見出し画像

サクラメント市の2045年までに市域の樹冠を大幅に増やす計画

case | 事例

サクラメント市は、2045年までに市域の樹冠被覆率を19%から35%まで増やすサクラメント都市森林計画案について、パブリックコメントを開始している。計画によると、市、市以外の組織・機関と市民は、あわせて年間約25,000本の木を植え、100万本の既存の木を保護する必要があり、市単独では目標を達成できないとしている。市は新しい樹木をすべて植えるのに十分な土地を所有しておらず、現在約10万本の樹木を管理しているに過ぎない。市は都市林作りのリーダーであり、公共スペースにある樹木に対する責任がある一方で、個々の住宅所有者や企業、その他の機関もまた、この共同作業の一部であるとプログラムの担当者は言う。

現状では市内の10街区(neighborhoods)は、すでに樹冠率が35%以上であるが、69の街区では樹冠率が20%以下となっており、歴史的街区で市内観光の中心地であるオールド・サクラメントと労働者層の居住地区であるメドウビューの樹冠率はそれぞれ約12%にとどまっている。計画では、樹冠のレベルが最も低く、暑さに最もさらされる地域に新しい木を植えることを優先することを提案している。2019年の調査によると、サクラメントの地域間の気温差は最大20度で、樹木の多い裕福な地域ほど気温が低い傾向にある。

サクラメントは”樹木のまち(City of trees)”と呼ばれているが、市長は計画案発表の会見で「市内すべての地域にとって”樹木のまち”であることを意味する必要がある」と語り、官民のパートナーと協力しながら、ノース・サクラメントとサウス・サクラメントを含む樹冠の格差をなくすと述べた。計画では、樹木の節水型の育成や維持管理方法について不動産所有者に対しトレーニングすること、成長した樹木を市に登録した場合、不動産に対して税金を減免するなどの経済的インセンティブを検討することも提案している。

https://www.capradio.org/articles/2024/04/29/sacramento-has-a-new-plan-to-grow-the-citys-tree-canopy-and-wants-your-feedback/

insight | 知見

  • 福岡市では「都心の森1万本」プロジェクトが進行中ですが、プロジェクトの目的は「良好な都市景観の形成や都市環境の改善を図り、緑豊かなまちづくりを推進する」といった、行政の事業でありがちな定性的な目標設定になっています。都心の樹冠をどの程度増やすのか、どのような空間的または社会的ギャップを埋めるのか、といった科学的で定量的な目標設定はサクラメントから学べると思います。

  • サクラメント同様、福岡市の上記プロジェクトも市民や企業との共同作業であり、市民や企業の協力無しでは達成できないと考えられますが、市民への植樹の教育の枠組みや、樹木が育った際の市民へのリターンについての制度もサクラメント市から学べると思います。