1人で草むしりをしたい


 田舎で生まれて田舎で育っているのに、田舎暮らしが合わない。

「昨日の夕方、あなたの車が隣町のスーパーに停まってるの見たわよー。どこかに出かけてたの? 」

 見ず知らずの人が、私の車のナンバーを覚えている。いや、見ず知らずの人だと思っているのは私だけなのだろう。相手からすれば、私は同じ地域で育った仲間で親戚のような存在なのかもしれない。
 だけど、私は他人に興味がない。近所に住んでいる人とは、すれ違った時に挨拶をする程度の関係が心地よいと思っている。

 草むしりが大嫌いだ。草むしりという作業自体は嫌いではない。むしろ、自分の手で雑草を引き抜いてきれいになった庭を眺めるのは、良いストレス解消になる。
 ただ、草むしりをしていると、近所の見知らぬ人が次々と話しかけてくる。
 しかも、勝手に庭に入ってきて、一緒に草むしりをする人までいる。この状況を楽しめればいいのだけれど、残念ながら私のコミュニケーションスキルはそこまで高くない。愛想笑いでやり過ごすしかない。

頼むから草むしりに集中させてくれ!
 
 そう言いたいけど言えない小心者の私は、結局、人がいない早朝を狙って草むしりをするようになった。快適。誰にも邪魔されない。

 ある日、突然こう聞かれた。

「最近は早起きみたいね。何かあったの?」

 え? 起床時間を把握されているの……?
 なんでそんなに他人に興味があるのだろう。
 というか、他人に興味がない私がおかしいのか? それとも、やっぱり私の周りが過干渉なのか。よくわからなくなってくる。

 田舎生まれ田舎育ちなのに、田舎の距離感がずっと合わない。適応能力ゼロな自分。悲しい。
 ご近所さんの車のナンバーを把握しているのは当然。井戸端会議に応じないのは冷たい。仕事よりも町内会の行事が優先。他人の庭にも勝手に入る。
 
 もちろん、良い面もあるのは理解している。みんな優しい。馴染むことができればもっと楽しいんだろうな〜的な、やっかみもあるのかもしれない。
 できることなら、町内会行事のバーベキューやスポーツ大会を心から楽しんでキラキラ田舎ライフを送りたい。

 やればいいじゃんって言われるだろうけど、無理なんだ……
 私の人付き合いのキャパを超えている。

 私の細やかな夢は、誰にも邪魔されず一人で黙々と草むしりをすることだから。

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