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美との決別

美しさとは儚いものである。あなたのきめ細やかな肌、漆黒の髪はいつしか失われるだろう。時間、その恐ろしさから逃れることはできない。死を避けることができないのと同じである。美について、老いについて悩んだ時にはこれを読むと良い。

ウィリアム・シェイクスピア
戸所 宏之 訳

君を夏の日にたとえようか。
いや、君の方がずっと美しく、おだやかだ。
荒々しい風は五月のいじらしい蕾をいじめるし、
なりよりも夏はあまりにあっけなく去っていく。
時に天なる瞳はあまりに暑く輝き、
かと思うとその黄金の顔はしばしば曇る。
どんなに美しいものもいつかその美をはぎ取られるのが宿命、
偶然によるか、自然の摂理によるかの違いはあっても。
でも、君の永遠の夏を色あせたりはさせない、
もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、
まして死神に君がその影の中でさまよっているなんて自慢話をさせてたまるか、
永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。
ひとが息をし、目がものを見るかぎり、
この詩は生き、君にいのちを与えつづける。

https://marieantoinette.himegimi.jp/booksonnet18.htm

ところでバレエは究極的に美しい肉体への賛美である。日頃の努力がそのまま自身の体に現れるのだ。美しさに意味などあってたまるものか。意味を見出すなど愚問である。バレエに限らず肉体の研鑽に勤しむ諸君、日々の運動を楽しみつつ、美しさを追求し美しくあることで満たされる幸せを感じてほしい。

「美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。」

太宰治(1909~1948)『女生徒』

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