リヴァプールの問題点、解決策、今後想定される事態とは…
リヴァプールが繋がりや過去のクロップの貢献という価値観を捨て長期的にタイトルを争い続けるためには、今季がどんな結果に終わろうとも23年の夏にはユルゲン・クロップを解任するべきである。その後任としてトーマス・トゥヘルを招聘し、マイケル・エドワーズを呼び戻すべきだ。理由は3点
クロップを解任すべき理由1 クロップは強いチームの監督に向いていない
ユルゲン・クロップは古豪クラブの再建において世界最高の実績と実力を持った監督であるが、トーマス・トゥヘル、ペップ・グアルディオラ、アントニオ・コンテ、ハンジ・フリックのような素晴らしい戦術でチームを勝利に導く男たちと異なる
彼はプレッシングからのショートカウンターという戦術しか持たない監督でなのだ。彼の戦術は中堅クラブの実力でも上位クラブを叩く力を与える代わりに、上位クラブの実力でも弱小クラブに負ける事があるギャンブルサッカーに過ぎない
強者は駒の質で勝てば良いのでワンパターンでも止められない攻撃を作って質で殴り倒してしまえば良い。駒の質で勝っているのにリスクを取ってカオスを生み出す必要はどこにも存在しない。戦力が揃った今のリヴァプールでクロップを監督にする意味はない
「このタレントでポイントが取れない事が不思議、監督は無能だ」と言う中堅クラブのファンも居るが、殆どの場合は優れたタレントは2~5人程度でタレントが11人揃ってない。そのためボトルネックを叩かれて実力通りに負けてるだけだ。ヴィラはIHの質が並みでウルヴズのFWが低く、ウェストハムも含めて3チームはCBの質が低すぎる。レスターはGKの質が低く控えと主力の差が激しすぎる
サッカーのチーム力は選手の質の最大値ではなく選手の質の掛け算で決まる。シュートのようなスピードのパスでも完璧にトラップできるフィルミーノも、彼が狭いスペースで自由になる一瞬を突いてパスを供給できるチアゴのような選手が居なければタレントを活かせない。能力が低い人間が混じるとどんなに素晴らしい選手が居ても勝てないのがサッカーの面白さである
素晴らしい選手を何人か抱えるレベルのプレミア中堅~下位のクラブと異なり、リヴァプールには戦力が揃っている。チアゴが揃って11人の凄いメンバーを選べる状態でも実力の足りない若手を積極的に起用して負けるクロップの酷さは別次元だ。試合中のピッチ内だけを評価すればクロップは監督の中で凡庸どころか下位レベルにある
私は結果が出ないからクロップを解任すべきと言っているわけではない。彼がずっとピッチ内で選手の足を引っ張っているから解任すべきと言っているのである。元々クロップは選手の質を考えると解任以外にあり得ないサッカーを繰り返しており、私はずっと戦術的に無能と言い続けていた。FA杯を勝った後もこんなドン引き記事を書いている
結果を出し続けていた18~22年の間も試合中のピッチ内に関していえばクロップの戦術面を評価していなかったのは私だけではない。しかしながら圧倒的な選手の質が彼の戦術の拙さを救っており、結果が出ていたので彼を無能と叫ぶ声が少なくかき消されていただけの話である
クロップサッカーの何がいけないのか①ビルドアップ
クロップのサッカーは守備も攻撃も杜撰な設計でギャンブルサッカーに過ぎないのが問題だ。戦力があれば戦力通りに殴り勝てばいいのに無駄にカオスを作り出して選手の質で誤魔化しているに過ぎない
彼のサッカーは攻撃面ではビルドアップの設計が稚拙(またはロストを想定した欠陥構造だからビルドアップに悪影響を及ぼしている)でドン引きチームに何も出来ない。クロップはビルドアップの形を何一つ作れないのに選手に自由を与えるため、ボール保持時の時間が増えれば増えるほどポジショニングがカオスになっていく。すると守備のプレッシングまで崩れるため被カウンター時の守備力が下がりボールを持てば持つだけ弱い不思議なチームしか作れない
ボールの保持率が60%を超えるとパフォーマンスは悪化の一途をたどり70%を超えると本当に弱くなるチームを作り出した。多くのクラブはリヴァプールの対策をマスターしており、ノッティンガムフォレストやリーズといった負けてはならないクラブにまで敗北する有様である
何故か。クロップはアーノルドやサラーなどポゼッション時に選手に自由を与える事でカオスを作り出そうとしているが、選手の中でも相互理解が出来ておらずボールが前線に供給できていないからだ。だから選手の質が高いのにチャンス自体が作れていない
細かい原則について解説するのは時間がかかるため簡潔にお伝えすれば配置の問題だ。相手がどう来ようともワンパターンでLBは敵陣深く前に陣取り、MFの1人は最前線に入り中央がスカスカな状態を繰り返す。最近になって配置を変える事も増えてきたが、ビルドアップの基本形は上の形と変わっておらず本質的になんの進歩もない。特にブバチが退団した17/18シーズンの終盤以降では試合の間隔が空いてもチームを修正できなくなっている
