Numberの遠藤航特集が良記事

良記事でした。私は遠藤に対し南野級の活躍を期待していた。MFやFWなら控えの控えで6~7番手の役割だ。遠藤は加入して3か月が経った11月の末頃からMF6~7番手としては文句なしのパフォーマンスを続けている

肉体は既に全盛期を過ぎたと思うが、彼の長所は頭脳とメンタルだと思うので今後の活躍も期待できる。遠藤の頭が良いと思う根拠は試合中のプレーとこの特集のコメントにある

”「スピードがとか、判断が、とか、ファウルのことを言われていることも知っていますよ。(中略)クロップのサッカーで、アンカーで、ファウルしないとかあり得ない。リバプールの6番(アンカー)はそんな簡単なものじゃない」”

”「この数カ月で実感していることはリバプールのサッカーは本当に攻撃的。たとえば相手を押し込んだ場合、サイドバック2枚は中にしぼる、8番(前線)は落ちてこない状況がある。だからこそ相手にボールが渡った瞬間にアンカーに求められる仕事はメチャクチャ多いです。ワンボランチで潰さないといけないスペースが広大にありますからね。しかも周りは攻撃的な選手ばかり。でも……俺は出来ないとは思わない。
 リバプールのアンカーは、“前”でボールを奪うためにいるんで、“後ろ”じゃ意味がない。だからこそ入れ替わられたとしても、自分にリスクがあってもいく。そもそも自分が剥がされても、その後に行ったセンターバックが刈り取ることができれば、チームとしてはOK。入れ替わられたシーンに対してネガティブに言う人もいるけど……それは気にならない。それがクロップのサッカーだし、リバプールのサッカー。俺がピッチに立てているわけだから」”

”「俺は監督のやりたいことを、いつも『出来る』と思うようにしているんです。俺が見てきた外国人選手の使われない選手の不満って、それは出来ないって決めつけた時に生まれている。結局、そういう選手は、そこじゃなくてもどこかで躓くんですよ。 たとえば、リバプールのアンカーに求められることは、今までの概念だと『無理』なんです。運動量は尋常じゃないし、スピードもいる、スペースが広すぎる。一見、無理だと思うことをクロップは求める……でも、その監督の思考になって、チャレンジするかどうかでしょ。合わないと思って、言い訳をしていたら選手として終わり。それに、出来ると思って獲ってもらっているわけですから。”

https://number.bunshun.jp/articles/-/860748?page=2
https://number.bunshun.jp/articles/-/860748?page=3
https://number.bunshun.jp/articles/-/860750?page=3

クロップのサッカーは前プレスからのショートカウンターしか存在しない。監督の目指すサッカーがアレなので外野が何を言おうと遠藤の感想が正解。エンバペ級の走力とファンダイク級の守備力がない限り、クロップサッカーでファンが満足する守備的MFは出てこないだろう

この世の何処にも居ない選手でしか満たせないサッカーを選んでいる監督の問題だ。昨季ファビーニョのプレーに文句を言う人も多かったが、構造的に破綻した設計でアンカーが攻守の両面にわたってババを引かされている

この無理難題への取り組みで遠藤がメンタルも一流だと分かる。その監督の思考になってチャレンジするかどうか、という発言は管理職が好む労働者のメンタリティである

”「まぁ、生で見たら、中盤の運動量とかプレスは普通じゃない事を伝えたくなるのは分かりますよ。リバプールはボールを縦に運ぶために誰かが剝がさないといけない、奪わないといけないっていう共通認識が、目に見えてわかりますよね。(ボール奪取を高い所で)成功すれば一気に世界が変わるし、守備でも攻撃の状態が変わらないというか……もう、相手からしたらずっとウザいぐらい攻撃している(笑)。
 だから、切り替えでボールを奪いきれないときは、メチャクチャきついです。でも俺は他の選手がしんどい時間帯にこそ、それを続ける。『とりあえずエンドウが全部守ってくれるわ』って思ってもらう。その行動の繰り替えしだけが、ここでの信頼になると思っているので」”

https://number.bunshun.jp/articles/-/860750?page=2

他の選手がしんどい時間帯に切り替えとプレスを続ければ信頼が得られる、この考え方も正しく頭の良い発言。言葉にするだけなら簡単だが、誰にでも出来そうに見える事を続ける事は意外と難しい。カラバオ決勝では足が完全に硬直する所まで走ったように実行している点が偉い

※ボールを縦に運ぶのは個人で剥がすのではなく選手の位置とパスワークで行ってほしい。だが選手に気分よくプレーさせるコミュニケーション能力が図抜けて優れる今の監督に要求するのは筋違いだろう。コミュニケーションの継続とビルドアップの改善が次期監督には求められる

