2024年のドラゴンズに注目せよ?-2023年振り返り。立浪監督の功罪-


立浪政権2年目は投手起用0点/野手起用40点/育成50点で失格。

今季不振の最大の原因は野手の編成失敗と立浪監督の力不足にある。野手の戦力が不足したのは2007年~落合GM初年度の2014年と落合GMが退任した翌2017年のドラフトと編成が酷すぎた事が最大の要因。更に落合GM時代で少ないヒット作だった京田と阿部まで立浪監督が放出した為に二遊間が崩壊

木下を除いた主力世代の野手が力不足で主力の大島とビシエドが加齢で数字を落とした事も全て立浪監督の責任にする気はないが、2023年に限れば立浪監督の大改革は悪手だった。だが阿部の放出が短期的に悪手なのは予想通りであり、長期的な視点を持つ必要がある

今季の戦力

前半戦

https://yakyumaru.com/2023/05/19/post-23171/

前半戦は先発WARが5位に近い4位、野手WARは最下位、中継ぎWAR1位ではAクラスを争えない。他チームより先発の質が劣りビハインドを許し、最弱の野手が逆転できない展開では中継ぎが優れていても負ける

昨季の岡林、今季の細川と柱を見抜いて作りだす運用は良かったが、チームを支える脇役の運用は下手すぎて見るに堪えない。また負け試合の投手起用も下手すぎた。勝野がビハインドで多く登板する序盤の謎起用、祖父江や福の度を越えた酷使は無能だった。最大の長所を下手な起用で台無しにした

得点と相関が強いOPSは7月にリーグ3位となって打つ目途が付いたが、開幕からの愚かな投手起用がたたって7月防御率はリーグワーストで勝てず

後半戦

https://yakyumaru.com/2023/05/19/post-23171/より

後半戦に入って負け試合で敗戦処理を中心に登板させる運用は徐々に増えたものの、我慢できないマシンガン継投は継続。控え選手に気を遣ってるのか終盤で無意味な代走、二遊間にチャンスで代打連発する采配は変わらず

野手WARは変わらずリーグ最下位。先発が4番手で救援陣は12球団トップ。負けてる試合が多いので救援投手が強くても宝の持ち腐れ。特にマシンガン継投連発する監督ではデメリットにすらなる場面もあった

打撃論は優れていても実行するのは選手。宇佐見など基本に忠実な選手達は伸びたが、基本が疎かな選手にも基本を徹底するスタイルはプロ野球選手の養成学校には適してもプロの現場向きではなかった。次にトレードなど戦力整備の面を見る

阿部放出の是非

昨季から阿部の守備力は明らかに落ちて厳しく三塁、一塁、左翼で起用するか、失点を増やしてでも次の選手が育つまで二塁で我慢するかの二択。三塁は高橋周平が期待を裏切り、石川は故障明けで駆り出されて休みながら規定打席に到達した。石川にシーズンを完走させる体験は必要で2023年は阿部を三塁中心に置くプランはなかった。監督は二塁の阿部を諦めて足りない先発を埋めるためにトレードへ出した

ただマルティネス退団で立浪監督はビシエドの控え一塁手が不在という歪な編成を作ってしまった。更には阿部まで放出してしまったのでアルモンテと溝脇が一塁練習するほどだった。阿部が居ればビシエドの不振をカバーする事が出来たはずだ

また二塁の戦力は昨季に阿部を二塁で使わないと決めた時点で完全に不在。新人に期待するしかなかったが、田中は肩の脱臼で離脱し村松は膝の痛みで開幕に間に合わなかった。押し出される形で福永が二塁のレギュラーを取り6月まで及第点の成績を残した。村松は毎年5月まで調子が上がらない龍空の代わりに遊撃で出場したが、遊撃手としては守備に課題があり6月から二塁に戻った。岡田監督が1軍で通用しない森下を早期に見切って2軍で育成して勝負所の夏に1軍へ上げて戦力化したのと対照的に福永と村松は体力不足で共倒れになった

阿部を二塁で使えば打線は昨季に近づき、守備も福永とは大差ないだろう。村松の守備範囲は素晴らしかったが課題も大きい。短期的な視点で見たなら二塁手の守備力は大きく向上せず打力は下がり阿部放出は予想通りに失敗。ただ阿部が涌井となった事は忘れてはならない

