2023年の中日ドラゴンズは期待できるのか?-2024年の中日ドラゴンズに注目せよ④/④-

最初に2024年の中日ドラゴンズに注目せよと言ってる時点でお察しなのですが、来年も優勝争いは難しい。ただ主力選手が長期の故障に見舞われなければ今年と同様にAクラスを争えるはずで最下位と言われるほど悪くはないと私は考える。あり得ない前提だが、新外国人が当たって期待の若手が10%の底上げをして打てるレギュラー打者が3人増えたら優勝する可能性すらある

ライバル事情

ヤクルトは強いが抑えのマクガフが退団見込み。先発投手の層が薄く防御率も悪いチームを支えてきた救援陣のテコ入れに失敗すると苦しむ可能性もある。ただ奥川がほぼ稼働しない中でも優勝を決めているのでエースの奥川が稼働すれば来年も強い。ドラフト1位の吉村も防御率3点台中盤のローテ投手にはなりそうであり抑え次第だが来季も本命の一角だろう

DeNAにとって嶺井の退団は痛いが京田の加入により懸案だった遊撃手の穴が埋まりオースティンが復活すれば打撃陣はヤクルトを上回る戦力を誇る。8桑原7佐野4牧3ソト9オースティン5宮崎6京田2戸柱(伊藤)ならば6番まで一息もつけないマシンガン打線の復活である。投手陣も今永、大貫、濱口、石田に次ぐ5番手6番手が固まり、伊勢や入江やエスコバーなどの主軸中継ぎ投手が成績を残せば優勝の最右翼ともいえる

阪神も近本中野佐藤大山の主力は揃っているので外国人野手が2人とも活躍すれば打撃陣は飛躍する可能性を秘めている。一方でイニングを消化した先発の外国人投手2人が退団する事になっており、層が薄くなってしまった。外国人の当たりはずれによって戦力が上振れして一気に飛躍する可能性もあるが、外国人の活躍次第では更に落ちる可能性を秘めたチームとなった

ヤクルトに次ぐ打線を持っている巨人と広島の投手力が改善されれれば優勝候補に躍り出るが、巨人はメルセデスが退団の方向でシューメーカーの去就もはっきりしていない。日本人投手は戸郷以外に先発の柱となりそうな選手がおらずエースの菅野は衰えている。更にドラフト上位は野手指名のため、マイコラス級の助っ人外国人が躍動しない限りは苦しそうだ。野手は故障がなければ問題ないだろうが、坂本の配置転換する場所がなかったり世代交代もあまり上手くいってはいない。来季もかなり苦しい戦いが予想される

広島はフランスアの代わりとなる外国人投手が活躍し、ドラフト中位下位で取った社会人投手たちが活躍すれば一気に飛躍する可能性を秘めている。打線は主力が揃っており大崩れする事は考えにくい。バント成功率や盗塁成功率などの点で疑問が残る監督采配も新監督に変更となるため、改善する可能性を秘めている。ただ先発の柱が足りない点には不安が残るだろう

セ・リーグは以前に比べて村上や牧や佐藤などの台頭もあってパ・リーグとの実力差を埋めつつある。2022年の交流戦では勝ち越しを決めたようにここ数年パ・リーグのセカンドリーグだった時代に比べればレベルが上がった。野手陣と先発6番手や中継ぎ陣が戦力アップしなければ来季も中日は苦しそうだ

投手

目標:チーム防御率2点台

先発

予想成績と願望コミコミの勝敗

先発3本柱は壊れなければ問題なく数字を残すはずだ。今季の投球数も故障者が頻発する3000球を投げないように管理されており、2600球くらいしか投げていない事を考えると稼働するのではないかと期待した

柳は当たり年で涌井は外れ年であることを加味したが、4~6番手も安定した稼働を見込める。更には上田も居るので誰か1人が外れても大きく外れる事はないだろう

中継ぎの予想成績と願望勝敗

マルティネス、ロドリゲス、清水、藤嶋はそもそもランナーを出していないので結果が出せているので彼らも故障がなければ活躍できるだろう。清水は圧倒的なピッチングが殆どなのに稀に炎上するので防御率こそ良くないが、頼れるリリーフになった