本来であれば相手1stディフェンダーのプレスしてくる人数に応じたビルドアップの形が必要である。相手のプレスが1枚ならCB2人で抜くべきだし、相手が2人かけてプレスに来るなら3人でボールを回すべきだ
しかしクロップのサッカーでは4‐3‐3であろうと4-4-2であろうと4-3-1-2だろうとセオリーを無視してMFの1人が最終ラインに入る事が多すぎる。最終ラインでのボール回しは安定するが、その分だけ前方の人間が数的不足になる
ここまではリターンを落としてリスクを落としているだけなので問題ではあるが致命的な問題ではない。しかし、もう1人のMFが何故か常に最前線に入る事はポゼッションの常識からすればあり得ない選択だ。これでは中盤に残るMFが1枚になり絶望的な数的不利になってしまう。(下図参照)
このため真ん中に人が居らずパスコースが少ない事から最終ラインから中盤にボールが渡らない。(※ペップもクロップと同じく3-2-5ビルドアップを試しているが、あまり上手くいっていない。もちろんペップは速くて強いボールを扱う技術の高いIHのポジションを上げてFBの2人を2の位置に置いているのでエリオットがロストを繰り返す設計をするクロップよりは考えている)
その結果として最終ラインはロングボールを蹴るかCBがドリブルで相手の守備を突破していかなければならない仕組みが出来ている。普通CBは敵のFWからのプレスを抜けば仕事は終了でMFがボールを前進させる仕事を担うのだが、ドリブル突破能力に優れるマティプやコナテが先発した際には彼らが何故か最前線までボールを運ばなくてはならない仕組みになる事が多い
またドリブル突破能力に劣るゴメスが先発した際にはドリブルで前へ持ち出す事が出来ずパスコースもない事から彼の判断ミスによってピンチが作られてしまう。ゴメスが出ると苦しくなるのはゴメスがコナテやマティプに比べて劣っている点もあるが、彼の短所を浮き彫りにしているクロップの戦術的な拙さが問題を大きくしているからである
CBが単騎突破するというリスクを跳ね上げる攻撃以外のもう1つの打開ルートはチアゴによるドリブル突破だ。彼は身体の使い方によって相手DFの隙をついて彼が低い位置から相手の1列目や2列目DFを剥がす事が出来るし、剥がせなくても速いロングボールで相手のスライドが間に合わないサイドチェンジを蹴れるからボールが前に進む
彼が出ている試合と出ていない試合で勝率に圧倒的な開きが生まれるのは、クロップの攻撃戦術にビルドアップの原則がなくボールを持ってもチームとして前に進めないからである。そして彼が出られないと勝率は大幅に低下する
クロップのサッカーは21/22シーズンまで選手の質で殴り倒していただけでビルドアップ戦術の面では22/23シーズンに限らず就任後の殆どで無能だった。これまでリヴァプールが勝てていたのは左右のFBの個による圧倒的なチャンス創出能力に頼っていたからに過ぎない
しかしながら今季は何故かアーノルドをインサイドでプレーさせる愚行を繰り出し、得点能力を減らし続けている。クロップの方針転換によって今季はFBによる圧倒的なチャンス創出能力という強みまでも手放す事になった。このバカげた戦術によってチームは大きく影響を受けている
21/22シーズンではFB3人が10095分の出場で40アシストでシティの倍以上という驚異の数字を上げた。内訳は左サイドからロボとツィミカスが5685分で21アシスト、右サイドからアーノルドが4230分で19アシスト
しかしながら22/23シーズンの11月5日時点では3015分で10アシストに過ぎない。内訳は左サイドからロボとツィミカスが1679分で10アシストと前年に近い数字だが、右サイドからアーノルドが1336分でアーノルドが0アシストである。右サイドからの攻撃が死滅した影響は大きい
10月の終盤に入ってアーノルドの位置には若干の進歩がみられるものの、相手の出方に応じてポジションを変える現代サッカーの基礎の基礎すら出来ていないワンパターンなビルドアップで戦術のなさを露呈している。就任後7年が経過した今もビルドアップは基礎すら出来上がっていない
クロップサッカーの何がいけないのか②ゲーゲンプレス守備
また守備面ではインテンシティ任せなプレッシング頼みのため、バランスよく走れる中盤と最終ラインやGKの個に大きく依存している。ヘンダーソンの走力が凡人以下に衰え、良く走れるミルナーやエリオットやジョーンズはバランスを意識できないため、彼らの出場機会が増えた22/23シーズンは守備が崩壊している。元々ファンダイクとアリソンが加入する前は1試合1点以上の失点を許しており彼の守備戦術が優れているわけではない
ファビーニョの守備が効かなくなっているのはロストの形が悪く中央のフィルターが機能していないからである。周囲、特に悪いのはエリオットだ。彼は身体能力が低く全力疾走しても相手のカウンターに追いつけない上に守備力が全くない。ボールを持っている人間に猪の如く一直線に走るだけ。その勢いを使って相手は連携で崩して彼を易々と突破する。その後は数的優位でファビーニョの守備を回避されてカウンターを食らっている