阿部の代わりに得た涌井が居なければ彼が投げた110イニング以上を誰かが穴埋めする必要があるが、穴を埋める存在は居なかった。阿部を出して涌井を取らなければ投手の肘や肩が犠牲になっていた危険性もあった

2022年ドラフトで最も即戦力だった金村は4月の3登板で肩を痛めて戦線離脱したように新人に頼るわけにもいかない。外国人枠は中継ぎに2枚使う予定で野手の惨状を考えると野手も2枚使うため先発に回す枠はなかった

阿部の放出で打線が最低になり投手陣のメンタルが痛めつけられた。ただし涌井の獲得で投手陣の肩と肘は守られ森山と育成以外の長期離脱は防いだ。今年の貧打が投手の流出や補強にどう影響するか、長期的な視点で見る必要がある。現状で分かる事は予想通り短期的に失敗したという事だけで村松と福永が得た経験は今後チームの糧になって長期的にプラスとなるかマイナスとなるか、現時点では不明だ

京田、三ツ俣放出の是非

京田と三ツ俣を放出して遊撃手が龍空と出番が不透明な第4外国人カリステ中心の歪な編成となった。他球団では京田は1軍の控え、三ツ俣が2軍レベルだったのは間違いない。だが龍空は春先の調子が毎年悪く、カリステは日本野球にすぐ順応できるか不明なのに立浪監督は1,2か月凌ぐ保険を捨てた

溝脇はビシエド以外に一塁不在の歪な編成の煽りを受けてキャンプでは一塁の守備を練習し内野の便利屋としてベンチに眠る事になった。石垣は故障で開幕に不在。4月上旬に2軍で復帰したが低空飛行な成績で先に結果を残した村松に遊撃のポジションを奪われた

通算OPS.530前後で守備も普通の三ツ俣が恋しくなる選手層は悲惨だった。立浪監督は長期的な視点で二遊間にメスを入れたが、ギャンブルに負けた。最近の世の中は短期的な結果で判断するので世論は彼を非難するが、福永と龍空と村松と田中の2025年の成長具合をもって判断するべきだと私は思う。新人を1軍で育成する方針は成功例もあるため2025年の春まで判断できない

しかし2年に1度活躍する中継ぎの砂田より遊撃の控えで京田の方が必要だ。京田と監督の関係が拗れなければ無理に昨オフ放出する必要はなかったので監督の責任といえる。DeNAは森が期待ほど育たなかった事で若手の阪口で西浦とトレード。カリステが日本に順応するまで京田を残していればもっと優れた投手とトレードできた可能性を考えるとトレードが成功とは言えない

その他トレードの是非

阿部寿樹⇔涌井秀章=上記の通り短期的には野手×投手〇。長期的には不明
京田陽太⇔砂田毅樹=上記の通り短期的には野手×投手△。長期的には不明
金銭  ⇔加藤匠馬=狙い通りの結果
郡司裕也⇔宇佐見真吾=短期的には成功
山本拓実⇔齋藤綱記=短期的には成功
髙松渡 ⇔川越誠司=お互いにこれから
放出 投手1捕手1内野手3⇔獲得 投手3捕手2外野手1

主力内野手を2人出して5トレードで6選手を獲得。ここ数年の主力内野手2人を出して投手2人と交換したので予想通り2023年は内野手の育成シーズンになった。まず加藤は期待された捕手の数合わせを期待通りこなした

郡司と山本を出し宇佐見と齋藤の獲得は短期的には正解だった。郡司は守備に不安があるのか代打と指名打者以外の成績は凡庸。石橋に比べて明らかに捕手としての総合力で劣るため編成上でも重要度は低かった

https://nf3.sakura.ne.jp/Pacific/F/f/30_stat.htmより抜粋した郡司のポジション別成績

齋藤は投げ方を変えた事でストレートが1軍レベルになりスライダーが魔球となって勝ちパターン入り。左の中継ぎエースに化けた。本トレードの評価も長期的な視点が必要だが、年齢だけで失敗と評した私の見る目がなかった

