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第97話 『#寧々密会』写真展②〜前夜に綴られた言葉と、その反響〜


 吉高寧々さんと写真家・笠井爾示さんによる写真展『#寧々密会』が、5月11日から開催されている。この写真展会場には、来場者をハッとさせる一角がある。【会場の一番奥の右側】。そこには大きな写真が1枚貼られており、横に吉高寧々の『自分』が綴られれた短い文章が添えられている。さりげなく、とてもひっそりと。

吉高寧々が本当の『自分』を綴るまでの経緯

「あの文章はな、写真展の前日に考えてん」
 写真展の初日、社長が【会場の一番奥の右側】の写真に添えられている文章の成り立ちについて教えてくれた。

 写真展の前日、吉高寧々さんと社長は、完成したばかりの展示を見て回っていた。そして寧々さんは【会場の一番奥の右側】の写真を見て、こう言ったそうだ。
「私ってさ、いっつも笑ってるやん。小さい頃からお母さんに『良い子でいなさい』って言われてた。そのことがずっと心に残ってる。でも、本当の自分って何なのかなって考えて、苦しい時もあった」
 それを聞いて、社長は「お母さんへの気持ちとか、これまでの思いを、ここに残しといたら? 文章にして」と提案した。
 この『#寧々密会』は、彼女にとって【終活】の1つであり、「素の吉高寧々を見てほしい」というテーマを含んでいる。そのため、終わりを意識した彼女の覚悟や、彼女が内側に秘めてきたものを、分かりやすく示すことが重要だと考えたのだ。
 寧々さんは社長の提案を聞いて、文章を考え始めた。しかし言葉はなかなかまとまらなかった。社長はさらなる提案をする。
「お母さんから1番初めにもらったものを、ここに書いたら? それって吉高寧々の1番本当の『自分』やと思うねん」
 寧々さんはためらうことなく「それ良いやん!」と賛同したらしい。そして【会場の一番奥の右側】の写真に添えられる文章ができあがった。

【会場の一番奥の右側】の写真と文章

美乃すずめさんの感想

 5月12日、写真展2日目、17時ごろ。美乃すずめさんが友人と一緒に会場に来てくれた。彼女は「この笑顔が良いよね」「笠井さんの写真は暗い雰囲気が好きやな」などと言いながら、じっくり写真を見て回った。そして【会場の一番奥の右側】。まずそこに貼られた写真を見て、「お、泣いてる」と一言述べた。写真にゆっくり近寄り、横に添えられている文章に視線を向けた。顔を近付け1文字1文字を小さな声で音読する。
 数秒後。
「え・・・・・・」
 彼女の動きが止まった。
「え。ねえちょっと、これ読んでや」
 彼女は焦った様子で、一緒に来た友人を呼んだ。文章の内容を瞬時に受け止めきれないようだった。
 ちょうどその時、控室で休んでいた寧々さんが、会場にやって来た。すずめさんは言った。
「寧々ちゃん、すごいな。ここに書かれてる内容って、出しても出さなくてもどっちでも良かったと思う。だって吉高寧々であることには関係ないもん。でもだからこそ、ここまで自分を出したことにグッと来た。本当に闘ったんやな」
 寧々さんは少し照れた笑顔で「ありがとう」と言った。

美乃すずめさん

鷲尾めいさん、天使もえさんの感想

 5月14日、写真展4日目、12時過ぎ。鷲尾めいさんと天使もえさんが会場へ来てくれた。鷲尾めいさんはエイトマン女優。天使もえさんは寧々さんと同メーカー『FALENO』の専属女優だ。

じっくり見る鷲尾めいさん、天使もえさん

 天使もえさんは【会場の一番奥の右側】に添えられた文章を見て、こう言った。
「ここまで自分を出せるってすごいなと思いました。人って自分を守るための壁を、破る人と破らない人がいると思うんです。どっちが良いとかではない。寧々ちゃんは壁を破る人。2年前くらいに会った時は、不安そうで、すごく繊細な子って印象でした。でも今は全く違う。壁を破って、全てを受け入れる強さを感じました」

