ラジオ「LL教室の試験に出ないJ-POP講座」(5/9土25:00~O.A)

▼今週の1曲
M-1 横沢俊一郎「誰にもわからない」

矢野:ネクストブレイクの気配をびんびんに感じます。去年かおととしにココナッツディスク吉祥寺の店長がTBSラジオ「Session 22」に出たときに紹介して一部で評判になりました。そのような期待を背負って今回出たセカンドが良い作品です。
森野:最近どこかで名前を聞いたな〜、なんだっけ。
矢野:九龍ジョーさんがインタビューをしていて、タイムラインとかでも名前がちょこちょこ出ているかもしれませんね。
森野:ああ、そうかも。あ、あと思い出した。スカートでベース弾いてた清水瑶志郎くんがキーボードで参加してるんだよね。
ハシノ:いくつぐらいのひと?
森野:プロフィールを見ると1988年生まれとあるね。
ハシノ:声が若そうな感じだったから、もしかして10代?とか思って。
矢野:でも、曲調も多彩ですよ。シンガーソングライターだけどきれいすぎない感じがいいですね。


▼今週のテーマ「東京」
M-2 Soul Scream「TOu-KYOu」

矢野:1997年の日本語ラップクラシック。ソウルスクリームというグループは、いまの若い人たちにとってどのような存在なのでしょう。さんぴん時代くらいのファンには根強い人気だと思いますが、現在だとエアポケットに入っている印象もあります。ライムスターとかブッダブランドは若いリスナーやヒップホップファン以外にも聴かれている気がしますが。
森野:同年代なんだけど、この人達ってデビューが早かった印象なんだよね。ヒップホップが好きな友達の友達くらいの距離感にいるっていう感じで認識していた。ZOZOの前澤さんのSWITCH STYLEとかも同じ世代と距離感だったんだけど、なんとなくどんな音楽やってるかはわかるけど、実際に聴くまでに至らないという…。
矢野:90年代にはデビューしてるので、世代的には早くデビューしているほうかもしれませんね。98~99年頃に「蜂と蝶」という曲でオリコン30位くらいに入っていた覚えがあります。
ハシノ:当時バイトしてた大阪郊外のレコ屋あたりでも98〜99年頃には割と認識されていた印象があるな。ライムスター、ブッダブランド、キングギドラの次ぐらいの認知度で。
矢野:絶妙にオラオラしていないシャレっ気があるんですよね。ネタ使いもマルコス・ヴァーリとかシャレているところがある。
森野:『東京』っていうお題でいうとお手本のようなトラックだよね。
ハシノ:『東京』を六本木とか渋谷じゃなく山谷から捉えてたり、『ストリート』じゃなく『道端』って言ってみたり、いろいろ工夫を感じる。
矢野:基本的にヒップホップにとっての東京は、NYと同じくコンクリートジャングルという表象。数年前、スチャダラパーの取材をしたときに言っていましたが、NYでは都会というコンクリートジャングルを歩くイメージでティンバーのブーツを履くんだ、と。
森野:この人達は東京育ちなのかな? Wikipediaには錦糸町のクラブで知り合ったって書いてあるね。
矢野:たしか千葉だったはずです。柏じゃなかった?
森野:あ、千葉なのか。だからなんとなく知ってるんだ!
ハシノ:やっぱ東側ですよね。もし多摩地区の人たちだったら吉祥寺か渋谷かって感じになるだろうからわざわざ錦糸町には行かないと思うしね。
森野:同時期、錦糸町には本当によく行ってたよ。「WINS」っていうところだったけど(笑)。

M-3 フィッシュマンズ「WEATHER REPORT」

ハシノ:さっきが山谷だったので、次はちょっと西に振ってみます。説明不要の名盤『宇宙 日本 世田谷』から。「部屋の中にい続けることもあるさ」って歌詞はすごく今の状況にぴったり」

矢野:まさに「東京」という言葉から始まるんですね。フィッシュマンズもいつか語らなければいけない存在ですよね。まだ明らかになっていない文脈がある気がします。

森野:ちょっと触れづらい感じはあるよね。伝説になってしまったというか。

矢野:神格化されていますよね。

森野:90年代は中堅どころってイメージが、亡くなって横綱になった感じもある。

ハシノ:ここにきて海外でものすごく人気らしいですよ。

森野:フォロワーも一気に増えたんだよ、2000年代初頭にPoralis始め、ダブポップみたいなバンドはすごく増えたからね。個人的には『オレンジ』ってアルバムがすきだな。なんとなく清志郎っぽさを感じてた。