高松はミスも多く代走のスペシャリストでキャリアを築くのは期待薄で彼の穴は樋口の支配下登録で大半は埋まる。となれば高松が外野転向で打撃開眼しない限りは川越の活躍分だけプラスになる。外野手は大島の後継者争いがブライト以外に候補が居らず即戦力が必要だった。川越の活躍次第でしょう

根尾コンバートの是非

村松や龍空に比べて根尾にチャンスを与えなかった事への非難もあったが、投げる才能がない彼らと投げる才能が飛び抜けてる根尾を比較すること自体がおかしい。根尾は打つ才能も守る才能もそれなり。龍空より総合力の高い遊撃手になる可能性はあるが、球界トップレベルになる可能性はない

一方で投げる才能は高校生の時点から直球の質はプロレベルで超一流。根尾のコンバートに文句を言う人達は彼の投げる才能を過小評価しすぎている。センターラインは守備を中心の総合力、両翼には長打が打てる選手を求める立浪監督の正しい構想(実現はしていない)では根尾のコンバートは正解だ。根尾の投げる才能は野手の頃からチームを救っていた、時間はかかるが成功すると思うという阿波野元コーチの言葉が正しかったと私は思う

立浪政権を数字で振り返る

9月終盤に7勝2敗と巻き返して初の月間勝ち越し。先発も中継ぎも抑えないと勝てない貧打に泣く

野手

図リーグ平均OPSと中日OPS、リーグ平均得点と中日得点の推移

リーグの平均OPS.668に対して91.3%の.610で終わった。これは違反球時代の2012年の阪神やDeNAの.628、2021年中日の.622すら下回る近代プロ野球史で最低の数字である。元々グラフの通りOPSと得点がリーグ平均を上回ったのは2009年が最後。落合監督の時代に主力だった野手の衰えを無視して投手偏重のドラフトを続けた事、数少ないポテンシャルを持った素材の高橋周平も故障で育成失敗に終わろうとしている事の影響が大きい

1985の大島~1989のビシエド/阿部の世代から平田や福田が成績を落として抜けた結果、監督就任前の近代野球で最下位の2021年すら下回った。投手のレベル向上でリーグ全体の数字が落ちたので平均に近くなったが走塁のミスは増え、状況に応じた打撃も出来ず得点力はリーグ最低のまま。ランナーが三塁では外野フライや緩い内野ゴロを打つ事が抜群に上手かった立浪監督の現役時代とは対照的な2年間である

立浪監督の就任後、最低の打撃成績は阿部の復活とアリエルの成長で2022年に若干戻ったが、2人の離脱で元に戻った。投手レベルの向上により周りが落ちた分だけ打撃指標はリーグ平均に近づくも得点能力は上がらず。ここに走塁と内野守備の悪化も加わり立浪監督2年の成果は若返りだけとなった。2021年~2023年の年齢と成績を比較したのが下記

数字を残す若手・中堅の打席数は636打席→1750打席で2.75倍
若手・中堅の打席数も1917打席→3037打席と大幅に増加

見ての通り24歳以下の若手達の打席機会が4倍超に増えた。元々は与田監督の時代に高校生を中心に指名し大学・社会人の野手は滝野と郡司と三好しか指名せず使える選手が居なかった事に起因する。加えて郡司以外はドラフト最下位の数合わせ指名で先代からの遺産が石垣と高松だけ。使うべき選手が居なかった編成のミスは与田監督時代から変わっていない

代わりに出場機会を減らしたのが本来は主力になるべき25歳~33歳の世代。原因は2010~2017年までの編成とドラフト失敗にある。1990~1992年度に生まれた3世代で11人を指名しトレードで加藤翔平と三ツ俣を獲得し、山下を戦力外から獲得するも規定打席に立った選手は木下だけ。加藤翔平と加藤匠馬は控えで11人が退団した

一方1993~98年度生まれは6世代で8人しか指名しなかった。育成から支配下に昇格した渡辺と樋口、トレードで獲得した武田を入れても11人。当世代がチームを引っ張る2023年から苦しい時代になる事は明白だった。落合GMが中途半端な大学/社会人を乱獲し、その反発で高校生を乱獲し続けた2017年ドラフト。当時の編成とスカウト達が何を考えて仕事をしてたか理解不能だ

1988年~1992年生まれの世代を大学/社会人で指名しすぎた反動で空洞化した1993~1998年世代
主力になるべき黄色網掛けの6世代で支配下指名は僅か8人、上位指名は周平と京田だけの欠陥編成

立浪監督は宇佐見、川越、後藤と周平世代をトレードで獲得して手薄な層の補強を図った。この原資は郡司、高松、石岡。アンチの指摘する立浪監督が壊した中堅層というのはマルティネスと京田以外の誰を指してるのか?