 めいさんの感想はこうだった。
「あの文章は、すごく寧々ちゃんらしいなと思った。私も寧々ちゃんはここ数年ですごく変わったなと思う。エイトウーマンの1年目は本当に団体行動が嫌いそうだった。でも今は全然違う。強くなった・・・・・・というか、軽くなった。今までは吉高寧々って決められた枠の中でギチギチで、余裕が全くない感じだったけど、ようやく吉高寧々に『自分』が共存し始めた。むしろ『自分』が上回ったんじゃないかな。だから壁を破った印象を受けたのかも」

 2人の何の言葉を聞いたら、寧々さんは何を思っただろう。残念ながらこの時、彼女はまだ会場入りしていなかった。そのため、2人の言葉を直に聞くことはできなかった。しかし寧々さん本人がいなかったから、ここまで語ってくれたのかもしれない。

天使もえ(真ん中)、鷲尾めい(右)

西田幸樹さんの感想

 写真家の西田幸樹さんは初日に来てくれたが、4日目の14日にも足を運んでくれた。西田さんはこう感想を残した。
「とても良いなと思いました。【終活】ってのも良い。何事にも終わりがあるのは、その通りだと思う。人生に意味はないんだよ。でも幸せな人生の方が良いでしょ。幸せな人生にするか、不幸にするかは、自分の考え方次第なんだよね。寧々ちゃんは何かを乗り越えた気がするな」
 その後、西田さんには寧々ちゃんと「密会タイム」をし、この写真展の特別イベントである『#寧々密会写真大賞』へ参加してもらうことになった。
 西田さんは「今日、カメラを持ってたかな」とカバンの中を探った。そして「あったあった」と年季の入ったCanonのデジカメを取り出した。
 ハンカチ出すみたいにカメラ出てくるんや・・・・・・。

西田幸樹さんと吉高寧々

 西田さんは「密会タイム」をとても楽しんでくれたように思う。見ている私の頬が緩み切ってしまうほど、素敵な時間だった。西田さんが寧々さんを撮って、2人の様子を笠井さんが撮って、そしてその3人を私が撮影する。
「カメラ、3つもあるやん!」
 そうつっこむ寧々さんも、楽しそうだった。3年間エイトウーマンを撮ってくれた西田さん。そして2年4ヶ月『#寧々密会』を撮ってくれた笠井さん。そんな2人に囲まれて、どことなくホッとしているように見えた。今の目の前の光景を、いつまでも記憶に残したい。そう思わせるひと時だった。

密会タイムする西田幸樹さん、それを撮る笠井爾示さん

吉高寧々ファンの感想

 寧々さんが『自分』を綴った文章を読んで、ファンの方々も胸にグッとくるものがあるようだった。

【会場の一番奥の右側】で立ち尽くし、涙していた、40代男性。
「よかった、という安堵で涙が出ました。寧々ちゃんはとても真面目なんです。でもだから、頑張りすぎてるんじゃないかと心配になる。これまでずっと吉高寧々という仮面をぶっている感じだった。でも本当の自分を少し出すことができたんだと思って、よかった、と思いました」

 仕事は有休を取り、奥様には内緒で三重県から来てくれた、50代男性。
「一瞬ハッとしました。見てはいけないものを見た感じがした。でもこれを読んだところで、彼女を好きな気持ちは変わらないし、これからも、これまで以上に応援したいと思いました」

 寧々さんの大ファンだと言う、30代男性。
「これを読んで、何だか嬉しかった。寧々ちゃんはいつも一線を引いている感じがしていた。決して内面を見せてくれない人だと思っていた。そんな彼女が本当の『自分』を見せてくれたことが嬉しい」

 みんな感じ取るものはさまざまだが、圧倒的に多かったのは「覚悟を感じた」という感想だった。ここまで強い人はなかなかいない、今にかけている強い思いが伝わる、と。

「AV女優を続けられるなら、ずっと続けていきたい。【終活】って言ってるけど、本当は誰よりもこの仕事を辞めたくないと思ってるし、誰よりも執着してると思う。いつか終わることへの不安と覚悟が、今、一緒にいる」

———「吉高寧々 独占インタビュー②」より

 この言葉が、彼女の強さの答えだろう。

『#寧々密会』は終活のひとつ

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