絵本探求講座第3期(ミッキー絵本ゼミ)   3回目 振り返り(6月11日)




ケイト・グリーナウェイ賞

賞の概要

ケイト・グリーナウェイはイギリスの代表的な絵本作家
1955年に創設
イギリスの優れた絵をつけた絵本に毎年おくられる。
絵を通して読書の喜びを得られることが求められる。
創作材料やフォーマット、表現形式とテーマの協調性、
作品全体を通した絵の質、絵とテキストの相乗効果、
などが選考基準になる。
主催は英国図書館・情報専門家協会(CILIP)
審査は、児童図書館員

コルデコット賞は絵本が対象であるが、ケイト・グリーナウェイ賞はジャンルを問わず、絵やイラストが対象となる。
コルデコットの絵は躍動感があぐのに対し
ケイト・グリーナウェイは優しい絵でイギリスの情景が醸し出される。
コルデコットが動、ケイト・グリーナウェイが静という感じである。

グリーナウェイについて

1846年ー1901年
ロンドン生まれ
木版彫刻師の父とドレスメーカーの母との間に生まれた。
最初の絵本は「窓の下で」1879年
グリーナウェイの魅力は、この世と別の世界とのすき間にある、
どこともいえない不思議な場所を描いたところ。

受賞作品

最初の受賞作
1956年「チムひとりぼっち」エドワード・アーディゾーニ 
1969年「カングル・ワングルのぼうし」ヘレン・オクセンバリー
1980年「マグノリアおじさん」クエンティン・ブレイク
1983年「すきですゴリラ」アンソニー・ブラウン
1998年「かぼちゃスープ」ヘレン・クーパー
2000年「ぜったいたべないからね」ローレン・チャイルド

わたしの選んだ1冊

「オオカミ」2005年受賞

エミリー・グラヴェットの初めての作品

エミリー・グラヴェット  訳 ゆづきかやこ
小峰書店

図書館でウサギが「オオカミ」の本を借りてきて読んでいくお話。
ユーモアあり、オオカミの生態について科学的要素がある。
絵本のかばーをはずすと、ウサギの絵本とまったく一緒の赤い絵本を読んでいることになる。
入れ子構造になっていて、読者は、ウサギが読む絵本自体を読むことになる。
最後の結末は、読者に委ねられている。
オオカミはベジタリアンで、ウサギと一緒に仲良くジャムサンドを食べたのか、それともウサギはオオカミに食べられてしまったのか?
p27・28の絵本に歯型や爪痕がついている。
最後の手紙の中には、図書館からの督促状もあった。
読者が絵本に触って楽しむことができるよう、貸出カードや
最後のページには、手紙の封筒が仕掛けられている。

エミリー・グラヴェット

1972年イギリス生まれ
父は版画技師、母は美術教師
16歳で学校を中退し8年間放浪生活をする。
その中でも描き続けた。
娘に絵本を読むうちに創作意欲が生まれた。
ブライトン大学でイラストレーションを専攻した。
ポストモダン絵本作家として評価されている。
アルバーグ夫妻の影響を受けている。

 

わたしの所感

最初に読んだ時は、一緒にジャムサンドを食べていたので、
助かったんだ、と思った。
しかし、絵をじっくり見ながら読むと、
やはり、食べられてしまったのではないかと思う。
督促状も来ている、絵本に傷痕がある。
ジャムサンドを食べているページは、絵がバラバラになったコラージュ法で
表現されていて、現実的ではない。
ジャムサンドもボロボロになった絵本から作ったようである。
新刊のお知らせがあり、いかにも興味深い案内である。
どのページのウサギも耳の形が様々で、表情豊かである。
p9・10 のオオカミは、箱の中に入るくらいの大きさ、
絵本をよんでいるウサギの方が大きいくらい。
それからは、だんだん大きく描かれている。
p11・12 二匹のオオカミの間には、にんじんをくわえた雪ウサギが描かれている。
p13・14 仮装したオオカミが絵本のそばに描かれている。
p15・16 最初は気づかなかったが、オオカミが木の形になっている。
子どもはすぐに気づくんだろうな。
p17・18 迫力のあるオオカミを表現している。
p19・20・21・22 オオカミのしっぽを登り、毛の中を歩いていく。
ユニーク。
p23・24 オオカミがナイフとフォークを持っている。ありえない面白さ。
絵と言葉の両方を読み取っていくことが求められる絵本になっている。
2005年、この時代は、デジタル機器があることが当たり前である。
あえて、カードや封筒など触って読むことを取り入れ
結末までも読者にうんと想像してもらおう、という思いがあったのではないだろうか。
また、テロがイギリスやエジプトで起きている。
人は想像する力があると他人のことや社会全体のことも考えることができる、相手の気持ちを想像する、考えることなど、基本的なことである。
それができれば、人を傷つけることはできない、しないのではないか。
多くの人に想像する力を養ってほしい、という願いをこめて絵本作りをしている作家のひとりではないだろうか。
今回、ケイト・グリーナウェイ賞を学ぶにあたり、エミリー・グラヴェットを調べ、「オオカミ」をじっくり読み、少し分析した。
このように、絵本そのもの、作者、時代などを考えて作品を鑑賞していくことで、その作品がなぜ、受賞したのかの理由につながると同時に、
そこから、この作品を子どもたちをはじめ多くの方に伝えていく力となることがわかった。
2008年に受賞した「LITTLE MOUSE’S Big Book of Fears」も読んでみたい。

皆さんが紹介してくださった絵本、知らなかった作品もあり、
作家も初めて聞く人、有名だけど実は深く知らない人、
まだまだ学ぶことが多くあることに気づきました。
ガンピ―さんも分析しようと思いながら時間なく次回に。
アンソニー・ブラウンも興味を持ちました。
他のチームがテーマにされていたので、楽しみです。

引用・参考文献
「Book END 2020」絵本学会
「この本読んで」2013 秋 一般財団法人 出版文化産業振興財団

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