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ロロ放談:亀島一徳と篠崎大悟の場合

『BGM』にかこつけて何かをするでもなく、単にメンバー同士の対談を記録するこの企画。第1弾は亀島×篠崎ペア。ロロが生まれた江古田を訪れた二人の会話は、もはや「内輪受け」にすらなれないただの雑談で……江古田と中野のグルメ情報をお楽しみください。(構成&写真:もてスリム)

7月某日、20時、新宿。ロロの制作を務める奥山さんが運転する車は大悟さんを乗せて参宮橋へ向かった。参宮橋に亀島さんはいて、8月に出演する舞台の稽古を行っているのだという。今回の対談は二人が行きたい場所へ向かうドライブをしながら収録することになっていた。何を話すかは二人任せ。『BGM』の話はしなくてもいいらしい。だから合流した二人はまずどこへ向かうか話している。

亀島:俺と大悟だったら学校周辺になっちゃうんじゃない?

篠崎:日芸に行けば話すことはいっぱいあると思うな。

亀島:江古田は全体的に多分変わってるだろうしね。あれがあったよな、とか、あれはなくなっちゃったんだ、とか。

篠崎:江古田は結構変わるからね。

亀島:ロロも最近江古田で稽古やらなくなったしね。よくやったよな、昔は。旭ヶ丘集会所と小竹向原の集会所。行ったよなあ。昔は日芸の教室でも稽古してたしね。っていうか、下手したら最近まで日芸で稽古してたよな。まあ、江古田を使わなくなるのはいいことだけどね。いつまでも学校と江古田の公民館で稽古してると切ないし。大悟は最近江古田行く?

篠崎:たまに……たまに行くくらいかなあ。

亀島:俺もなんかで行った気がするけど。でも、もう行かないよね。

篠崎:亀は別に家が近いから行くんじゃない?久々に食いたい店とかあるでしょ。

亀島:そういや(井上)みなみちゃんが美味いって言ってたとんかつ屋があってさ。やばい家あったの覚えてる?あ、あとでヤバい家行ってみようぜ。ヤバいから。

篠崎:ヤバい家?あー、わかるわかる。公園みたいなところの前だよね。

亀島:その側にとんかつ屋があるんだけど、そこは美味かった。

篠崎:じゃあ飯食う?俺食ってないからさ。

亀島:食おうぜ。江古田だと、俺らがよく行ってたのは「台湾屋台村」だよね。あと「四文屋」。今北口の方の四文屋なくなっちゃったのかな。でも、大悟が行ってたけど俺が行ってない店とかもあるんじゃない?

篠崎:あー、あるかもね。

亀島:俺、喫茶店にさ、割と行ってたから。名前出てこないなー、あの「マザーハウス」とかGEOとかになってる並びの、いま沖縄料理屋がある、「ピース」の並びにあったとこ、いまもあるのかな。あそこ好きだった。なぜか炊飯器があって、おっさんが飯炊いてるんだよね。あと「トキ」ね。トキは俺結構行ってたわ。トキは飯がボリュームあるからさ。

篠崎:俺は逆にトキは一回くらいしか行ったことない。

亀島:カラクリ人形みたいなおばあちゃんがいてさ。大悟はどこ行ってた?

篠崎:「砂時計」よく行ってたね。砂時計大好きで。高菜ご飯がうまいんだよね。

亀島:砂時計行けたら最高じゃん。この前砂時計行きたいなと思って行ったらやってなかったのよ。

篠崎:でもまだ営業してるはずだけどなあ。あそこ何時から開いて何時までやってるのかよくわかんなくて。

亀島:営業時間、ぐちゃぐちゃだと思うよ。

篠崎:昼しか行ったことないからな。

亀島:江古田、何個か出しとこうよ候補。行けたら一番いいのは砂時計でしょ。それかとんかつ屋。間違いなくやってるのは屋台村。あそこ遅くまでやってるし。あと「お志ど里」か四文屋は入れる気がする。とんかつ屋やってないかなあ。

篠崎:一番いま食いたいのはとんかつか砂時計だね。

亀島:調べられるけど、調べずに行ってちゃんとガッカリしたいね。ヤバい家も見て。ヤバい家は揺るぎなくあるから。誰が見てもヤバい家だから。

というわけで、車で江古田に向かい夕飯を食べることになった。ロロのメンバーはほぼ全員が日本大学芸術学部出身であり、学年も近いため共通の思い出も多い。江古田に行けば話題には事欠かないだろう。車が走り始めると、亀島さんがBGM役を務める。