ポジションが悪ければリトリートしてブロックを作らなければならない。しかしクロップは前へのプレッシング至上主義だ。最終ライン以外はディレイすべき状況でも無謀なプレスを繰り返している。だからカウンターを決められやすい
エリオットの質が低すぎて守備が効いてない上にロストが増えて歪な形のビルドアップが原因で初期配置も悪いのでカウンターを止める手段がない。エリオットがスタメンを取る前もロスト時のポジションが悪い問題はあったものの、ロストがそこまで多くなかった事とダイクとマティプとコナテとゴメスが止めていたのと相手の対策が不十分だったので問題が隠されていただけだ
優秀なCBが居なかった20/21シーズンを見ればクロップのサッカーが選手の質に頼ったギャンブルサッカーであり、戦力が揃った強者の立場で行うべきないサッカーだと分かるだろう。昔は正しかったやり方が今も正しいわけではない
プレッシングのショートカウンター1本というギャンブルサッカーでクロップはPL5位の売上で予算が少ないのにも関わらず4位を獲得し、翌年もCL決勝に進みながら4位を死守という素晴らしい結果を残したクロップはチームにとってレジェンドである。だが、このまま彼の政権が続けばラファ・ベニテスのように評価が落ち続けていくだろう
過去のクロップの功績によってリヴァプールのブランドは復活しコマーシャル収益とメディア収益が爆増した。結果的にリヴァプールは21/22シーズンからPLで売上が1位になりユナイテッドやシティ、チェルシーといったクラブとの経済格差を逆転するに至った。戦力を維持するためには高い給与が不可欠だが、リヴァプールはフロントの努力もあって大幅な収益アップを勝ち取り世界で最高レベルの戦力を維持できる体制を作り上げたのだ
世界最高レベルの戦力となった今、戦力を活かした強者の戦い方をできる人が監督をするべきである。私(に限らず恐らく全てのクロップ解任派)は結果が出ないからクロップを解任せよと言っているのではない。監督が競争環境が変わった今も考え方をアップデート出来てないから解任を強く主張しているのだ
もっとも監督の戦い方は哲学に依って生まれているので、今も昔もモウリーニョはモウリーニョしていて、ペップはペップしていて、クロップはクロップしている。これからもクロップの哲学は変わることなく戦い方も何も変わる事はないだろう
15/16シーズンでリヴァプールにとって最高の監督はクロップだった。だがクロップのお陰で優れた戦力が揃って優れた戦力を維持できる世界トップレベルの売上に戻った。そのためクロップがリヴァプールにとって最高の監督ではなくなっているから私は解任を待ち望んでいるのだ
兎にも角にも今は他クラブとの戦力差を活かしてギャンブルすることなく確実な勝利を目指す監督に代える必要がある。今後クラブが中堅に戻れる事があればクロップの力は再び必要になるが、現チームにクロップの力は全く必要ない
クロップを解任すべき理由2 所属選手に対する過剰な信頼と編成能力の低さ
クロップのサッカーにはチームスポーツにあるべき連携が攻撃面で全くないが、それでも高い質の選手のお陰で殴り勝っていたのである。また守備でも連携以上のインテンシティと世界最高レベルのGKとCBによって誤魔化せていたので勝てていた。しかし拙い戦術を個が打開するしかないチームのため、代えのきかない選手が不調や故障で離脱すると今季や一昨季のようにたちまち不調に陥ってしまう
もちろん故障者が出るのは当たり前の話であり、どのクラブでも起きている問題だ。その問題を解決するのは選手層であり、編成がしっかりしていればある程度のレベルのバックを揃えて解決できる。だが、現在のリヴァプールには戦力が明確に不足しているポジションが存在する。そのためクラブのフロントやオーナーに対して文句を言う人も多い。しかし本当にクラブのオーナーやフロントのせいなのだろうか。彼の起用は発言を見る限り、編成面の問題を作り出しているのもクロップと考える方が自然である。
取れない長期的プラン選手への固執
彼は欲しい選手以外は要らないという姿勢を崩さずチュアメニやベリンガムのように買えない選手に固執した。クロップは自分が求める選手が市場に出る事を待っているが、リヴァプールに天文学的な補強予算がないためクロップの買いたい選手を買えていない。限られた予算の中で求める選手の為の移籍金を捻出するため、多くの優秀なMFを無視しているからMFの補強が進まない
シーズン序盤にチアゴも離脱し結果が出なかった時ですら長期的プランにクロップは拘っていた。そのクロップが会見で誤りだったと認めさせてまで選手獲得に動く姿勢を見せたのはフロントだ。クラブはチームの戦力を憂い、自分の望むMF以外の補強を拒むクロップを説得した。短期的な解決策での補強を認めさせ、ローンできる選手からアルトゥール購入を決めた
残念ながらアルトゥールはクロップが求めるMFからかけ離れており、クロップのサッカーに適応しようと努力したアルトゥールは大怪我を負ってしまい安物買いの銭失いとなってしまった