森は今年の谷元や祖父江が行っていた仕事を代替できそうで点差がある時のリリーフやビハインドでフル回転を期待したい。また根尾と山本はそれほどの投手ではないが、大崩れはしないソコソコの投手として計算が立つ

最低限の結果を残せてはいるがもう少し上を目指して欲しい勝野の飛躍にも期待した。右打者に弱かったり特定の打者にやられる傾向が強く、リードしている場面では被打率が下がる傾向にある中継ぎ転向も面白そうだ。彼は左打者のインコースに投げるストレートは素晴らしいので引っ張るのが苦手な左打者に中継ぎとして起用もアリだろう。柳と同じくシュートを覚えれば決め球のカーブが活きる可能性もある

流石にこれくらいはやれると思う

岡田も腕を下げて左のワンポイントに面白いかもしれない。仮に岡田が出来なくても砂田が居る。また藤嶋、森、山本の台頭もあって高齢の祖父江や谷元に頼らなくても済む投手陣が出来上がりつつある。ドラフト1位の仲地が活躍しなくても大きな問題にはならないだけの戦力が揃っている。仲地は夏以降に戦力化する事を望むが、計算には入れなかった

野手

目標:野手OPS.700

来季も計算できる野手は僅かに4人相当。ビシエド、大島、岡林の3人はフルシーズンの活躍が期待できる。また木下も前半戦は期待が出来、アルモンテは故障しなければ活躍するので2人で1人分の活躍は見込めるだろう。この中で不動のレギュラー待遇を与えられるのは岡林1人だと予測する

岡林は今季の6月までの成績が打率.257打点11OPS.606盗塁9得点圏.212に対し、7月以降の成績が打率.323打点21OPS.794盗塁15得点圏.358と覚醒した。制約が多い2番で打てたのは7月の岡林と8月以降の大島だけだった。岡林は中堅3番すら任せられる実力が身についている。両翼の守備があまりに酷いと守備の負担が増して2007年の福留のようにバテて打撃もダメになる危険はあるが、来年の岡林には打率3割とOPS.750以上を期待したい

大島も今の所は衰える気配もなくOPS.695~750は期待できる。ただ終盤は休ませながらの起用だったようにアルモンテと併用の可能性もある。ビシエドも監督方針で来季はレギュラー決定ではなく競争の方針だそうだが、これはビシエドを信頼していないこと以上に外国人枠とポジションと私は考える

たとえビシエドがOPS.800打ったとしてもアルモンテがOPS.850打って代役となる一塁手が出てきたり、石川が故障して高橋のOPSが.600でカリステと福元などがOPS.750だったなら、一塁に福元、三塁にカリステを使う陣容を組むだけの話と思われる。監督の方針は一貫性がないと非難される事もあるが、単純に構想が固められるほど確固たる戦力がないだけの話である

残るポジションは二塁手、三塁手、遊撃手と右翼手と第二捕手。右翼手はアキーノを獲得した。アッパースイングのローボールヒッターで、当たれば飛ぶパワーは本物である。高めの速球とストライクからボールになる変化球にどこまで対応できるかによるが、待望の長打が打てる打者なのは間違いない。また守備も肩がとてつもなく強くてそこそこ上手いのでまずはライトを任される事になるだろう

タイプが似ている石川も真ん中低めの球を打つのは得意でシーズン20本塁打のペースだったがOPSでは.675に過ぎず、過度な期待は禁物だ。しかし日本の野球に上手くアジャストすれば30本塁打以上を期待できる選手でありドラゴンズに必要な長距離砲になる事は間違いない。仮にアキーノが打たなければアルモンテを使って日本球界への対応に取り組んでもらう事になる。外野は最悪の場合でも中堅に岡林で右翼に大島、左翼にアルモンテという守備軽視陣形で打つ方は問題ない編成が組める