亀島:普段聴いてる曲?なんか恥ずかしいな。あんま俺ら音楽の話してなかったよね。っていうか未だにしないし。だから今大悟にどんな曲聴いてるか告白するのが恥ずかしい。俺好きなのはLEO今井っていう人がいてさ、それが合うんだよね、走るときの風景に。でも、俺が「LEO今井」って言葉を発したのも大悟は今初めて聞いたと思うし、なんかちょっと恥ずかしい。でもいいよ、LEO今井は。「Tokyo Lights2」ね。LEO今井、大悟にちょっと似てるし。ルックスのタイプとしては大悟近いと思うよ。でも、大悟はすごいサカナクションに似てる時期があったよね。

篠崎:ああ、サカナクションの時期ね。「バッハの旋律を夜に聴いたせいです」のPVに出てくる人形の方に似てたんだよ。人形の方だった。LEO今井は高校生くらいのときに聴き始めたの?

亀島:大学1年生くらいのときじゃないかなあ。大悟は何聴くの?

篠崎:俺ねえ、あんま聴かないんだよね。この前自分の朗読会で一人芝居やったときもすごく困って。好きな曲とか探したりしたんだけど、ほんとに聴かないからね。ベタにみんなが聴いたことある曲とか、好きな映画で使われてる曲くらいしかわかんない。

亀島:確かに、大悟がイヤフォンして稽古場に来る印象ないしね。駿谷さんはいつも聴いてる印象あるけどね。なんなら楽屋でも流したりするし。俺も普段そんなに聴かないからなあ。

交互に好きな曲をかけるような、よくあるドライヴの流れになるかと思われたが、結局BGMは1曲しか流れなかった。車内は無音。二人は窓の外を流れる景色を眺めている。

篠崎:あれ、もう中野か。俺、中野で飯食うことが多くて。家の近くだと美味しいところが限られてくるから、中野まで出るんだよね。

亀島:えっ、じゃあ中野の美味い飯情報交換しようぜ。中野は結構俺来るからね。でも、意外と件数の割に知らないからさ。俺が知ってるのはジンギスカンの「ゆきだるま」ってとことか。美味いよ。

篠崎:ジンギスカンって食ったことないかもしんない。

亀島:食った方がいいよ。美味い美味い。

篠崎:ジンギスカンって臭いイメージあるからさ。

亀島:そこは全然臭くないのよ。でもさ、最近思うんだけど、全然臭くなくてクセないならジンギスカンじゃなくてよくないか説があって。美味しいんだけど、ラム肉みたいじゃなくて美味いなって思ったリすると、えっじゃあラム肉食う必要あるかな?みたいな。ほんとに美味いんだけどね。しかもヘルシーらしいし。大悟は中野だと?

篠崎:この間行ってめちゃくちゃ美味かったのは中野の南口出て、ごちゃごちゃしたエリアがあるじゃん。そのあたりに鰻屋さんがあって。

亀島:鰻ね、うんうん。

篠崎:そこで、普通の鰻も美味しいんだけど、そこは肝焼きが美味しかったんだよね。店名忘れちゃったけど。「中野 鰻」で検索すると出てくると思う。ほぼカウンターの店。行ったことある?

亀島:(iPhoneで検索しながら)この店?これだよね?「味治」?おばあちゃんがやってるとこ。あー、ここはうまい。

篠崎:鰻食うんだ?

亀島:食欲だからね、ほぼ。欲のほとんどが。これ「亀ログ」って呼んでるんだけど、美味しいお店のリストつくってて。地名・食べ物・店名っていう。たとえば、今高田馬場にいるとしたら、高田馬場はこれがあるぞと。この中から選ぶぞと。

篠崎:(亀ログを見ながら)あ、アップルパイとかあるじゃん。

亀島:アップルパイ好きなんだよね、俺。でもアップルパイがうまい店って意外とないじゃん。

篠崎:これあれば飯食うとき困んないね。

亀島:でも得意不得意があるからね。亀ログが充実してない場所があるから。

篠崎:亀ログは食べログの情報を元にしてるの?