所属選手に対する過剰な信頼
かといって足りない予算を埋めるために故障を毎年繰り返しているケイタとチェンバレンを売ろうともしなかった。更には身体能力に依存したヘンダーソンが歳をとって何処まで衰えるか分からない状態で無条件に契約延長を受け入れ、完全に衰えていたミルナーにまで契約延長を与えている。そしてリヴァプールのレギュラーや控えとしてプレーする水準に至っていないエリオットやジョーンズといった若者を重用している
クロップはエリオットを高く評価しており昨季も彼が故障するまでレギュラーに近い待遇を与えていた。そしてエリオットが故障して出場機会を増やしたのはジョーンズだった。ケイタやチアゴが出場を増やして勝点を重ねたのは2人が離脱したシーズン中盤に入ってからである
クロップはボールを扱う技術以外の進歩が見られずリヴァプールでレギュラーやローテ要員を務めるには苦しいカップ戦レベルの若者たちが飛躍すると信じて補強を怠っている
以上の観点からMFの補強不足はクラブの責任ではなくクロップの責任と考える方がよっぽど自然だ。リヴァプールが持つMFの質はチアゴ、ファビーニョ、ケイタを除けば中堅クラブよりも低い。この3人をピッチに並べてアーノルドが右サイドから質の高いクロスを放り込む去年のリヴァプールに戻れば昨季のように勝点は積みあがっていくだろうが、エリオットが大好きなクロップが監督を続ける限り起きないだろう
クロップのサッカーにはプレス以外の引き出しがない。結果として多くの選手が彼の戦術によって足を引っ張られているだけではなく、編成面でも明らかなチームの問題を放置し改善する努力を怠っている。今のチームを改善するためのボトルネックとなっているのは間違いなくクロップである
リヴァプールが復活したのはエドワーズを中心とするスカウトチームが素晴らしい選手を選手の価値よりも遥かに低い金額で発掘し、クロップがカリスマ性と天性の人たらし術で引き込む事に成功したお陰だ。リヴァプールの復権は間違いなくクロップの功績が大きいものの、リヴァプールが強くなったのはクロップ1人の功績では決してない
クロップを解任すべき理由3 名将トゥヘルが空いている
クロップを解任する事でチームが過去の上手くいかないサイクルに入る事に恐怖を覚えるのは至極まっとうな感覚で、彼を解任すると起こる問題と適切な後任が居るのかという論点を整理せずにクロップを解任するのは愚かだ。ピッチ内外と補強についての問題を検討する必要がある
ピッチ内の問題は生まれるか?
この点についてはないと断言できる。彼が去ったドルトムントでは彼を解任してトゥヘルが監督となった後の方が結果が出ている。マインツでも彼が退任した後任監督は1年で2部から1部昇格を決めた
特にドルトムントではクロップ時代に優勝した時よりもトゥヘル1年目の方が勝率は高かった。2年目にはムヒタリアン、ギュンドアン、フンメルスといった主力3人を引き抜かれて代役がデンベレやバルトラといった若手とゲッツェやシュールレといったビッグクラブで通用しなかった選手たちだったが、クロップの優勝したシーズンを除くとトゥヘルの方が高い勝率を誇っている
要はクロップのピッチ内での功績というのはモチベーションのブーストくらいのもので長期政権でブーストが切れれば破綻した戦術で戦うように悪影響の方が大きい。もちろん全ての人間にクロップの後釜が務まるわけではない。だがクラブの立ち位置に合わせた立場が得意な監督であればピッチ面では間違いなくクロップ以上の結果を残せるだろう。今のリヴァプールなら強者の立場が得意な監督であれば間違いなく成績は好転すると断言しても良い
もちろんジェラードのように劣ったメンバーでも強者の戦い方を選択して結果を出せない監督よりも、強者の戦いが出来ぬ時には違う引き出しがある人の方が当然強い
その点トゥヘルはマンチェスター・シティやリヴァプールなどの格上相手には守備的な設計ながらも折を見て殴り返すシステムを構築出来ている。チャンピオンズリーグの決勝では僅かに劣るチェルシーのメンツでシティを撃破してビッグイヤーを獲り、タレントの質で劣るリヴァプール相手に得点を許さずPKに持ち込む大熱戦を見せた。ピッチ面を見れば彼が適任だろう
ドレッシングルームの問題は生まれるか?
ピッチ外の問題ではどうだろう。この点でも人心掌握に優れたトゥヘルのような監督であれば問題は起きていない。クロップが去った時のドルトムントのメンバーは現在のリヴァプールほど豪華なメンバーではないが、トゥヘルは完璧にコントロールしていた
またPSGというリヴァプールよりも曲者ぞろいのクラブでさえ彼は上手くコントロールして2年連続でリーグ優勝に導いた。3年目こそチアゴ・シウヴァの退団とナバスが離脱などによって不調に見舞わ解任される事となったがピッチ外での問題は特に起きなかった
強者のサッカーだけでなく柔軟な戦い方が出来てトップレベルの選手の人心掌握も出来るトゥヘルが空いている現在、クロップを続投させる事もジェラードで賭けに出る意味はない。トゥヘルを呼ぶべきだ
移籍市場での立ち回りは?