アキーノが期待通りに働けば鵜飼と福元の出場機会が減る形になるのだが、仕方ない事だろう。鵜飼は真ん中付近の失投を捉えた打球は特別だが、甘い球以外の対応はまだまだ1軍では未知数だ。また守備でもエラーを重ねており塩見のように3年目から戦力になれば十分な成長ペースと言える

最も早く活躍が期待できる福元は一塁や三塁でも出場しており、打てればポジションを掴めるはずだ。交流戦ではDHもあるので打ち続ければ交流戦が終わる夏の始まりにはレギュラーを奪取できるか現状のままか決まってくる。故障の影響もあって肩が強く見えないので内野に転向となっても不思議ではない

二遊間は土田と新人頼みだが、1991年以降にドラフト指名されたプロ野球の新人で125試合以上の出場を果たしたのは1000人近く指名されたうちの19人しか居ない。新人から活躍して1年間戦う体力がある野手は超希少だ。更にその中で牧、高橋由伸、長野、福留の4人が.800越え。二岡と片岡がOPS.750を超え、佐藤輝が0.749。赤星と高山が.700越えで近本は.689

ルーキーから125試合以上に出場しながらもOPS.650弱しか打てなかった選手は守備の評価がレギュラーを取っているケースが多い。身体ができてない状態での高い負荷に消耗するのか、弱点が露呈するのか不明だが、京田のように打撃成績がその後伸び悩む傾向がありスーパースターになる確率は低い。なお余談だが1年目から20HR打った選手は球史の中で16人、ここ30年に限定すれば村田、佐藤輝、牧の3人しか居ない。

村松には期待したいがいきなり来年から主力級の活躍を期待するのは酷だ。来季から主力級の活躍を期待したいのは3年目の選手の土田である。彼は岡林と同じく高卒1年目から2軍OPS.650を超える成績を残して1軍に抜擢され、2年目には1軍である程度の出場経験を積んだ。3年目の来季はレギュラーを奪取しOPS.650以上を期待したいところである。土田には岡林ほど盗塁する足がないものの、勝負強さがある。村松が戦力化するであろう2024年以降には2番か6番か7番を任せたいが、来季は1番に抜擢するのも面白そうだ

岡林と似た成績の推移を残す土田。3年目の飛躍に期待がかかる

土田が主に遊撃手、たまに二塁手としてビシエドが一塁手として90%以上の試合にレギュラーで出ると仮定すれば残る内野220%分の戦力を争うことになる。石川、高橋周平、村松、濱、福永に加えて打てれば鵜飼や福元も内野手の争いに参戦する可能性はある。これら7選手が2つのポジションを巡って争う事になる

カリステが打てばビシエドを控えに回す選択肢も取れるので、7人で2人分の戦力が出てくれば良い計算だ。これは例年の平田、高橋、阿部、福田、新人と外国人の6人から4人が戦力として働いてくれないと野手が足りない状況に比べて相当に良い

これまでのドラゴンズでは平田、高橋、阿部といったレギュラー級の選手も成績が毎年安定しておらず全員が当たった年に外国人打者が打たない限りAクラスも見えない状況が続いていた。計算できるレギュラー打者がビシエドと大島だけで本来は7番か8番に固定されるべき京田が上位打線を打つ有様だった所からは大きな進歩である

まとめると来季は大島とビシエドに続く岡林が3本目の打の柱として期待が持てる状況だ。仮にアキーノが外れてもアルモンテとカリステが控えている外国人打者の誰かが4本目の柱になるだろう。4本柱に加えて2か月くらいはリーグでもトップクラスに打てる木下がおり、岡林曲線に乗っている土田の飛躍も期待される

残る2.5枠に対して石川は1軍でも失投をHRにする力は本物で7番なら任せられるだけの力はついた。2021年のドラフトで指名した鵜飼と福元は1年目からフェニックスリーグで活躍しており4年以内に1軍で活躍するために必要な成功曲線に食らいついている

新人に1年目からの活躍を期待するのは難しいが、彼らの中から2年目に飛躍する打者が出てくれば2024年には優勝するために最低限のレギュラー野手が8人揃う戦力に成長する。また控え候補もフェニックスリーグ盗塁王のブライトも代走要員での期待され、後藤や田中も代走・守備要員として1軍の枠を巡る争いに絡むだろう。残る明確な補強ポイントは2番手捕手だけになった

