ドラゴンズ前半戦-立浪改革で12年ぶりに見えた希望

月間成績の推移


恐ろしく打撃と先発と中継ぎの数字が噛み合わない2023ドラゴンズ

オールスター明けの初戦に連敗で34勝2分50敗、借金15で最下位。とにかく打撃と先発と中継ぎが噛み合っていない。打線は7月まで歴史的な貧打線。先発は大野離脱の影響が大きかった。小笠原は安定した結果を残し新加入のメヒアも素晴らしい投球を見せた。しかし涌井、福谷はパッとせず高橋宏斗は中6日の起用に耐えられなかったのか、7月に急降下。長いイニングを投げられない松葉は中継ぎが崩壊した6月に序列が下がって2軍の登板が続く

中継ぎはロドリゲスの亡命に伴い勝ちパターンを固定できなかった。加えて藤嶋の故障と森の不調で負け試合のロングリリーフ要員が定まらず。結果、僅差負けの試合でも勝ちパターンを消耗させる起用が続き7月に福と祖父江のベテラン勢が力尽きた

上田と岡野をロングリリーフに据えた事で勝野、清水が勝ちパターンも含め7月中継ぎ陣は落ち着きを取り戻した。しかし前述の通り先発が燃えているため打線がリーグ平均を超える成績を残しても勝ちに結びつかない。前半戦を総括すればセリーグ最弱のチームに運用が下手な監督がトドメを刺したというところだろう

週間-勝敗数の推移

借金3以上が水色。貯金3以上が橙色。貯金2以上が黄色

アキーノの攻守に苦しめられた4月
ビシエド不在の間に1勝9敗だった5月2週から3週
無能采配を連発したロッテ戦と苦手な日ハム新庄戦に負け越した6月3週
この3週間で4勝1分22敗で借金18。残り30勝1分28敗。大型連勝する爆発力がなく、歯車が狂うと連敗するので最下位を抜け出せないが希望は生まれつつある

ドラゴンズは何故弱いのか

落合監督の頃から始まった致命的ドラフト失敗がドラゴンズの弱い主因だ。2013年-2016年にかけて高卒野手を石垣しか指名せず、4年後の2017-2020年にかけて大学生・社会人を郡司と三好しか指名しなかった。高校生ドラフトが終わった2008年-2012年で指名した高校生の野手も僅かに4名。2008年7位の井藤、2010年2位の吉川、2011年1位の高橋周平、2012年5位の溝脇

1993年-1998年に生まれた世代の野手を質・量ともに指名が不足した結果が現在の野手の歪な編成の失敗だ。この6世代でドラゴンズが指名した野手は僅か8人。滝野は戦力外、京田と郡司がトレードで退団し新人の福永を除くと高橋周平、溝脇、三好、石垣のみ。彼らは同世代の選手と切磋琢磨できる環境ではなく今も柱になれず1軍と2軍のレベルをフラついている

1993年~1998年のドラフト失敗が野手の実力不足の原因

この失敗世代を現役ドラフトやトレードで強化した。細川、宇佐見、川越は一瞬でも一軍で通用した、打球が強くて長打多め、選球眼それなりにあり、スイングが綺麗、間の取り方が下手、崖っぷちプロ7-8年目と共通している

3選手のドラゴンズ加入前の成績

宇佐見や細川と同様に川越もOPS.800近い成績を残せたなら、柱になりつつある岡林、石川、龍空と6本レギュラーが固まる。郡司はOPS.650前後の実力で守備に弱点を抱える。控えの戦力になっても柱になるか分からなかった。即戦力不在の編成上、郡司や高松で目先の戦力とトレードは正しく立浪監督は勝てる選手に切り替えようとしている。悪い癖を直せば優れた選手に化けうる素材を取り野手の戦力を底上げしようと図っており、全て若手にシフトしようとしている訳ではない

野手-育ち始める立浪チルドレン

https://nf3.sakura.ne.jp/Central/D/t/fp_all_data_etc.htmより
2022年の参考データ。捕手、二塁、遊撃、外野の一角に穴

一塁手、二塁手、遊撃手、左翼手と途中出場の選手の成績が悪い事で今季は貧打に苦しんでいる。2季連続OPS.790強のビシエドがOPS.600にも満たない不振にあえぎ、OPS.690-750を打ち続けた大島の成績もOPS.607と冴えない。これまでチームを支えてきたビシエドと大島の不振がなければ平均レベルに打撃は復活していた

昨季の不振期が今季の好調期と同レベルのビシエド。打球が弱く復調の気配が全くない
3.4月と7月は例年なみの数値ながら不調を補う好調期が来ない大島

ベテラン2人の穴を2年連続で最多安打ペースの岡林、7月まで打線の主軸として大活躍した細川、7月絶好調の石川、細川の不振を穴埋めするトレードで獲得した宇佐見が埋めた。加えて龍空は6月終盤から打撃が一気に覚醒。僅かな期間だがリーグ平均並みの打撃を見せている

