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男性不妊症の原因と薬物治療

 本邦では少子高齢化が現在急速に進行しつつあり、生殖補助医療の重要性が増しています。2017 年には全国で 586 施設、年間 448,210 周期の生殖補助医療が行われ、このうち生産分娩にまで至った治療周期は 52,997 周期(11.8%)、56,617 人の新生児が誕生しています。

菅 義偉 首相は少子化対策として、不妊治療の保険適用を実現する方針を所見表明演説で示されました。特に、2022年の夏頃を目途に保険診療を目指していると報道あったかと思います。

しかし、何も準備せずに、すぐに保険診療を行なうことはできません。理由は、①現在行われている治療の科学的なエビデンスの有無や、②本邦における診療の実態を示す必要があります。

しかし、生殖医療はエビデンスを構築することが困難な領域であり、十分な科学的エビデンスが構築される前に新たな医療が日常診療に導入されている現状があります。

ただ、保険診療を行なう上では、このエビデンスの構築が難しくてもガイドラインの作成が必要となります。

本題の男性不妊症に戻ります。男性不妊症の原因は、第1位は、約80%は造精機能障害といって原因不明です。第2位は、性機能障害で、13.5%くらいです。第3位は、精路通過障害となります。

今回は、この第2位の性機能障害について書きます。性機能障害の内訳としては、勃起障害と射精障害があります。割合は射精障害の方がやや多い感じです。この2つの説明をすると、とても長くなるので、今回は、勃起障害についてのみ書きます。

勃起障害は、言葉のとおり、性行為のときに勃起ができず、性交渉ができず、膣内で射精ができないことです。女性の方には、理解し難いと思いますが、男性不妊症の外来をやっていると、この勃起障害の問題はよく見受けられます。原因は、心因性勃起障害といって、性交渉に対するプレッシャーによるものです。例えば、奥さんが「今日は排卵日だから、よろしくね♡」といって朝に会社に送り出すとします。旦那さんは、昼間は仕事をがんばって、帰宅時間が迫ってくると、家に帰るのが、なんだか、そわそわしてきます。「今日、排卵日って言ってたな。がんばらないと。」こんな感じですかね。(*ただし、現在のコロナ禍の環境では、在宅勤務となっており、お互いが自宅にいるかもしれませんが。)

とにかく、朝の一言がプレッシャーと感じて、男性が、心因性勃起障害を起こします。心因性勃起障害の特徴は、マスターベーションや早朝での勃起現象は正常であることが多いです。

確かに、タイミング法をとっているカップルには、排卵日に性交渉をもつことは非常に大事なんですが、これをプレッシャーに感じる男性は少なくないのです。

治療は、PDE5阻害薬を用います。商品名だと、バイアグラ、レビトラ、シアリスという名称です。ただし、この薬は、自費診療でしか処方できません。

しかし、効果は非常にあり、平成27年度に施行した全国調査では、86%に効果がありました。心因性勃起障害は、肉体的には問題ないので、一度でも勃起ができれば、2回目からは、薬に頼らずに勃起ができることも多いです。

ここで、今回のタイトルの”保険診療を目指して”を思い出してください。先ほど、僕は、自費診療でしか処方できないと書きましたよね。そうです!もし、男性不妊症の原因の第2位である勃起障害の治療薬であるPDE5阻害薬が保険診療で使うことができれば画期的ではありませんか?

今回はここまでです。それではまた。

PS:最近、clubhouseを招待してもらい聞いていますが、医療系も多少ありますね。ここで、男性不妊症とか不妊症に関してルームを開催したら聞いてくれる方はいるのかなーって。


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