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超高齢社会という新時代の賃貸管理。LivEQualityの取り組みがモデルケースになる

株式会社LivEQuality大家さんです。住まいをかりづらい困窮世帯のシングルマザーなどを対象に、安心安全で快適な物件を市場より低い価格で貸す「ソーシャル大家さん」事業に取り組んでいます。

わたしたちは資金調達の手法として、インパクトボンドを活用しています。インパクトボンドは金利のリターンを低めに抑え、ソーシャルリターンという社会的インパクトを最大化するように設計した投資の仕組みです。

日本ではまだ事例も多くないこの枠組みに、インパクト投資家として参画してくれたみなさんに理由や期待を伺っています。

今回は法人として参画してくれたナップ賃貸保証株式会社 常務取締役の田邊裕典さんにお話を聞きました。

ナップ賃貸保証株式会社 常務取締役の田邊裕典さん

──まずはナップ賃貸保証さんがどんな会社なのかお伺いしてもよろしいでしょうか。

ナップ賃貸保証は、滞納家賃などの保証会社です。

保証会社というと間違えられやすいのが、一括借り上げ家賃保証の仕組みです。これは入居者がいてもいなくても30年間ずっと同じ家賃をオーナーさんに払い続けるという保証です。私たちはそれとは違って家賃債務保証の会社です。

どういう保証かというと、入居者が何かしらの事情で家賃が払えなくなってしまったときに、私たちが家賃を立て替えます。

例えば急なリストラとか、病気で長期で休養したときなどです。入居者には生活を再建してもらいながら、立て替えた分の家賃を返していただく。これが家賃債務保証です。

今どんどん高齢化が進んでいて、連帯保証人になってくれるような、頼れる相手がいない人が増えています。

高齢になるほど働く環境も減り、仕事がない・お金がない・頼れる人もいない…という状況になりやすい。そういった方が、2050年には人口の半分になると言われています。

私たちの事業は、そういう状況であっても部屋を貸してくれたり、保証を引き受けるところが必要なのではないか?ということからスタートしました。

全ての人に家を借りてもらう・住む場所を提供する。それが私たちナップ賃貸保証のモットーです。

ナップ賃貸保証だからできる新しい賃貸保証

──だからLivEQuality大家さんの取り組みに共感してくださったんですね。具体的にはどんな保証サービスを提供されているんでしょうか。

日本は、40年後には人口が大体8000万人半ばぐらいまで減ります。

総務省のデータでは、独居老人と言われる一人暮らしの高齢者の割合が、2019年でも10%を超えています。そこからさらに5年経っていますから、今おそらく15〜16%くらいまで増えていると考えられます。

内閣府 令和4年度高齢社会白書より

全国で空き家の問題も起きています。すでに大体900万戸ぐらいの空き家があると言われています。これからどんどん人口が減って、ますます空き家が増えていきます。

大家さんや不動産屋さんは、今までは安定的に家賃を払える人を選んで入居させたいと考えていました。

でも今まで受け入れられないと判断してきた方々を受け入れていかないと、満室経営なんかとてもできない。そういう状況が、もうすでに起きはじめています。

ただ大家さんや不動産屋さんからすると、悩みもたくさんあります。

例えば、ゴミ屋敷にされないか、毎月家賃を払ってもらえるか、近隣トラブルが起きないか、部屋で孤独死は起きていないか…本当に色々な悩みを抱えています。

私たちはそういった問題を解決するために、居住支援法人と連携しています。

この図でいうと、上が従来の賃貸保証サービスのやり方です。

例えば、仕事が不安定で他に頼れる人もいない方が入居の申込みを行った際、不安に思ったオーナーさんにお断りされてしまうとします。

保証会社としても、生活が不安定で家賃を払い続けられるかわからないとなると、連帯保証人などで本人以外の与信を取れないかぎりは保証が難しいので断ってしまう。そうなるとこの方は入居ができません。

私たちがはじめた新しい賃貸保証サービスでは、まず最初に居住支援法人さんから入居希望者の情報をもらいます。

入居希望者の現状と、それをふまえて居住支援法人さんがどんな支援をするかを具体的に教えてもらいます。安心して保証できるという情報をもらったうえで、私たちが引き受けることを決めます。

そうすると、家賃債務保証がついた状態でお部屋探しをしてもらえるので、入居できないということはほとんどありません。

こういった方法で、LivEQuality大家さん・LivEQualityがサポートされているシングルマザーの方はもちろん、障害のある方は高齢者の方など、あらゆる方々を対象にサービス提供しています。

──ナップ賃貸保証さんのサービスが広がると、LivEQuality大家さんのように自分たちで物件を持たなくても居住支援を広げられる可能性があるということなんですね。

そういった部分もあると思います。私たちの取り組みは、ヒト・モノ・カネを各分野の専門家で管理しましょうという考え方で成り立っています。

物件管理と居住支援と金銭保証、それぞれ別の専門家が担いながら互いに連携することで解決しようというものです。

物件の管理というのは建物管理です。エレベーターなど共有部分の修繕や、雨漏りしないように屋根のチェックをしたり、そういったものが建物管理になります。

お金の管理は私たち保証会社が行っているものです。毎月家賃を払っているか、退去費用を払えるのか、そういったお金の部分を保障していくものになります。

人の管理は居住支援法人が担うソフトの支援です。

これは例えば、入居者の方が認知症になってしまったとか、急に働けなくなったとか、DV被害にあって身を隠さないといけないとか…そういう問題が起きたときに、入居者が抱える課題を解決するためのサポートを行います。