福永は体力があったシーズン序盤はリーグ平均の活躍を見せ、村松も5月に石川と同じ5失策を記録したが徐々に守備がプロのレベルに適応し始めた。もちろん来季の細川や石川が今季の好調期ぐらい活躍する計算はできない。だが条件さえ整えばOPS.800を目指せる選手と期待できるレベルになった。岡林、石川、細川の3本柱に加えて宇佐見がOPS.700打てば木下に次ぐ捕手の穴も埋まる。遊撃手の穴は龍空の成長で埋まれば残る穴は一塁手と二塁手と左翼手の3か所にまで減る

立浪チルドレンの活躍。岡林・細川・石川・宇佐見は来季の4本柱候補

一塁手はビシエドと福田のベテランや福永や宇佐見の起用、二塁手は田中の復帰、福永の守備改善に加え村松の適応に私は期待している。OPS.600前後打ちそうという村松への評価は過大評価だったが、彼の真価は3年目に発揮されるという予想は変わらない。3年目の覚醒は大島など基本が出来ている選手は徐々にプロの球に慣れて打つようになるという当たり前の現象である

村松と大島の1年目を比較

大島も1年目は投手が弱い広島と横浜で稼いだ数字がなければ打率は.226でOPS.567だった。投手のレベルアップ、故障明け2年目を考えると村松の成績は決して悲観するものではない。恐らく2025年にはOPS.700前後を打つ大島の後継者になりうる人材といえる。バントが下手なのも…

大島、ブライト、鵜飼の競争に川越が加入。更に内野手として絶望的に守備下手な濱が本職の外野で抜群の身体能力を武器に攻守で躍動し始めた。更には盗塁が出来てソコソコ打てる三好、コンタクト技術に優れる福元を抱える外野は最激戦区になった

守備力の高い二塁手と遊撃手、打てる一塁手も三塁手も足りないが、野手の戦力は久しぶりにプロ野球チームらしくなってきた。3位を取った2020年を超える戦力が揃いつつある。残念ながら今季は岡林と大島が打つ時期と石川と細川が打つ時期がズレてビシエドの不調により得点力が著しく低い。良い駒を抱えてても打てる選手が5人並ばないと強打者との勝負を避けられてしまうのだ

セ6チーム野手の比較
最大の課題である野手選手層の問題が改善している事が最大のポジティブ要素

投手-ドラフト失敗で高齢化

2018-2020年にドラフト下位指名の高校生投手が全く戦力にならず育成落ちと支配下登録を繰り返している。繰り返しになるがこのスカウト力のなさがドラゴンズの弱さである

1992年世代は上位で浜田智、中位下位で福、阿知羅、金子、関、宋を指名
1993年世代は上位で佐藤優と西川と野村、下位で川崎を指名
1994年世代は上位で濱田達と柳、中位下位で笠原、丸山、若松、山本、岡野を指名

この3世代で17投手を指名した。結果は1年だけエース級の活躍でローテ投手に成長した柳、中継ぎで戦力になった福を除くとかなり厳しい。佐藤と笠原と若松が2シーズン弱は活躍したが、他の12人は殆ど仕事が出来ていない。岡野は敗戦処理での活躍が今後期待されるが、戦力外になった14名は活躍を上積みする事はない。因みにこの3世代は大谷、吉田、鈴木誠也のメジャーリーガー、近藤、佐野、近本、大山、森、塩見といった素晴らしい選手達が居る豊作の世代であり、当時のスカウト部長だった某N氏がドラゴンズ低迷で最大の加害者。立浪監督は戦力不足の被害者であり、下手な戦力の運用で加害者でもあるが彼の責任は5~10%程度に過ぎない

野手の指名に追われて投手ガチャを引く回数が減った結果、高齢化する投手陣

小笠原、大野、高橋宏斗の3本柱に柳、松葉が人並の活躍をした昨季。6本目の先発が居らずに苦労した。結果、弱い内野手から阿部を放出してでも涌井を獲得する必要があった。今季は大野のネズミ除去手術によって柱が抜かれ高橋宏斗はWBCや山本コピーが上手くいかなかった所もあって安定しない。小笠原1人に負担がかかっていた現状でメヒアの獲得は非常に大きかった

現在の先発は大野と涌井と松葉は年齢、小笠原と高橋宏斗はメジャー志向で5年後には総入れ替えが予想されている。これに対し未来の先発候補は上田と仲地に続くのが故障が多い梅津、行方不明の森山、先発より抑えが向いてそうな根尾で頭数が足りていない

2019‐2021年に指名した8投手で一軍に定着したのが高橋宏斗のみ。育成が順調なのも福島だけ

貧打のチームで勝つには柳を先発の5.6番手にする必要がある。彼が3.4番手では苦しい。元気な時の涌井は良い球を投げるので中10日ぐらいで回す運用が理想だろう。小笠原、大野、高橋宏斗に次ぐ先発が必要で仲地が何処まで来季に夢を見せてくれるかが後半戦の見どころである