久しぶりにドラゴンズの野手陣に一軍レベルの競争が起きようとしている。立浪監督が就任する前の10年にはなかったことだ。もちろんすべてが監督のお陰、というわけではない。最近になってスカウティングが改善していて、岡林や土田といったプロとして活躍しやすい素材を獲得していた事が原因である。だが選手のポテンシャルを見抜いて大きな仕事を与えた監督の眼力にも功績はあるだろう

長期的な成功を目指して

一時的に成功するのはまぐれでもスカウトに成功するだけでよい。だが長期的に成功し続けるには優秀な選手を引き留めるための資本力など、会社としての仕組みが必要になる。①放映権料②スポンサーによる収益③グッズの販売収益④入場料やスタジアムでの飲食物による収益の4つを地道に増やさなければならない

まずメジャーリーグにトップリーグの立場を完全に取られてしまった現在では放映権料を劇的に伸ばす事は難しい。だがレジェンド選手を使ったスポンサー契約を地道に増やすなど活路はあるだろう。良い選手が増えれば選手の関連グッズ売上も増えていき、毎日の観客動員数も増えるだろう

主な経費は選手の年俸であるが、ここをケチると勝利が遠のき、観客動員が減り収益に跳ね返ってくるのがスポーツビジネスの難しい所である。とにかく収益アップを目指し、増えた収益は選手が結果を残したなら報酬を赤字にならないギリギリまで増やすのが(ファンと監督にとっての)理想のクラブ像となる

ドラゴンズは決算書を一切公開していないので不明だが、全盛期の2004~2011年頃に比べると年俸が15億円程度もカットされており、当時の10億円程度の赤字という報道を信じるならば現状では収支がトントンくらいにあると推測される。立浪監督の改革によってチーム成績が向上していくのならば運営面の改善も必須だろう

まとめ

荒れた投手陣を整備してくれた与田監督と阿波野投手コーチの貢献も大きく立浪さんの改革で2024年以降は(歯車が全て噛み合うという奇跡が起きれば2023年も)優勝争いに戻る可能性も出てきた。勿論、マルティネスとロドリゲスが再来年まで残留し主力選手がキャリアを台無しにする大怪我を負わないという条件付きである

ドラゴンズが優勝を争う可能性があると思うのは私の記憶が正しければ2012年が最後だった。2024年には12年ぶりにタイトル争いに絡むかもしれない。もちろん弱点が整備されればどのチームでも優勝できるので今まで優勝の期待が全くなかったことが異常なのだ。だが、その弱点の整備という問題から目をそらし続けた十数年間だった。だからここまでチームは長い暗黒期と戦わねばならなかった

立浪監督のテコ入れは全てが成功するとは思えないが、ドラフトで弱点となっているポジションを優先で指名した点と、野手の1年目2軍OPSが.300-500台からスタートという選手指名に代えて大学や社会人の即戦力を重視した点は大きな改善と言えるだろう

落合GMは打者落合や監督落合のように超一流ではなかったが、無能GMではなく平凡なGMだった。落合GMは高卒浪漫投手の上位指名を断ち切った功績が大きく、指名した大卒・社会人野手の木下、京田、阿部が居なかったならドラゴンズの打線は死滅していた。また投手でも柳と小笠原という先発の柱や藤嶋も獲得していて2014年の不作ドラフトで歴史的な大失敗をしただけだ

落合GM時代に指名された京田と阿部を放出したように反落合のフロントは今も球団に住み着いているのかもしれない。そうした私情によって柳や木下も後継候補が育ったら放出される可能性すらあると思えてしまうのがドラゴンズの怖い所である

立浪監督には様々な面でのサポートが必要だ。来年の躍進は難しいだろうが不可能でもない。またようやく歯車が噛み合いだして前進する予兆を見せられたことは良かったと言える。これからは地道に目の前の日々でチームを前に進めるだけだ。私は気長に成功を待ちたいと思う

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