クロップ解任後の解決策の1人であるトゥヘルは移籍市場については責任を持ちたくないらしく、キャリアを通じてスーパースターの獲得に貢献した事はないと思われる。しかしながらクロップが監督だったことによってチーム加入を決めたスターというのはリヴァプールでは少数派である
監督が決め手になった可能性があるのはダイク、マネ、チアゴくらいだろうか。彼らの獲得はチームを大きく変えたのでクロップの功績は非常に大きいものの、チュアメニなどクロップが熱心に勧誘してもマドリー願望の強い選手はマドリーに行く
アリソンも最初はレアルマドリー願望が高くリヴァプールのオファーを断るとみられていたがクルトワにマドリーが熱心で移籍の可能性がなかったこと、フィルミーノやファビーニョから熱心に誘われて嫁の反対が消えたので加入を決めたと報じられている
優秀な選手は代表などで独自のネットワークがあり、クロップの改革によって選手の質が高くなった事で既に質の高い選手を引き寄せやすい環境は整っている。クラブとしての格が上のマドリー、活躍する前から莫大なサラリーを約束するクラブが狙っていない優秀な選手をSDが見つける事が出来れば補強の問題は起きないだろう。むしろクロップが既存の選手の入れ替えを拒んでいる分だけ補強は前向きに進むはずだ
ただ現在のSDジュリアン・ウォードでは不安が大きい。スカウトの推薦か自分の判断かは不明だがクロップのサッカーと大きく異なるポゼッションに必要な人材のアルトゥールを獲得してくるなど、監督の方針に沿った人材を発掘する能力は低いとみて間違いない
またクロップの要望を受ける形で即戦力ではないポテンシャル採用のヌニェスにボーナスを含めるとクラブ市場最高額となる金額を提示してしまった。市場には契約延長で揉めていたニャブリ、来季に売りだされると予想されていたエンクンクが居たのにも関わらず、だ。フロント主導で戦力補強を望むトゥヘルとの相性は良くないだろう
今年の夏に南野やネコ・ウィリアムズといったカップ戦要員を高く売却に成功した点に関してはウォードは評価されるべきであるが、どんな立場でも良いのでマイケル・エドワーズを呼び戻しウォードの仕事を手伝ってもらう必要があるだろう。これらの観点からクロップを解任して起こる問題は、次の監督人事が適切でエドワーズを呼び戻せば回避できると結論づけられる
守備的MF補強でチーム編成の再整備を!-トゥヘル招聘だけでなくMFの補強も必要
リヴァプールが22/23シーズンのスタートに失敗した理由は単純だ。クロップの拙い戦術とそれを隠してきた圧倒的な選手の能力という優位性が崩れたからである。多すぎる故障者、マネの退団、ダイクやアーノルドの疲労蓄積。こうした代えのきかない選手の離脱と不調でリヴァプールは苦しんでいる
トゥヘルを招聘すれば強者の立場を活かしてチームの成績は向上していくはずだが守備的MFの控えが不在という編成の問題は残っている。強者のサッカーを貫くには控えも含めた選手の質が重要なのだ
シティとマドリーのMF運用は?
今後の補強をするにあたってMFの戦力が充実しているチームの運用を参考にしてみよう
シティの基本は5人編成で残りの細かい出場時間はFWが兼務したりユースがプレーする。メインは底にロドリで低い位置からボールを運ぶベルナルド・シウヴァと高い位置で決定的な仕事をするデブライネの3人だ。この3人はカップ戦では故障明けのコンディション調整や大会を勝ち進んだ時に強敵と当たる時だけ出場し基本はPLとCLに専念する。ロドリが休む時にはフェルナンジーニョ(今季からカルヴィン・フィリップスに交代)が仕事をして、ギュンドアンがデブライネとベルナルド・シウヴァの控えをしている
マドリーも基本は5人編成だ。メインは底にカゼミロ(今季からチュアメニに交代)、低い位置からのパサーをクロースが担当し、高い位置で決定的な仕事をしながら守備も頑張るのがモドリッチの役割である。控えには万能なカマヴィンカが低い位置の仕事をメインに行い、高い位置の仕事はバルベルデが行っている。みな頑丈な選手であり、弱いチームと戦う時は手抜きでも勝てることもあってバルベルデは右のWGと兼務している。カップ戦など大事じゃない試合ではセバージョスやFWのアセンシオがIHとしてプレーする事が増える
一方でアンカーの控えは存在しない。クロースやカマヴィンカやモドリッチがやる。相手が強くて守備を重視する時はチュアメニ(元々はカゼミーロ)を出すが一方的に殴れる相手ならば守備の専門家は使わない。確かに4‐3‐3だと底しか出来ない守備の専門家を買って少ない出場時間に文句を言われるくらいならば守備も出来るIHに任せるマドリーの流儀?は賢い判断と言える
リヴァプールの現状
一方でクロップが完璧なMFが9人揃っていると言っていたリヴァプールMFに対する私の評価は下の通り
リヴァプールのレギュラーに相応しい選手はチアゴとファビーニョしか居ない。そして控えレベルとして及第点を与えられるのは年に2000分稼働すれば御の字でクロップと恐らく喧嘩してクロップが解任されない限りは2度とプレーする事がなさそうなケイタぐらいである。仮に契約を延長したとしても離脱が多い選手を控えとして計算するのは難しく、今年1度もプレーしてないので去年と同じレベルにあるかどうかも怪しい
ダブルボランチで10番を起用する場合にはカルヴァーリョが控えレベルになるだろうが、現状では8番のIHとしてリヴァプールの戦力とは言えない。この状況でMFの補強を翌年に回そうとしたクロップはそれだけで解任に値するほど罪が深い
現在の戦力を大きな故障がなかった時の稼働時間を考慮したものが次の表2
