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第98話 『#寧々密会』写真展③〜吉高寧々ファン代表「121番」の密会タイム〜


吉高寧々ファン代表『121番』

 彼の名は『121番』。年齢は30代、細身で、やや背の高く、気弱で人の良さそうな印象。吉高寧々さんデビュー当初からの、熱いファンだ。
 だが彼には少々熱すぎる節もある。寧々さんのイベントにコスプレを称して、木刀を持って現れたり。青森でのサイン会では、わざわざ空港で出待ちをしたり。見ず知らずの高層マンションの写真をXに投稿し、「吉高寧々さん家かもしれない」と勝手に想像したり・・・・・・。一歩間違えば狂気に変わりそうな、並々ならぬ愛を感じる。ファンを代表する1人といっても過言ではないだろう。

 5月11日から開催されている『#寧々密会』写真展に、121番は毎日来ている。まず初日にやってきて、写真を2枚購入し、24分間の密会タイムを獲得した。
 密会タイムとは写真購入特典である。購入金額に応じて、寧々さんと2人きりの時間が過ごせるのだ。そしてその時に寧々さんの写真が撮れる。
 そらに写真展では『#寧々密会 写真大賞』というイベントが行われている。密会タイムで撮影した写真の中からグランプリを決めるのだ。賞金は10万円。そしてグランプリに選ばれた写真は、週刊誌『アサヒ芸能』(徳間書店)に掲載される。

 121番が写真を購入している時、エイトマンマネージャー山中さんが私に言った。
「彼は寧々ちゃんに認められたストーカーです」
 ス、ストーカー!? てかそれを本人の前で言うてもうてええの!?
 しかしそう言われている121番は、照れ臭さそうに笑っていた。満更でもなさそうだった。

『121番』(撮影:エイトマン山中)

 彼は今、エイトマンの社長やマネージャーに「吉高寧々のファン代表の1人」として認められている。だが、寧々さんがデビューしたての頃は、彼かの熱量が強すぎて、要注意人物としてマークされていたらしい。しかし彼は寧々さんの全イベントにやって来て、しっかり貢献もする。そんな彼と会ううちに、「ファンであることを、こんなに楽しんでくれているのか」と、寧々さんをはじめ、事務所のみんなが受け入れるようになった。
 ちなみに彼の『121番』という名は、寧々さんの初イベントでの整理券番号だそうだ。「この121番は囚人番号なんです。僕は寧々ちゃんに心を囚われているので」と彼は言っていた。

121番はつばさ舞さんのYouTubeにも登場

本当の密会タイムを過ごした121番

 5月15日、写真展5日目。121番の密会タイムの日。彼は開場早々にやって来て、撮影コースを下見していた。
 そして16時半、24分間の密会タイムがスタート。2人は会場を出て、右の道を歩いて行った。彼は写真を撮るでもなく、おしゃべりするでもなく、ただニコニコと寧々さんの横顔を見つめていた。
「写真、撮らへんの?」
 寧々さんにそう聞かれ、ようやく写真を撮り始めた。しかし数枚撮ると、またニコニコと寧々さんを見つめる。
「一緒の時間を過ごせるだけで良いんです」
 彼は言った。なんか、男前すぎるやろ。

密会タイムを堪能する121番

 彼は急に立ち止まって、カーブミラーを撮り始めた。カメラの先に寧々さんは立っていない。緊張しすぎて見えないものが見えてるんか? と思った。だが違った。彼はカーブミラーに映る寧々さんを撮っていたのだ。
「うおー、121番、やるなあ!」
 山中さんはそれを見て唸っていた。私も鳥肌が立った。
 それからも彼は、私たちを唸らせるセンスを発揮した。布張りのフェンスに穴が空いているのを見つけ、そこから寧々さんの顔を撮るのかと思いきや、お腹を撮ったり。突然しゃがみこんで飛行機を撮りだしたと思ったら、写真にはしっかり寧々さんが収まっていたり。
「121番、むっちゃセンスあるやん。エイトマンでカメラマンやったら? オタクカメラマン」
 寧々さんも楽しそうだった。

カーブミラーを使って撮影

 24分の密会タイムも10分くらいを過ごすと、また彼は全く写真を撮らなくなった。ただ隣でニコニコと寧々さんの話を聞いていた。挙げ句の果てには、逆に寧々さんに写真を撮られていた。
 レンズ越しではなく、自分の目で寧々さんを見ていたい。大好きな人と一緒にいられる限られた時間を満喫したい———。少し切なく、優しい時間だった。

「ストーカーは逮捕やで!」

121番がネットで叩かれる

 5月17日、写真展7日目。121番は再び写真を購入しに来た。しかしこの日の彼は、少し様子がおかしかった。購入手続きをしている時、私と全く目が合わなかったのだ。誰からも視線を向けられたくない、話しかけられたくない、そんな感じがした。
 この日、写真展が終わった後、山中さんが「121番、SNSで叩かれたんですって」と教えてくれた。
「日焼けしたアイツ、写真展にずっと入り浸っててキモい。金いくら積んだんだよ」
 ネット掲示板にそんな内容のことが書かれたらしい。それを見て121番は「僕が写真展に行くと、寧々ちゃんに迷惑かけるかな」と、その心ない言葉を真に受けてしまった。だから写真を購入する時、様子がおかしかったのだ。

 この話を聞いて、胸糞悪くなった。ネット上には匿名ならば何を言っても良いと思っている人間がいる。その卑怯さが許せなかった。真っ直ぐに寧々さんが大好きで、写真展でちゃんと写真を購入して、密会タイムでは「ただ一緒に入れるだけで良い」と言う。そんな一途な思いを、顔も知らない誰かに踏みつけられる。1つのことに熱くなれる121番への嫉妬。それ以外の何物でもないだろう。

 121番は買った写真の1枚を、寧々さんにプレゼントした。しかも最も大きいLサイズ。その写真は2年4ヶ月の撮影期間の中で、最後に撮ったものらしい。
「最新の寧々ちゃんを贈ります。クローゼットの中に入りますか?」
 彼は「飾ってください」とは言わなかった。自分の想いを決して押し付けないことに、胸を打たれた。

『#寧々密会』の撮影は2年4ヶ月行われた

 ちなみに会場入って左側、一番手前の緑の背景の写真は、彼がXで「この写真が一番好き」とポストしたことによって飾られた1枚だそうだ。エイトマン社長はその写真を見るたびに、「入り口にこの写真、良いよね。緑が映えて綺麗やもんな。121番、やるなあ。センスある」と言っている。

121番が一番好きな写真。もちろん購入

 彼は一見、気持ちの悪いファンかもしれない。しかし、彼の吉高寧々さんへの熱量は、我々エイトマンの心を動かした。自分の想いを押し付けず、ただ寧々さんを推し続ける。しっかり金も使う。そして彼には私たちを唸らせるセンスがある。だから会場の入り口の写真に、彼の意見を採用した。
 本気をやり続ける———そのひたむきな思いは必ず誰かの心に届く。

121番の熱い思いが伝わった1枚


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