補強ポイント

上位・中位指名候補
 未来の先発
 強打の内野手
下位・育成指名候補
 守備が上手い遊撃手
 即戦力の中継ぎ

野手

来季の構想と今季の戦力外予想。黄色が補強ポイント

堂上と今季加入の3外国人が引退/退団で捕手7名、内野手12名、外野手9名、内外野の兼務が鵜飼/福元/濱の3名で31名。味谷/山浅/石橋に経験を積ませるため若手捕手は不要もベテラン戦力外で補充は可。即戦力の一塁手と遊撃手と未来の強打者が内野に欲しいので計34名と予想する

大島とビシエド以外の6ポジションが補強ポイントだった暗黒時代から大島とビシエドが衰える奇跡の時代を岡林、細川、石川、龍空の成長で穴の半分埋めた。木下に次ぐ捕手の不在は宇佐見で埋まり、残るは3ポジション

二塁手は村松と福永の飛躍、田中の復帰に期待がかかる。守備の名手と天才を除き活躍する野手の大半は25歳前後からが勝負である。社会人卒も大卒も2~4年目に出てくるのが普通で、高卒も細川のように7年目には出てくる。遊撃手には龍空で未来の目途が立ったものの、二塁手は昨季の戦力で期待の若手が居なかった。そのため立浪監督は村松と福永の2年目に期待して起用を続けている。監督は彼らのミスも計算してるだろうが、何度も同じミスを繰り返せば来季の構想から外れて来季も田中の育成シーズンになるだろう。ただ期待の若手が渋滞しており今オフに二塁手の補強は必要ない

左翼手は大島に加えて川越、ブライトと鵜飼に加え濱や三好や福元が居り、左翼手も今オフは補強不要だ。問題は一塁手でビシエドしか戦力が居ない。鵜飼のコンバートに加えて外国人も取る必要性がある。三塁手も戦力が不足しているため、強打の内野手もドラフトで狙う必要がある

また遊撃手も毎年春先の調子が悪い龍空のみという編成。濱の守備が厳しいことから守備重視で即戦力の遊撃手も中位・下位の指名で獲得したい

投手

黄色が補強ポイント。未来の先発候補と計算の立つ中継ぎが不足

谷元が引退し石森と近藤が育成降格で岩嵜が支配下に戻って31名にドラフトで3投手を獲得し34名の予想。最大の補強ポイントは未来の先発。メヒアが残留なら小笠原、大野、宏斗、メヒアの4本柱。残る2枠を柳、涌井、松葉、上田、仲地の5人で回し、1人がロングリリーフで回る陣容なら2軍のローテも劇的に改善する。ようやく長期的な視点で先発の育成を回す環境が整う

中継ぎはフェリスが活躍して来季も残留してくれればマルティネスの抑えに繋ぐ勝ちパターンが清水、勝野、フェリス、松山で回せる。ビハインドなら藤嶋、岡野、齋藤、砂田、福島と先発から1人回せば安定するだろう。福や祖父江や岩嵜の良い時期は勝ちパターンの若手を休ませる事も可能になる。投手で必要なのは未来への投資で大器の先発候補を獲得したい。中位以降で即戦力の中継ぎ候補が居れば祖父江や田島や谷元などの高齢化する中継ぎ陣のテコ入れに指名したい

遂に見える希望

今季は内野の育成シーズン。3位か4位の可能性が高く、1位と6位の可能性が低いといったが予想通りに内野手が課題で今シーズンは苦しんだ。エースの大野と二塁手のレギュラー候補の田中が故障して勝ちパターンのロドリゲス亡命から5位か6位の可能性が高くなった

ここでも書いたが2024年が勝負の年である。今年は主力選手が長期の故障に見舞われなければAクラスを争う→大野とロドリゲスが抜けて当然Aクラスは無理という流れだった。ただ来季は主力選手に長期の離脱がなければ優勝を目指せる戦力が揃いつつある。与田監督の投手整備と立浪監督の若手野手と心中のお陰もあり、夢も希望もない2018年末から僅か5年で戦力が揃いつつあるのは奇跡だ

立浪監督の采配は30点~35点で赤点だが、采配以外は90点を付けても良い。名将と言われた落合監督も2004年以外は采配が100点と言えず、2005年以降は戦力が揃ったので70点~85点の采配・マネジメントでも優勝できた

立浪監督の采配は改善必須だが、野手整備は素晴らしかった。勝負の2024年に向けて期待される選手の飛躍と全選手の健康、立浪監督の采配改善または勝てる監督の招聘に期待したい。長く苦しい暗黒期の出口がようやく見えてきた。次回は2023年ドラフト終了後に来季の展望と総括を行いたい

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