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人に優しく、温かく〜『スピノザの診察室』

やっぱり夏川さんの描くものは優しく、温かい。
描く街並みも温かい。
高齢化、老老介護などの現実、人の死と向き合うことはこれから避けて通れない。
自分の老いも避けて通れない。
でも、この本を読むと幸せになるヒントを感じる。
人に優しくなれる。


『私たちにできることは、・・・暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ』
『人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと(中略)・・・
 そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、ひとは「幸せ」と呼ぶんじゃないだろうか』

アル中?の辻さんからのメッセージ「おおきに、先生」はそんな哲学なしでは芽生えない。
何かすごいことをしたり、人と比べて優劣をつけなくとも、『幸せ』はうまれる!😀
医療の世界だけでなく、順位づけや優劣をつけたがる学校やスポーツの世界も同じなんだと思う。人を『幸せにするバスケット環境』に向けて頑張る💪

原田病院の面々も魅力的だ。
それぞれが弱さもありながら優しさ、しなやかさを備えている。こんな職場いいよねというか、学校もこうだったよねと教員30年を過ぎたオジサンは思ってしまう。

「日に日に力が抜けて、もうそろそろお迎えやと思います」という今川さんに、「ばんばらなくて良いのです。ただ、あまり急いでもいけません。」というマチ先生。『神様のカルテ』シリーズの元ヤクザ老人を彷彿とさせる。なんか、『神カル』の全てが凝縮された一冊?

夏川さんの小説は私にとって、読む毎に情景が鮮明に浮かび上がり、登場人物が活力を増していく魅力あふれる物語。
本屋大賞にノミネートされたことで読み返し、改めて感じた。
今回、広島出張の電車のお供に携えたが、往路5時間で一気に読み切ってしまった!
文庫化されたらカバンに携帯だな。

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