サンフランシスコ市は都心のオフィスを減らし住宅を増やすための制度変更へ
case | 事例
パンデミック後は従前以上に多くの人々が自宅やハイブリッドな環境で仕事をしている傾向がある。そのため都市は、かつてオフィスワーカーで賑わったダウンタウンをどのように進化させるかに頭を悩ませている。オフィスビルの空室は、米国全体のアフォーダブル住宅の危機と重なり、一部の都市は中心市街地の商業・オフィス空間を減らし、住宅空間を増やす新しい方法を試み始めている。サンフランシスコのブリード市長は、2030年までに少なくとも3万人の新住民と学生をダウンタウンに呼び込むことを目標としている。
そこで現在提案されているのが、オフィススペースの最低面積撤廃である。この制度の変更は、セントラル・サウス・オブ・マーケット地区とトランスベイト・トランジット・センター周辺の大規模な新規プロジェクトに適用される。現在、これらのプロジェクトでは、商業・オフィス空間と住居空間を2対1の割合で提供しなければならないことになっている。市長はこの法案はオフィス需要の変化と市の住宅目標に対応するもので、ダウンタウンの進化を妨げてきた障壁を取り払うのに役立つと説明している。サンフランシスコは昨年もダウンタウンでのオフィスから住宅への転換を奨励するプロジェクトへの規制緩和を実施した。
地元の不動産デベロッパーは「制度の改正が適用される地域は、過去10年間で数十億ドルの交通機関への投資が行われ、住宅を増やすのに最適な場所」となっている、と歓迎している。また、都心住宅の推進組織は「法案によって生まれる新しい住宅は、それを必要とする人々に都心部での住処を提供し、地区が継続的に成長し繁栄することを担保するのに役立つ」と述べている。
insight | 知見
サンフランシスコのパンデミック後の苦境と都心居住への対応はこれまでも色んな記事を見てきましたが、今回の施策は大規模プロジェクトのオフィス面積比率を減らして住宅に割り当てるものです。
福岡市都心の再開発はオフィス・商業が基本で、行政は都心での世帯用住宅の開発に消極的だと聞きます。消極的な理由は、過去に都心居住の空洞化の流れに沿って、都心の小中学校の統廃合を政策的に進めてきた経緯があるので、再度学校を拡大したり増やしたりするのは過去の政策の否定に繋がりかねないからだと聞きます。サンフランシスコなど、都心居住容量を増やそうとしている都市は、都心の教育環境をどのように整備しようとしているかは気になるところです。