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2024年入学 北大ロー 下4法 再現答案

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前の上3法の再現答案に続き、今回は下4法(刑訴、民訴、商法、行政法)の北大ロー再現答案を紹介します。

1 刑事訴訟法

(1)問題文

(2)再現答案 再現度90~95%

問1

職務質問の法的根拠

1.警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項では、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から何らかの犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」を、「停止させて質問することができる」とある。職務質問は、行政警察活動の一環として行われる者であるから捜索活動に至ってはならず、上記の要件の下で適法に行われる必要がある。

2.これについて本問をみると、午前1時頃という深夜で、飲み屋街というお酒を提供する場所で車両にいる甲に職務質問をしている。また、エンジンをかけたままでいる車両にいる甲の横を通ると目を逸らしている。さらに、甲に落ち着きがなかったという事情から、甲は飲酒をした状態で車を運転しようとしていると強く疑われる。これは、甲が異常な挙動その他周囲の事情から何らかの犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者にあたるといえる。

3.よって、本件職務質問は適法な条件の下で行われている。

 所持品検査の法的根拠
1.所持品検査については、それを定めている明文の規定がない。しかし、所持品検査は、警職法2条1項を根拠にする職務質問との関係で、密接性、必要性・実効性を有する活動であるから、所持品検査は職務質問に付随して認められると解する。
2.本件では、上記の通り、職務質問が適法に行われているため、その際に行われた所持品検査も、一定の条件の下で許されるといえる。

問2

1.呼気検査について
問1でも述べたように、上記のような甲の行動や周囲の事情や、酒の匂いがしたということからすれば、警察官Pらが呼気検査を行うことも、犯罪予防の一手段として一定の条件の下で許される。

2.では、エンジンキーを引き抜いて取り上げた行為(以下、本件行為)は適法か

(1)まず、所持品検査は、職務質問に付随して行われるものあるから、原則として所持人の承諾が必要である。しかし、行政警察活動の下、犯罪予防のために、いかなる有形力の行使をも禁止するのは妥当ではない。また、このことは、呼気検査についても行政警察活動の一つとして行われることから上記趣旨が妥当するといえる。そこで、①捜索に至らない程度の行為は、②強制にわたらない程度の下で、③呼気検査をする必要性、緊急性を考慮し、具体的状況のもとで相当といえ場合に限って、適法に行うことができると解する。

(2)本件行為は、甲の身体に関与する行為ではないし、それに準するような行為ともいえず、少なくても甲のプライバシーを侵害するものとはいえない。(①)。次に、Pの行為の態様からしても、体を押さえつけるなどの有形力の行使による意思の制圧もないから、強制にわたるものとはいえない(②)。そして、飲酒運転を防ぐために、必要性がある。さらに、車を発進させようとしたため、本件行為をしなければ飲酒運転による事故等が起きる可能性が高いといえ、緊急性があるといえる。①②から甲が侵害される法益に比べ、飲酒運転の被害を防ぐことは、法益性はかなり高いといえ、具体的状況のもとで相当といえる(③)。

3.よって、本件行為は、捜索に至らず強制にわたらない行為であり、具体的状況のもとで相当といえるから、Pは本件行為を適法に行うことができる。

(3)感想

 刑訴については、過去問を見れば一目瞭然ですが、傾向的に、前期はおそらく捜査分野から出ると思います。問題集で捜査分野はそれなりに練習をしていたので、根拠理由や規範、当てはめの考慮要素まで一応書くことができました。難易度は例年並みだと思います。刑訴はそこまで独特な出題はされないので、みんなが書けることを書ければちゃんと点数がもらえるかもしれません。

 過去問をみる限り、後期日程では公判分野(自白や伝聞証拠)から出てることが多いので、この範囲で、最低限、問われそうな重要条文の根拠や規範を抑えてのぞみ、過去問も一応やってみるという感じだ大丈夫かと思います。


2 民事訴訟法

(1) 問題文


(2)再現答案 再現度85%

問1
 (1)固有必要的共同訴訟とは、当該権利又は義務者が個別ではなく、共同となって、共有している権利・利益について訴訟を提起するものである。その根拠は、合一確定の必要性を求められていることにある。

(2)遺産確認の訴えは、それが裁判所に審理判断されると、遺産の帰属が既判力により確定し、さらにはその後の審判について同一の遺産の帰属性を争うことは前記既判力により封じられる。そうすると、個別に訴訟が提起され、確定判決を下されてしまった場合、 本来利益を有するはずの当該遺産の権利者が訴訟を提起することができなくなる。これでは、当事者間の公平・抜本的な民事訴訟の解決を図ることはできない。