リヴァプールは致命的なレベルでMFが不足している。戦力の選手が彼らの平均的な稼働時間を想定しても主力が7000分、戦力に不測の事態が起きた時には8000分の戦力が足りていない事になる。リヴァプールのレベルに値し、かつシーズンフル稼働できる頑丈MFを2人またはそれなりに頑丈なMFを3人獲得しなければならない…
補強候補①アンカーもできるチアゴ型の守備的MF
上のリンクで述べたように今のチームに最も必要なのはウォルバーハンプトンのネベスだ
https://fbref.com/en/players/44bfb6c5/scout/11566/Ruben-Neves-Scouting-Report
まるでチアゴのようなスタッツを残しており、攻守ともに優れた完璧な選手である。低い位置から攻撃を加速させる速いロングパスやフィルミーノやカルヴァーリョのようにボールコントロールに長けた選手へラインを破るグラウンダーの速いパスも出す事ができて守備も出来て故障が少ない。£50mで買えるならば無条件で取るべきで限界は£65mぐらいだろう
ネベスのバルセロナ加入報道が過熱した一方でシャビはブスケッツの後釜としてズビメンディを求めているのでネベスの報道に困惑したという報道もある。確かにブスケッツの位置でいえばネベスよりズビメンディの方が良い
バルセロナが夏に取りたかったブスケッツの後継アンカーを取れなかったのはサラリーキャップによって制限されていたからである。サラリーキャップの余裕のなさは冬に夏獲得したケシエを売却するという話があり、ケシエも移籍に前向きという報道がある事から多少の枠は出来るだろう
バルセロナは今季の利益が莫大なので経費を使いたくて仕方ないがサラリーキャップに余裕がない状況、€60m程度の常識的な額の契約解除条項があるという話を考えるとネベスに比べれば給与がそれほど高くないズビメンディの獲得に終わるのではないかと私は推測している
またバルセロナは資産を切り売りした事によってキャッシュを大量に持っているものの、負債を一切減らしておらず数年後には経営状況が悪化する事が予想されている。ネベスの代理人であり優秀なビジネスマンでもあるジョルジュ・メンデスはセメドやトリンカオなどバルセロナから所属選手を引き上げた。現在メンデス案件でバルセロナに所属しているのはユースから上がってきたバルデだけになっている事からネベスのバルセロナ移籍の確率はそこまで高くないのではないかと私は考えている
ただ彼はCLの舞台に戻りたがっているという報道も強い事から獲得に失敗する可能性をふまえて念のため他の候補も検討する。ネベスの次に優れてるのはACミランのベナセルとチェルシーのジョルジーニョとウェストハムのライスだろう
https://fbref.com/en/players/db092d3b/scout/11611/Ismael-Bennacer-Scouting-Report
ベナセルは足も速くてカバーエリアが広く守備が強くてドリブルでの打開力もある。ミランではダブルボランチでコントロールする役割を担っていて前でプレーする事も少ないのでアシストや得点は少ないもののパスも上手い。ネックはボールコントロールが雑でロストが多い事だろう。契約満了が近く強気の交渉ができる点も魅力だ
ジョルジーニョは未だに契約を延長していないが、その後リヴァプールに来る可能性は低い。またファビーニョが故障も風邪などでの離脱も少なく年に3500分~4000分程の稼働が見込める選手なので4‐3‐3だとアンカーしか適性がない彼は優先順位が低い。同じ理由で守備的なIHより底の潰し役の方が得意なライスも金額に見合う選手ではない
彼らが取れないならばベンフィカのエンツォ・フェルナンデスも候補になるが、彼はネベスほどの守備力もなければグラウンダーのパスやロングパスでもなく、プレミアリーグのインテンシティにも苦戦するだろう。それでもポジショニングやボールの受け方から見る知能面の高さや若さなどを考えると魅力的な人材だ。ただし22年夏に移籍した選手であり、契約解除条項は€120mと超高額である。実力だけを見た価値は£30~35mであり、£50mまでは無条件で取るべきネベスから比べると大きく劣ると言わざるを得ない
https://fbref.com/en/players/5ff4ab71/scout/11652/Enzo-Fernandez-Scouting-Report
現在のリヴァプールに守備的な仕事ができるMFが2人しかいない事やリーグレベルなどを考えると全力投球するべきはネベスである。スカウトは彼をリストアップしてると噂されているのに話が進まないのが残念でならない
補強候補②守備的MF6番も出来る攻撃的なIH8番
守備がそこそこ出来て攻撃でも前の選手と繋ぐ仕事ができる8番型の選手も必要だ。個人的な希望はインテルのバレラだが、予算的にはロリアンのル・フェーが最善かもしれない
全力を挙げているとされるベリンガムは現時点の実力だけを見れば全盛期のケイタと同レベルの選手であり、25歳だったなら移籍金は£30~40m程度だろう。IQもフェルナンデスほどの価値を感じず守備的MF6番としては不十分だ。ただ8番としては今季のスタッツはリヴァプール加入前のケイタと同じ水準を叩き出しており、レベルが上がってきた印象もある
ケイタはリヴァプールに来て上手い選手に囲まれて萎縮し一切の成長を遂げなかったが、彼はメンタルも強そうで(あれだけレベルの低いエリオットが叩かれていないことを見ると)ファンの後押しも強そうなので成長すれば3~5年後には素晴らしい選手になる可能性を秘めてはいる
