情景1

2023年7月29日
暑い中車を走らせて最寄駅のパーキングに車をとめた
。今日の駅前の様子はなにか騒がしいし、なにかと色が多い。キャミソールみたいな服をきた女性がいる、なかなか奇抜なファッションだ。ここ連日暑かったけど、今日もさらに暑い。そりゃキャミソール単品ファッションの女性もいるだろう。とりあえず駅と隣接しているコンビニにやってきた。台湾烏龍茶を購入して干からびそうな体に水を与えるためだ。体の管理も大変である。
なぜか今日はコンビニの女性店員の愛想も良く感じる。なんと手で直接お釣りを渡してきた。ここ数年前から自動化の波が田舎にも押寄せてきているが、こういうアナログなところを見ると感慨深い。
軽く店員に会釈をしてコンビニの外に出ると僕の眼前には異様な光景が広がっていた。
女性がほとんどキャミソールであった。
正確にいうとキャミソールみたいな服が正しいのだが、そこまで脱ぎちらかさないとこの暑さに耐えきれないらしい。それにしても今日はどうやら様子がおかしい。道行く人々が浮き足立ち、暑さに抗おうとせず暑さを受入れようとしている。
あまり観察していても電車に乗り遅れるので、とりあえず駅の改札を通ることにした。プラットフォームの椅子に腰を下ろし「今日は一体何の日だろう」そう考えていると電車がきた。この電車に乗ると大阪へは1時間でいける、無名な駅を数えきれないほど素通りしていき大阪まで素早く運んでくれる急行電車だ。
目の前の扉がスポポポーンと開く。
僕もスッポンポーンと乗り込む。車内は空調が効いているので涼しく、そして最高の席にも座れた。隣に人がいない角の席だ。これから1時間、ずっと隣に誰も来ないでくれと思いながらiPhoneをポケットから取り出す。特に意味なく触り続ける予定だが、すでにiPhoneの充電は70%を下回っていた。ゲンナリである。

5分ほど待って電車のドアが外気の熱を遮るように閉まり、ゆっくりと動きはじめた。

この日記を書くために全ての動作や環境の変化、5感をフルに使い身に叩き込んでいる。なんなんだろうこの作業は、感覚がオーバーヒートし、脳が溶けて無くなってしまうのではないか。

電車は次の駅に到着した。
あまりその駅からは人が乗ってこない筈なのだが、ドアが開いた瞬間に僕の想いとは裏腹に隣に腰掛けてきた女性がいた。僕の特等席は一駅ももたなかったみたいだ。女性はお姉さんっぽい感じ。お姉さんといっても僕よりも若く26歳くらいだろうか、服は白いキャミソール。ではなく白のワンピースを着ていた。うーんすごくサッパリとしたフレッシュ!みたいな、いやなんていうのかファブリーズ!!いや違うな乾瓢か!!お姉さんは暑さに項垂れている様子もなく、凛とした表情でハンカチで汗を拭いていた。僕はあまり首を向けてまでジロジロと観察すると目が合った時に気まずいのでジロジロと横目で様子だけを確認した。

電車は次の駅に向けて動き出す。
ガタンガタンと電車が急カーブを曲がる頃、お姉さんは僕の隣から前の席に移動した。なにか失礼な事をしたかな?僕の体臭が臭かったのかな?と思い返すのだがあまり検討はつかない。

次の駅で停まる。
先ほどの駅よりは人が多く並び、ゾロゾロと人が車内へ雪崩れ込んでくる。
また一人僕の隣に座る女性が現れた。
今度はスマホに視線を落として音だけで相手の様子を伺ってみた。

電車は動き出す。
古い線路の上を車体は小刻みに音を鳴らしながら心地よく揺れる。しかし隣の女性はなにか落ち着きがなさそうだ。その揺れの勢いで女性が立つ。数歩進み、あろうことか先ほどのお姉さんの隣に座った。
これにはさすがの僕も内心落ち着かなかった。
なにかその席には得体の知れない何かがあるはず、それとも僕に原因があるのか、推察してみると原因はすぐに分かった。隣の席は黄色い光を吸収して赤の座席が映えている。窓ガラスを通して直射日光を向い入れてるその席はここに座ったお客の後頭部に多大なる損傷を与えてくるのだ。これは人身事故ともいえよう。
窓ガラスの上にカーテンが備え付けているのにも関わらず、皆カーテンを下ろす行為を躊躇している訳だ。素直にカーテンを閉めてくれても全然構わないのだが、いかんせん僕は坊主で髭を蓄えて少し風貌が怖いのだ、カーテンを勝手に閉めていちゃもんをつけられる。そう考えると席を移動した方がいいと女性達は思ったのだろう。僕はなにも考えないようにして目を閉じた。

40分ほど寝ただろうか。すっかり窓の景色は盆地の田舎町から大きな建造物が立ち並ぶ景色へと変わっていた。近鉄布施駅。僕が大学生の頃よく利用した駅だ。この駅は3階まであり、日が落ちてくるとビルとビルの隙間からオレンジ色の光がギンギンに照らしつける。駅構内の人々や地面やダイヤ表が表記されている看板が暖色に照らされた光景を大学の帰りに良く見たものだ。
でも目的は布施駅ではなくその次の駅である鶴橋駅だ。厳密にいうと布施駅と鶴橋駅の間にも小さな駅が存在しているのだが、急行が次に止まるのは鶴橋駅なのだ。
布施駅から5分ほどで鶴橋駅に到着した。
ここから千日前線に乗り換える。友達のヒガサくんが5分後に鶴橋駅に着くそうなので、せっかくなら彼と共に目的地へ向かうことに決めた。

鶴橋駅でヒガサくんとLINEのやり取りをしていたのだが、今日の彼はやけにテンションが高いように感じた。
さすがに10年の付き合いもあって、彼の様子には敏感な方だと思っている。

程なくしてヒガサくんが到着。丸いサングラスを掛けて、長い髪の毛をファサファサと揺らしながらこちらへ向かって歩いてきた。髪を染めたのか赤茶色の髪色になっていたが本人はそれを金髪だと言う。脱色しただけというのだが僕自身あまり髪を染めたことがなく、そこの知識には疎いので「ああそうなんや」と返事を返しただけだった。

それから千日前線を使用して日本橋駅まで行き、堺筋線に乗り換えて南森町駅というところで降りる。今回の目的地は南森町にあるヌードデッサンができるアトリエだ。


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