亀島:基本そうだね。で、行ってみてジャッジする感じ。これは亀ログには載せないなっていう。食べログはちょっとわかんないところもあるから。あとは「人ログ」でもあるよね。人から聞いて行ってみて、そこで載せるか決めることもあるから。

篠崎:地道な作業が何年も積み重なってる感じはあるね。

亀島:これ消えちゃうと悲しいよね、だから。大切なデータ。

篠崎:マメなんだね。

亀島:食い物はほんとね。酒飲めないしさ。そこくらいしか楽しみを見出すものがないからさ。趣味みたいなのもそんなないから。食い物くらいかなと。

篠崎:じゃああれ、中野の「999」って行ったことある?タイ料理屋さんなんだけど、俺も行ったことなくて。前に一回行こうとしたんだけど予約でいっぱいで入れなくてさ。

亀島:でも、中野は結構そういうのいっぱいあるな。予約系ね。

篠崎:あと、いま狙ってるのは北口。中華屋さんがあって、そこがめちゃくちゃいいらしい。でもそこもこの間行ったんだけど入れなくて。

亀島:そうなんだよ、中野そういうの多いんだよなあ。

江古田に到着し、適当なコインパーキングに車を停めて「ヤバい家」を目指す二人。ヤバい家は確かにヤバかったので記事には掲載できず、近くにあるとんかつ屋は残念ながら閉まっていた。仕方なく思い出を辿りながら二人は砂時計へ向かう。砂時計には「準備中」と書かれた札が下がっていたが、ちょうど店先にいた店長から「入ります?まだやってますよ!いま団体が終わったばっかなんで」と言われ、二人は店内に入る。

亀島:内装の感じ結構変わってるね。昔はもっと暗かったじゃん。オシャレな誰かの実家っぽかった。

篠崎:いやー、どうしようかな。これが一番ベタなやつね。ベーシックな。すごく美味しいやつ。チキンソテー定食。

亀島:メニューは変わらずだね。いやー、高菜ご飯だよね。高菜ご飯のイメージがあるから。

篠崎:前に俺これ食ったよ。グレゴリーっていうやつ。ドリアかパスタ選べるようになってて、信じられないくらい量が多くて、ヤバかった。

亀島:学生御用達っぽいよね。量がすごいのは。

篠崎:うわーどうしよう。でも俺は一番馴染みがあるやつ食いたいな。チキンソテーの大盛りにしようかな。

亀島:俺は唐揚げ食ってた気がするなあ。俺唐揚げかな。いま見るとメニューの雰囲気が大学っぽいね。

篠崎:砂時計行ってたけど、みんなではあんま来てなかったよね。

亀島:特に俺はそうだったね。普段からロロの人たちに会ってどうこうっていうのが昔からあんまなかった。昔に比べたら今はみんな少なめになってるだろうけど。初期段階からそんなにね。

篠崎:俺はロロとは別に(望月)綾乃ちゃんとお芝居やってたから、割と飲んだりとか飯食ったりとかしてたけど。三浦くんはいつからだっけ……?

亀島:三浦くんと大悟ってずっと一緒にいた時期があるイメージあるわ。

篠崎:大学2年生くらいのときかな。三浦くんちに泊まりに行って、次の日は三浦くんが俺の家に泊まりに来て、みたいな。2ヶ月くらいずっと繰り返してた。学校終わって、家帰ってきたら近くにもう三浦くんいるみたいな。途中のコンビニで合流して。

亀島:そう考えると仲良いよね。でも、三浦くんと駿谷さんもそういう時期あったよね。すげえ毎日会ってるみたいな時期。

ここで二人が注文した料理が到着した。普通盛りにした亀島さんの前にはお茶碗1杯分のご飯が置かれ、大盛りにした大悟さんの前にはお茶碗4杯分はあろうかというどんぶり飯が到着した。懐かしい料理を食べているからなのか、二人は自然と大学生の頃を振り返っている。

篠崎:亀は大学のときマニキュア塗ったりしてたよね。

亀島:様子がだいぶ違っただろうね。ピアスもしてたし。髪の毛も派手だったし。髪長かった時代もあったし。情緒が不安定だったんだろうね。若いから。

篠崎:覚えてるのは、ポツドールを観に行こうってなったときに、三浦くんと俺と綾乃ちゃんの3人だったと思うんだけど、行く電車の途中で亀に会って。フラフラしてて「おぉ」みたいな。話しかけてもぼんやりしてて。その時いっぱい話す仲じゃなかったんだけど、どうやら彼女と別れそうで、別れたかなんかだったのかな。今情緒がやばい時期なんだよ亀島くんはって三浦くんに教えてもらった気がするな。そういうのはあった。

亀島:でも大悟は変わんないね。見た目も。俺が一番変わったと思う。メガネもかけてなかったしコンタクトだったし。別人だね。わかんないと思う。イメチェンしたから。なんか実はそんなに見た目に対するコダワリがないから、なんでもいいっていうかさ、ほんとは。で、劇やるときとかにキャラが薄いと。メガネが必要かと。今はそのキャラクターやめたけど、黒でツーブロックにしようと。この流れ来るはずだと。その流れ来たんだけど、俺は別に全く乗れなかったんだけど。星野源的なキャラクターづくりね。金髪でピアスして目が変な状態じゃなくて、もっとちゃんとあの感じでやろうということでそうなった。でも全然奮わなかった(笑)。考えてやったと思うんだけど。