しかし£130mという評価額はリヴァプールの売却益を除いた移籍金の予算2.5シーズン分くらいに匹敵する。8番を取っても守備的MFが壊滅的に足りない今のリヴァプールにとって高額すぎる選手である
加えて8番として重要なボールを扱う技術と貰う視野の広さ、細かい動きとターンで重要なアジリティといった部分でカルヴァーリョの方がベリンガムより優れており将来性の点でも私は彼がベストだとは思わない
ベリンガムはデヨングと同じくBox to Boxの選手であり守備的なMFとしても攻撃的なMFとしても中途半端な感は否めないのだ。彼は素晴らしいラストパスを出せる選手だが、それ以外の能力は全てが揃っているもののずば抜けて凄い才能はない。攻撃面を比較すればバレラの方が優れている事が先のスタッツからも分かるだろう
どういうサッカーをするかにも依るがリヴァプールにとってベリンガムは決して最高の人材ではない。過去の実績からクロップのスカウティング眼力はさほど高くない事は明らかであり、彼に全力を尽くして他のポジションの補強をおろそかにすれば間違いなくリヴァプールは沈む
攻撃的なIHとしてはバレラがもっとも欲しい選手ではあるが、金額が高額であることと守備力の部分で若干の不安がある事を考えるとル・フェーも悪くない選択になる
https://fbref.com/en/players/6f806d99/scout/11585/Enzo-Le-Fee-Scouting-Report
タイプ的には両足を使えて細かいターンで交わす事ができるララナ系の選手である。ロストの部分でのスタッツに不満は残るが周りが下手すぎる事を考えると上手い選手に囲まれれば一気に飛躍をする可能性は秘めている。身体能力のデータは不明だがスピードはあまり持っていないと思われるがアジリティとバランスに優れて細かい立ち回りが上手い
そのため守備でも交わされそうになっても最後に足が伸びてくるのでボールを刈り取れる。ショートカウンターはクロップであろうとなかろうと攻撃力に直結する守備力なので欲しい選手である
ベリンガムに行こうとバレラに行こうと1年目にはPLのインテンシティに苦労するであろうことからル・フェーでも問題はないのではないかと思われる。今の所は故障も少ない事から激しいフィジカルバトルで壊れない限り将来的にはベリンガムなどに追いつくのではないかと期待している
ネックはバルセロナが目標と言っている点だろう。ただ世界トップレベルのペドリと同じ仕事を得意としている事やペドリの方が若い事を考えると彼の説得は不可能ではないと信じたい
PL経験者で考えるとマテウス・ヌネスが候補になるだろう。彼は8番専門と思われる選手で粗削りなものの良い推進力という点では既にPLで実績を見せ始めている。金額もそれなりにする事から優先度は低くなるがCL権があれば来季には£50m程度での契約解除条項があるとも噂されており、現在のリヴァプールのMF水準と比べれば遥かに優れた選手であるといえる
リヨンと長期の契約を結んで延長したカケレも£30m程度で市場に出てくるのならば候補にはなる。ララナのように鈍足だがピッチ全体を駆け回る選手で守備と攻撃に大きく関与していくタイプのMFだ。Box to Box型としては攻撃力の部分でまだ物足りない
https://fbref.com/en/players/f81ef10d/scout/11585/Maxence-Caqueret-Scouting-Report
以上の補強候補をまとめると下記の通り
能力的にはみんなリヴァプールの現MFよりはプラスになるだろうが、予算や将来性などを考慮して最低2人来夏までに獲得しなければならない。6番と8番を各1名取ったとしてもリヴァプールのMFは守備的な仕事をできる人が若干不足しているが、その点はバイチェティッチが順当に成長すれば埋まるもので優先順位は低い
何よりもまず守備的なMFの確保が重要であり、補強候補で最も必要なのはネベスである。また守備も出来る攻撃的なMFについては予算を度外視すればベリンガムやバレラになるが、彼らに比べて格安で将来性の部分では彼らに匹敵するタレントになりえるル・フェーが最善手ではないかと思われる
終わりに-クロップは神ではない
全ての人には強みと弱みがあり、その個性ある能力によって得意な仕事もあれば苦手な仕事も存在する。年を取った人生の最盛期でも強みが成長して、弱みを隠す技術が上がるくらいで個人の強みと弱みは殆ど変わらない
強みのある人間は環境が揃えば結果を出す事が出来るし、環境が揃わないと結果を出すのは難しい。どんな環境でも結果を出せるのは自分1人で仕事が完結する仕事くらいなのだ。こんな当たり前の事すら分からぬ人が居る
クロップは過去に少ない投資で大きな実績を残した事から万能な素晴らしい指揮官だと多くの人間から評価されているようだ。しかしながら彼は全く万能ではない。クロップはシメオネと同じく世界最高レベルの次点に位置するチームで最高の能力を発揮する監督である。かつてクロップが就任した頃のリヴァプールやドルトムントのような環境でこそ彼の長所は輝く
強いチームで指揮する事に適したグアルディオラ等の監督とは大きく異なり、今の強くなったチームを指揮する事に適していない。だが殆どの人は結果でしか物事を見ていない
強者のサッカーを強いチームですると結果が出るのでグアルディオラのように評価される。しかし強者のサッカーを弱いチームですると結果が伴わないので評価されない。今年は見てないので分からないが昨季までジェラードのサッカーにはロジックが存在し、レンジャーズでもヴィラでも最終ラインのボールコントロールスキルが低いのに強者のサッカーを繰り返した
