[鎌倉むかし話]壺太郎
むかしむかし。
鎌倉におじいさんとおじいさんがすんでいました。
おじいさんとおじいさんは鎌倉幕府に出仕する忠義の猛将でした。
ある日、おじいさんは笠置山で賊狩りをし、おじいさんは鎌倉で御家存続の選択をしていました。
鎌倉にいたおじいさんは、川からどんぶらこ、どんぶらこと流れてくる大きな水瓶を見つけました。おじいさんは鎌倉で忠義に散った勇敢な漢の亡骸か…と思い中身を覗きました。
するとどうでしょう。おじいさんはすっかり若かりし頃の姿に戻り、壺の力か気力が漲ったのでした。おじいさんは自らを「壺太郎」と名乗り、ひと戦した後鎌倉を後にしました。東勝寺が燃えていたすぐそばで。
それから三年が過ぎ、笠置山から生還したおじいさんと再会していた壺太郎は、滅びた鎌倉幕府を再興する北条軍に参加し、忠義のために戦いました。
しかし、結果は劣勢。北条様は最後の一撃に賭けるしかありませんでした。
「おじいさん、懐島に行って北条様のために逆賊を討ち滅ぼしに行ってくるよ」
そう言った壺太郎は、おじいさんの引き留めも虚しく焼けた鎌倉を離れ、賊軍と戦うのでした。
壺太郎は死力を尽くして戦い、賊軍を大層討ち取りましたが、奮戦虚しく敗れてしまいました。
壺太郎は懐島に落ちていた蛸壺を見て、昔を思い出して少し微笑みながら息絶えましたとさ。
(正慶年間版小学二年生の道徳 収録)
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