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熱帯のシリコンバレーを目指すリオ・デ・ジャネイロ

case | 事例

リオ・デ・ジャネイロは、首都がブラジリアに移り、証券取引所がサンパウロに移ってからの数十年間にわたって、人材も資本も流出し、都市が活気を失う中で新しい経済モデルを模索してきた。そのリオは今、地域のテックハブとして再出発しようとしている。市長として3期目を迎えたパエス氏は、リオをラテンアメリカのイノベーション・ハブに変えるべく、暗号資産、炭素市場、オンラインゲームといった新産業を誘致しようとしている。

市長は、リオの文化的・地理的な魅力が新興分野のリモートワーカーや開発者を惹きつける鍵になると考えており、新産業の誘致、減税、進出メリットのある法律の施行の他、新たな経済に対応した地区の再整備を進めている。具体的には、かつて荒れ果てた港湾地区をテクノロジーハブへと変貌させるプロジェクトが進行している。リオ州政府は、プロジェクトに参加する企業に対して税制優遇を提供し、投資を呼び込むだけでなく、地元の卒業生を地元の労働市場に引き留めることも狙っている。

一方で、著しい経済格差、安定しないサービス経済、ホームレス問題、治安上の懸念などの社会的問題は、リオの変革を難しくしている。リオがデジタル・ノマドの目的地として売出し始めてから2年以上が経過したが、10月の時点でブラジルに入国するためのリモートワーカー・ビザを取得したのはわずか700人ほどであった。ただ、この数字は実態を表していないとのことで、リオ市はSNS等の分析に基づき、約4,000人のリモートワーカーがいると推定し、2月のカーニバル時にはリモートワーカーが8,000人を超えると予想している。専門家は、ハイテクとローテクの両分野に同時に投資し、リオが抱えている諸問題に対処することが、都市経済の活性化には不可欠だと指摘している。

insight | 知見

  • 日本でも様々な自治体がリモートワークやワーケーション環境の整備を進めて、首都圏などから人材や企業を地域に誘致しようとしています。さすがに記事のリオとはバッティングしないと思いますが、人材・企業の誘致合戦は、国内の自治体間にとどまらず、海外の地域とも競争関係にあるのだと思いました。

  • 逆に、海外の人材・企業に日本の地域でリモートワークやワーケーションをしてもらうための活動は円安の今は適しているとも考えられます。そのためには自治体がよりグローバルに情報発信をする必要がありますし、記事のリモートワーカービザのような新しい制度も創っていくことが大事だと思います。