またファームの育成方針もドラゴンズは曖昧だった。次のグラフは2019年~2022年のファームで打席数(チャンス)を貰った人間の年齢チャートである。(早生まれ等の誕生月は一切考慮せずシーズンの年-生まれ年度の単純計算)

高齢選手でもチャンスが貰えた2軍の環境

勝利を目指す1軍と違って2軍の目的は育成である。プロ年数が少ない選手や若い選手に打席数は振り分けられるべきであり、主軸になる適齢期を逃した選手は脇役としてのキャリアで出場機会は限られるべきだろう。主軸になる選手は高卒7年目25歳、大卒5年目27歳、大学-社会人卒4年目28歳には芽吹く例が大半である。しかし40近い藤井に毎年150打席近くも与えたり30歳過ぎのベテランにも2軍の打席数を与える傾向も目立った

ただ根尾と伊藤にはチャンスを与えていたように、現場の問題以上に育てるべき選手が居なかった編成の問題も大きかった。2023年は2021年、2022年ドラフトで獲得した若手の起用が多かった点は良かったと言える

赤字の選手をトレード、戦力外に。2022年に続き2軍以上1軍未満の中堅層とベテランを放出

こうしてみれば大島、平田、福田、ビシエド、阿部といった80年代の後半に生まれた選手達が衰えて90年代生まれへの投資を怠り、間違えた野手が弱いのは必然だ。ドラゴンズは2022年前後にチームを引っ張るべき年齢層が弱く貧打に悩む事が約束されたチームだった

これは立浪監督や与田監督の責任ではなく過去のスカウトと編成の責任だ。立浪監督の理解不能な野手采配は多く見られるが、機能するケースもある。阿部の放出が短期的に悪手だったことは言うまでもないが、涌井を取らないと破綻していた投手陣。ここまで弱い野手陣を作ったのは立浪監督より編成とスカウトの責任が大きい

何しろ規定打席に初めて立つ年齢で最も多いのは25歳。打撃能力がピークに達するのは27歳前後だ。プロ野球はここでの実績を基にミスが減る29歳前後が最も試合に出る。29歳前後の空白世代を埋めるため25歳に満たない若手が起用されればピークの世代に比べ打てない、守れない、走れないとなるのは当然だ

野手采配

では立浪監督に非がないのか。OPSによる得点期待値と実際の得点の比較で見よう。もちろんOPSは長打を過大評価し出塁を過小評価するため得点から回帰的に重みづけするwOBAの方が正確ではある。ただOPSでも目安になる

セ6球団のOPSと得点、OPS基準による得点期待値に対する比率グラフ

(出塁率を過小評価し長打率を過大評価するOPSでは出塁率の高い阪神が期待得点を大きく上回り長打率の高い巨人が大きく下回るのは当然)

得点効率は期待値から6点、微妙に予想得点を下回った。原因は3点か
1打てる打者が少ないため打てる打者を敬遠される
2選手の調子の波が激しいので不調の選手で勝負される
3立浪監督の得点期待値を落とす謎采配

1打てる打者が少ないため打てる打者を敬遠される

セ6球団ポジション別のOPSまとめ(10月5日まで)

見ての通り一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、左翼手で大きく劣り、中堅手で小さく劣った。均等に打てないのではなく、打てる打者が細川、宇佐見、岡林と調子次第で石川の3-4人しかいないので打つ選手と勝負を避けられる

2選手の調子の波が激しいので不調の選手で勝負される

2023主力選手の打席数と月間OPS推移。OPS0.5以下という月がこんなに

誰かが調子を上げれば誰かが調子を下げて見事なまでに噛み合っていない。しいて言えば5月と7月はマシでこの2月は平均3点を超えた。他の月は見るに堪えない数字。これで有効な打線を組め、というのもなかなか酷な要求だ