(3)よって、上記理由から遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟である。

問2

1.まず、Yの請求を全部棄却する判決(第一訴訟)ついてみる。
(1)既判力は、「主文に包含するもの」、すなわち訴訟物に対する判断についてのみに生じる(114条1項)。さらに、相殺の抗弁については、「相殺をもって対抗した額」について、既判力が生じる(114条2項)。114条2項の趣旨は、前訴で訴求債権と対抗した場合に、対抗した限度の額で既判力を生じさせることで、後訴において相殺に供した債権の主張の蒸し返しを防止するためである。

2.Yの訴訟物とXの相殺の抗弁の間で審理・判決された場合、どのような既判力が生じるか。
 まず、XがYに10万円を弁済している主張がされ、裁判所が10万円の弁済を認めている。そして、Xの相殺の抗弁は、対抗した限度の額で既判力を生じさせることが114条2項の趣旨の要請であることからすれば、自働債権90万円の限度で、Yの債権と対抗するものというべきである。したがって、第一判決においては、Yの請求権の不存在、Xの自働債権90万円の限度で不存在について、既判力が生じる。

3.では、受訴裁判所は、Xの前出の債権請求を全部棄却することができるか。
(1)相殺の抗弁は、前訴では訴訟物ではなく、理由中の抗弁にすぎない。しかし、114条2項は、後訴での蒸し返しを防魏、当事者間の紛争の解決のために既判力を生じさせている。そうだとすれば、例外的に相殺に供した限度の債権を後訴での主張を遮断することはできないだろうか。
(ア)この点、前訴の訴訟物は、理由中の判断であるから後訴の貸金返還請求訴訟で作用するものとは言えない。しかし、上記114条2項の趣旨から、当事者間の信義則の原則を理由に後訴での請求は許されないと解するべきである。
(イ)本件では、Xは、前訴で相殺の抗弁で主張した債権を後訴で給付請求として訴えを提起している。これは、114条2項の趣旨に照らせば同債権の蒸し返しと同視
できる。

(2)したがって、後訴での請求は許されないというべきである。

3.よって、上記理由から、受訴裁判所はXの請求を全部棄却する旨の判決をすべきであると考えている。

(3)感想

• 問1:「遺産確認の訴えの利益が求められる理由を詳かにして説明しろ」とあるのに、遺産確認の訴えの利益について、一言も触れていない。他の人の答案を聞いてから、問題文を正しく読んでなかったことに気づきました。
 問題文に従わないと解答の大筋を外してしまいます。こういったことをしないように勉強していきたいです。点数的には、問1はかなり大失点した気がします。結論がどうこうとかよりも、悪印象を与えた可能性があります。

• 問2:受訴裁判所がとろうとしてる判決を理由を考えながら述べよというものでした。自白、既判力、相殺の抗弁など、超頻出の問題だと思いますが、問題文を読んで時間内に答案に書こうとすれば余裕で時間オーバーです。

 問2の答案では、他の人とか見比べたのですが、微妙だったところは、①自白について何も触れてない、②相殺の抗弁について前訴の訴訟物が後訴に作用する基準(同一、先決、矛盾)をどこに書いていないですし、③全体的に、原則例外が端折らてる。といったところでしょうか。

ただ、そんなことより、相殺の既判力で、無理に信義則の話を展開させてしまっていることも、114条2項の条文の使い方を全然分かってないと思われたと感じてます。

 この人は民訴を分かっていないんだなと思われてしまってもおかしくありません。民訴はどの問題でも、問題文を素直に読んで正しく分析することと、趣旨や定義を正しい理解で暗記することが重要だと思いました。

3 商法

(1)問題文

(2)再現答案 (所要時間35分)再現度90%

問1

1.会社法361条1項は、取締役の「報酬等」について、定款に報酬等の額について定めていないときは、株主総会の決議によって定めるとしている(361条1項1号)。その趣旨は、取締役及び取締役会から報酬のお手盛りを防止するために、株主に報酬等の額の決定を任せようと規定したものである。

2.退職慰労金が「報酬等」に含まれないのであれば、額について取締役会に一任することも許されるとも思われるため、問題となる。

この点、退職慰労金も、慣行等による馴れ合い、ひいては取締役及び取締役会によるお手盛り防止の危険が潜んでいる。そこで、取締役に対する退職慰労金も、「報酬等」に含まれると解する。

本問において、取締役であるAに退職慰労金1000万円を支払っており、「報酬」といえる。

3.では、退職慰労金の額を取締役会に一任することはできるだろうか。

(1)これについて、退職慰労金がお手盛り危険に準じた性質があることに鑑みて、①内規等により退職慰労金を支給できる基準があり、②それを株主に周知できるものであり、③株主総会で、右基準を越えない又は相当といえる範囲で支払うことを認めている場合に限って、退職慰労金の額を取締役会に一任することが許されると解すべきである。

(2)まず、甲社では、退職金の額を算定する内規があるため、退職慰労金額の基準がある(①)。次に、株主総会で内規に従ってAの退職金額を決定しているため、周知しているものと思われる(②)。そして、本件株主総会で決めた1000万円が相当な範囲であるといえるなら、退職慰労金の額を取締役会に一任することが許される。(3)したがって、退職慰労金の額を取締役会に一任することはできる。

