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ロードスターRF 試乗記 ~前編~

マツダロードスター。私はこの車に並々ならぬ思いを抱いている。というのも、私は昔から本当にクルマが大好きであった。しかし、ロードスターにもオープンカーにも特に興味があるわけでもなく、当時は車のこともよくわかっていなかったから、ランエボ厳つくてカッコいいな、くらいにしか思っていなかった気がする。そんな中で、中学2年生に初めてのスマートフォンとしてライトブルーのiPhone5Cを手にした。すると、当然のごとく片道2時間電車に揺られて通学していた私の通学時間はクルマ関係のネットサーフィンに費やされることになった。その時に最も私が読み漁ったサイトが”Life Meets Speed!!"というサイトであった。このサイトは自動車の試乗記をメインとして、技術情報や運転のこと、はたまた筆者の方の愛車事情などが、登場人物の対話方式で描かれているという、非常に読みやすく興味深いサイトであった。(残念ながらこちらのサイトは現在は筆者の方の事情によって閉鎖されてしまっている)今考えてみると、このサイトで得た車の知識や、車に対する思想が現在の自分のクルマ観の根幹になっている気もするが、このサイトにおいて最も推されていた車こそがマツダのロードスターであった。このサイトの管理者の方は実際にNBロードスターオーナーの方であったので、ロードスターのハンドリングの素晴らしさや、オープンで走ることの素晴らしさがサイトの各所にて記述されていて、影響を受けざるを得なかったのだ。そこから自分でもロードスターについて調べていくことでさらにロードスター愛は強まり、中学卒業までには初めての愛車はロードスターにしよう、と心に誓っていたのだった。その数年後、私は見事NBロードスターオーナーとなった。しかも当時、私の周りにロードスターの個人売買の話は3件も舞い込んできていたため、私がロードスターに乗るのは運命だったのだと勝手に思い込んでいる。前置きが長くはなったが、私のロードスター愛は感じていただけたことだろう。

先日、私は近くのマツダディーラーに自分のロードスターの部品を買いに行っていた。何しろ私のロードスターは23年落ち(なんと私より年上)、26万キロ走行のご老体なのでガタはきまくっているのである。そしてディーラーに到着すると、紺色のロードスターRFがディーラー前に鎮座していた。ディーラーに入店し、席に案内され飲み物をいただきながら一息ついていると、担当者の方が接客中で時間がかかるという。私は思わず、「そのRFを試乗させていただけませんか」と尋ねた。すると、担当の方は誓約書を持ってきて私を快く案内してくださり、私はロードスターRFを試乗することができたのであった。

その試乗車はロードスターRFの6ATモデルであった。グレードはVSホワイトセレクション。白色のレザー内装をまとったモデルだ。私の中のかねてからの疑問として、果たしてロードスターはATでも楽しいのか、というものがあった。これに関してはNC乗りの友人と「ハンドリングに集中できるからそれはそれで楽しいのではないか」という結論が出ていたが、今日はその議論が正しかったのか確かめる絶好のチャンスである。

まずは乗り込む前に外装を眺める。ボディーカラーはディープクリスタルブルーマイカという名前の紺色だ。この色は私の記憶ではマイナーチェンジ時にエターナルブルーマイカという薄い青から入れ替わる形で採用された色だったと記憶しているが、どうだっただろうか。ともかく、白い内装ととてもマッチしている。NDロードスターが発表されたとき、私はまずデザインに驚かされた。歴代ロードスターは、その教祖たるNAロードスターのデザインを、その時代に合わせてアレンジしたようなデザインをしてきた。しかし、NDロードスターはその丸っこいデザインを卒業し、切れ長の目と引き締まったボディラインを纏って登場した。しかも驚きはそれだけにとどまらなかった。その数年後に発表されたハードトップバージョンのロードスターRFは、タルガトップスタイルのルーフを架装されていたのだ。もちろん、そのデザインはNDロードスターの鋭いボディラインとマッチしていて、これまでのロードスター、いや、汗臭いデザインばかりの国産スポーツカーとは一線を画す、エレガントで上品な雰囲気を纏っていた。その印象は発売当初見かけた時も、あらためて今実物を間近にしても変わらない。