また特定の球団を苦手にする選手も多く、直球を苦手にする打者と変化球を苦手にする打者が偏在していた。

主力選手の球団別OPS。4人を除いてDeNA戦の成績が悲惨。そりゃあ勝てない
左と右、直球と変化球の両方を打てる打者が少ない

3立浪監督の得点期待値を落とす謎采配
7月好調の大島を5番起用、終盤ビハインドで力の落ちる控え選手を代走などに多用し延長になって主軸に打席が再び回ってチャンスを逸する場面は何度もあった

個々の選手を把握できていないのか、打力に劣る鵜飼の為に鵜飼より打てる石橋が送りバントなど確率の計算が苦手としか思えない珍采配を連発。確率が明らかに不利な選択を取る事も多かった

全体を通せば方針が一貫せずアレやコレやと手を広げて選手の力不足を認識させられる起用が多かった。ファンの目から見ると謎の起用でも稀にハマるケースもあり、立浪監督の野手采配は悪いが30~40点の赤点が妥当か。体調不良や長期的な視点での育成など外部から分からない情報もあり甘い採点。立浪監督の野手運用は決して優秀だと思わないが、戦力不足の中でベストを模索している事は理解できる。それを全否定するのは戦力不足の現実を無視しており叩かれ過ぎである

投手

リーグ平均失点ドラゴンズの失点数の比較推移

又吉とロドリゲスで中継ぎエースを2年連続で失ったが横ばいで終わった。又吉の穴をロドリゲスの中継ぎ転向で埋め、ロドリゲスの穴を勝野と松山と齋藤で埋めた。チーム防御率はリーグ平均に対し良くなったものの失点率は守備が緩くなった影響で悪化した。2023年は野手が攻守で足を引っ張った。立浪監督に代わってから投手陣は横ばいでリーグの数字は改善されたため、差が埋まっており阪神には大きく離されたように投手陣にも課題がある

阿部放出で涌井獲得により大きく力の劣る投手の先発数が減少し先発防御率は改善
中継ぎは近藤の晒し投げがなければ防御率2.8台と浅尾がいた時代に近い健闘

想定外の大野離脱、根尾の不調の影響を受けて春先は2軍が崩壊した。だが2021年に量の補充が不十分だった点を反省して2022年オフは投手の選手層を十分に補充したこともあってシーズン終盤には立ち直った

2021年と2022年の退団者と加入者まとめ
後任の監督不在で臨んだ2021ドラフトで投手の補充に失敗。

2軍のイニング消化数1位2位が垣越と松木平で育成選手だった。垣越は7点台で松木平は8点台から最終的に防御率4点台に載せる健闘を見せた。普通なら育成選手がこの結果ならチャンスは減るが、あまりに投手が居なかった為に挽回するチャンスが与えられた

1軍先発は最も投げた小笠原が2600球超。柳が2500球超。高橋が2400球超。小笠原は戸郷や九里や上沢に次いで4番目の投球数で後半戦に大きく失速。少ない球数で長いイニングを投げられる大野の離脱が響いた形になった

主な先発投手の1軍、2軍の合計数値。大野の故障で1.2軍ともに苦労した

苦労した先発に比べ中継ぎは充実。しかし12球団で最高の中継ぎを立浪監督の下手な運用が苦しめた。先頭打者に四球を出せば交代で1イニングに5人を投じる事もあった。また特定投手の酷使が目立った

4月中旬まで離脱した藤嶋が60登板越え。無能な中継ぎ起用が目立った

来季は大野が復帰する。2軍の試合を見ると良い時の面影は全くなかったが来年の開幕には調整して戦力になってくれるはずだ

投手采配

中継ぎの運用が最悪だった。この点については立浪監督の弱点として大きく取り上げるので今は何も言う事がない。1ミリとて擁護をする気にならない

立浪監督の限界

立浪監督は2年で限界を迎えた。最大の問題は敗戦処理の投手が炎上する中でマルティネスが勝手に肩を作り始めた事。このチームの最高の選手の1人であり最も失ってはいけないマルティネスが造反する事態は死活問題だ

