絵本探求講座第3期(ミッキー絵本ゼミ)5回(8月2日)振り返り

3期も5回目の講演と各チームの発表で終わりです。
今回は、北海道層雲峡に行けず、zoo参加でした。

佐藤圭さんの「エゾシマリス」の講演

「山の園芸屋さん エゾシマリス」写真・文 佐藤圭 総合出版 2021年

この可愛いエゾシマリスを大雪山で、観察しながら写真を撮られた
貴重なお話を聞かせていただきました。
こんな機会、このような絵本に出会わないと「エゾシマリス」の生態や生活、自然との共存など、知ることも考えることもなかったと思います。
体長15センチ、体重約100gというエゾシマリスの特徴や巣穴のこと
6~8月に赤ちゃんが生まれる事、木の実のほかバッタなども食べる事、
エゾシマリスなどによって植物が勢力を広げることなど、可愛いだけでなく
色々なことを知ることができ、楽しくなります。
是非、子どもさんや大人にも読んでほしい絵本です。
そして、新しい絵本の出版、9月26日から10月9日にニコンプラザ東京で写真展が開催されます。楽しみですね。

各チームの発表

チーム1は、今期の学びの中からのクイズでした。
楽しくチャレンジできました。
チーム2は、「いのちと絵本」をテーマに絵本を紹介。
大好きな佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」「だってだってのおばあさん」の紹介。ミッキー先生から、日本人らしくない生きる、死ぬを表現した作者、佐野洋子さんとコメントがあり、佐野洋子さんの作品をもう一度、じっくり見てみようと思いました。「わたしとなかよし」の翻訳についての説明もあり、翻訳によって、イメージが違ってくることをひしひしと感じました。
チーム3は、アンソニー・ブラウンについての発表。3回のケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。その魅力は何なのか。亡くなった父親に似ているゴリラを主人公に父親像を描いた絵本、イギリスの階級や社会問題を絵本にしています。アンソニー・ブラウンの絵本を色々、見ていこうと思いました。
チーム4は、ピーター・シスについての発表。
ピーター・シスの「マットくんのしょうぼうじどうしゃ」「マットくんのトラックトラック」は、子どもが大好きでよく読んでいたのですが、今回紹介された「生命の樹」「星の使者」のノンフィクションは知らなかったので、ミッキー先生からの壁をとおして視点を変えてみること、自由の心や言葉の壁を考えていくことのコメントから、絵本から様々なことを考えたり、感じたりしていくことの大切さを学んだ。
チーム5の私たちは、アストリッド・リンドグレーン賞について、リンドグレーンについて、スウェーデンについて、ながくつしたのピッピについて、リンドグレーン賞受賞の荒井良二、ペク・ヒナについて発表しました。

リンドグレーン賞受賞のペク・ヒナを深める。

チーム5の発表で、ペク・ヒナについて、発表しましたが、
ペク・ヒナの絵本について、発表後、もう一度見直してみました。
ペク・ヒナについて
1971年大韓民国生まれ。梨花女子大学校で教育工学を専攻し、カリフォルニア芸術大学でキャラクターアニメーションを学んだ。アニメーターとして働いた後、韓国に帰国して、「ふわふわくもパン」で、2004年に絵本作家としてデビューした。
2020年にアストリッド・リンドグレーン賞を受賞した。
ALMA運営委員会は、彼女の作品を次のようなコメントでまとめている。
「ペク・ヒナは、手作りの工芸品とアニメーションの要素を面白く組み合わせることで、妥協のない大胆な技術と芸術的解決策を示し、絵本の分野を発展させるアーティストである」
①「ふわふわくもパン」
文・絵 ペク・ヒナ  写真 キム・ヒャンス 共訳 キム・ヨンジュン 星あきラ 小学館 2006年
ボローニャ国際絵本原画展入選 2005年

人形とイラストと写真を合成した半立体技法を用いている。奥行感を感じ、お話の中に吸い込まれる。
子どもたちが持って帰ってきた雲で、お母さんがパンを作り、空を飛べるパンになる夢と冒険を感じるストリー。お父さんを思う家族の気持ち、わくわくしながら幸せになれる絵本。

②「お月さんのシャーベット」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2021年
ボストングローブホーンブック賞受賞 絵本部門名誉賞 2022年

初期の作品で、紙で作った人形とミニチュア模型で構成した絵本。
各部屋の区分が高い。カーテン、壁紙、冷蔵庫、ソファ、テーブル、ライト、室外機、住んでいる住人、一つ一つ作成し、リアリティがある。
月のしずくで、シャーベットを作り、みんなが食べるという不思議な体験を五感で感じることができる。夜の暗さと月の光を対比している。

⓷「天女銭湯」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2016年
第53回韓国出版文化賞 2012年
第3回昌原児童文化賞 2013年

ドッチは、銭湯で不思議なおばあさんと出会い、魔法のような楽しいひとときを過ごす。銭湯という日常とおばあさんとの非日常を描いた絵本。
最初、私は表紙のインパクトが強すぎ、好きではなかったのですが、今回ペク・ヒナについて調べていくうちに、なんとこの絵本は迫力がある中、味のある表情をスカルピーで表現し、なおかつ銭湯の様子をマッチさせている。
ヤクルトを飲む姿の愛嬌、天女のおばあちゃんとドッチの表情が豊かで面白い。最後に風邪をひくという落ち。また、天女おばあちゃんに会えるといいね。なんだか、ほんわかするお話。

