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先手必勝

先に始めた方が有利?!

先手必勝とは、囲碁・将棋の対戦で先手の方が勝つ確率が高いことから先に始めた方が勝てるという意味で使われています。

先手必笑

わざと間違えて使う人もいますが、「先に行動すれば笑うことができる」ことを表しています。
もちろん誤用ですので使うと笑われるかも知れません。

後手必勝

実は先手必勝の対義語で後手必勝というのもあります。
後手が必ず勝てるという意味です。

では、先手が先手必勝法を使い、後手が後手必勝法を使ったら、どっちが勝つのでしょうか。

《昔、中国の楚の国で、矛 (ほこ) と盾 (たて) とを売っていた者が、「この矛はどんなかたい盾をも突き通すことができ、この盾はどんな矛でも突き通すことができない」と誇ったが、「それではお前の矛でお前の盾を突けばどうなるか」と尋ねられて答えることができなかったという「韓非子」難一の故事から》二つの物事がくいちがっていて、つじつまが合わないこと。自家撞着 (じかどうちゃく) 。つまり矛盾ですね。

ツェルメロの定理

ここで経済学、特にゲーム理論の分野に馴染みが深い、ある定理を紹介します。
実は、次の条件1から5までを満たすゲームはすべて、
 ①先手必勝
 ②後手必勝
 ③少なくとも引き分けには持ち込める
のどれかに必ず当てはまることが証明されています。

【条件1】最終的なゲームの結果が「先手の勝ち」「後手の勝ち」「引き分け」のいずれか
【条件2】必ず有限回の手番でゲームが終わる
【条件3】それぞれの手番で選択を行うのはどちらか片方だけ
【条件4】各手番において、これまで相手がどんな選択をしてきたかをすべて知ることができる
【条件5】ゲームの中に偶然の要素が入っていない

同様の主張を約百年前に行ったドイツ人数学者の名前をとって、ツェルメロの定理と呼ばれています。

将棋をはじめ、チェスやオセロなどこの5条件すべてを満たすゲームには、理論上、①先手必勝か②後手必勝、あるいは、③引き分けに持ち込む戦略を双方が有する、という3つの可能性しかないことになります。

ただ、どちらが勝つかは法則がありません。

将棋の場合には複雑すぎて、コンピュータといえども必勝法の発見は不可能に近い。ちなみに、将棋で起こりえる局面のパターン数は、10の220乗ほどではないかといわれています。

GPS将棋のように1秒間に3億パターン読んだとしても、すべて読み切るには、10の200乗年以上という、途方もない計算時間がかかる(宇宙の年齢ですら10の10乗年程度にすぎない!)。どんなにコンピュータ将棋ソフトが強くなったとしても、すぐに必勝法が見つかる心配はなさそうです。

藤井聡太竜王のこれまでの公式戦全371局における、先後別の勝敗データ

2023年のプロ将棋最新情報および将棋棋士データのまとめ

数字上は先手の方が勝率は高いですが、そう差はないように見えます。
強い方が、後手でも勝てるようです。

2021年名人戦から2022年竜王戦まででタイトル戦は全65局あり、先手の35勝26敗4千日手でした。勝率にすると.573。やはり、先手が有利なんですね。
ただし、事前に先手か後手かがわかっている対局(振り駒のある第1局と最終局を除く)だけで集計しなおすと、全46局で、先手の24勝20敗2千日手(勝率.545)となります。

将棋タイトル戦での先手番勝率と戦型(2021年以降)

先手が有利なのはミスのない攻めが続く場合、どこかでミスがでれば形勢は逆転します。先手でミスなく攻めきれれば勝率は高いと言えるでしょう。



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