マルティネスは素晴らしい人間性を備えた選手で近藤の姿を見るに見かねての行為である。そもそも近藤の尻拭いに中継ぎを出せなかった原因は監督のマシンガン継投のせいで中継ぎ陣に疲労が溜まっているせいだった

力不足で結果が出ないのでチームの雰囲気が悪くなり、立浪監督は求心力を発揮できず絶対的な抑えの造反。監督として必要な能力が足りず、チームをまとめられなかった責任を取る必要がある。求心力を失った監督に残された選択肢は解任と辞任だ

昨年11月末に2024年まで立浪監督に任せようと言いながら僅か8か月弱の7月に立浪監督は限界と意見を翻すのは未来予測を軸に学んできた人間としては情けない限りだ

大野の故障に加えロドリゲスの亡命は私には予想不能だった。また新人3人の中で最も即戦力な田中の故障で私の想定は4月上旬にして完全に壊れた。主力に故障者がなければ同レベルのチームが多いのでAクラスを争える予想は主力2投手とレギュラー二塁手候補が離脱すれば予想は最下位になる

予想通りチームは低迷。想像以上の低迷ぶりで立浪監督にチームをまとめる求心力がないと露呈した。結果を出せない変革期の組織運営においてトップの求心力が最重要事項だと学ばせてもらった。だが球団は立浪監督の続投を決めてしまった…

立浪監督時代の良かった点

最大のポジティブ要素は誰が監督をやっても勝てない時期にレジェンド立浪さんに監督の適性がないと判明した事。次に細川の才能開花。招聘した和田コーチと細川の感覚が似ていたのは非常に大きかった

岡林は立浪監督でなくても勝手に育ったとは思うが、高卒4年目で2年連続の規定打席に到達は見事だ。また守備で龍空に勝つ未来が見えず打撃で岡林に勝つ未来が見えなかった根尾が投手で才能の片鱗を見せている。転向が上手くいけば功績になるだろう

更に最大の弱点だった二遊間をドラフトで重点的に指名した事も良かった。トレードも一部は成功した。投手で大怪我した選手は1年目の序盤に岩嵜と梅津と故障の多い育成選手とサイドスローに転身した岡田と少なかった事。良かった事はそれだけだ

立浪監督の弱点

最大の問題は求心力、中継ぎの投手起用、画一的な指導の押し付けの3つ。
私はこの3点から立浪監督の任期満了は早めに決めるべきだと考える

弱点1 コミュニケーションでのすれ違い?

阿部と京田のトレード、三ツ俣の解雇以上にアリエル・マルティネスの退団は痛恨だった。球団も監督も残留を希望しながら退団されたのは捕手の起用がドラゴンズ入団後初めて一軍でも二軍でも0だったことにありそうだ

WBCでも分かる通り彼はキューバ代表の正捕手だ。マルティネスを捕手起用しなかった責任は西山コーチの方針か、立浪監督が選手の希望を把握できていなかったのか不明だが痛い戦力の流出だった。アルモンテを彼の穴埋めに獲得したが年齢的な衰えで失敗に終わってしまった

マルティネスが近藤を哀れみコーチの指示を無視して肩を作った事や石垣の内情リークからコミュニケーションのすれ違いが多い印象を受ける。石垣はプロ7年で実績がほぼ0なのに左投手には起用すると言って貰った時期になぜ首脳陣批判と取れる声出しを行ったのか。自分の立場を考えられないのか、そこまでして訴えたい何かがあったのか、打席と同様に何を狙っての行為か分からない

弱いチームを強くするには弱点に良い選手を補強または育成が必要だ。だがチームが弱い間に負けてもチームをまとめる求心力も監督には求められる。外部からは立浪監督のコミュニケーションを取りチームをまとめる求心力に問題があるように見えてしまった。この辺りのコントロールが下手だった