遠藤は当たり補強

遠藤の補強は大成功とは言えないが成功だった。何故なら今年はCL権を必ず取らないといけないシーズンだったからだ。新FFPの影響からスカッド予算が今季は売上の90%、来季は売上の80%に制限される事になった。そのため売上に影響を及ぼすCLの放映権料を取り戻す必要がある。3月に発表される昨季決算を読まないと正確な数字は出せないがヌニェスやガクポの移籍金を考えれば、今季コケると選手の売却が必要になる恐れがあった

守備的MFがチアゴとバイチェティッチとファビーニョの3人だけだったのに稼働率が最も計算できるファビーニョの売却を決めたのが痛かった。遠藤を取らなかったら高さと汚れ仕事をする選手が居らず勝点70ペースを下回ってCL権を逃した可能性を否定できない。カラバオ決勝の影響で故障が増えたとしても今季の勝点に大きく貢献したため、4位以内でCL権を取れれば遠藤の獲得は成功と断じて良い。仮に売却時の移籍金で元を取れなくてもCL出場による放映権料でプラスだからだ

ファビーニョを売却してカイセド等のレギュラー守備的MFを取り逃したのに補強ポイントから外れた選手(38)を買った事、これが2023‐24シーズンの移籍期間で最大の失敗。遠藤の獲得はその失敗と切り離して考える必要がある

契約年数に疑問を呈する人もいるが、34歳までの契約ならリスクはそれほど高くない。31歳を目前にして4年契約で加入した選手といえばクラヴァンがいる。クラヴァンはレギュラーには物足りずダイクが加入するとCB4番手になった。だが格下チーム相手に堅実なプレーで主力を休める仕事を全うした

アーノルドの活躍によってゴメスがFBの控え兼CB3番手に回り、CB5番手に降格してプレー時間が限られると分かった2018年の夏にクラヴァンは退団。4年契約£4mで加入し2年働き£2mの移籍金を残し、無形固定資産の売却損を出さずにクラブを去った

遠藤も3年契約が理想だったが、獲得するためには4年契約が最低限の誠意。残念ながらリヴァプールの現スカッドで守備要素の濃いMFは遠藤だけというスカッド事情を考えるなら、遠藤が4年契約を満了する可能性も0ではない。世界トップ級のダイクとマティプに世界20-50位のゴメスやロヴレンが居たため、CB序列5番手まで落ちて退団したクラヴァンと環境が異なる

MF?達のポジションマップ
グラーフェンベルフを放出またはローンで育成して守備的MFを補強したい

チアゴとバイチェティッチはバランス型6番。マクアリスターは6番と攻撃的な8番のハイブリッド型。6番と守備に特化した4番のハイブリッド型な遠藤はライバルが居ない。加えてマクアリスターは8番の仕事もこなせること、バイチェティッチが未完成で稼働率が計算できない事を考えると来季も遠藤の出番は多そうだ

現状は守備型のMFがスカッドに居ない。ユースもモートンやマコーネルなど遠藤と同じ守備寄りのMFのみ。オーナーは金を出さないが、売上を全て投資してCL優勝を狙うリヴァプールはレギュラー格の守備的MFを夏に補強するだろう

今夏に主力候補の守備的MFを買えば堅実なリヴァプールは守備的MFの控えに金を使う可能性は低い。ユース選手と遠藤で控えの座を争う事になるが、リヴァプールは保険扱いのユース選手は換金する傾向が強い

よって夏に主力となれる守備的MFを買えたなら、遠藤は加入後3シーズン=2026年6月末までは起用されると予想する。期待のユース選手が出なければ2027年6月末までプレーして契約満了で退団する可能性も0と言えないだろう

一方でリヴァプールは妥当な価格でしか選手を取らない。優れた選手が適正価格で市場に出なければ目先用途の守備的MFを買い、ゲームチェンジャーの出現を待つ可能性もある。その場合、玉突きで遠藤のリヴァプール在籍期間が短くなる可能性が上がる

新監督が誰になろうと、守備的な役割のMFは手薄で補強が行われるだろう。彼が今シーズン不動の立場を獲得したのはファビーニョ退団による守備型MFのライバル不在という面が大きい。だが離脱しない遠藤はチェンボやケイタやより保険価値が高く、長く不在だったMF6番手の仕事は勝ち取った。EFL杯の優勝も含め、おめでとうございます

P.S.カマラが故障したため、スタッツから守備的MF50人ほど調査を行った。だが筆者の乏しい知識では適切な守備的MFを見つけられなかった。カイセド£100mが妥当と思える程めぼしい人材が居ない。クリステンセンをアンカーに据えたバルセロナ、ストーンズを偽CBに据えたシティを見ると上手いCBのコンバート、チアゴの残留も含め多角的に検討する必要がありそうだ

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