコーディングのときにバラバラに録ったり継ぎ接ぎしたりせず、ベースとドラムが一気に録音してたってのもあるかも。
森野:この時代って曲としてはフォーキーなのにリズムがいいのものが多いよね。
ハシノ:ゴダイゴ再評価ありましたもんね、90年代。「モンキーマジック」がヤバいっていうところから。
森野:小沢健二も言ってたしね。
ハシノ:それこそ「愛し愛されて生きるのさ」は「銀河鉄道999」のメロを大胆にパクってますし。
森野:フェイザーの使い方とかもね、一時期はロックバンドで使ってたけど、黒人ぽいものにいつのまにか戻ってきてる。
矢野:ディスコの時代でもある
ハシノ:70年代末なのでまさにディスコ全盛時代ですね。
森野:ショーグンとかクリエイションとかもいたよね。
ハシノ:ショーグンとかもそうですよね。テレビに出るようなポジションのバンドがそういうファンクとかフュージョン的な音をやってた。
森野:やっぱりスタジオミュージシャンの集まりって感じのバンドが多いのかな。
矢野:先日、DOMMUNEの志村けん追悼番組に出ましたが、ドリフターズはやはり、70年代末ブラックミュージックのエグい部分をちゃんと再現しています。それに比べると、ゴダイゴはやはり歌謡曲にとどまっていますね。
森野:リズムだけ先に行ってる感じなのか?
ハシノ:そこまで黒くなっちゃうとコミックソング枠としてしか扱えなくなるってことなのかな。ワンコードで引っ張る美学が歌謡曲とは相容れないとか?
矢野:歌謡曲としては、引っ掛かりが多くなっちゃうんでしょうね。いろんなバランスを考慮していると思います。
森野:16の裏とかでメロディ歌うのは当時まだ難しかったのかなあ。
ハシノ:ベースラインではできるフレージングも、歌メロだとまだ対応できてないってありますよね。


M-3 クレイジーケンバンド「☆☆☆☆☆」

ハシノ:これは曲全体としては横浜テーマの歌なんですけど、渋谷から横浜までの東横線の急行の停車駅を言っていくっていう歌詞になってるんです。今回電車がテーマに決まってまっさきに思い浮かんだのがこれでした。
森野:いーね!
矢野:CKBにも電車の曲があるんですね!
ハシノ:やっぱり車のイメージあるよね。でも結局オタク気質なので、車はもちろんそうだけど乗物全般に執着がある人なんだと思った。ライムスターと一緒にやってる曲では京急のことラップしてたりするし。
森野:東横線は歌になりやすいのかな?
矢野:多摩川を越えていくシチュエーションは絵になりますね。
ハシノ:川を超えて景色が変わる感じありますね。
森野:EXILEは中目黒の歌を歌ってるんだろうか。
矢野:東横線は学園都市が並んでいますよね。五島慶太による都市開発。関西で言う阪急の小林一三になぞらえる感じで、五島も小林が推薦した人です。だから、下からの文化というよりは人工的でハイソな感じ。
ハシノ:田園調布とか。
森野:あー、自由が丘は歌になりそうな気もするけど。
矢野:クレイジーケンバンドは音楽的には間違いなくて、ある意味ウェルメイドな音楽をどんどん作れますよね。
ハシノ:70年代からやってる人で大人の不良ってなると、音楽性がアップデートされないじゃない、ふつうは。言ったらおやじバンド的な、リーゼントでロッケンロールみたいな。でもクレイジーケンバンドはそうじゃないのがすげーなって。現代的なR&Bとか、若いDJが好きそうな80年代感とかも、アンテナ高くしてちゃんとわかってやってる。
矢野:2000年代前半くらい、レゲトンをいち早く解説してて、すげーなって思いました。全然保守的じゃない。
ハシノ:それでいてドラムが元オメガトライブっていうね。昔S-KENさんと話したときにCKBが好きなんですよって言ったら、「あのドラムオメガトライブじゃん」って、初期は四角い8ビートしか叩けなくて、剣さんがやりたい黒さが出なくて苦労したってエピソードを話してくれました。

M-4 美空ひばり「A列車で行こう!」3:12

ハシノ:かっこい〜!
森野:アニー・ロスぽさもあるなあ、これはいつぐらい?
矢野:録音は1955年のようですね。
森野:声若いよね。見よう見まねでやっちゃって感じ、すごいよ。
矢野:当時の同年代の歌手と聴き比べると、圧倒的に歌がうまい。すごいです。
森野:練習して上手くなるとかじゃないよね。ものまねがすごい感じ。
ハシノ:声楽やって譜面通りにちゃんと歌うのがうまいとされていた時代に、こんなスキャットかますなんて、いまもすごいけど当時はもう異次元だったんじゃないかな。
矢野:本当にそうだと思います。演歌サイドじゃない美空ひばり。
ハシノ:むしろ自分はもう美空ひばりはジャズとかリズム歌謡の人ってイメージだよね完全に。
矢野:でも、AI美空ひばりは当然のことながら演歌の磁場ですよね。
ハシノ:パブリックイメージはそうなんだろうけど、むしろ若い頃のこっちサイドの曲をAIに歌わせてほしいと思ってる。絶対おもしろくなると思う。