ジェラードはスコットランドでは強者のレンジャーズを率いて結果を出したように強者のチーム視点では評価されるべきだし、中堅~弱者の立場であるアストンヴィラで最低限の結果も出せなかったように弱者のチーム視点では評価が低くて当然の監督である
エディハウは弱者の立場であるボーンマスで降格したので解任されたが中堅の立場であるニューカッスルを率いてそこそこの結果を出したので評価されている
中堅クラブの戦いを中堅クラブですれば評価されるし中堅クラブの戦いを強いチームでやると結果が出ると評価するが結果が出ないと評価されなくなる。シメオネとクロップは過去の実績からアトレティコとリヴァプールのファンから神格化されている一方、一部のファンからは見放され始めている
弱小クラブの戦いを中堅から強豪クラブで行えば結果が出ないし、弱小クラブの戦いを弱小クラブでやったところで出せる最高の結果はトップリーグ残留くらいだから評価されない。アラダイスやホジソンは弱小クラブでは名将と私がどれだけ言っても彼らの功績は弱いチームを残留させる以上にならない。昔どっかの中堅クラブがホジソンにオファーを出して結果を出せず解任されたこともあって、彼らは業界人以外からはバカにされやすい
そして多くの人は前提条件を無視して結果だけしか見ないし過去を忘れる。世の中そんなもんである
何故か人は長所と短所を軽視して弱みを改善して平均点を取るべきだと考える事が多い。けれど強みも弱みもなかなか変わる事はないのだから長所を活かして他人を助けて短所は人に助けてもらうべきなのだ
結果が出てるものは全てが万能であるわけがない。時代の風雲児として取り上げられてメディアに絶賛されたものがハリボテであることが良くあるように、リヴァプールの躍進は選手の質に大きく依存したものに過ぎなかった。リヴァプールの成功は陳腐な戦術でも選手の心を掌握した人たらしなクロップの魅力とエドワーズが用意する戦力がかけ合わさって生まれたのであり、クロップが全てを成し遂げたわけでもなく、彼にこの先のクラブを救う力はないと私は考える
選手の質が高くて結果が出て当然のチームを作ったのは見事。その素晴らしい戦力を揃える為にクロップのカリスマ性がスカウトに寄与した事も素晴らしい実績だ。一流選手を引き寄せる資源が何もなかった当時のリヴァプールにはクロップこそ最適の人材だった
だが売上トップで最高の戦力を維持できる現在のリヴァプールにとって、選手の才能を見抜ける編成チームの方が重要な人材なのだ。だから私はクロップよりもエドワーズを取ると言い続けていた。クロップは神ではなく、立て直しのスペシャリストに過ぎず、強いクラブで監督をする適性がない
彼の力もあってクラブは見事に再建され、今のリヴァプールは10ポジションのレギュラーは世界最高レベルにありFWもDFもGKも控えが充実した史上最強のリヴァプールである。これだけの優秀な選手を大量に抱えているのでクロップの拙い戦術に足を引っ張られても勝ってこれた。リヴァプールは過去5シーズンで世界最多の3回もCLの決勝に進出しているし世界最高レベルのプレミアリーグでも3回優勝を争うほどに勝ち続けたのである
しかしクロップの拙い戦術に対する対策はほぼ全てのチームに知れ渡っており、結果を出すためになりふり構わず対策を行う弱小クラブにも負けてしまっているのが現実だ。クロップにはマンチェスター・シティやレアル・マドリーより巨大な戦力を与えないと彼らを打ち倒す事が出来ないのは明白だ
しかしリヴァプールは売上トップに立った今も戦力維持の為に所属選手へ高額な年俸を払っているため莫大な補強予算は存在しない。またリヴァプールのオーナーであるFSGはリヴァプールが稼ぐ全ての資源を使う事を認めているものの過去に貸し付けた金を余裕がある時に回収している。彼らは無理のない投資で長期的な成功を目指しており、中東の王族のような資金供与をする気は全くない
更に今後はオーナーからの資金注入による過剰投資は禁じられる事になり、クラブの売上×設定値が上限となって補強は制限されていくことになる。ルールの移行期である来季に限れば、今年CL権を取れなくても財政的な部分で戦う事は出来る。またチェルシーがCLを逃してもカンテが取れたように1年だけなら許される
しかし来季以降のPLで4位以内に入れずCL権を逃したならば財政的にかなり苦しく補強できる選手もレベルが落ちていくことになる。選手の質が落ちればPLとCLの結果も落ち込み、タイトルを取れないクラブは商業的な価値が落ちて放映権とグッズ収入という収益の柱が崩れていくことになる
それなのにクロップはスカッドの問題を修正せずリヴァプールには攻撃的MFのレギュラー、守備的MFの控え、アーノルドの控えにゴメスを回すとCBが足りないという3つの大きな穴が存在する
クロップがこの問題から目をそらし続けており、ベリンガムの獲得に全力を尽くして成功した場合、リヴァプールの未来は一気に暗くなっていくだろう。そして問題を正しく認識できないクロップ体制が続く限りリヴァプールがかつての姿を取り戻してマンチェスター・シティを打ち負かす事はない
私はクラブのオーナーには投資よりも競争環境に応じた適切な処置を求めたい。クロップが結果を出して商業的な価値を回復したリヴァプールだが、エドワーズやブバチといったリヴァプール再建の立役者たちを切り捨てたクロップの続投は間違いなく自滅行為である
リヴァプールはクロップを続投させ、数年に1度の運に恵まれたタイトルで満足する事になるのか、クロップを解任して強いチームの監督に適した人間を就任させて黄金期を目指すのか。リヴァプールは岐路に立たされている
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