矢野:『オレンジ』良いですよねー。「MELODY」とか大好きです。

森野:渋谷系的なものが全面に出てる時期はまだ二軍感もあったんだよ。ラヴァーズ、ロックステディとかそういう脈々とある感じのほうのバンドっていう印象があって。

ハシノ:一番最初はスピッツとかと同じ箱に入ってたイメージ。ポスト・バンドブームの歌ものバンド枠みたいな。

森野:ポリドールに移籍してになったイメージがあるなあ。日ハム行って主軸になった稲葉みたいなイメージだね。

矢野:MUTE BEATまわりの人も結構参加してるんですよね。

森野:茂木欣一がその後スカパラに入る流れとかも納得だよね。自作のスタジオとか、ライブにミキサーがいたりとか、今では普通にある感じも独特の活動に見えてたよね。

ハシノ:そのあたりのDIY感というかね。

矢野:録音技術とともに発達したダブ精神ですね。一方、佐藤伸治のヴォーカルはいわゆる「東京インディー」まで脈々と受け継がれてる感じもあります。1回目の放送で流した小島ケイタニーラブさんも影響を受けていることを公言していました。

森野:bonobos、ポメラニアンズ、バタアシキング、あとマイスティースとか!

ハシノ:フィッシュマンズはレゲエっていってもあまりジャマイカの匂いしないじゃないですか。

森野:初期はわりとしてたようにも思うんだけどね。だんだんコードが少なくなっていって、最後のアルバムなんかほとんどの曲が2コードだったよね。ライブの感じもクラブ化していってたし」ハシノ「サビとかいらないしずっとこの感じで踊らせてくれ〜っていうオーディエンスの感じはクラブっぽい」


M-4 真心ブラザーズ「東京ひとり」

ハシノ:これいつのアルバムですか?
森野:数年休止して復活第一弾のアルバムの曲。2006年だね。そのちょっと前まではね、YO-KINGは万能感がすごくて、あくまでキャラクターとしてなんだろうけど、自信過剰なソロを出していてちょっと鬱陶しい感じがあったな。
ハシノ:自分なんかはその万能感の時期が好きなんですよね、むしろ。アルバムで言うと『I WILL SURVIVE』とか『GREAT ADVENTURE』とか『KING OF ROCK』あたりの。それと比べるとこの時期は枯れてる感じがする。
森野:各々、違う活動をしていて、桜井さんのフィリー・ソウル曲もあったり、一度離れたことで役割とかバランスが取れてきたんじゃないかなあ。
ハシノ:フィリー・ソウル路線、ハードコアパンク、ミクスチャー路線もあったじゃないですか、あのあたりが好きでしたね。
森野:あの頃はそれぞれのインパクトは強いけど、トータルとしてはガチャガチャしてた印象で、この辺りで落ち着いて固まったという感じ。これ以降、飛び抜けたヒットがないのもちょっと残念ではあるけれど。

M-5 ピチカート・ファイヴ「東京の合唱〜午後のカフェで」

矢野:この曲は2000年ごろでしたっけ。
森野:YOU THE ROCKが良かった頃だね!(笑)
ハシノ:松崎しげるとね。
森野:ピチカートはなんか苦手なんだよね…。なんでだろうか聴く気がおきない。
矢野:
僕もそこまで夢中になっていないです。基本的にサンプリングを基調にしたループ音楽なんですよね。そこにヴォーカルが乗る。このサウンドはリテラシーがいると思います。
森野:楽してるな〜ってイメージが最初にあって。自分はバンドやってて、バンドじゃないから!っていう理解のなさが第一だったな。
矢野:ループ音楽で歌モノという点でアシッドジャズ的なニュアンスがあるのではないか。
ハシノ:当時『考えるヒット』だかで近田春夫がそういうこと言ってて。小西さんの曲作りっていわゆる作曲家のやり方と違うよねって。
森野:あ、でも田島貴男の頃は聴いてたんだ。基本的に女性ヴォーカルをあまり聞かないってのも大きいんだけど、ピチカートは皆好きだったから何度かトライしたけど、まったく耳に残らなくて…。これはいつ頃?
ハシノ:これラスト・アルバムの曲です。
森野:ぜんぶ同じに聴こえない?(笑)
ハシノ:自分はそれマイナスに感じてないですね」
森野:歌い方も置くような感じだし……。
ハシノ:それね、うちの妻ってラモーンズ苦手なんですけど、同じようなこと言ってました。全部同じに聴こえるし歌い方もぺらぺらだって。でもそこがいいんじゃない!って思うんですよね。
森野:なるほどね。でも、小西さんのラジオはよく聴いてたよ。ライナーノーツもよく読んでたし、もしかすると評論家が音楽やってるような感覚で苦手だったのかもな。
矢野:方法論が先立っている音楽を遠ざけちゃう人はたまにいますよね。その練られた感じに感心するリスナーももちろんいますが。



