デマや誤情報への対応の最前線に立たされている都市
case | 事例
意図的に誤解を招くように仕組まれた「偽情報」と、意図せず保有または共有された不正確な「誤情報」は、世界中の都市で過去から拡散されてきた。現代は情報量が急速に増え、共有され、不信や混乱が蔓延する異常な時代にあり、偽情報は都市にますます大きな影響を与えており、都市は偽情報への対応戦略の最前線に立たされている。都市では、デマは抗議や混乱などの物理的な出来事として現れる他、政治、組織、コミュニティのリーダー個人にも影響を与えうる。デマにより、都市行政や選挙で選ばれた機関の機能が損なわれ、統治、政策立案、都市の労働力を滞らせ、また、コミュニティにも影響を与え、信頼を低下させ、分裂や極端化を招き、偏見で社会的な亀裂を悪化させる。
地方自治体は、住民にとって最も身近な政府機関であり、地域社会を導く役割を担っている。地域住民に影響を与える、ますます複雑化する社会問題やグローバルな課題に対処することが求められています。メルボルン大学都市センターの「都市におけるデマへの対応プレイブック」と題された報告書は、デマに対する地域レベルでの対応について情報を提供し、それによって地域社会と民主主義の健全性を高めることを目的に公開されている。
ニューヨーク市は、新型コロナのパンデミックの最中デマの温床となり、誤った情報がワクチンへの不安を煽り、他のマスク着用や隔離などの公衆衛生対策に対する不信感が煽られ、医療従事者に対する暴力の脅威にもつながった。NYCの対応はパンデミックの初期段階から始まり、2021年に市の職員が保健局と協力して「誤報対応ユニット」を結成し、COVID-19とワクチン接種に関する陰謀論や誤解をより深く理解し、市全域でのCOVID-19ワクチン接種を改善することを進めた。具体的にこのユニットは、英語以外のメディアを含む複数のプラットフォームにおける誤報やデマの報告を監視し、その後、地域パートナーと協力して、多様なグループに合わせたメッセージを配信したのである。こういった取り組みにより、NYCはデマキャンペーンに対処し、信頼回復に向けた一歩を踏み出すことができた。都市や社会がかつて直面したことのないほどの速さと規模でデマが拡散している現在、その対応は全ての都市が準備しておかないといけない。
insight | 知見
レポートでは都市で拡散されるデマの分類、事例や影響なども整理されていて読み物として面白いです。「都市は単独組織でデマに対処することはできず、より広範な多部門・多レベルのデマ対応システムが必要」「都市におけるデマは、個人、組織、社会に影響を及ぼすものであり、この3つすべてに対処する必要がある」「誤情報の対処法は一つではなく、継続的な対応を頻繁に振り返り、組み合わせて適用する必要である。」といった基本的な原則も示されています。
信頼の構築、コミュニティの構築、傾聴・コミュニケーション、コラボレーションなどの対応の方向性もレポートで示されています。日本の都市でこのような観点で準備ができているところはあまりないのではないでしょうか。