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ススキの可能性を考える

私の無施肥・無農薬栽培のダリアの畑は、
埼玉県秩父郡小鹿野町両神薄(りょうかみすすき)にある。
「おがのまち」も埼玉県民にさえちゃんと読んでもらえないが、「すすき」はもっと読まれない。(覚えてくださいねw)
ススキがあちこちに生えていたことから、この地名になったらしい。
今回はそんなススキについての可能性を考えてみる。

1、マルチングとしての有効性

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町田のダリア園、そして新宿中央図書館での稲わらのマルチング効果を見ていて気づいたのは以下の点。
・畝の遮光による、雑草の発芽抑制効果
・覆われていることでの乾燥抑制効果
・稲わらが腐りにくい
この3点目の腐りにくいというところに注目したい。
腐りにくいというのはメリットがあって、作物が小さいときに腐敗したものが近くにあると、作物も腐敗することがある。
この腐敗は分解されて土に帰る過程のものなので、それ自体は悪いことではないけれど。
腐りにくいということは、作物が小さい頃からマルチングとして利用しても影響が出にくいということ。
この「腐りにくさ」は指標の一つは「C/N比」で表されるのですが、過去の記事で調べたのを引用すると
・稲わら:50〜80
・ススキ:64
となってます。(微生物による有機物分解の早い遅いの境は「20」)

だいたい一緒ですね。
ということは、ススキにも稲わらと同様の効果が見込める。という仮説。
(前回記事を書いたときは畝間に敷いて窒素の補給を狙ってみましたが、今回はマルチングとして。)
稲わらとの違いは太さと硬さ。
この違いをクリアする方法として、今回は「押切り」という道具を使って裁断する。(結構硬いんですよ、これが)

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で、今季撒いてみた感じとしては概ね良好な印象です。
ススキの量が足りずに隙間が空いているところからは草が生えていますが、撒いていないところと比べてかなり少ない。
そして土は乾燥しにくい。
そして梅雨明けでも腐っている様子がない。
マルチングの役割は果たしてくれそうですね。
ただし欠点としては、ダリアにたかるウリハムシを退治しようとすると邪魔になります。
彼らは危険を察知するとダリアの葉から落ちて逃げますが、ススキの硬さゆえに潰しにくい。
これは盲点でした。(ダリアに限ってですが)

2、窒素分の供給はどうなった?

マルチングの有効性があることはわかりましたが、畝間に敷いたススキから窒素分を供給する仮説はどうだったのか。
ススキについての研究(主にバイオマス資源として)をされている北海道大学の山田敏彦教授に、ススキを畝間に敷いた際の窒素・炭素還元の可能性についてメールで伺ってみました。(お忙しい中、ありがとうございました。)

頂いた回答は
「晩秋~冬に刈取りすれば、地上部は主に炭素のみとなり、窒素等は地下に転流します。C/Nは高く、ゆっくり腐熟していきますので、マルチとしては効果的です。昨今話題のプラスチック海洋汚染問題もあり、ビニールマルチよりはよいかと思っています。ススキ植物も環境にはいろいろなよい機能をもっており、持続的農業の観点から、貴所のような中山間地域で検討されるとよいと思います。」
とのことでした。
私はダリアの作業が全て終わった冬にススキを刈り取るわけですが、既に窒素分は地上部に無く、炭素の塊だったのはびっくり。
仮設を立てた窒素分の供給は出来ないことが分かりましたが、炭素の還元ができることが裏付けられました。
竹パウダーを用いたバイケミ農法においても「作物が持ち出した分の炭素を土に還してあげれば、土の中のバランスが崩れないので連作障害が起きない。」という考え方のもとC/N比の高い竹パウダー(212)を使用していますので、畝間に敷くことは結果的に炭素還元としてプラスに働いていました。

この回答と一緒に、ススキの実際の活用事例として静岡県の茶草場を紹介していただきました。

茶草場農法とは、茶園の畝間にススキやササを主とする刈敷きを行う伝統的農法のことです。
実際の現場見学の際に生産者の方に声をかけて伺ってみましたが、「慣行栽培の茶畑よりも、雨量や気温の変化の影響を受けにくい。」との話が聞けました。
ススキは冬に刈り取ったあと、機械を使い10cm程度に裁断して積み上げておき、お茶の栽培が始まる前に畝間に敷いておくことで腐食が進み、土がだんだんと肥えていってます。

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掛川市の土壌は砂地が多いそうでカチカチですが、刈敷きされているところだけが明らに柔らかい土になっていました。

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時間はかかりますが、土壌をより良い状態に近づけるために、ススキが有効であるということも分かりました。
「時間がかかる」ということは、生産性重視の農業においてネガティブな意味合いが強いですが、持続性と環境負荷の観点から見ればこれからススキは貴重な資源へと変わっていくかもしれません。

3、厄介者を資源に変えるには

農地を管理する、特に高齢者にとってはススキは厄介者。
周りの方の話を聞いていて、そう感じます。
ススキは土壌に左右されにくいため、遠慮なく生えてきます。
そして根が深いので、除去も大変。
実際に耕作放棄地を初めて開梱したとき、その根の深さにだいぶ骨を折りました。

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ゆえに、「絶やすには芽吹きの時期に少量の灯油をかけると良いよ。」などという話はよく聞かれます。
茎も硬いから、草刈り機を使う場合にも金属刃が必要でしょう。(私は鋸鎌で刈ってます)
そんな厄介者であるススキを「資源」という見方に変えるためには・・・やはり目に見える形での土質の向上が、農産物の品質の向上につながるということを証明するしかない。
もしくは、ススキに「価値がある」と思ってもらうか。
結局ビジネスで解決するというところに着地する。

前者は、引き続き私の借りてる畑でススキマルチの実践を継続。
後者は、冬場に伸びっぱなしのススキを放置している方のところに、「刈り取らせて欲しい」とお願いしに行こうかな。
田舎での「ススキを欲しいっていう若者がいるらしいよ。」という口コミ大事。
結果は数年後にならないと出ないと思いますが、実践あるのみ。

最後に疑問!
ほぼ炭素のススキをマルチに使うことは、「施肥」の扱いになるのか?
堆肥化しているわけじゃないけど、他所から入れているといえば入れている。
無施肥での栽培を謳えるのかしらね。
謳っても良い?

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