4.本件Aに対する退職慰労金の支払いは適法である。

問2

1.非公開会社では、会社に対する支配的利益及び既存株主が自己の持株比率に強い関心をもっている。そのため、株式発行の募集事項の決定には、株主総会の決議が要求されている(199条1項、2項)。そして、その決議は、有利発行か否かに関わらず、特別決議で決定する旨を定めている(309条2項5号)。

2.反対に、公開会社では、株式発行を行う要請が強いこと、既存株主は支配的利益には関心を持つことが少ないと、一般的にいわれている。そのため、株式発行の募集事項の決定には、取締役会の決議で行うことができる(201条1項、199条2項)。

3.以上のように、既存株主の会社に対する支配的利益の関心の有無によって、募集事項を決定する機関が異なる。

(3)感想

 時間的に民法に圧迫されたので、商法は、問1で25分、問2で10分というキツキツな時間であったと覚えてます。案外覚えていた条文、論点であったので、できる範囲で最低限のことは書いたつもりです。
 まず、全体を見て、問1は解き切ろうと考えました。あとは、問2は300字程度(答案で10行)書いたかなあという感じ。
指摘する条文と募集事項を決定する機関が異なる理由の言及を間違えるとあまり点が入らないのかとかは、わかりません。「既存株主の会社に対する支配的利益への関心の有無」に触れられたことは良かった言えそうです。

 ロー入試で商法を得意としている受験生は少ないと思います。当日まであまり細かい論点や分野はできなかったので。対策としては、頻出の条文とA論点、時間あれば頻出分野のB論点を押さえとけば、基準点は上回ると思いました。

4 行政法

(1)問題文



(2)再現答案  再現度85%

1.Xは、本件決定について、無効の確認を求める訴えを提起することができないか(行訴訟3条4項)。

(1) まず、本件決定は、「処分」(行訴法3条2項)にあたるか。

(ア)「行政庁の処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている行為をいう。(判例)これは、公権力性及び直接・具体的な法効果性、さらには実効的な権利救済の必要性からなる。

(イ)知事Yが、都市計画法8条1項に基づき本件決定をしているから、優越的地位に基づ行為といえ、公権力性がある。
(ウ)では、直接・具体的な法効果性があるか。
この点、土地区画整理事業判例では、事業決定がなされれば、相当程度の確実さをもって換地処分がなされる地位に立たされるとして、直接・具体的な法効果性を認めている。本件決定の段階における用途地域の決定では、その後に直接具体的な処分がなされるものではない。さらに、不特定多数者に対しての行為でもある。したがって、本件決定は、直接・具体的な法効果性を有する処分とはいえないとも言える。

(2) しかし、本件決定が行われれば、建築基準法48条12項に規定する建物の建築が禁じられ、さらには、建築確認をすることもできなくなったことから、本件決定段階で実効的な権利救済の必要性を認める余地がある。

(3) よって、本件決定は「処分」にあたりうる。

2.次に、無効の確認を求める訴えを提起するためには、当該処分に続く処分により損害を受けおそれがある物でなければならないが(行訴法36条)、Xは、上述のとおり、本件決定の段階で、建築確認をすることができなくなるおそれが十分にある。

3.よって、Xは、本件決定の無効確認を求める訴えを提起すべきといえる。

(3)感想

あまり何を書いていいのか分からず、迷ってたらそれだけで10分くらい経ってた気がします。なんとなくそれっぽいことを並べた答案です。また、答案構成なしで書き始めました。無効等訴訟確認を提起すべきなら、処分性を認めないといけないなと思い、判例と逆の結論を取らざるを得なくなり、問題文の事実を使って説得力のある論述ができず、結果処分性を肯定することになりました。なお、解答筋は、当該処分行為の処分性を否定(土地区画整理事業判例がいう射程が及ばない)→実質的当事者訴訟の提起 だと思います。

行政法は、浅い記憶・理解だと基本的な考え方が試験で使えないし、説得力がない答案になります。
そのため、普段から暗記の少ない行政法でも記憶すべきことは記憶して、本番は答案構成をするなどすることも必要だったと思います。

5 全体の感想

 刑法で第2問はほとんど白紙、民訴と行政が手応え的に悪かった(単位認定試験の該当科目)ので、こんなんで合格しているのか発表まで不安な気持ちでいましたが、合格していて良かったです。北大は、2科目を超えて(3科目以上)、合格ラインを下回ると全体が足切り超えてても、不合格という制度なので、その点配慮したほうがいいです。

最後に、この程度の答案でも入れるということなので、受験生ができそうな問題で点を取る意識で学習すれば、過度に不安になる必要はないので大丈夫かと思います。






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