M-6 Sexy Zoze「Tokyo Hipster」3:48

矢野:3月に出たSexy Zoneの新譜です。
森野:ピッチを上げてるとかじゃないよね?(笑)
矢野:このアルバムはSexy Zoneが東京を歌いますとアナウンスされて出ました。この時期に「東京」ということでシティポップ系が予想されていたんですけど、ピチカート成分が強かったのでちょっと驚きました。
森野:どんな人が書いてるの?
矢野:アルバムではtofubeats、馬飼野康二、ラッキーテープスなどです。
森野:アイドルに曲提供する渋谷系ってこんな感じのイメージだよね、甘酸っぱいとか疾走系というよりはホーンとかストリングスがオシャレさを出してる感じ。
矢野:ジャニーズ的なラインでいうと、おしゃれなK-POP、EDMとシティポップのあいだみたいな路線が得意だから、当然そっちでくると思っていました。
森野:ミュージカル的なラインに近いのかな?
矢野:セクゾはミュージカル的な華やかさにも耐えられる気がします。あと作詞が三浦徳子(ちなみに弟は文芸評論家の三浦雅士。ユリイカの編集長でもありました)。
ハシノ:大御所だ!
森野:トシちゃん!松田聖子!
ハシノ:これ東京っていっても、ブラタモリの東京って感じですね。銀座はまだ海とか。時間軸が壮大なやつ。
矢野:そうなんです。中沢新一の『アースダイバー』を思い出しました。職業作家の仕事ですね。
ハシノ:これってオリンピック絡み?
矢野:どうなんでしょう。あんま関係ない気もしますが。
ハシノ:でもこの時期に東京ってテーマでリリースするのって、非公式にでもオリンピック狙いだったんじゃないかな。オリンピックハイライトみたいな番組にこの曲が流れてたらしっくりきそう。
森野:うんうん、光GENJI感あったよね!
矢野:「リラの花咲く頃に」ですね。
森野:そうそう
矢野:ググったらやっぱりオリンピックは意識しているみたいですね。

M-7 長渕剛「東京青春朝焼物語」


森野:『今日から俺、東京の人になる』っていうフレーズが、東京に出てきて一旗揚げてやろうっていう人にはすごく響く曲だと思うんだけど」
ハシノ:自分も上京組として響きましたね、不覚にも。
森野:東京に出てきて、東京の人になる、東京に擬態するっていう話だよね。これは1991年、絶頂に売れていた頃。ドラマの「しゃぼん玉」とか、ヤクザ期の長渕だね。
矢野:まだ景気は良かった頃ですね。
森野:そうそう、バブル崩壊はしてたけど、日常ではその実感がなかったなあ。
ハシノ:この時期の長渕って、『世の中浮かれやがって』って唾を吐くようなノリの時期でしょ。それだけ景気よかったんだなって思いますね。
森野:ドラマも役を演じるんじゃなくてそのままでやらせろって言ってたらしい。それで人気あったしね。うちの中学なんかはヤンキーみんな好きだったし。このキラキラしたアルペジオがいいな〜。
矢野:番組の最後にふさわしいですね。
森野:『東京』っていうテーマは東京の人以外が歌っているのがとにかく多い。東京の人が東京を歌うと、地域が限定されたりしてもっと狭くなるんだよね。
ハシノ:松本隆的なね、ローカルな。麻布十番の暗闇坂みたいな。
森野:地方出身者が東京を歌うと、仮想敵みたいな感じになるでしょ。マキタ(スポーツ)さんの『上京物語』っていうネタがあって、11年前に出したDVDがいまGyaoで無料配信されてるんだけど、コンセプトは長渕のこの曲なんだよね。で、やっぱりファンにはすごく批難されるんだけど(笑)
矢野:長渕ファンに?
森野:お笑いファンにもどっちもにかな?(笑)。当時、お笑いDVDって単独ライブでやったネタがたくさん詰まった内容が普通なんだけど、これはそういうのじゃなかったから。構成を担当したので、是非この機会に観てください。
https://gyao.yahoo.co.jp/p/00679/v07381/

****************************************************************

それでは、次回は5月2日(土)深夜1時です。市川うららFMでチャイム着席をお願いします!(以下のリンクからも聴けます。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?