また適性の無い選手にバント指示や、不要な代走などで途中交代を連発する起用は狙いが見えない。采配の中で特に最悪だったのが次の中継ぎの起用だ

弱点2 誰が何処で何するか不透明な酷すぎる中継ぎ投手の起用

四球を出せば勝ちパターンの中継ぎ投手ですらイニングの途中で交代させるこらえ性のない下手な運用は見るに堪えない。投手陣は阪神以外の4球団に比べれば優れているのに監督の運用が下手で強みを活かしきれなかった

シーズン序盤から祖父江と福をベテランと思えぬ起用で失速
4月後半に故障から復帰した藤嶋を5月からフル回転
8月下旬に1軍昇格したフェリスを11試合で7試合起用
新人の松山をシーズン終盤にもフル回転

勝ちパターンの投手がイニングの途中で四球を出せば代えるバカげた起用。使える選手を潰れる直前まで使う立浪監督の方針により成績を落とした投手は祖父江、福、涌井、勝野などキリがない

根尾が登板した9月18日の広島戦こそ立浪監督の無能継投が詰まった一戦。根尾を5回までの構想でブルペンを早めに準備させておきながら6回2/3まで結果論で引っ張ると1アウトを取るため4投手をつぎ込んだ。映像では5回の時点で藤嶋は肩を準備し始めたように見えた。その藤嶋を6点差といえ30分以上が経過した満塁のピンチで投入するのは正気の沙汰とは思えない

監督の頭の中では何度も肩を作ろうと中継ぎ投手は最高のコンディションでマウンドに上がれるのだろうか?理解したくても理解できない。落合コーチが監督の暴走を止められないなら手が付けられない。継投の不安が解消されない限り、立浪監督の続投に反対する

弱点3 画一的な指導

立浪監督の割れと間という基本を押し付ける打撃指導は人を選んだ。基本に忠実な打撃をする岡林が成績を伸ばしたのとは対照的に京田はキャリア最悪の成績に落ちて退団。基本を大事にせず演習問題の数をこなしてなんとなく打ってる選手に基本に戻って打撃を作り直せというのはリスクが大きすぎる

出来てない選手にあれこれ言いたくなる気持ちは分かるが、指導される選手が望んでいない事を指導しても、何も身につかず時間の無駄だ。押し付けの指導が何の意味もないと分かるまでには普通は時間がかかる。しかし普通は2年もかからない(井端のように教えない、聞かれたら答える方針を最初から徹底できた人は希少とはいえ)

トレードや現役ドラフトなど元所属チームで結果が出ない選手は最後の藁にすがる気持ちで立浪監督の指導が効いたケースもあった。立浪監督の打撃論が間違っているのではなく、伝え方と対象が間違っているのである。成長が見られない京田には好き勝手にやらせて、彼より結果を出す選手が出た瞬間に梯子を外せばよかった。自分の打撃論を押し付けたのは無能極まりない

糖質制限も選手によっては効果があるだろう。井端は立浪監督に連れられて沢山のメニューを食べて身体が大きくなり1年を走り切る体力が付いた部分もあっただろう。仮に誰かに効果があっても、糖の分解能力も糖質の摂取量も人により異なるのでチーム全体で統一する必要はない。些細な事でチームのモチベーションを下げてるように見えてしまうのはチーム運営が下手だ

ドラゴンズに未来はあるか

1軍と2軍が弱いから未来がないというのは的外れな話である。1軍で弱点のポジションが2軍で強く弱点を埋められたなら1軍は強くなる。ドラゴンズの2軍の弱点は投手と内野手、1軍の弱点は内野手と左翼。内野の弱点を埋める選手が居ないから来季も優勝は不可能だ

だが打撃能力がピークに達する27歳、総合力がピークに達する29歳を過ぎたレギュラーは木下/ビシエド/大島の3人のみ。1996年世代の福永はピークに達する年齢で2年目の飛躍が期待され1998年世代の細川のピークも近い

ブライト/鵜飼/福元の1999年世代、石橋/村松/田中の2000年世代、岡林/石川の2001年世代が順調に成長すればドラゴンズの未来は明るくなる。もちろん彼らの世代が成長しなければドラゴンズは弱いままだが…

来年からAクラスを争う事は十二分に可能だと私は考える。もちろん次世代の投手と一塁・三塁の穴を埋める必要はあるが、ここに有力選手をドラフトで指名できると一気に未来は明るくなる。この点については次記事で

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