ラゲッジスペースを開けてみると、私のNBや友人のNCと比べて、深さはあるが奥行、幅ともに小さくなったなという印象だ。この幅に関してはNDロードスターはオーバーハングの軽量化のために、前後ともフェンダーより先のオーバーハング部分が窄まるような造形になっているのが原因だろう。そして何より、開口部がとても狭くなっている。これでは寸法的にラゲッジに収まるサイズのものであっても、開口部の大きさに合わずに入らないということだってありそうだ。開口部含め、ラゲッジのサイズは幌車でも変わらないらしい。ロードスターにはラゲッジの内装材を剥がすと積載性が大幅にアップするという裏技があるのだが、このNDロードスターでも通用するかは分からない。ただ、横と奥側の壁はプラスチックの内装材で覆われていたことから想像するに、これを剥がせばシート裏のロールバーの場所までアクセスできて一気にラゲッジが広くなるのではなかろうかと思う。

そしてシートに乗り込む。ここでカバンの置き場がないことに気づく。助手席にはセールスの方が乗っているので、荷物を持っていただくのも忍びない。結局、運転席と助手席の隙間にある小物入れにカバンをしまうことになったが、とても小さな肩掛けバッグであるにも関わらず、その物入にそのバッグ全体は入らず、はみ出すような形になってしまった。

-私の乗っているNBロードスターはとても荷物が載る。そりゃオープン2シーターとしては、であるが、少なくとも購入前の私の想像をおおきく上回る積載性だった。先述のラゲッジの広さも然り、居住スペースでも左右のシート裏に手荷物のリュックくらいまでなら載せられるし、屋根を開けないならばヘッドレスト裏にもスペースがある。ところが、NC以降のロードスターでは更なる安全性と快適性の向上のため純正で簡易的なロールバーとウィンドディフレクターが装備されることとなり、シート裏のスペースはロールバーを覆うプラスチックの内装パーツでもはや荷物を置くスペースはなくなってしまった。さらに、NBではシートを前にずらせば仮眠に最低限なリクライニングをすることができたが、それもできなくなってしまっている。リクライニングは仕方ないにせよ、シートは2つついているのだから居住スペース内に2人分の手荷物を載せるスペースを設けてほしいものだ。シート裏の壁にラゲッジスペースに通じる穴を設けたりすることで何とかならないだろうか。私はロードスターの最大の魅力は運転の楽しさに必要なものを全て備えていながら、乗用車としての日常ユースに耐える実用性と快適性と経済性を備えていることだと思っているので、このポイントは大きな減点ポイントだと思う。

話を内装に戻そう。NCまでのロードスターの内装は豪華グレードでさえシンプルでプラスチッキーでお世辞にも質感は高くなかった。しかしNDでは内装にも見受けられたNAコンプレックスを払しょくして質感も高くてモダンなデザインとなった。丸いエアコンの吹き出し口はどこかフェラーリの812スーパーファストに通じるようなデザインでスポーティだし、インパネ下部に3つ並ぶエアコンスイッチも格好いい。特にこの試乗車はレザー内装なので、ドアトリム中央やダッシュボード中央を横断するようにレザーが張ってあり、とても豪華な内装だ。そしてドアトリム上部にはすべてのグレードで共通の外装カラーのパネルが張り付けられている。この個体の場合、紺のドアトリムと白のレザーでとても華やかな内装だ。

シートのレザーは触り心地もよく、硬くて突っ張るような感触もない。NBロードスターに乗っている身としては、座った景色に特に違和感はない。あえて言うなら、幅の広くなったコンソールと平べったくて手前側に尖ったダッシュボードの形状のせいで歴代ロードスターと比べると圧迫感があるが、ロードスターのシートなぞタイトでなんぼであるし、内装は美しいので近づかれて嫌な気分はしない。

最近のマツダは人間工学的に正しいインターフェイスを声高にアピールしているが、この車もその例外ではなかったようだ。シートやステレコの調節機構も多く、すぐに自然なドライビングポジションが決まった。

そして、私はギアをドライブに入れて車を動かした。そのロードスター然とした運転席の眺めに思わず左足を動かしたが、この車はATである。さて、ロードスターの肝はハンドリングをはじめとする走行性能であるが、その走りはどうだろうか。近日投稿予定の後編で記していこうと思う。


追記:後編ができましたのでお知らせします。


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