ある脳出血患者の記録5

一歩外へ出ると
 かくしてわたしは障害者となり、元気なころわけもなく自宅の周囲を歩いていたのが、いまや夢のようなことになりました。まず、自宅といっても当時の自宅はいまのところより200mほど南にあるマンションの一室だったというのは申し上げた通りで、それなりに緑も多くてすてきなところでしたが、前述したその構造だけでなく、周囲の環境なども障害者には乗り越えなければならないことが多くて大変だったのです。
 東京は平地ももちろんたくさんありますが、油断すると驚くほど傾斜や落差ばかりの土地にもあふれています。道路も平坦とは限らず、水たまりやコンクリートの障害物、掘り返しては埋め戻されたところなど、枚挙にいとまがありません。健常者のときには「この坂道がたまらない」とかいっていたのに、気がつけばなんでもないほどの段差にもブツブツいう始末です。東京の街中でこの調子ですから、地方に住まわれるかたはどんなにか苦労されていることと思います。
 わたしの場合はもろもろ考えた結果から現在のところに引っ越しましたので、平穏な日常生活には問題なく暮らせていますが、たとえば皮膚科のある場所へは急坂をのぼっていかなければならず、歩行器でどうにか行っている次第です。いまでこそ、いい運動をしたと思っていますが、平常心ではなかなかのぼっては行かれません。駅に行くのも、一番近道をするならけっこうな坂道を通っていって(健常者なら)10分くらいで実によかったのですが、いまではその道は難しいので、平たくて楽なところを行くようにするとだいたい3倍はかかります。
 「楽」ということばの意味がこういうことだったのか、といまにしてわかった次第です。
 
毎日やっていること
 やっていること、といいますが、たいしたことはやっておりません。
 
 1日40分程度の運動(現在通っているPTやOTの先生が提唱してくださったもの。通称「自主トレ」と呼んでいますが、全然「自主」ではありません。)令和3年の秋ごろスタートして休みなくやってはいますが、正直いって中身はかなり単調です。最初は20分くらいでしたが、次第に伸びて、倍くらいにはなりました。
おもなものとして
足踏み 1セット12回を3セット
腕組み 1セット10回
寝起き 1セット12回を2セット
足組み 1セット12回を2セット
そのほかに3食ごとの起立、着座 毎回12回*3食
そんなところです。
 
なにを食べたか書く
 これは毎日、朝は必ず、昼はほとんど、夜はだいたい書いています。
昔、病気前は「なにを使って」など、かなり細かく書いていたこともありますが、いまは単に「なにを食べたか」だけの記録になっています。すでに4、5冊になっているとは思いますが、たまたま空いているノートを使っているので整理にはなっていません。
 
 ここまでははじめからやっていましたが、途中から増やしたもの、それと増やしたけどやめてしまったものがあります。続けているものについてのみ書きます。
 
ランニングマシーン(令和5年1月某日以来)
 1日500カウント。機材は令和4年に購入し、200カウントくらいやったりやらなかったりしていましたが、令和5年になって毎日やることが大切であることに気がつき、それ以後ずっとやっています。前進→後退→前進→後退→前進で100づつ、計500カウントです。ゲージは1から8まであって、最初は3でやっていましたが、最近4にUpしました。
 
ルームランナー(令和5年4月以降)
 昔からあったようなものを、令和5年に買ってやってみることにしました。健常者であればすぐやめるところですが、家内に「やれ」といわれてしまい、少しづつはじめました。
 最初はまったくできなくて、どうやってやればいいのかと思っていましたが、しだいに慣れてきて、いまは30周くらいやっています。(かぞえかたは適当ですが)
 
朝日新聞の「天声人語」を音読する(令和5年1月某日以来)
 最初は書き写しをやろうと思いましたが、すぐに無理だとあきらめ、読むだけにしました。しかし、「読む」中身が実態を伴っているか、つまり目を通して見た文章を口で発音するまでのあいだにきちんと頭で理解できているか、については、日によって違いがあるのが実情です。(どちらかというと読んでいるだけのほうが多いようです)
 音読が確信をもって意味のあるものになったら、書き写しにもチャレンジしようとは思っています。
 
徒歩
 歩行器で40分、というのが基本で、たまに杖で1時間歩いています。目標としては杖で歩くほうを基本にしたいのですが、なかなか自分の意志通りにいきません。
 
 あと、不定期ですがやっていることとしては、本を読む(特に脳出血、脳卒中、脳梗塞などの書籍は夫婦で音読)というのがあります。現在は「寡黙なる巨人」(多田富雄著)というのを読んでいます。本にはいろいろ良し悪しをいう人もいるようですが、わたしは与えられたものを与えられたまま読んでいます。
 なんといっても症状は人数分ありますし、性別、年齢などによっても対応すべきことがらは人それぞれ異なると思いますので、ここではわたしが採用している方法を述べました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?