「マジ肉」と「記憶」:篠崎大悟ショートインタビュー
「マジ肉」こと『マジカル肉じゃがファミリーツアー』は、ロロの「旅シリーズ3部作」ラストを飾る物語。「マジ肉」をより深めるために(?)始まったロロ主宰・三浦直之による旅と記憶を巡るショートインタビュー2人目は、物語の中心となる家族、町田家の長男・町田湾役の篠崎大悟。
三浦:ピクニックとか、家族でどこかに出かけることってあった?
篠崎:あるかなあ……家族みんなで行くっていうよりも、従兄弟が何人もいたから、親戚の家族たちと一緒に休みを合わせてどこか行くっていうのが結構あったかな。ばあちゃんいたりとか。4家族くらい参加するからクルマを3台くらい出して、みんなでクルマで合流して。子どもたちは子どもたちで集められて移動するっていう。うちの実家は九十九里浜が近かったから、海に行くことが多くて。でも、冬はスキーに行ったりもしてたね。
三浦:なにか印象に残ってる思い出とかある?
篠崎:すごく印象に残ってることがあって。「もっくん」ていう仲のよかった従兄弟がいて、旅行のときに今日もっくんと会えると思ってすごい楽しみにしてたんだよね。小学校低学年くらいのころだったかな。みんなパーキングエリアに集合するのよ。うちは千葉で、もっくんが東京で、また別の従兄弟は神奈川だったから、結構バラバラで。途中のパーキングエリアで合流して、もっくん久しぶりーって駆け寄ったら、もっくんが俺の顔見てバッて顔に唾吐いてきたんだよ。
三浦:なんで!?
篠崎:俺も衝撃で。全然意味がわかんなくて。なんなんだろうって思ってたら、もっくんのお母さんがすぐ来て、「お前何してんの!大ちゃんごめんねー」って顔を拭いてくれたのを覚えてる。別にそれで気まずくなったことわけでもないんだけど。いまだにもっくんと仲よくて、飯食いに行ったりするから。1月会おうとか言ってたんだけどね。稽古始まっちゃってるから会えなくて。
三浦:もっくんとそのときのことは話したりしないの?
篠崎:するする。でも、全く覚えてないって。そんなことしてないよっていうんだけど、俺は覚えてるから。すごい衝撃的だったからね。顔面に唾吐かれることなんてそうそうないから。でも多分、当時流行ってたドラマか漫画で人の顔に唾を吐くシーンがあって、誰かにやってやろうっていうのがあったんだと思う。いま思うと、だけどね。それが流れで俺に来たっていう感じなんじゃないかな。
三浦:そのあとの旅行のことは覚えてる?
篠崎:これ、多分スキー行ったときの駐車場で起きたことなんだけど、スキーに行ってからはあんまり……。なんとなく覚えてるのは、スキーウェアのこと。借り物だから、かっこいいスキーウェアとか選べないわけさ。子ども用だし。それで初めてストッキングみたいなのを内側に穿いたんだけど、あれが衝撃で。一枚下に、女の人が穿いてるような、おかあさんとかがさ、穿いてたやつを穿けるんだと。どんな感じなんだろう!って。嬉しかったね。こんな感じかあって。
三浦:じゃあ結構旅行は行ってたんだ。
篠崎:小さいころは結構行ってたね。どこでも楽しかったよ。小さいころディズニーランドに行ったときは光が綺麗すぎて感動した。あと覚えてるのは、帰りに高速走ってるときに、電灯あるじゃん。それがしかも、道に沿って続いてくじゃん。近くの電灯がビュンってすぐ通り過ぎる感じとか。あとなんで月の大きさ変わんないんだろう?みたいなこと考えたり。月から逃げるために、お父さんもっとスピード出して!みたいな。そういうのは覚えてるなあ。
三浦:最近は遠出したいと思ったりしないの?
篠崎:最近はあんまりないね。散歩はするけど。たまに買い物行くときとか寄り道して、変な建物とか見るのが楽しい。でも遠くの行くのは、出不精だからあんまりね……。
三浦:ひとりのときは、変なもの見つけたりとかしながら歩くの?
篠崎:色々あって。考えるために歩くときもあるんだけど、それとは別に、いつも歩いてるところとかに走ってる人がいたり子どもが集まったりするから。そういうのが見たいなと思って、コースを変えて歩くこともあるね。だから、歩きながら思いふけって終わるときもあるし、途中で変わるときもあるし。
三浦:歩いてるときにさ、身体感覚で空間がつかめてくるの面白いよね。
篠崎:実はこういう位置関係になってるんだ、みたいなね。意外と近いんだみたいな。自分で一人芝居やったときも、文章書くために歩いてて。最初は風景の話にしようかと思って家から近所の寺までの道を歩いてたの。そしたらもうちょっとで運動会の日だっていう小学生たちが運動会の歌を口ずさみながら歩いてて、その歌めっちゃかっけえじゃんと思って結局芝居でも使ったんだよ。結局風景の話にはならなかったんだけど。でも、そういうのって自分だけの力でつくったものじゃないから、すごい信頼感もてるんだよね。