M-5 はしだのりひことクライマックス「花嫁」

ハシノ:やっぱいい曲。いかにもラジオでかかってそう。
森野:これ、もうプレイリストの上位にあるからよくかかってて、何回も聴いてる。
矢野:電車というか夜汽車ですね!
森野:本当だ、でも夜汽車で選びたかったんだよ。サンボマスターにも「夜汽車」のフレーズが多いんだけど、もうちょっと時代感のあるほうで。これは71年ね。
ハシノ:はしだのりひこってフォークルのメンバーだったんすね。
森野:よく考えたらフォーク・クルセイダースってすごいよね!
ハシノ:加藤和彦、北山修にはしだのりひこってすごい。はっぴいえんどもすごいけどフォークルもすごい!
森野:あと、これははしだのりひこが歌ってるわけじゃないんだよね。
矢野:クライマックスとかシューベルツとか。
森野:初めて聴いたときは声高い人だな〜って思ってた、フォークの甲高い感じで(笑)。あとブラスの小気味良い感じがいいよね、同時期の「また逢う日まで」もそうだけど。
ハシノ:70年代初期特有の、ソフトロック的なこの感じね。アーシーで開放感のあるような。万博っぽさ。
森野:合唱曲になってそうな曲調だけど、「は〜な〜よめは〜」って歌うのも変だよね(笑)。
矢野:うたごえ喫茶の流れとかいろいろありそうですね。学生運動のあとの文化的な政治運動。
矢野:コーラスは入っていないか。でも、みんなで歌えますね。
ハシノ:カラオケ文化以前の、若者が車座になってひとりがギター弾いてみんなで歌ってるあの絵面にハマりますよね。キャンプファイヤーを囲んでるような。


M-6 アン・ルイス「恋のブギ・ウギ・トレイン」

ハシノ:e-girlsのカバーもあるけどやっぱ原曲がいいっすね。
矢野:これはもう山下達郎にしか聴こえなかった。久しぶりに聴いたら本当に達郎。ジャニーズのイメージもありますが、なんか達郎って他の人に提供したら達郎っぽくならないイメージあったけど、これは達郎っぽい。
森野:ハイティーン・ブギとかもそうだけど、やっぱり歌詞が大きいんじゃないかな?
ハシノ:キンキでも「硝子の少年」は達郎っぽくないけど、「ジェットコースター・ロマンス」は達郎っぽいんですよ。なので、曲によって仕事として当てにいくのと自分の領域で戦うのを使い分けてる気がする。
矢野:でも、電車とディスコっていう伝統的な組み合わせですよね。
ハシノ:ソウルトレイン的なね。
矢野:恋のブギウギトレイン。テイスト・オブ・ハニーの要素も入ってる。
ハシノ:ほんとだ。そういえばテイスト・オブ・ハニーで思い出したんだけど、ウルフルズ監修のソウル〜ファンクのコンピCDがあって、メンバーが曲の解説っていうかコメントしてて、そこでテイスト・オブ・ハニーはもうハウスやんて言ってたなー。人間味がないみたいな意味で。なるほどなって思った記憶がある。
森野:そこはオーティス・レディング感がないからだろうね(笑)
ハシノ:オーティス・レディングやサム・クックこそがソウルで、そこから離れすぎてるって感じたのかもですね。
矢野:ウルフルズの音楽性を考えると、その感じはわかります。
森野:一部の人にとっては4つ打ちが安易に感じるってのはあるだろうね、隙間がないというか。
矢野:ディスコが低く見られがち問題ですね。

M-7  S.L.A.C.K.「Train On The Tokyo」

矢野:これ、ネタがトッド・ラングレンなんですよ。
森野:あ、そうか、なんだっけ?って聴いてる間ずっと気になっちゃった。
矢野:PSGのSLACKのソロ曲。登場したときは新時代感がありました。
ハシノ:PUNPEEとどっちが先に出てきたんだっけ?
矢野:PSGとして一緒に注目されて、「どっち派?」みたいな感じでしたね。
ハシノ:もともと揃って注目されてたのか。
矢野:まあ、兄弟ですからね。PUNPEEのほうがトラックも作っていて、リーダーのような感じでした。僕は保守的で若干ついていけねーなと思い始めてたときだったけど、明らかに新しかったし、すごく影響力がありました。
ハシノ:声が環ROYっぽい置き方だなと思ってた。
矢野:たしかにそうですね。ただ、もっとゆるい。訛ってる感。
ハシノ:このノリってさらに若い世代に継がれてたりするのかな?
矢野:もう、これがフォーマットになっている感じだと思います。この訛り方とか言葉の置き方みたいなものを入れてないと古いみたいな、パラダイムシフトが起こっていました。
ハシノ:なるほどーそうかも!
矢野:この曲はトラックもパーカッションだけで、バスドラとスネアとか約束事っぽいのも取っ払っている。ウルトラマグネティックMCのように、ガムを食べながらラップしてたという都市伝説も。
ハシノ:いいなその都市伝説。マンガの世界で、一昔前の絵柄が古く感じる話と似てる。自分も子供の頃、70年代の劇画を古いと感じた記憶があるんだよね。なんでかはわからないけど、古いと新しいは直感で伝わってしまう。だからずっと第一線でやってる漫画家は常に絵柄のアップデートができてるって話があって。その話に似てる気がする。
矢野:さっきも言ったんですけど、トッド・ラングレンがサンプル元なんですね。でも、回転数が早くなってもピッチが落ちてないので、これデジタル処理しているんですよね。レコードからサンプリングする美学がないのも新世代っぽい。

M-8 サンボマスター「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」

森野:本編でも出たけど、「夜汽車に乗ってきたアイツ」とかかけたかったんだけど、今回のテーマは「電車」ってことでね。電車男です。

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それでは、次回は5月2日(土)深夜1時です。市川うららFMでチャイム着席をお願いします!(以下のリンクからも聴けます。)

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