例えば家賃の滞納が起きたとします。そうすると居住支援法人さんに「面談をお願いします」と連絡します。

面談で話を聞いて、生活再建までの間に国の制度を活用したほうがよいとなると、居住支援法人さんに一緒に役所に行ってもらって各種手続きを行ってもらいます。

昔は保証会社と入居者のコミュニケーションは一方通行で「家賃を払ってください、すぐに返してください」と言うだけでした。

でもいまは居住支援法人さんが一緒に付いてサポートしてくれる。ここが一番大事な部分です。

LivEQualityの場合は、株式会社LivEQuality大家さんと、居住支援を行う認定NPO法人LivEQualityをつくって、この物件の管理と人の管理のどちらもやっているイメージです。

代表の岡本さんが千年建設も経営していること、ソーシャルセクターの経験が豊富で理解度が高いこと、資金調達するだけの力があることなど、複合的な背景があってできている部分はあると思います。

居住支援のための物件を自前で所有する。これには多額の資金が必要です。

さらに物件の管理や入居審査など、不動産会社さんや大家さんの役割も自前でやっています。ここまで一気通貫でできる団体というのは、そうありません。

株式会社LivEQuality大家さんと認定NPO法人LivEQuality。
LivEQuality全体の取り組みはこの2つの法人がメインとなっている。

なので私たちは、例えば先ほどお話した、居住支援法人さんから事前に情報をもらったうえで弊社が保証を引き受けた状態で入居申込みができるサービスの仕組み化を進めています。

これがサービスとして広がれば、私たちは保証料をいただけるし、今まで審査で断られていた方も入居できるようになる。入居者も支援者の皆さんにとっても私たちにとってもプラスになります。

そういう仕組みを世の中に広げていくことで良い社会を作りたい

その中でLivEQuality大家さんとLivEQualityの取り組みは、重要なモデルケースになると思っています。すばらしい事例があることで、関心を持ってくれる人が増えるはずです。

LivEQualityは、そんなフラッグシップだと思っています。

だから今回のインパクト投資にも、法人として参加させていただいています。

──LivEQuality全体の取り組みのどこが特にすばらしい事例になると感じられていますか?

LivEQualityの取り組みには持続性があるんです。

他の取り組みは生活保護など国が支えてくれるお金の原資の上に成り立っています。

でもこれから労働人口が減って高齢者ばかりになったときに、これ以上は国が支えきれないとなるかもしれません。

年金が引き下げられて生活保護制度等も破綻、もうあとは自分たちでなんとかしてください…という状況になるかもしれない。

もしそうなれば今まで私たちがやってきた取り組みは、おそらく持続できなくなってしまいます。

でもLivEQualityの場合、今回のインパクト投資や寄付や家賃収入など、自家発電で様々な活動資金を作って支援をしています。国には頼らない仕組みなので、そこが一番違っています。

ここまでできる代表の岡本さんは本当に素晴らしいと思います。それにかっこいいですよね。そういう人がいることが大事だと思います。かっこよくやれる職業なんだと見せてくれる人がいないと、次のなり手も生まれません。

実際に採用でも、優秀な学生やキャリアのある方々がどんどん岡本さんのところには集まっていますよね。そこはやっぱりカリスマだなと思います。

──もっとこうしたらいいんじゃないかと課題に思われている点はありますか?

自分たちでお金を集めて活動できるのは、ものすごく素晴らしいことです。だからこそ国の制度を活用できていない部分もあると思っています。

補助金や助成金の仕組みもどんどん取り入れて、ハイブリッドでスピーディに支援を広げていく。そしてもし国の仕組みがなくなっても持続できるように備えておく。そんなやり方もいいのではないかと思っています。

例えば名古屋以外のエリアでもやっていくとなれば、国や自治体の力を借りないとなかなか広がらないのではないでしょうか。もしくは広げるスピードが遅くなってしまう。

なので国の仕組みもパワフルに活用してほしいと思っています。

私たちからも国の制度をご紹介したり、実際に活用している様々なNPOもLivEQualityにご紹介して、今後の活動の参考にしてもらえたらと考えています。

また今はシングルマザーの支援に特化していますが、今後は支援対象が広がっていくこともあると思います。

居住支援をされている方々のお話を聞くと、本当に色々なことが起こります。

1人のシングルマザーを支援するといってもそれぞれが全く違う人生なので、必要な対応も異なります。その度に支援対象を広げることも検討する必要が出てくると思います。

対象は広げないとしても、さまざまなNPOとの横のつながりを広げることで対処する方法を確保していくことは必要になるはずです。

そんな風に活動の方法もエリアや対象もどんどん拡張して、もっともっといいモデルになっていく。LivEQualityの取り組みには、そんな期待しかありません。


株式会社LivEQuality大家さんの取り組みに関心をもっていただけた方は、ぜひこちらのページもご覧ください。

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