そのまま話はさらに遡り、ロロ結成時のいきさつについて二人は話し始める。ロロの旗揚げ公演は2009年に王子小劇場で行われた 『家族のこと、その他のたくさんのこと』。この時点でロロの俳優は島田桃子さん以外全員揃っていたのだという。

亀島:でも、ずっと最初からみんな出てるから、そもそも結成時のメンバーみたいな感覚はないんだよね。桃子とかも別に後から来たみたいな感覚はないし。

篠崎:一番最初は亀と三浦くんが一緒にお芝居しようって言ってたんだよね。

亀島:事実を並べていくと、三浦くんが秀でてたわけ。秀でてるなと。同学年で舞台の色々なコースが入り混じってる中で、三浦くんは秀でてた。劇やるならこの人とだなっていうのがあって。俺は演出コースで三浦くんは脚本コースだったから、じゃあ三浦くん脚本書いて俺演出でやろうよみたいなことを最初は言ってて。それがスタート。でも三浦くんもああいう人だからスムーズに進まなくてさ。あんま俺は知らないんだけど、東京からいなくなった時期があるんだよね?

篠崎:その時の俺は噂話しか知らないから、事実を一番知ってるのは亀だと思う。

亀島:そうなんだ。俺の視点から見た話をすると、三浦くんとやろうとした企画がポシャったんだけど、ある日大学行ったら三浦くんがいたのよ。久しぶりに三浦くんがいて、でもポシャってたから気まずいだろうなと思って。その時話しかけて、あれは上手くいかなかったけど、俺は悲しいかな才能を認めてるから、三浦くんがやった方がいいんじゃないかなって話をしたのよ。で、その後三浦くんは書いた、と。それが王子(小劇場「筆に覚えあり」)を通って、それをやるから亀島くん出てくれないかって言われたのが始まり。

篠崎:なるほどね。俺視点だと、亀が知らないって言ってる、三浦くんが頑張るんだって時期にズブズブの関係だったから(笑)。三浦くんが書いたやつを俺が読んでみたり、面白いねとか言ったり。

亀島:そう、あいつ最初から面白かったんだよな。それがすごいと思うよ。

篠崎:いまでも覚えてるのは、当時『贖罪』っていう小説を三浦くんが読んでて、それがすごいんだって言うんだよ。主人公はまさに贖罪のつもりでこの小説を書いてるんだ、と。書くことで自分の犯した過ちを謝りたかったり表現したいっていうので書かれ始めた小説らしくて、当時すごい感銘を受けていたみたいで。だから三浦くんも贖罪のつもりで書いてたと思うよ。

亀島:まあでも、いま思うとそんな悪いこともしてないしな。ダメだけどさ。

篠崎:えっ、そんなに悪いことしてないの?

亀島:でも、ベタっちゃベタじゃん。軽く挫折してちょっと旅に出ちゃうみたいな。ダサいくらいベタじゃん。作家としてどうかと思うくらいだよ。鬱っぽくなって実家帰ったとか、まあ超普通だなあと。当時は贖罪と呼ぶくらいの感じだったのかもしれないけど、今思うと普通の青春だなって感じだよね。

かつて三浦さんへ行われたインタビューでは、亀島さんと作品をつくる途中で三浦さんが失踪し、その後ひっそりと大学に戻ったところで亀島さんから「また作品つくりなよ」と言われたことでロロの元となる作品がつくられたことが明らかにされていた。それはちょっとした感動的な瞬間のように語られていたのだが、どうやら亀島さんにとってはそれほど大きなことではなかったらしい。大悟さんがなんとかご飯を平らげ、店に出てぶらぶらと歩き出す。

篠崎:(板橋)駿谷さんが昔住んでたのここら辺じゃなかったっけ?

亀島:あれ、住んでたところ取り壊されたって三浦くん言ってたけど。

篠崎:あ、ここだよ。まだ残ってた。っていうか、三浦くん今連絡したら来るんじゃない?

亀島:たしかに。連絡してみようか。

ほどなくして、駅の向こう側から三浦さんがてくてく歩いてこちらへ近づいてくる。開口一番、「駿谷さんちなくなってたの見た?」と尋ねる三浦さん。亀島さんが「なくなってなかったよ。隣がなくなってた」と返すと「まだあったのか」と三浦さんは苦笑して二人の隣に座り込む。どうやらロロの夜はまだまだ長そうだ。

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