④「天女かあさん」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2017年

スカルピー人形とホホの家の台所や居間の様子、お母さんの会社の様子、お母さんが傘をさし街中を歩く姿、どれも人形と背景がマッチしている。
天女かあさんの作ったたまごスープを食べる場面の黄色いきりの様子。たまごのしろみと牛乳で、ふわふわくもを作るユニークなところ。その雲の上で母さんとホホが抱き合うほのぼのと安心する場面。そして、最後に天女かあさんが作った大きなオムライスと羽衣を忘れていったユニークさ。羽衣をとりにまたくるのかな。母子家庭をサポートするナイスな天女かあさん、面白すぎる。

⑤「あめだま」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2018年
ボローニャ国際児童図書展 年間最優秀作家賞 2005年
第24回日本絵本大賞 翻訳絵本賞および読者賞 2019年


「あめだま」をなめると他の人の声が聞こえる。「アルサタン」のように「オルソトン」できればいい。(あめだまのようにオール疎通できればいい)一つ一つのあめだまに特徴があり、ソファの模様のあめだまからソファの声、犬の模様のあめだまから、犬のグスリの声、パパの声、おばあちゃんの声が聞こえる。そして透明なあめは、男の子のあめ、純粋な心を表現しあめだまをなめることで、自分から発する勇気を持てた、友だちに声をかけて世界が広がっていった。
あめだまの模様や誰かの声がするというユニークさ。本音を聞くことのできる不思議さ。オレンジのあめだまは、ひとりで遊ぶことにバイバイする。落ち葉が舞い散ることで、表現している。次のページの紅葉のシーンで、友だちに出会う。そして友だちができるというハッピーエンド。お話の中に入り込み楽しめる絵本。

⑥「おかしなおきゃくさま」
作 ペク・ヒナ 訳 中川ひろたか Gakken 2019年

チョン・ダルノクという不思議なお客さんがきて、パンを食べておならをしたり、アイスクリームを食べて雪を降らし、たまごからおばけがでてきたり、おこって雨が降り出したりと、不思議なファンタジーの世界を感じる。ダルノクの表情が愉快。鼻水や涙を出し、怒った表情、夢をみている気持ちよさそうな表情。二人の姉弟の対応やまた会いたいという表情、ほのぼのします。奇想天外なストーリーとスカルピーの表現がマッチしている。

⑦「ぼくは犬や」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2020年

「あめだま」に出てくる犬の「グズリ」の視点で、家族との日常を描いている。グズリの家系図もある。お父さん、ドンドン、おばあちゃんが出かけていき、留守番するグズリ、ベランダで寝そべる姿。次のページは、散歩に出かけ意気揚々とした姿。ドンドンがこけた姿をみているグズリの表情。最後のページで、ドンドンとグズリが一緒に寝ている様子は、心温まる。

⑧「ピヤキのママ」
作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社 2022年


ペク・ヒナの初期の作品。黒白のイラストで描かれている。ひよこが黄色で描かれている。弱いものいじめの猫が、たまごを食べ、ひよこを産み、ひよこの子育てをしていくお話。ニャンイという名前からピヤキのママと呼ばれるようになった。猫の表情や動きのある姿から本当に生きている感じがする。ユニークでもあり猫が一生懸命子育てをする愛らしさのある絵本。

⑨「あずきがゆばあさんととら」
絵 ペク・ヒナ 文 パク・ユンギュ 訳 かみやにじ 偕成社 2022年

韓国の小学2年生の国語の教科書に連載されている、語り伝えられた昔話。
冬至の日にあずきがゆを炊き、邪気をはらう韓国の風習。日本の猿蟹合戦に似ている。おばあさんととらを紙で作成している。おばあさんの表情に味がある。トラが栗やすっぽん、うんち、せんまいとおし、いしうす、むしろ、はいこにやっつけられるところは、縦に分割された枠で描かれ、リアルに感じる。くりやすっぽん、むしろなどもペク・ヒナが色々な素材で作成している。おばあさんととらを和紙で作成しているところが、昔話の残酷なところを優しく表現していると感じた。

なぜ、ペク・ヒナがリンドグレーン賞を受賞したのか?
人形と緻密なセットなどの独自性が高く、絵本の発展性がある。
リンドグレーンのピッピに共通する、ユーモアやファンタジーがある。
子ども心を純粋に表現している。
愛情を伝えている。
多様な家族を描き、その中で、家族愛や家族のあり方、現代の社会性も表現している。
自分で、スカルピーを作成し、セットも作り、撮影もするという、自分で作りたいものへのこだわりをもち、納得のいく作品を作り上げている。
読む人が楽しめるストリーになっている。
以上のことから、リンドグレーンの精神に合う絵本作家であると評価されたと考える。
日本で出版されている9作品をみてきたが、翻訳されていない4作品もみてみたい。
そして、今後のペク・ヒナの作品も楽しみである。

自分の成長

3期では、色々な賞や絵本、作者を学んできて、ひとつの賞、一冊の絵本、1人の作家を見ていくことが、とても楽しかった。
ミッキー先生の紹介された参考文献を読んだり、助言をもらい、学びが深まった。
グループワークで学ぶことは、自分の視点だは狭かったものが、どんどん広がっていき、様々な知識が得られ、学びも深まっていった。
参考文献での学びも大切だが、自分でその絵本のどこがよいと感じるのか、どの場面がどういう理由で好きなのかなど考えていくことがポイントだ、少しではあるが出来たように思う。
こうして、自分自身が少し成長できたのは、周りの方のおかげです。絵本ゼミの受講生の皆さん、ミッキー先生に感謝です。



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